暑さの中の選挙は体力勝負でもある。「ぜひ、来てください」と言われ、「議員でもないし、何の役にも立たないよ」と答えると、「にぎやかしでもいいので」と馬鹿正直に言われ、朝早くから出かけた。彼とは何年の付き合いになるのだろう。私が地域新聞を発行していた時、彼は読売新聞の記者として取材に来ていた。それから何年か経て、私が議員の時、友人と立ち上げた「無党派・市民派の勉強会」に現れ、彼の方が覚えていてくれて声をかけてきた。
最初の選挙の時は前の晩からホテルに泊まり、事務所へと向かった。彼と2人のウグイスさんしかいない。タクシーを使用しての選挙だったので、運転手は車に乗ったままだった。出陣とは言えない出発式で街宣に出たが、ウグイスさんは選挙慣れしていたから、ウグイスさんが中心で、彼が時々言葉を添える形だった。このままでは有権者に立候補の意思が伝わらないと修正してもらったが、何が何でも自分を前面に出す積極性は最後までなかった。
それからは、地道な努力を惜しまない人柄の良さもあって15年も議員生活を送っている。今日も一緒に回ってみると、街宣車の声を聞きつけ、家々から人が出てきてくれる。圧倒的にお年寄りが多いのはやはり15年間、真面目に議会だよりを配布して回ってきたからだろう。辻々に立ち、汗を流して演説をする姿も共感を呼ぶだろう。窓も開けず、車から降りて演説もせず、ひたすら街宣車を走らせる候補者もいたので、誠意の違いがハッキリ見える。
そう、彼は真面目だ。定数28人のところに33人が立候補し、新人が14人もいる。ポスターを見ても若い人が多いし、女性も目立つ。「私は15年、市政を見て来た。新人では市政や議会の問題点が分からない」とベテランであることを強調するが、それでは新人いじめで、自分の良さを売り込むことにはならない。市政の問題点と議員としてどう取り組んできたのかを明らかにし、「しがらみのない、問題と常に積極的に取り組む議員が必要なこと」を訴えて欲しい。
選挙は立候補者にとっては、日頃の地道な努力が花開くための最後の勝負である。暑さに負けず、最後の最後まで頑張って欲しい。「にぎやかし」にもならなかったかも知れないが、来て欲しい人が来ないのは寂しく精神的にもよくないから、顔を見せただけでも心を満たすことにはなったのかも知れない。