吉祥寺で喫茶店をハシゴした。
以前、吉祥寺・三大カレーなるものを制覇しようと思い立って、ダイヤ街の地下にある「くぐつ草」と、その先の東急百貨店裏手にある「茶房 武蔵野文庫」のそれぞれでランチ・セットをハシゴしたところで、挫折していたのだった。
そこで日を改めて、三軒目の「まめ蔵」に出向いたところ、午後1時半というのに待ち行列が出来ていて、諦めて近所の「茶房 武蔵野文庫」を再訪した。
前回、二軒とも同じようにスパイシーだったが、一軒目の「くぐつ草」の方が、タマネギをしっかり煮込んでいるのだろう甘みとコクがあって美味いと思ったのは、もしや空腹だったせいではないかと思い直し、二軒目の「茶房 武蔵野文庫」をあらためて空腹で試してみたのだった。「大ぶりのジャガイモ、ニンジン、鶏ムネ肉が転がる無骨な雰囲気」という食べログ・コメントそのもののカレーは素朴でよいのだが、やはり「くぐつ草」の深みに軍配があがった。この日は、それを象徴するわけではないだろうがお店はガラガラで、隣の「山本のハンバーグ」に待ち行列があるのと対照的だった。
午後2時を回ったところで、もしやと思って「まめ蔵」を覗いてみると、なんとか空きが見つかって、この日もハシゴすることにした。ビーフ/ポーク/チキンの中からビーフを選ぶ。前の二軒と違ってスパイスは抑えられてマイルドだが、たっぷり野菜を煮込んでいそうなコクのある家庭の味という印象だった。私のようにちょっと物足りなく感じる人は、卓上の辛味七味と山椒香る香味七味とで調整せよということのようだが、七味を加えないまま勢いで完食した。
いずれも40数年の歴史ある老舗の喫茶店カレーで、カレー専門店が持つ「本格派」とは違う「懐かしさ」がある。「くぐつ草」のご飯には干しブドウが載っていて、思わずほっこりさせられる。今どき喫茶店と言えば、ちょっと高いタリーズかスタバ、ちょっと安いドトールかサンマルク、変わり種でコメダか星乃か上島と、私の中で決まっているが、生き馬の目を抜く都心とは違って、職住ならぬ食住が一体となった郊外の街だからこそ、昔ながらの商店街があり、メンチカツとコロッケの店に行列ができ、その片隅に世代を超えてしぶとく生き抜く老舗の喫茶店があるのだろう。それが吉祥寺という街の魅力でもある。
上の写真は「くぐつ草」。洞窟のような怪し気な感じがしないでもないが、店内にはジャズが流れ、創立380年という「江戸糸あやつり人形劇団 結城座」の劇団員の手で1979年春に開店して以来、変わることなく親しまれてきた落ち着いた雰囲気がある。