風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

2024回顧:戦争

2025-01-01 09:47:07 | 日々の生活

 ウクライナ戦争が始まってから間もなく丸三年になろうとしている。世界のどこかで戦争があると実感する生活が当たり前になってしまった。さすがにロシアやウクライナ界隈では戦争疲れや厭戦気分が漏れ伝わる。最近で言えば(と言っても70年以上前のことだが)、朝鮮戦争が丸三年とひと月で休戦協定に至った。大統領に当選すれば24時間以内に戦争を終わらせると豪語したトランプ氏の登場で局面打開できるだろうか。

 ウクライナ戦争を通して多くの人が様々な教訓を再確認したことだろう。

 まさか21世紀の現代に19世紀的戦争が行われることになろうとは思ってもみなかった。しかも第一次世界大戦当時の塹壕戦が展開される上空にドローンが飛び交うハイブリッドの様相である。民主的平和論が本当かどうか分からないが、現代にあっては戦争へのハードルが高い民主国家と違って、独裁国家においては少人数で(場合によっては一人で)意思決定される恐ろしさがある(その意味で最近、習近平に権力集中する中国で人民解放軍筋から集団指導体制を称える論説が出始めているのは注目される)。そして戦争は始めるのは簡単だが終わらせるのは難しい。しかも戦争は、戦争法規というものがありながら、いともたやすく破られて悲惨である。長期戦になれば砲弾などの物量がモノを言う。戦争ではロジスティクスが重要と言われ続けて来たが、あらためて実感された。中でもサプライチェーンに関心が集まる。アメリカで今、造船が注目されるのは、ウクライナ戦争やコロナ禍と無縁ではないだろう。最近でこそ世界の工場とは言われなくなった中国の(米国に対して比較優位にある)製造能力は、いざ戦争が勃発したときには脅威となるからだ。また、プーチンの継戦の「意志」は変えられないとしても「能力」を削ぐために矢継ぎ早に幅広く経済制裁を科して来て、三年近く経ってなお、ロシアがへこたれないでいることには驚くべきものがある。中国から電子機器を、イランからドローンを、北朝鮮から砲弾や歩兵を調達しているからとされ、グローバル経済にあって制裁は破られる。逆に、世界経済に組み込まれた資源大国を制裁したことでエネルギー危機が勃発し、世界の景気を悪化させ、選挙イヤーと言われた昨年の選挙戦では各国で軒並み与党が敗れる波乱が続いた。特定の社会だけでなく世界も民主主義国家と権威主義国家とに分断され、窮屈になった。最近になってようやくウクライナにロシア領攻撃が許されつつあるが、日本が国是とする専守防衛では心許ないことがはっきりした。そして、核戦争をチラつかせるプーチンの脅迫に弱腰のバイデン大統領や西欧諸国を見ていると、力に対して力で対抗するしかないという現実が突きつけられる。

 シリア・アサド政権が崩壊したのは、ウクライナ戦争と中東紛争の余波と言えるであろう。ロシアがウクライナ戦争に足を取られ、ヒズボラやイランがイスラエルによって壊滅的な打撃を受けて、シリア・アサド政権を助ける余力がなく、言わばシリア内に権力の空白を見てとった反体制派が進軍し、シリア軍はあっけなく瓦解した。

 そして何より、私たちは経験の中でしか物事を見ることが出来ないことが分かる。だからこそ読書したり映画やドラマや漫画を見たりしてなんとか想像力の翼を広げようとするのだが、それでも実体験には及ばない。戦争を遠くからではあるが同時代的に眺めていて、歴史を学び歴史的視野で物事を捉える重要性を思い知った。マーク・トウェインが言ったとされる「歴史は繰り返さないが韻を踏む」(History doesn’t repeat itself, but it often rhymes.)が人口に膾炙したことにはワケがある。

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