友々素敵

人はなぜ生きるのか。それは生きているから。生きていることは素敵なことなのです。

教え子からメールが届く

2009年04月13日 21時10分58秒 | Weblog
 教え子からメールが届いた。高校時代の彼女は明るくて活発な女の子だった。彼女の中学校の美術教師は私が憧れていた先輩で、名古屋の現代美術を代表するアーチストのひとりだった。私が知り合いになれたのも彼女のおかげである。彼女は職場結婚して、家庭を持ち、家を建て、仕事も変わった。

 彼女のメールは「近況報告」で、その内容は「夫」のことばかりだった。彼女の夫は食道ガンで今年2月に手術を受け、3月には無事退院してきた。丁度60歳になったこともあり、病気がわかった時点で退職したそうだ。サラリーマンが退職すると一番困るのは、「何もやることがない」ことだ。彼女の夫も毎日やることがないと嘆いている。

 夫はなかなか行動的な人のようで、天気がよければひとりでカヌーに出かけたり、川へ散歩に行くこともある。夫婦でドライブに出かけたりもしている。連休には故郷への墓参旅行も計画しているそうだ。それでも夫は「毎日何もすることがなく、楽しくない」と言うのだそうだ。退職したばかりの男たちの多くはこういう状態に陥る。

 前もって退職してからの過ごし方を考えておけと、新聞や雑誌に書いてあるけれど、いざとならないと行動できないのは人の常だ。趣味があり、第2の人生を計画している人は退職後が待ち遠しいくらいだからいいが、特に何もない人は慌ててしまう。それでも地域に同好の仲間がいたり、いつも気軽に話せる友だちがいれば、何とか気も紛らわせることができる。

 私の小学校の時の友だちも水彩画教室に通い、作品ができるたびにブログに掲載し、作品についての思いを載せている。結構仲間ができてコメントも来ているようだ。今度は地方公務員のお手伝いをすることになったと書いていたから、また新しい視野が広がるだろう。また、中学・高校からの友だちはアルバイトに出かけたり、地域の役員を引き受けたりしている。人のつながりが生きていく楽しみとなるのだろう。

 真面目に働いてきた人ほど仕事がなくなるとさて明日から何をしたらよいのかと悩んでしまうようだ。しばらくは彼女と二人であちらこちらと旅して回るのもよいだろう。地域のサークルに入りづらいならば少し離れたところでもよいし、まあ、焦ることはない。そのうちに何とかなるものだ。

 そういえば、彼女もまた真面目なのだ。「そのうち何とかなるさ」ということが許されない。不真面目というか、怠け者のように思ってしまうのだろう。この夫婦はキチンとしていないと気がすまない性格なのだ。共存夫婦の内ならいいが、共倒れ夫婦になり兼ねない。不遜な言い方だが、浮気でもするくらいの不真面目さが欲しいものだ。

 医者は「リンパに転移があったので、再発の可能性がある。それはもう神に祈るしかない。再発は1年くらいしてからが多い」と言う。そこで彼女は余命が後1年とすれば「夫に悔いのない人生を送らせることを最優先にしなくては」と考える。そう思うならばそうすればいい。彼女が悔いのないことが、結果として夫が悔いのない人生を送ることになるのだから。中学生の孫娘は「人生はどっちを選択しても悔いは残る」と言っていた。
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