NHK名古屋制作の金曜日午後10時のドラマ『お母さん、娘をやめていいですか』は、母親役の斎藤由貴さんが凄いというか怖い。母と娘はこんなにもすさまじい関係なのかと思えてくる。一人っ子と母親は確かに一心同体のようなところがある。「いいわよ、あなたの好きなようにしなさい」と母親は言うけれど、心配でたまらないから監視してしまう。
男の子でも女の子でも、一人っ子は母親が絶対的な存在だから、母親の機嫌を損ねたくなくて必要以上に母親の気持ちを考えてしまう。母親に嫌われたくない、母親が自分を愛してくれるように自分も母親を愛さなければ、そんな思いが一人っ子を支配している。たまたまNHK・Eテレの『ウワサの保護者会』でも子育ての難しさが取り上げていて、どこまでがしつけで、どこからが虐待かと、母親たちが話し合っていた。
私は子どもが生まれた時、女の子でよかったと思った。男の子ならキャッチボールや釣りなど出来るが、思春期になってきた時にどう接したらよいのか分からない。男の子が自分のようになってしまったら、また悲劇を繰り返すのかと勝手に考えていた。男はいつか、社会でそれなりの位置に着かなくてはならないし、結婚すれば家族を養っていかなくてはならない。その重責を引き受けられる男に育てることが不安だった。
幸いにも女の子ふたりで、私は「人に優しく、自分に厳しく」と言ってきたが、美しく優しい女性に育ってくれた。非の打ちどころがない訳ではないが、私の選挙を見に来ていた友だちは「娘さんを貸して欲しい」とまで褒めてくれた。子どもたちに嫌な思いをさせたことも数多くあったかも知れないが、それをいつの間にか乗り越え私よりも常識のある大人になってくれた。
子どもが過度の負担になるような期待をしてはいけないと思っていたが、長女から「親から何も期待されないのは辛いことよ」と言われたことがある。枠に嵌めたくなくて自由にさせてきたつもりでも、「他の家が許しても、我が家はダメ」と言ってもきた。父親があるいは母親が、何を大切と考えているか、価値観や美意識を伝えておくのは親の務めと思って押し付けてきた。
私たちには孫に当たる、子どもたちの子育てについては任せるしかない。3人の孫がどんな人生を歩むのか、見極めることは出来ないだろうが。