井戸掘り作業は人数が揃わず、今日は休止となった。先輩のひとりは毎日曜日にお参りに出かけている。彼が若い時、妻の初めての妊娠は大変だったようで、「帝王切開しかない」と医者から告げられたそうだ。彼が悩んでいたのを知った職場の仲間から、「それはお前の信心が足りないからだ」と言われ、お寺に通うようになると、2週間遅れて無事に長男が生まれた。
半信半疑であったが、彼はそれをきっかけに信心するようになった。昨日の昼食の時、彼は私に「あんたも入らんか」と誘ってきた。「信心する気はない」と答えると、「今は良くても、死んだら困るだろう。墓はどうするんだ?」と訊く。「墓は要らない。火葬場で骨を拾うから、仏壇や墓が必要になるが、拾わなければ必要ない」と答えると、「それじゃー、地獄に落ちるしかない」と言う。
地獄を見たことはないし、死んだ先のことは分からない。人は死ぬと白い骨しか残らない。この世で生きていた時は、楽しいことも苦しいことも快楽も痛みもいろんなことがある。どんなに立派な人も死んでしまえば、ただもう、この世にいない人に過ぎない。だからこそ今日を、生きている毎日を、大事に充実したものにする必要がある。
井戸掘り作業が休止になったので、午後は市民音楽祭に出かけた。「音楽のある街」はすっかり定着し、会場の大ホールは満員だった。音楽祭は普通の発表会と違い、随分と「祭り」らしいプログラムになっていた。第1部は合唱で、2つの少年少女合唱団は演劇交じりの工夫があったし、3つの大人の合唱団は1つになって、懐かしい歌謡曲を歌った。第3部の吹奏楽の8団体はそれぞれに踊りや合唱なども行ない、「音楽祭」を十分に楽しませてもらい、充実した一日となった。