風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

吉祥寺・三大カレー

2023-04-09 11:46:58 | グルメとして

 吉祥寺で喫茶店をハシゴした。

 以前、吉祥寺・三大カレーなるものを制覇しようと思い立って、ダイヤ街の地下にある「くぐつ草」と、その先の東急百貨店裏手にある「茶房 武蔵野文庫」のそれぞれでランチ・セットをハシゴしたところで、挫折していたのだった。

 そこで日を改めて、三軒目の「まめ蔵」に出向いたところ、午後1時半というのに待ち行列が出来ていて、諦めて近所の「茶房 武蔵野文庫」を再訪した。

 前回、二軒とも同じようにスパイシーだったが、一軒目の「くぐつ草」の方が、タマネギをしっかり煮込んでいるのだろう甘みとコクがあって美味いと思ったのは、もしや空腹だったせいではないかと思い直し、二軒目の「茶房 武蔵野文庫」をあらためて空腹で試してみたのだった。「大ぶりのジャガイモ、ニンジン、鶏ムネ肉が転がる無骨な雰囲気」という食べログ・コメントそのもののカレーは素朴でよいのだが、やはり「くぐつ草」の深みに軍配があがった。この日は、それを象徴するわけではないだろうがお店はガラガラで、隣の「山本のハンバーグ」に待ち行列があるのと対照的だった。

 午後2時を回ったところで、もしやと思って「まめ蔵」を覗いてみると、なんとか空きが見つかって、この日もハシゴすることにした。ビーフ/ポーク/チキンの中からビーフを選ぶ。前の二軒と違ってスパイスは抑えられてマイルドだが、たっぷり野菜を煮込んでいそうなコクのある家庭の味という印象だった。私のようにちょっと物足りなく感じる人は、卓上の辛味七味と山椒香る香味七味とで調整せよということのようだが、七味を加えないまま勢いで完食した。

 いずれも40数年の歴史ある老舗の喫茶店カレーで、カレー専門店が持つ「本格派」とは違う「懐かしさ」がある。「くぐつ草」のご飯には干しブドウが載っていて、思わずほっこりさせられる。今どき喫茶店と言えば、ちょっと高いタリーズかスタバ、ちょっと安いドトールかサンマルク、変わり種でコメダか星乃か上島と、私の中で決まっているが、生き馬の目を抜く都心とは違って、職住ならぬ食住が一体となった郊外の街だからこそ、昔ながらの商店街があり、メンチカツとコロッケの店に行列ができ、その片隅に世代を超えてしぶとく生き抜く老舗の喫茶店があるのだろう。それが吉祥寺という街の魅力でもある。

 上の写真は「くぐつ草」。洞窟のような怪し気な感じがしないでもないが、店内にはジャズが流れ、創立380年という「江戸糸あやつり人形劇団 結城座」の劇団員の手で1979年春に開店して以来、変わることなく親しまれてきた落ち着いた雰囲気がある。

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Star Dust

2022-05-25 00:58:19 | グルメとして

 昨日の産経新聞・電子版エンタメ・コーナーに、横浜の老舗バー「Star Dust」が紹介されていた(*)。

 一度行ったことがあるだけのご縁である。しかも30数年前のことだ。東横線の日吉にある独身寮に住み始めて、渋谷と横浜が遊び場だった当時、物珍しさに駆られて、ガイドブックで予習しては面白そうなレストランやバーを片っ端から食べ飲み歩く中で、「Star Dust」は一度きりなのに何故か記憶に残っている。あらためて今、振り返ると、店名とロケーションと佇まいのコンビネーションが絶妙だったせいだと思う。ジャズのスタンダード・ナンバーから取った店名なのだろうが、非日常に相応しい幻想を誘うシンプルで洒落たネーミングには痺れるし、東神奈川駅から海に向かって徒歩15分もかかる不便な、すぐ隣に米軍施設・横浜ノース・ドックという瑞穂埠頭の入り口付近にあって、およそ色気のない倉庫群の一角にネオンサインが煌々とぽつねんと輝く孤高のロケーションは印象的だし、ロケーションのままにニッポンから隔絶されたかのようなアメリカンな内装やジュークボックスや決済の仕組み(キャッシュ・オン・デリバリー)を備えた独特の空間もまた粋で印象的だった。

 もう一軒、渋谷・道玄坂にあったアメリカン・バー「Roxy」も記憶に残るのだが、調べてみると、随分前に閉店したようだ。30数年の年月はそんなものだろうと諦めるしかないが、「Star Dust」はあれから何も変わっていないようで驚かされる。いや、あれからどころではない、昭和29年にマスター(81歳)のお父上が始めてから70年近くの間、その雰囲気を守り続けているようだ。その独特の風貌から、多くのテレビドラマや映画のロケに使われたそうだが、さもありなん。

 以下は余談。

 懐かしくて再訪したいと思うのは、コロナ禍でオーセンティック・バーなるものから遠ざかって久しく恋しいせいだが、ただの気紛れではなく、実は行ったことがないのに行ってみたいオーセンティック・バーがこのところずっと念頭にあるせいでもある。大学を出るまでの20年間住んでいた大阪府高槻市(どうでもいいが、辻本清美さんの地元)にある、「福田バー」という。何とも直截的な素っ気ない店名だが、地元では知る人ぞ知る有名店らしい。どうやら小学生時代に最も親しかった友人が開いているもののようで、食べログなどを見る限り、彼なりのこだわりを随所に・・・そう、旧友としてのニオイを感じている(笑)。いつになるか知れない半世紀ぶりの再会をどのように演出しようかと、今からそわそわしている(笑)。

(*)https://www.sankei.com/article/20220523-DLHE4H6I7RKNBEPNCGWPQBXUPY/

 

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キムチ起源論争

2021-02-07 22:43:18 | グルメとして
 私は、韓国料理と聞くと、懐かしさとともに感謝の念を抱く。四半世紀前、ボストンに駐在していた頃、外食と言えば、和食に近い韓国料理がお手軽で、足繁く通ってお世話になったからだ。和食レストランが近所(独立戦争で有名なレキシントン・コンコードの戦いのコンコード)に出来たというので喜んだのも束の間、寿司主体で高級の部類に属するため、たまに贅沢をする時にしか使わなかった。当時は乳飲み子を抱えて、マクドナルドでは寂しいし、大味のステーキでは胃がもたれるし、シーフィードや中華料理は毎週だと飽きてしまう。移民の国アメリカとは言っても、半ばアジアとも言える西海岸とは異なる、東海岸の、ハリウッド映画がヨーロッパ・ロケの代用とするようなニューイングランドと呼ばれる地の一コマである。在韓米軍のお陰で、韓国人女性と結婚する兵士がいて、米軍基地の近くには韓国レストランが多いのだと聞いた。マレーシアに駐在していた頃も、どうしても和食が寿司・天婦羅など高級食と扱われる中で、韓国料理は外食での定番のひとつであり、付け出しの小皿が5~6皿、キムチ食べ放題なのが嬉しかった。
 そんなわけで、前置きが長くなったが、韓国と中国の間で俄かにキムチ起源論争が勃発したと聞くと、有名なソメイヨシノをはじめ、武士道、天皇、神道、相撲、剣道、茶道、歌舞伎、俳句、和歌、芸者、忍者、日本建築、神代文字、扇子、折り紙、寿司、刺身、納豆、天照大神、卑弥呼、徳川家康、錦鯉、秋田犬に至るまで、また中国との間でも、漢字、石碑、印刷技術、鍼灸、孔子、秦の始皇帝まで、何でも韓国発祥だったり韓国人にしてしまう「ウリジナル」の韓国ではあるが(笑)、キムチはやっぱり韓国だよなあ、と思ってあげたくなる。
 発端は、昨年11月、中国四川省の塩漬け発酵野菜「泡菜(パオツァイ)」の製法や保存法が国際標準化機構(ISO)の認証を受け、中国共産党の機関紙・環球時報が「キムチ宗主国の屈辱」と報道したことで、韓国の人気モッパン(飲食の様子を撮影した動画)ユーチューバーHamzyさんが「中国人がキムチやサムなどを自国の伝統文化だと主張する」と反応すると、すべてのコンテンツが中国のSNSや動画共有プラットフォームから突然削除されたあたりから(金遥楽さんによる)のようだ。何と言っても3000年だか4000年だかの歴史と独自文明を誇ることが出来る中国のことだから、韓国を挑発する(揶揄う)のは、単に「ウリジナル」韓国への意趣返しであろう。
 私自身は幸か不幸か韓国人と仕事をした経験はないに等しいが、一度、韓国系企業の駐在員と食事したときに、韓国人は子供の頃からキムチを食って平気なのかと聞いたら、いや、韓国人でも子供の頃は辛いものは苦手だと笑っていた。
 ムキになる韓国の地理的・歴史的な生い立ちは気の毒だと思う。しかし、たかがキムチ(されどキムチ)である。日本のラーメンや焼き餃子は中国が発祥だし、カレーはインドが発祥だが、今や日本の食事には欠かせないほどの存在感で大いに楽しませてもらっている・・・というように、文化は伝播し、行く先々の土地で独特の発展を遂げるものであって、どちらが先などと目くじらをたてるほどのものではないように思う。
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果物の王様・ドリアン

2020-06-13 12:44:23 | グルメとして
 いよいよ関東も梅雨入りし、朝からしとしと雨が降る鬱陶しい天気だが、マレー半島ではドリアンのシーズンでもある。
 マレーシア・ペナン島に駐在していた頃のことだから、かれこれ10年以上も前に遡るが、毎年、この季節になると、同僚とダウンタウンでドリアンを売る屋台を訪れて、舌鼓を打ったものだ。これを私たちの間では「ドゥリアン・パーティ」と呼んだ。日本人の言い方ではドリアンだが、現地ではラテン語風のDurian(ドゥリアン)が通じる。
 まあ、日本人にはギョッとする話かも知れない。果物の王様と言われながら、航空会社もホテルも持ち込みを禁止にするほど、現地でもそのニオイの強烈さを警戒する。が、初めて口にしたときは、正直なところ戸惑った。屋台で食べるドリアンは新鮮で、特段の嫌なニオイはなく、クリーミーで、実に美味だったからだ。要は保存すると発酵が進んで強烈なニオイを発して制御できなくなるだけのことで、新鮮なドリアンはニオイとは無縁なのだ。しかしアルコールが苦手な家内は、ドリアンも苦手なようで、発酵が進むものに特有の発酵クセといったようなものがある。しかし酒好きの私は苦も無く、食べる内に、これがまたクセになって恋しくなる。
 ドリアンは、俗説では、アルコールとの食い合わせが悪いとされる。アルコールに反応して、腹内で異常発酵してガスが発生し、死に至らしめるというものだ。そのため、ドリアン・パーティの日には恐れをなしてアルコールを控えたため、俗説の是非を確かめることは出来なかった。
 そんなドリアンは一つではない。日本におけるリンゴと同じように、さまざまな名称が付されて品種が豊富なことには驚かされる。さながら国民的果物風だ。その一つひとつを覚えられるほど食べる機会はなかったが。
 当時、タイでニオイのしないドリアンが開発されたと聞いた。これも品種の一つなのだろう。そりゃドリアンらしさと言うか、強烈なニオイがあってこそ、新鮮なものを求めて食べる楽しみを奪うようなもので、意味がないと思ったものだが、果たして需要があったのか、寡聞にして知らない。
 何故、今頃、ドリアンかというと、マレーシアの知人が、つい最近、ご飯にドリアンを載せた写真をfacebookにアップし、「ドリアンとご飯、シンプルな幸せ」(中国語で「榴蓮配飯、簡単幸福」)とコメントしていたからだ。これに醤油(多分、魚醤だと思うが)をぶっかけて食う人もいると聞いたことがあるが、これこそギョッとする楽しみ方ではないだろうか(笑)。幸か不幸か、それを直接目にしたことも試したこともない。
 近所のスーパーには、ドリアン風味のキャンディーが売られていた。悪趣味かも知れないが、日本への土産にしようと画策して、ついぞ果たせなかったのは、今もって悔やまれる。マレーシアを旅行する方は是非、探してみて欲しい。
 所詮ドリアン、されどドリアン、である。
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ポルトガル料理

2018-02-08 00:05:34 | グルメとして
 四ツ谷にあるポルトガル料理のレストランに行った。トリップアドバイザー「東京で人気のポルトガル料理レストラン10選」の二番目に出てくるお店である。聖イグナチオ教会(カトリック麹町教会)の傍というのは恐らく偶然ではないのだろうと、ポルトガル=カトリックが圧倒的多数と単純理解している私は思ってしまう。
 大通りから一筋入り、店の並びが絶えるため目立たない外観だが、国旗がはためいていて辛うじてそれと知れる。地下1階でも天井が高いため圧迫感がなく広々としていて、内装は実に洒落ていて気分がいい。食べログにはサービスにムラがあるようなコメントが出ているが、気にならない。そして何より料理が美味い。
 しかし、だからと言ってこれがポルトガル料理と思うのは早計のようだ。私自身、ポルトガル料理は二度目で、前回は10年近く前にマレーシアのマラッカで食したものだったが、数百年を経てすっかりローカライズされていて、ポルトガルらしさが私にはよく汲み取れなかった。ここも、連れて来てくれた知人の知人で、ポルトガル駐在したことがある人に言わせると、どうも本場のポルトガル料理ではなく、日本風にアレンジされているそうだ(まあ日本にある異国料理と言えば多かれ少なかれそうだけど)。
 たとえば前菜で出てくる生タコのマリネや、バカリャウ(と呼ばれる干し鱈のコロッケ)や、エスカベッシュ(と呼ばれるワカサギの南蛮漬け)は、まさに和食と言ってもよいほどで、驚かされる。それもそのはず、南蛮漬けはその名の通り、マリネやエスカベッシュが原型とされる。オリーブ油、ビネガー、玉ねぎ、ニンニク、ローリエを素材にした漬け汁に、素揚げした魚や小麦粉をつけて揚げた魚を漬け込む所謂マリネで、魚を熱処理してから「油+酸性液」に漬けこむことで長い保存に耐えられるようにする伝統的な調理法らしい。因みにこの日は食さなかったが、天ぷらも南蛮料理が原型で、16世紀には「長崎天ぷら」が誕生している。そのほか、この日、食した海の幸のカタプラーナ(ポルトガル式魚介鍋)や豚とアサリの炒め煮アレンテージョ風は、素材の味を活かして日本人の口に合い、なかなか美味だ。
 唯一、残念だったのは、ワインが期待外れだったことだろうか。食前酒に頼んだポート・ワインは美味かった。まさにご当地ポルトガル北部ポルト港から出荷される特産の酒精強化ワインだ。ところが、フランス・ワインであれば知名度のせいでコスパが悪いのは覚悟の上で、それだけに逆にポルトガル・ワインにはちょっと期待していたのだが、ケチって一番安いボトル4800円にしたら、ただのテーブル・ワインでしかなかった。重いのは6000円以上というから、ワイン好きは覚悟した方が良さそうだ。
 結局、表通りの喧騒から離れた隠れ家風、店内の雰囲気も味も良く、話のタネになる、要は使いようだと思ったので、お店の名刺を頂いてきた次第である(二度目がなさそうなお店からは勿論、名刺は頂かない)。
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ブルームーン

2017-11-25 21:01:43 | グルメとして
 「大気中の塵の影響により月が青く見える現象」をブルームーンと呼び(Wikipedia)、滅多に見ることはないため、「19世紀半ばには"once in a blue moon"は『極めて稀なこと』『決してあり得ないこと』といった意味で使われる慣用句となった。そういった意味を含めて、ブルームーンという言葉で特別なことを指す場合もある」(同)という。なかなか謎めいたところがある、雰囲気のある名前だ。しかしここで言いたいのは実はビールのことだ。確かに私にとっては「特別なこと」だった。
 アメリカ出張中、いろいろビールを試したが、一番記憶に残るのがこの「ブルームーン」だったのだ。否、そればかりではない。ギリシャ料理や、アメリカンなステーキや、シーフードや、タイ料理も、確かに美味かったが、そんな40ドルから60ドルもするような豪華な食事より、一番記憶に残る食事が、土曜の昼さがり、ナショナル・ギャラリーやスミソニアン博物館を訪れた帰りに立ち寄った薄暗いバーで食べたピリ辛のチキン・ウィングと昼間っから飲んだ「ブルームーン」の僅か10ドルの組み合わせだったのだ。実に安上がりな男だ(笑)。
 これまで慎重に「記憶に残る」と書いて来たが、美味くないわけではない。だからと言ってビールとして断トツに美味いかと問われると自信がない。しかしコクがあってクセになる。どうクセになるというのか。
 ウェブサイト(http://bluemoonbrewing.jp/)を覗いてみると、Belgian-Style Wheat Aleとあり(でも、アメリカ製である)、Profileには次の様に記されている。
(引用)
・原材料、成分:麦芽、ホップ、小麦、オーツ麦、コリアンダーシード、オレンジピール ※麦芽使用率:50%以上
・ルックス:より深いフレーバーを残すために濾過処理をしないため濁りがあります。
・アロマ:シトラスの香りあふれるフルーティーな風味と、軽くスパイシーな小麦のアロマ。
・テイスト:口に含むとまず、すがすがしいフレーバーが広がり、コリアンダーとオレンジのぴりっとした香味が残る。そこにバレンシアオレンジピールが、ほのかな甘味を添えている。
・口当たり:オーツ麦が生み出す、複雑でクリーミーなミディアムボディ。そして、しっかりしたコク。
・後味:クリーミー、コリアンダーとオレンジの香味。スパイスのかすかな余韻を残す。
(引用おわり)
 分かったようでなんだかよく分からないかも知れないが(苦笑)、何度も飲んだ私には、キーワードにはいちいち心当たりがある。より深いフレーバー、シトラスの香り、フルーティーな風味、軽くスパイシー、バレンシアオレンジビール、クリーミー、しっかりしたコク・・・念のために言っておくが、ビールである。そうか、このクセのある、まったりとした味わいには、オレンジが使われていたのか。言われてみれば合点する。都内でも手に入るし、あちらこちらの飲み屋にも卸されているようなので、見かけたら、是非、お試しあれ。クセになること請け合いです。
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キューバ料理

2017-11-18 15:50:15 | グルメとして
 昼に、マンハッタンのLexington Avenue沿い、40/41 StreetにあるSophie's Cuban Cuisineというキューバ料理のレストランに入った。パイプ椅子に質素なテーブルの座席がいくつか用意されているが、テイクアウトの客が多いせいか、3つのサイド・ディッシュと1つのメインを選ばせ、いずれにしてもプラスティックの弁当箱に盛って手際よく出してくれる、ファースト・フードのレストランで、昼食どきでごった返していた。
 ラテンアメリカ料理といえば、日本にも進出しているメキシコ料理ぐらいしか知らないが、なかなかどうしてキューバ料理も美味い・・・と思ってWikipediaを調べて見ると、「先住民の共同体が早くに滅亡し、スペインからの独立が遅れたため、ラテンアメリカ諸国の中ではスペイン料理の影響を最も色濃く残している」とある通り、食材に芋や豆の類いが多いが、サフランで炒め炊きしたライスや、ドイツのシュニッチェルもどきのチキンカツはドイツより絶妙な味付けで、いかにも日本人の口に合う。さすがラテン系というか地中海料理であろう。
 キューバと言えば、オバマ前大統領のレガシーとして、2年前の7月に、アメリカ・キューバ相互に大使館が再び開設され、1961年に断交して以来54年振りに国交回復し、昨年3月に、オバマ前大統領自身が現職アメリカ大統領として実に88年振りにキューバを訪問したのが記憶に新しい。親米政権を倒してキューバ革命を実現したフィデル・カストロが断行した農地改革の過程でアメリカ企業を接収したことがきっかけで断交し、核弾頭搭載ミサイル基地建設を進めようとしたソ連とアメリカとの間で核戦争の一歩手前まで行った伝説で知られるとは言え、なぜこれほど長きに渡って関係が凍結されたのか、当事者ではない日本人には不思議でならない。もしかしたら、ケネディ大統領(当時)暗殺に関わる情報公開が、最後の最後のところでトランプ大統領を以ってしても叶わなかったあたりに、その原因があるのかとつい勘繰ってしまう。最近、チェ・ゲバラについてブログを書いた、まさにあの当時のまま、目と鼻の先のアメリカと交流を断ったカリブ海の島国・キューバには、今もなお1950年代のクラシック・カーが走っているという、私には恐らく訪れるチャンスがない、現代のお伽話に思いを馳せつつ・・・。
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チリ・ワイン

2016-02-14 22:03:05 | グルメとして
 ワインと言えば一般にはフランスだが、日本ではその知名度の高さ故、従いプレミアム価格の高さ故、滅多なことでは買って飲もうと思わないし、余程気取ったときでもない限り注文しないのは、私ばかりではないと思う。コスト・パフォーマンスで言えば、欧州ではイタリアやスペイン、そして南アフリカ、呑み助の間では南米チリやアルゼンチンが人気で、実際に昨年のワイン輸入量で、チリ産ワインがフランス産を抜いて初めて1位になったらしい。
 日経ビジネスによれば、チリ産ワインの輸入量は、この10年間で実に7倍の規模に拡大し、既にイタリアやスペインを大きく上回っていたらしい。チリのワイン産業の歴史は浅いものの、豊かな国土とブドウの栽培に適した冷涼な風土に加え、政府の手厚い振興策もあって成長を続け、日本だけでなく世界各地で需要が増え、チリにとって重要な輸出品目だという。とりわけ日本では、2007年に経済連携協定(EPA)が発効し、ワインの関税が段階的に引き下げられ、もともと価格競争力が高かったチリ産ワインの輸入が促進されたということらしい。かつて10数年前に南米に駐在していた知人の商社マンも、高級チリ産ワインを楽しんでいたというから、いよいよ本領発揮というところか。
 私も、カリフォルニアとシドニーにそれぞれ1年滞在したときには、地元の旨いものを・・・との名目で(実のところ、現地ビジネスのリストラが課題で、憂さ晴らしに酒に逃げていたのだが)、コスト・パフォーマンスの良いワインを求めて、安いものから順に片っ端から試し飲みし、カリフォルニアでは25ドルくらい、シドニーでは40豪ドルくらいに落ち着いたものだった。円換算ではいずれも2500円相当、日本に輸入されればその倍の5千円、レストランで注文するときには更に倍の1万円と考えれば、驚きはない。しかし、日本に戻って、そんな大枚をはたいて飲む余裕はなく、再び安いワインから順に試した挙句、諦めかけていたところ、知人(彼も南米駐在経験がある)から騙されたと思って飲んでみろと勧められたチリ・ワインが実に美味いので、ワイン生活が再開した。「アルパカ」というブランドで、店によっては税抜き500円を切りながら、コクには欠けるものの安いワインにありがちのザラザラ感や渋みがなく、実にすっきりまろやかで後味が良く飲みやすい。
 こうして貿易は極力自由に、国々がそれぞれ強みを活かしながら棲み分ければいいじゃないかと、実に古典的な発想に囚われてしまうのである。
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カニ三昧

2013-06-13 21:38:09 | グルメとして
 人を食ったような季節外れのタイトルですが、食ったのはカニです。まさに季節を問わずカニで腹一杯にさせると豪語する居酒屋が会社の近所にあって、海外駐在が決まった知人を送り出す宴で、その店に行きました。
 もとより美味しいものを食べようとして訪れたわけではありませんので、いつもなら無言で無心で身をこさぐカニ料理で、こんなに身は取り易かったっけ・・・っと驚くほど身が痩せて殻から離れていようが、大した問題ではありません。とにかく送り出す知人を囲んで楽しく飲めたので、さほどの不満はありません。ただ一つだけ、美味いか美味くないか、本物の味をわきまえておくことは、特に子供たちの長い人生にとって、無駄ではなかろう(むしろ早いうちに学んでおくべきだろう)と思いました。
 私にとって、本物のカニとの出会いは、大学の卒業旅行に遡ります。卒業旅行で海外に出る学生が出始めていた当時、金がない私たち仲が良い四人組は、レンタカーを借りて、試験が終わった2月末、京都から日本海沿いを鳥取砂丘や今年が旬の出雲大社や温泉街が点在する雪深い山陰路を、のんびり巡ったのでした。。
 そんな時間が止まったような贅沢な旅の道すがら、京都のある温泉宿は、カニ尽くしで出迎えてくれました。折しもカニは旬。中でも一番印象に残る美味は、食べ終えたカニの甲羅を盃に見立て、日本酒を注いで火鉢で炙って飲んだもので、カニ尽くしの満腹感とも相俟って、至福のひとときを堪能したものでした。
 何も目利きや味利きになれとまでは言いません。ただ、親心として、最後に子供たちに仕込むのは、本物はこういうものだという相場観でしょうか。食もそう。絵や、焼き物もそう。吉野家の牛丼は美味いし、リンガーハットの長崎ちゃんぽんも美味い。しかし、懐石料理のえも言われぬ繊細さは、値段並みに別世界の経験と言わなければなりません。北斎の青や、ミュシャのパステルカラーは、写真集で見るのっぺりとした青のインクや印刷のパステルカラーとは見違えるほど、鮮やかで深くて淡くて美しくて、作者の息づかいが聞こえて来そうです。若い頃にこそ、こうした本物を知り、人生にわたって、本物を味わって欲しいと、もはや人生の大半を過ぎた私はそれが出来なかったことを悔やみつつ、思います。
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アカシア

2013-05-16 23:04:38 | グルメとして
 連休中、息子と損保ジャパン東郷青児美術館を訪れて、そのまま新宿の街で昼食をとることにして、ぶらぶらしている内に、たまたま近くに寄ったばかりに、ふと思い出して、その昔、学生時代から東京で暮らす友人に連れられて何度か通ったことがある「アカシア」に入りました。アルタの裏手、靖国通りに向かう細い路地を入ったところに、今も店を構えます。
 創業1963年と言いますから、実に満50歳を迎える、ロールキャベツ・シチューの店として知られますが、自家製のハム・ソーセージや、ハヤシソースや、極辛カレーなど、オリジナリティ溢れる料理もあります。お店が開業した当時は、さぞぴちぴちで若かったろうと思わせる、おばあちゃん(なんて言ったら失礼ですね、お姐さん)ウェイトレスが、ベルトコンベアの上に載せた機械を手際よく捌くかのように、手慣れた仕草で出迎えてくれます。定番のロールキャベツ・シチュー(ライス付き)定食は、クリームスープにとろとろに煮込んだロールキャベツが2つ入って780円、ほっぺたが落ちるほど美味しい♪と思ったことは実は一度もなくて、むしろ関西人の私には(関西人ではなくても)毎度しょっぱいと感じて、選んだことを後悔するのですが、これがあの・・・と思い込ませる知名度をもつ素朴な味付けと、昭和の雰囲気を醸し出すレトロな店構えに、何故か惹かれて足を運んでしまう、不思議なお店です。
 かつて知人に教えられて、20年振りくらいで訪れたように、息子も、父親に教えられたことを思い出して、何年かしてまた訪れるのでしょうか。恐らくそんな静かなファンに守られているのでしょう、店はこの日も満席でした。
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