中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は今日、オンラインで協議し、「両国の協力を深めることで一致した」(毎日新聞)そうだ。両首脳は先月中旬にもオンラインで協議している。その間、米露首脳会談が実施された。なかなか微妙な三首脳の三角関係ではなかろうか(笑)。7月1日に中国共産党創建100年を迎える習氏には、欧米・民主主義国から包囲されつつある中、国際的に孤立するのを避けたい一心で、不安を覚える様子が透けて見える。片やプーチン氏には、米中の間でバランスを取るだけの余裕があるのではないだろうか。
そんな中、「冷戦終結後で最低」とお互いが関係悪化を認めていた米露首脳の会談は圧巻だった(皮肉を込めて)。
バイデン大統領が初の外遊でヨーロッパに旅立ったのは6月9日のことで、その三日前にワシントン・ポスト紙に論説を寄せていた。”My trip to Europe is about America rallying the world’s democracies”(ヨーロッパ行きは世界の民主主義国を再結集するもの)というタイトルで、意気込みを語っている: In this moment of global uncertainty, as the world still grapples with a once-in-a-century pandemic, this trip is about realizing America’s renewed commitment to our allies and partners, and demonstrating the capacity of democracies to both meet the challenges and deter the threats of this new age. 同盟国重視のコミットメントを示すとともに、新たな時代の挑戦に立ち向かい、かつその脅威を抑止することを示すことにあると、(その後で)中露を名指し、対抗して行くことを言明している。他方、ロシアについては、同盟国との結束を固めた上で会談するスケジュールにした上で、The United States does not seek conflict. We want a stable and predictable relationship where we can work with Russia on issues like strategic stability and arms control. 戦略的安定性と軍備管理のような課題について、安定した予測可能な関係を望むことを表明した。同時に、When we meet, I will again underscore the commitment of the United States, Europe and like-minded democracies to stand up for human rights and dignity. 人権などの民主主義的な価値については妥協しない姿勢を明確にしていた。
米露会談に向けたバイデン氏の「期待値」は敢えて高くしなかったようだ。実際に、軍備管理やサイバーセキュリティについては新たな対話の枠組みを設けることで合意したが、その他の問題(反体制派指導者の人権問題、ウクライナ情勢、中東情勢など)ではお互いに譲らず、さしたる成果はなかったようだ。クリントン政権の元高官だった某大学教授はNY Times紙で、会談は予定より早く終わり、会談後の記者会見は別々に行われ、プーチン氏をホワイトハウスに招待することもなかったと、その低調ぶりを解説している。
そうは言っても、事前に事務レベルで遅刻魔のプーチン大統領が遅刻しないよう調整し、実際に遅刻しなかったことからすると、プーチン氏にバイデン氏の機嫌を損ねまいとするくらいの配慮はあったようだ(笑)。何より、これまでの米露関係からすれば、合意し得る限られた領域であっても、建設的な対話を行い得る糸口を見出したことの意味は小さくない。会談後に別々に行われた記者会見では、日経によると、バイデン氏は会談を「とても良かった。前向きだった」と振り返り、プーチン氏はバイデン氏のことを「プロフェッショナルで、建設的で、バランスの取れた人だ」と評し、「彼とは2時間2人で話した。すべての首脳とそれほど詳細に会話するわけではない」と印象を語ったらしい。バイデン氏にしてみれば、米国内で警戒心が高い以上にロシアを最大の脅威と見做すヨーロッパの同盟国が背後にいて、しかし今後、長く続く米中対立にフォーカスするためには、ロシアまで敵に回したくないのが本心だろう(以前のブログ「キッシンジャーのリアリズム」に書いたように)。プーチン氏にしてみれば、アメリカ嫌いの国民を抱え、同じ敵(=アメリカ)を持つ者同士で歩み寄る(しかし経済力では圧倒されて安保上も警戒しないわけには行かない)中国が隣人として控えて、そう易々と気を許す様子は見せられない。そんな微妙な米露関係をこれ以上悪化させず、「安定」した「予測可能」なものにする、すなわち関係を「管理する」というバイデン氏の目論見はどうやら達成されたようであり、おべんちゃらの中にも、信頼構築とまでは言えないまでも、ひとまず首脳同士の個人的関係にはお互いにそれなりに手応えを感じていそうなことは読み取ってもよいのだろう。
今後の米露関係に注目して行きたい。
そんな中、「冷戦終結後で最低」とお互いが関係悪化を認めていた米露首脳の会談は圧巻だった(皮肉を込めて)。
バイデン大統領が初の外遊でヨーロッパに旅立ったのは6月9日のことで、その三日前にワシントン・ポスト紙に論説を寄せていた。”My trip to Europe is about America rallying the world’s democracies”(ヨーロッパ行きは世界の民主主義国を再結集するもの)というタイトルで、意気込みを語っている: In this moment of global uncertainty, as the world still grapples with a once-in-a-century pandemic, this trip is about realizing America’s renewed commitment to our allies and partners, and demonstrating the capacity of democracies to both meet the challenges and deter the threats of this new age. 同盟国重視のコミットメントを示すとともに、新たな時代の挑戦に立ち向かい、かつその脅威を抑止することを示すことにあると、(その後で)中露を名指し、対抗して行くことを言明している。他方、ロシアについては、同盟国との結束を固めた上で会談するスケジュールにした上で、The United States does not seek conflict. We want a stable and predictable relationship where we can work with Russia on issues like strategic stability and arms control. 戦略的安定性と軍備管理のような課題について、安定した予測可能な関係を望むことを表明した。同時に、When we meet, I will again underscore the commitment of the United States, Europe and like-minded democracies to stand up for human rights and dignity. 人権などの民主主義的な価値については妥協しない姿勢を明確にしていた。
米露会談に向けたバイデン氏の「期待値」は敢えて高くしなかったようだ。実際に、軍備管理やサイバーセキュリティについては新たな対話の枠組みを設けることで合意したが、その他の問題(反体制派指導者の人権問題、ウクライナ情勢、中東情勢など)ではお互いに譲らず、さしたる成果はなかったようだ。クリントン政権の元高官だった某大学教授はNY Times紙で、会談は予定より早く終わり、会談後の記者会見は別々に行われ、プーチン氏をホワイトハウスに招待することもなかったと、その低調ぶりを解説している。
そうは言っても、事前に事務レベルで遅刻魔のプーチン大統領が遅刻しないよう調整し、実際に遅刻しなかったことからすると、プーチン氏にバイデン氏の機嫌を損ねまいとするくらいの配慮はあったようだ(笑)。何より、これまでの米露関係からすれば、合意し得る限られた領域であっても、建設的な対話を行い得る糸口を見出したことの意味は小さくない。会談後に別々に行われた記者会見では、日経によると、バイデン氏は会談を「とても良かった。前向きだった」と振り返り、プーチン氏はバイデン氏のことを「プロフェッショナルで、建設的で、バランスの取れた人だ」と評し、「彼とは2時間2人で話した。すべての首脳とそれほど詳細に会話するわけではない」と印象を語ったらしい。バイデン氏にしてみれば、米国内で警戒心が高い以上にロシアを最大の脅威と見做すヨーロッパの同盟国が背後にいて、しかし今後、長く続く米中対立にフォーカスするためには、ロシアまで敵に回したくないのが本心だろう(以前のブログ「キッシンジャーのリアリズム」に書いたように)。プーチン氏にしてみれば、アメリカ嫌いの国民を抱え、同じ敵(=アメリカ)を持つ者同士で歩み寄る(しかし経済力では圧倒されて安保上も警戒しないわけには行かない)中国が隣人として控えて、そう易々と気を許す様子は見せられない。そんな微妙な米露関係をこれ以上悪化させず、「安定」した「予測可能」なものにする、すなわち関係を「管理する」というバイデン氏の目論見はどうやら達成されたようであり、おべんちゃらの中にも、信頼構築とまでは言えないまでも、ひとまず首脳同士の個人的関係にはお互いにそれなりに手応えを感じていそうなことは読み取ってもよいのだろう。
今後の米露関係に注目して行きたい。