秋葉原の事件に続いて、先日は名古屋駅前で、そして今度は千葉県柏市で同じような事件が起きた。この他にもこのような、「誰でもよかった」といった殺戮事件があったと思う。その一番は「酒鬼薔薇殺人事件」だ。犯人はまだ少年だったが、定規を使って書いた薔薇という文字が今も目に浮かぶ。酒鬼薔薇が何を意味し、何が目的だったのか、よく分からない事件だった。
秋葉原、名古屋駅前、そして今度の柏市の事件は、いずれの犯人も若くやり場のない気持ちが鬱積している。柏市の犯人は、目撃者としてテレビカメラの前でかなり饒舌に語っている。そして警察官が自宅に来て任意同行を求めると、「チェックメイト」と言った。チェスの用語で、意味は「勝負あった」「負けた」ということらしい。彼には全てがゲームなのかも知れない。
逮捕されて家宅捜査に立会い、署に連行される時、マスクをはずして2度大きな声で叫んだ。いったい何を叫んだのか、ニュースを見ていた時は分からなかったが、フジテレビの『特ダネ』を見て分かった。最初は「ヤフーチャットバンザイ」、次が「ジョアクレンゴウバンザイ」だったが、これも私には意味不明で、なぜわざわざマスコミに向かって叫んだのかと思った。
「ヤフーチャット」というのはインターネットで特定の人たちとする会話だという。彼はインターネットの世界で何人かの知り合いが出来たようだけれど、余りにも独りよがりだったので、仲間は少なくなってしまった。そのサイトも近く閉鎖されるというので、叫んだのではないかと説明されていた。「ジョアクレンゴウ」は漢字で書けば「除悪連合」で、悪を取り除くという意味だろう。彼のチャット名だという。
「ハイジャックしてスカイツリーに突っ込み、社会に復讐してやる」と言っているそうだから社会に対して不満があることは確かだ。両親や周りが彼の価値を認めないことに対する復讐なのだろうけれど、認められたい気持ちが強いほど認められないことへの不満も大きいだろう。人は誰でも自分を褒めて欲しいものだ。昭和5年生まれの姉も病院のリハビリで、「よくできたね」と言われればニッコとする。愛して欲しい、認めて欲しい、人は悲しい存在だ。