残念ながら今日の井戸掘りも進展なし。先輩は心なしか、ため息が多くなった。参加者は先輩と私のふたりだけ、依頼主と高1になる息子と4人での作業だが、実労働は依頼主と息子が担ってくれている。
私たち老人は力が出ない。力が無ければ知恵を出せばいいのだが、その知恵も出ない。知恵を生み出すだけの経験が足りないのと、経験を洞察する観察力に欠けているようだ。だから、どうすれば掘り下げられるのか、どうすれば水を汲み上がられるのか、的確な提案が出来ない。
鉄管は5メートルくらいは入っているが、吹管は3・5メートルくらいしか入っていかない。鉄管を抜いてみたら、鉄管の先は矢じりで塞がれているのに、なぜか砂や砂利がギッシリ詰まっていた。これでは水を汲み上がられない。
鉄管に塩ビ管をかぶせて、塩ビ管を水圧で掘り下げようとしてみたけれど、塩ビ管は3・5メートル辺りで止まってしまう。今日は鉄管に水圧をかけてみたが、鉄管に繋げたホースの部分が圧力に耐えかねて外れてしまった。
依頼主は弱音を吐かない人だったのに、「これだけやってダメでは、諦めるしかないですかね」と呟く。やり尽くしたなら諦めるしかないが、本人が本気でそう思わない限り、私たちとしては手を尽くそうと先輩と約束している。
確かに、2年越しの作業に、私たちも疲れ果てている。けれどまだ、諦めるには早い。鉄管を利用して水圧で掘るための準備が今日は足りなかった。いきなり水圧をかけたために爆発してしまったが、一度引き上げてからなら出来るかも知れない。
先輩は「失敗から学べばいい」と、格好いいことを言うが、何をどう学ぶかまで示さないと次の手が生まれてこない。今週末は都合が悪いと言うので、次の作業は12日と13日になりそうだ。
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