風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

天気晴朗ナレドモ浪高シ

2018-12-31 13:55:23 | 時事放談
 今日のタイトルは、日露戦争で連合艦隊が出撃する際、大本営に向けて打電された文章の最後に、秋山真之が書き加えた有名な言葉だ。視界良好で戦闘準備は万端整っているけれども、「浪高し」つまり作戦の第一段「主力決戦前夜、駆逐艦・水雷艇隊の全力で、敵主力部隊を奇襲雷撃」は行われないことを大本営に即座に理解させた(Wikipedia)とされる名文だが、このブログではそんな意味深なものではなく、象徴的に使っているだけだ。思えば昨年、緊迫した朝鮮半島情勢が、今年に入って一転して融和に向かうかと思われたが、年末にかけて韓国がとった対応によって、日本にとっては分断された朝鮮半島情勢が極めて厳しいものになり得ることを予感させる一年となった。分断された、という意味は、南・北だけでなく(その南・北は融和しつつあるが)、南自体が東・西(慶尚道・全羅道)に分断され、波乱要因になりかねない(現に今、南・北融和で混乱していると思う)ということだ。
 20日午後3時頃、能登半島沖で、韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊のP1哨戒機に火器管制レーダーを照射した事件は、(6年前にあった)中国ならいざ知らず、一応、準同盟国とされる(あるいは日米同盟の相方である米国が米韓同盟を結ぶ)韓国だということに驚かされ、しかし日本を仮想敵国と見做す韓国ならそれもあり得るかも…と思っていたら、謝罪し責任者を処罰するどころか、どう見ても理不尽な言い逃ればかり、しまいには非は日本にあるかのように言い立て、決定的証拠となる(しかし機微なところは当然隠しているであろう)動画が公開されても、韓国・国防省自らが「客観的証拠と見なせない」と(もっと手の内を明かせと言わんばかりに)言いがかりをつけるようでは、もはや形式的とはいえ準同盟国とは言えず、驚きを通り越して呆れてしまう。その間、元徴用工裁判のときと同じで、青瓦台は沈黙を保ったまま、メディアは大騒ぎ(笑)。かつての日本の「穏便に済ませる」謝罪外交のなれの果てがこれかと思うと、遣り切れなくなるが、民主主義国家の装いをひっぺがすと、事大主義の薄絹をまとった儒教国が姿を現し、なるほど中国や北朝鮮の言いがかりと似たようなものだと感じてしまうのはそのためだろうと、諦め気味である。
 その間、なかなか興味深い報道があった。韓国・国防省の関係者談として、日本が自ら「Navy」を名乗るのが公開されたのは「初めて」であり(実際には過去、多国籍軍での任務中にはJapan Navyと自称している)、「背景と意図を分析して」おり、さらに続けて「軍隊を持つことができる『普通の国』を夢見る、日本の野心が明らかになったとの分析も出ている」という。なるほど、韓国では、第二次世界大戦での大日本帝国は「侵略国」として近隣諸国に多大なる被害と労苦を与えた罰として、軍隊を持たせてもらえない中途半端な(普通ではない)状態にさせられているのだと今でも思い込んでいる(思い込みたい)ようだ。確かに日本国憲法は日本が独立する以前に与えられたものだが、独立した後も捨てなかったということは、国民の意思として平和国家を主体的に選び取ったものでもあるという歴史的事実を、韓国は認めようとしないようだ。これじゃあ、ことあるごとに日本の軍事大国化を非難するわけだと合点する。挙句には、韓国の与野党こぞって、日本政府の対応の背景には、最近支持率が下がっている安倍政権が問題を政治利用する意図があるとする論評を相次いで発表したが、こんなことで支持率が上がるほどヤワな日本ではないことを知らないようだ。敵対国(日本)に対して「してやったり」で支持率があがると、最近支持率が下がって困っている文在寅政権なら政治利用しかねないと、韓国人は思っているからであろう。これは、南京の城壁内で、城下町で街を囲む城壁などない日本では考えられないことなのに、大日本帝国陸軍は同じように虐殺をしたのだろうと思い込んで中国人が非難してきたのに似ている。
 日本に対しては何を言っても許されるという(日本人にとっては摩訶不思議な)韓国人の意識は、小国意識のなせる業(ワザ)と言われてきた。いまどき、世界システムとしてのウェストファリア体制下で大国も小国もないだろうと思うが(中国のような権威主義国家であれば、大国を嵩に小国に対して露骨な圧力を加えるが)、事大主義で儒教国家の韓国では、歴史的に隣国に対する(日本人にはなかなか理解し辛い)怨を膨らませて来たのだろうか。単なる国民意識の違いで済ませられればよいが、そしてこれまではまがりなりにもそれで遣り過ごして来たが、期せずして北朝鮮の存在感が実体を遥かに超えて高まる昨今、韓国を含む朝鮮半島情勢、ひいては東アジア情勢は油断ならなくなってしまった。その序曲となる年だったと、後年、記憶される年になるのだろうか。
 前回に引き続き、同盟関係に不穏な動きがある年の瀬である。
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トランプ流おもてなし?

2018-12-29 13:19:41 | 時事放談
 前回取り上げた「皇室御写真集」が、なんと近所のイトーヨーカドーのお正月コーナーで販売されているのを見つけた。包装のビニール袋には、税抜きで1200円のタグと、新日本カレンダー株式会社という、大正時代に大阪で創業した、カレンダーや団扇などの紙製品を主に製造・販売する会社の名前が載っている。ということで、お宝感は一気に失せてしまった(笑) 佳子さま単独の御写真集まであって、アイドル並み。いやはや驚いた(微笑)
 ここからまたクリスマスの話題に戻るというのもなんだが、数日前、ロイター通信がトランプ大統領のクリスマスの模様を伝えていたのが感慨深い。
 クリスマス・イブに北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)が「サンタ追跡」を行うのは、以前、ブログでも紹介したことがあるが(https://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20180114)、政府機関が一部閉鎖に追い込まれた今年も、民間と軍関係のボランティア約1500人がサンタを追跡しながら子どもたちからの電話に応じる任務にあたったそうだ。さすが(トランプ大統領に振り回されてもやるべきことはやる)アメリカ!である。念のため、この組織は、普段は24時間体制で人工衛星やミサイルや戦略爆撃機の動向監視などを行っている、れっきとした軍組織である。
 一昨日のロイターによると、トランプ大統領もメラニア夫人とともにホワイトハウスで子どもたちからの電話を受けたという。なんと粋な。さすがアメリカ!である。ところが、そのときの会話がふるっている。記事に埋め込まれた動画クリップからトランプ大統領の発言(字幕)を拾うと、つぎのような感じだ。
 「元気かな。コールマンちゃんは何歳? 7歳か」
 「学校ではうまくやっているかい?」
 「クリスマスは何して過ごすの?」
 「それはいいね。君はまだサンタを信じているのか?」
 「7歳は十分大人だろう。まあ楽しみたまえ」
 今年も、世界は散々トランプ大統領に振り回された一年だったが、この会話ほど、トランプ大統領らしさが表れた記事はない、稀に見る傑作だと思った(苦笑)。トランプ大統領のことを「小学5年生」レベルと批判した政府高官がいたが、まさに7歳(小学1年生?)と小学5年生の会話!?なのか、あるいは子供慣れしていないトランプ大統領の照れ隠し!?なのか。
 7歳の女の子にこんな質問をしてどうする!?と誰もが思うように、物議を醸したが、翌日のロイターによると、この女の子は地元紙ポスト・アンド・クーリエに対し、サンタを信じていると述べたという。なお、「7歳は十分大人だろう」というのは、英語で”Cause at seven, it's marginal, right?”、つまり「7歳はぎりぎりだね」ということだったようで、これ(marginalという単語)を彼女は理解できなかったというが、なんとも明け透けな話だ(苦笑) それでも彼女は大統領と話せて嬉しかったと語っているので、まあよしとしよう。
 この話を持ち出したのは、ほかでもない。「プライベートでは戦史・戦略の研究に時間を費やし、結婚もせず子供も居ないため『戦う修道士(Warrior Monk)』、海兵隊時代には部下を心服させ、粘り強く戦い続ける歴戦の実戦指揮官としての名声から『荒くれ者、狂犬(Mad Dog)』などと呼ばれ」(Wikipedia)、称えられるマティス国防長官が辞任するニュースには、さすがにがっかりしたからだ。「小学5年生」の大統領の後見人だった「大人」の将軍三人のうち、最後の一人からも見放されてしまうことになる。この話題の関連での明け透けなトランプ大統領の仕打ちには、相変わらず驚かされる。
 当初、引き継ぎを考慮して2月末辞任を受け入れたトランプ大統領は、マティス長官が辞表の中で大統領を批判したことに激怒し、辞任時期を12月末に前倒しする報復措置に出た。どうやらメディアが大統領を諌めた長官を英雄視していることに嫉妬したらしい。過激派組織ISを壊滅させ、シリアから米国の若者を無事に帰国させようとしているのは「大統領である自分であり、私こそ英雄だ」と・・・。さらに驚くべきは、トランプ大統領はその辞表を直接は読んでおらず、メディア報道を通じて知って怒りを爆発させたという。トランプ大統領は、業務上、文書の類いをほとんど読まないと指摘されてきたが、まさか本当で、今回までもそうだったとは・・・。
 本来、軍人は命令に従うもので、辞任するものではない(解任されるにしても)とされる。彼の友人によると、トランプ大統領が米軍職員に対し、中米難民の侵略とされるものから米国とメキシコの国境を守るよう命じた10月に自分は辞任すべきだった、と話しているという。そのマティス長官が辞意表明する直接の引き金となったのは、シリアからの米軍撤退だと言われる。このとき、マティス長官には何の説明も相談もなかったし、マティス元海兵隊総司令官の感覚では、シリアでともに戦ってきた多国籍軍の同志たちに対する“裏切り行為”として許せなかったのだと解説される。また、トランプ大統領の同盟諸国に対する姿勢も、アメリカを危うくするものとして、受け入れ難いもの、ほかにも、遠い私たちにも豊富な話題を提供してくれるくらいだから、身近に接するマティス長官には山のような鬱積がびっしり蔓延っていたことだろう。
 そもそもアメリカは、その国の成り立ちから、(当時のヨーロッパ旧世界のような)独裁的な権力の暴走を最も恐れ、そのために建国の父たち以来、二重三重に権力統制の仕組みを作り込んできたお国柄だ。トランプ大統領こそ最大の地政学的リスクなどと言われたものだが、それでもアメリカの政治と言えども組織で動くものだし、意識的なサボタージュもあってトランプ大統領の意図通りに動かなかったことも暴露されており、楽観してきた。ツイッターで何を喚こうが、その言動が周囲の神経をどう逆なでしようが、大統領の評価はその事績で判断すべきであるという正論もよくわかる。が、今後、大統領周辺から「大人」がいなくなって、そのプロセスにおいては、報道される通り、益々トランプ劇場が賑わうような気がしてならない。お隣・韓国の情勢と併せて、同盟側における不安要因でざわつく年の瀬である。。
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皇室御写真集

2018-12-26 00:11:17 | 日々の生活
 米国では最後の良識とも言えるマティス国防長官の辞任表明があり(しかも来年2月末の退任時期を前倒し、1月1日付でパトリック・シャナハン国防副長官が国防長官代行に就任する見込み)、お隣・韓国海軍の駆逐艦による海上自衛隊P1哨戒機への火器管制レーダー照射事件があり、同盟関係が不穏な事態に揺れているが、言いたいことはぐっと堪えて、昨日に続けて今日もクリスマスに免じて穏やかなテーマを続けたい。
 公の仕事をしているある知人から、年末の挨拶とともに来年のカレンダーを頂いた。「皇室御写真集」と銘打った卓上式(上の写真)と壁掛け式のカレンダーで、制作者の名前はどこにもない。その筋でのみ配られているものと思われる。来年と言えば改元の年で、興味津々、開けて見ると、表紙には「平成31年・元年・2019」とある。1/2月はご一家の集合写真、3/4月は天皇・皇后両陛下お揃いの写真、5/6月は皇太子・雅子妃両殿下お揃いの写真、以後、天皇・皇后両陛下は登場しない・・・まさに改元の年のカレンダーだ。
 折しも23日、天皇陛下は85歳の誕生日を迎えられ、恐らく最後となる記者会見と、最後となる誕生日一般参賀が行われた。記者会見では、感極まって、何度か声を震わせておられたのが、涙を誘った。とりわけ次の一文はじ~んと胸に迫るものがあった。

 「(前略)天皇としての旅を終えようとしている今、私はこれまで、象徴としての私の立場を受け入れ、私を支え続けてくれた多くの国民に衷心より感謝するとともに、自らも国民の一人であった皇后が、私の人生の旅に加わり、60年という長い年月、皇室と国民の双方への献身を、真心を持って果たしてきたことを、心から労(ねぎら)いたく思います(後略)」

 私たちにとって皇室は必ずしも近くない。とりわけ戦後世代の私たちには、正直なところ馴染みが薄い。しかし、少なくとも私は控え目ながら、皇室伝統(谷沢永一さんに倣って、左翼用語の「天皇制」とは呼ばない)は、世界広しと言えども唯一無二の歴史的存在であり、日本の精神文化の柱だと思っているが、合理主義を絵に描いたような(笑)ある知人から、皇室の必要性など全く感じられないと面と向かって言われて、唖然としたことがある。文化というものの何たるか(言葉は悪いが、生活実感からすれば無駄とも言えることにも価値がある)を知らない奴だ(苦笑)。
 かつて森喜朗元首相の「神の国」発言が物議を醸したことがあったが、この齢になってみると、ユーラシア大陸から少し離れた島国で、2000年(神話上は3000年)になんなんとする系図が断絶せずに続いているのは奇跡だと思うし、ハンチントン教授に言われずとも、一国(と言うか一つの島)で独自の文明圏を構成しているのは、韓国を含む中華圏とは明らかに異質であるという自覚からも明らかであろう。故・渡部昇一さんがある本で次の様なエピソードを披露しておられた。

 「(前略)何年か前に、私は曽野綾子さんと伊勢神宮に参拝したことがある。曽野さんはバチカンから勲章を授けられた立派なカトリック信者であり、私もそのはしくれだが、違和感はなかった。この島国を作ったという伝承が残り、そのカミの子孫が「国民統合の象徴」と憲法に記されて現存している国に生まれ、その住人であるなら、その皇室のご先祖を祀った社に心から敬意を払う行為をするのに、なんの躊躇があろうか(後略)」

 日本が神道の国であること、そして皇室の位置づけ、また(キリスト教や仏教などの)宗教との関係を語って(甚だ言葉不足ではあるものの)、私なんぞはなんとなく妙に納得してしまうのである(笑)。日本国憲法には「国民統合の象徴」と記されているが、何もGHQに言われたからそう記したのではなく、昔からそうだった。織田信長は恐らくその禁忌に触れたから暗殺されたのだろう。天皇陛下の次の言葉には、「国民統合の象徴」としての慎ましやかな思いが込められていて、その真摯な姿勢の(文字通りの)「有り難さ」には頭が下がるのである。

 「(前略)私は即位以来、日本国憲法の下で象徴と位置付けられた天皇の望ましい在り方を求めながらその務めを行い、今日までを過ごしてきました。譲位の日を迎えるまで、引き続きその在り方を求めながら、日々の務めを行っていきたいと思います(後略)」

 事実上、移民を認めるような法案が通り、日本らしさが失われるのではないかとの懸念の声があがるが、東日本大震災やさまざまな災害で見せてきた日本人の気高さが維持される限り、杞憂だろうと思う。世界標準からはかなり外れた(!?)不思議な国民だが、この民度の高さは失いたくないものだと、「皇室御写真集」を見てつらつら思うのだった。
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東京五輪効果?

2018-12-24 22:30:38 | スポーツ・芸能好き
 国内の大会で世界チャンピオンが勝てないとは、何というハイレベルの争いだろう。
 フィギュアスケートの全日本選手権では、2週間前のグランプリ・ファイナルで優勝した紀平梨花が、フリーで自己最高得点を叩き出してトップに立ったが、SPの出遅れを挽回できず、2位に終わった。優勝したのは坂本花織で、SP、フリーともに2位と手堅くまとめて逆転優勝し、グランプリ・ファイナルで4位に終わった雪辱を果たした。表彰台で、お互いの花束の匂いを確認し合う写真が掲載されていて、切磋琢磨し合うライバルながら普通の女の子に戻った姿がなんとも愛らしくて微笑ましかった。
 レスリングの全日本選手権・女子57キロ級では、リオデジャネイロ五輪63キロ級金メダリストで、今年の世界選手権59キロ級でも優勝した川井梨紗子が、残り10秒で、五輪4連覇の伊調馨に逆転負けを喫した。川井は妹とともに東京五輪を目指すために階級を下げて、伊調は本格的に練習を再開したのが今年4月で、コーチによれば技術も筋力も7割と、お互いにハンディを背負っての対戦だったが、一次リーグ初戦で敗れて再戦となった伊調の勝利への執念と格闘家としての本能が僅かに勝ったようだ。7割の筋力と言っても、筋力が落ちて痩せているから余計にシャープに見えるのか、太腿や二の腕はとても女性のそれとは思えないほど逞しい(!)。
 伝統的に柔道は海外より国内で勝つのが難しいと言われてきたが、他にも卓球やバドミントンも国内での競争が熾烈になった。なんでもかんでもというわけには行かないが、体力より技術力が活かせる競技で、海外転戦して場馴れすることで、世界に伍することが出来る競技が増えて来たのは、東京五輪効果だろうか。私のようなミーハーなスポーツ好きには頼もしくて見応えがあって嬉しい。
 上の写真は、先週、外出した折りに撮った東京タワー。クリスマスツリーにはちょっと明る過ぎながら・・・。
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習近平の自業自得

2018-12-20 01:28:08 | 時事放談
 昨日、鄧小平氏が「改革開放」を始めてから40年を迎えたそうだ。ところがここ数年、逆行する動き、所謂「国進民退」が顕著になってきた。市場の活力を生かす「市場経済」ではなく、「中国の特色ある社会主義」という形容詞がつく「市場経済」として、「党」や「政府」の存在感が増しているため、起業家やシンクタンクからは変化を求める声があがっているようだ。実のところ、中国の内部からよりも外部から、より大きな圧力がかかっている。
 今月はじめ、アルゼンチンで習近平国家主席とトランプ大統領がとりあえずの貿易戦争「一時休戦」(と報じられているが私にはどうもそうは思えない)の握手をしていた頃、カナダでアメリカの要請を受けて中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)副会長兼最高財務責任者(CFO)孟晩舟女史が逮捕された。トランプ大統領のしたたかな変幻自在ぶり(とあるメディアが呼んでいたが、予測不能といった一見突き放した言い回しより余程トランプ大統領らしい掴みどころのなさが表われているように思う 笑)には畏れ入る(苦笑)。早速、中国の王毅外相は、「中国国民の正当な権益を侵害するいじめのような行為に対し、中国は絶対に座視しない。全力で中国国民の合法的な権利を守る」と吠えて、カナダ人二人(先ほどのニュースによると三人目も)を拘束する報復措置に出た。これは報復もさることながら、中国人民に対して弱腰と見られないための言い訳のようにも映る。
 というのも、中国の核心的利益の第一が共産党による統治にあるのはよく知られた事実だからだ。コワイモノ知らずの中国共産党でも、何が一番コワイかと言って、人民の反乱こそコワイものはないと言われる(のは、中国四千年の歴史を振り返れば分かる)。しかし中国では、西欧や日本などの民主主義国のように選挙制度を通して被治者の負託を受けるといった政治プロセスがないため、共産党の統治を正当化する必要に迫られる。共産党こそが抗日を戦い抜いて国家の独立を果たしたという捏造の歴史のプロパガンダを流し続け、実生活においては共産党の指導のもとで人民の生活を豊かにする経済成長を確保しようと躍起になるのは、そのためだ。ところが最近の若者ときたら(田舎はともかく都会では)テレビの抗日ドラマは見なくなったし、経済成長の方もちょっと怪しくなってきた・・・先進国と新興国の間に挟まれて、所謂中所得国の罠に陥っているのだ。この罠を超克するための鍵は、安い労働力をテコにした「世界の工場」を脱して、付加価値を付けていくことだとされており、そのために先端技術の国産化を目指すプログラム「中国製造2025」を立ち上げ、産業の高度化を図ってきた。
 ここまでならば、中国の意図は理解できなくもない。これら一連の動きは、よくよく見れば必ずしもアメリカの覇権を脅かすことを直接、狙ったわけではなく、飽くまであの手この手で中国共産党による統治を延命させようと企図するものだと言えるかも知れない。しかしその実現の仕方には大いに問題がある。
 「中国製造2025」を立ち上げたのはいいが、中国人民は技術を磨き上げる、育てるといった悠長なことはそもそも苦手で、国内で投資する外資に対して技術移転(技術開示)を要求し、あるいは手っとり早く技術(ひいては技術をもつ企業)をカネで買い、それが叶わなければ企業スパイやサイバー攻撃を辞さずに技術を盗もうとする民族性だ。数日前の産経Webにこんなエピソードが掲載されていた。

(引用)
 香港の骨董街の店をのぞいてみると、秦、漢時代と称する置物が所狭しとばかり並んでいる。値は1万円以下で安い。店のオヤジさんに「こんな値段で出るはずはない。偽物だよね」と話しかけると、「そうだよ。でもね、中国ではね、コピーはいつの世もある。漢の時代のオリジナルが、宋、明、清、さらに現代というふうに繰り返しコピーされてきたのさ。偽物の偽物というわけだね」と。要するに偽物づくりは中国の伝統文化なのである。ハイテクの窃盗やサイバー攻撃や技術提供の強要をやめるよう強く抗議しても、その伝統の上に立つ共産党政権や組織自体が知財権侵害に手を染め、指令し、実行している。
(引用おわり)

 2008年のリーマン・ショックのときに、4兆元の公共投資により世界の金融危機を救ったのは自分たちだと増長して、鄧小平以来の「韜光養晦」の国是をかなぐり捨て、周辺国に対して大国然と振る舞い始めたのが良くなかったのかも知れない。一帯一路や南シナ海への海洋進出によって、新植民地主義とも呼ばれる中国の悪行ぶりや軍事拡張が世界中に知れ渡ってしまった。国内の社会的安定を守らんがために、情報統制・社会統制を強める法制化を進め、民主主義国とは異なる権威主義的な国家のありようが浮き彫りになってきた。キャッシュレス決済は全て国営銀行経由となることで、全ての決済情報が政府(共産党)に把握されることになった。主要都市のあちらこちらに張り巡らされた監視カメラは、人民の行動を追い続ける。外資も含む企業への関与が強まり、定款で共産党支部を設置することが義務付けられ、経営の重要事項決定に共産党が関与する懸念が強まった。如何なる組織であれ個人であれ、政府(共産党)への協力が義務づけられる、一種の国家総動員の体制まで出来上がってしまった。そして今年3月の全人代で、国家主席の任期を取り払って終身としたことは、国家ぐるみの収奪体制である国家資本主義が強まりこそすれ、後戻りすることはなく、アメリカの長年の関与政策が失敗だったことを認めさせる最後の一押しとなった。結果としてアメリカの覇権を脅かしていることには変わりないと受け止められても仕方ない状況にある。アンフェアは許さないのが、アメリカの民族性だ。輸出規制や投資規制を盾に立ちはだかったのが、ここ半年ほどの米中摩擦の真相だ。
 冒頭に登場した華為技術などの中国製通信機器については、何等かの形でバックドアが設けられて政府・軍や産業界の機密情報が抜かれているとの懸念があり、所謂ファイブ・アイズという、第二次大戦以来、機密情報を共有する米・英・豪・NZ・加のほか、日本などの同盟国による基幹インフラの調達から排除されることになった。真に懸念されるのは、いざというときに通信が遮断され、軍組織が無力化されることだろう。さらにイランに供給されて、同国内の反体制派などの監視に活用されてきたとの疑惑もある。ロイター通信によれば、華為技術や中興通訊(ZTE)は、イラン企業に対し、携帯電話の通話者の居場所を特定できるシステムや、携帯電話を盗聴しあるいはネット上の通信情報を収集できるシステムを供給し、イランの反体制派などの監視強化を支援した可能性があるという。余り報道されていないが、アフリカや中東やアジアの発展途上国で格安スマホがばらまかれることで、期せずして貧しい人々がISILなどのテロリストとコミュニケートする道が開かれていることも一部で問題視されているようだ。
 川島真・東大教授によれば、中国に対する米国の厳しい対応は、一部には、トランプ大統領の気まぐれで中間選挙までだろうと予想されていたが、今やこのような対中姿勢は党派を超えたものとなっており、この点で中国は見誤ったという。一方で中国も、今年に入ってから新たに何か悪いことをしたわけでもなく、またアメリカ内部でもこの厳しい姿勢の意味について脱エゲージメント、あるいはエンゲージの継続などで大きく割れており、中国側としては何をしたら米国が収まるのかつかみきれていないともいう。そうした中で、株価や人民元が下落するといった悪影響があり、対外協力を伴う一帯一路への反発や、トランプへの対応を誤ったとして習近平への批判がなされているという。ブログ・タイトルを習近平の自業自得としたのは、このあたりを皮肉ってみたものだ。
 こうした状況は、産経Webが言うように、第一ラウンド:貿易戦争、第二ラウンド:ハイテク戦争、第三ラウンド:金融戦争の可能性も・・・と徐々にエスカレートしているのではなく、そもそも貿易摩擦の背景にハイテク摩擦があり、さらにその背後に覇権の意思が隠されていると見るべきだろう。今から30年前、1980年代後半の日米摩擦に似た様相を呈して来たようだ。日本の後を追う中国は日本の歴史に学んでいるというが、日本が経験したような経済の停滞を招くことなく、そのプロセスの中で日本が痛みを伴う構造改革を通して些かの課題を解決したように、中国も課題解決のための改革を実行し、平和的・互恵的な台頭とすることで、米中摩擦をマネージ出来るだろうか。米中双方と密接な利害をもつ日本だからこそ出来ることがいろいろあるように思うのだが。
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羽織・袴姿のノーベル賞

2018-12-16 15:15:09 | 日々の生活
 またしても寄り道をしてしまう。10日に行われた今年のノーベル医学・生理学賞授賞式に出席された本庶佑・京都大学特別教授は、持参した自前の黒紋付き羽織・袴姿で登場し、カール16世グスタフ国王からメダルと賞状を受け取られた。和装で授賞式に臨んだのは1968年文学賞の川端康成さん以来、半世紀ぶりだそうだ。私にもそのときの写真(新聞記事)の記憶は鮮明で、日本的な美意識を極めた川端さんならではと思ったものだ。対照的に自然科学の分野では日本人でもモーニング姿が一般的だが、本庶教授は「日本で研究してきた」との思いを込めたといい、いかにも研究者としての姿勢そのままの(勝手な想像だが普段の生活でもその筋を通していそうな)厳しい顔立ちの本庶教授は、凛として、さながら古武士然としていて、とてもお似合いで、感動した。なお、ノーベル博物館の喫茶店の椅子の裏にサインする恒例行事でも、漢字で署名され(それ自体は珍しくも何ともないが)、日付は平成表記も併記された。平成最後の受賞者となることを意識されていたかどうかは分からないが、ここにも日本人としての矜持を感じる。
 今や、手術、放射線、抗がん剤に次ぐ「第四のがん治療法」として期待される免疫治療薬「オプジーボ」の開発のきっかけとなった、免疫のブレーキ役として働くタンパク質PD-1は、平成4年に物質が分かり、薬として市場に出たのが26年だから、それまでに22年もの歳月を重ねたことになる。本庶教授のように結果を出した研究もあれば、モノにならずに消えて行った研究も数多いことだろう。「獲得免疫の驚くべき幸運」と題した受賞記念講演では、「いろいろな偶然があり、非常に運が良かった」と控え目に振り返っておられたのは、真実でありご本人の実感だろうが、しかしそれでも、「生命現象に対する深い洞察、科学者としてのずば抜けたセンス、患者の治療に生かしたいという強い思いがあったからこそ、成功につながった」(産経Web)という評価には、諸手を挙げて賛成する。
 「定説を覆す研究でなければ科学は進歩しない」「教科書に書いてあることは全部正しいと思ったら、それでおしまいだ」「研究者の人生はエゴイスティック」と語り、研究の厳しさを垣間見させるが、受賞記念講演では、研究の歩みを紹介するスライドに、次々と共同研究者らの名前や写真を登場させ、「紹介しきれないほどの仲間に出会った。ありがとう」と笑みを浮かべて感謝の言葉で締め括ったという。研究者が人生を賭けてよかったと思えるように、若い研究者をサポートするため、ノーベル賞の賞金は京大が設立した「本庶佑有志基金」に寄付する意向だそうで、人格的にも素晴らしい。研究する上で大切にしていることを「6つのC」として表現され、「好奇心」「勇気」「挑戦」「集中」「継続」「確信」を挙げておられるのは、本庶教授の人生を想像させて味わい深い(私も、爪の垢でも煎じて飲ませてもらわなければならない!)。
 講演後に「日本に帰ったら温泉に行きたい」と漏らされたそうだが、日本人ならではの実感として共感する。下馬評に上がっていたとはいえ、受賞が決まった10月1日からの二ヶ月余りは怒涛のような日々だったことだろう。二ヶ月と言わず、研究の人生をゆっくり休めて頂ければと切に願う。
 以下は余談になる。
 スウェーデン(平和賞はノルウェーだが)ではノーベル賞について「神聖で、誇りに感じているイベント」と市民からも受け止められているそうだ。毎年、授賞式と晩餐会の様子は8時間近くもテレビで生中継されるらしい。西欧の国々は、一国では経済で世界を牽引するとか政治で世界をリードするということはもはや難しくなったが(だからこそEUとして纏まったのだが)、国際規範の制定(たとえば最近ではGDPRのような個人情報保護もそうだし、環境や人権もそう)や国際世論の形成においては、近代の歴史において先進国として経験して来たが故の一日の長がある。ノーベル賞もまさにそうで、世界中から、物理学、化学、生理学・医学、文学、および平和(経済学はノーベルの遺言にはなく、ノーベル財団によるとノーベル賞ではないらしい)の領域で顕著な功績を残した人物に贈られ、一国あるいは西欧圏にとどまるものではない。だからこそ、何を今さらとは思いつつも、後発国あるいはアジアの国として、日本人の受賞は晴れがましい思いに囚われる。平和賞あたりは政治的な思惑も取り沙汰されるが、世界への貢献として、スウェーデンにはその高い権威と伝統を守って頂きたいと思う。
 そのノーベル賞のメダルを模して、創設者アルフレド・ノーベルの横顔が浮かび上がる金色の紙で包まれたチョコレートが販売されているらしい。直径約5.5センチで本物(約6.5センチ)よりやや小ぶりだが、1枚15スウェーデンクローナ(約195円)と、お土産には実にお手頃だ。その証拠に、2008年物理学賞の益川敏英教授は600枚、12年医学・生理学賞の山中伸弥教授は1000枚、そして今年の本庶教授に至っては1500枚も“爆買い”したと、産経Webが報じている。スウェーデン人はこの点ではなかなか商売もうまい(笑)。
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新女王・紀平梨花

2018-12-11 22:40:03 | スポーツ・芸能好き
 次は順当に中国の習近平ネタにしようと思っていたが、急遽、号外。フィギュアスケートのGPファイナルで初出場・初優勝を果たした紀平梨花が凱旋帰国した。日本人のGPファイナル優勝は真央ちゃん以来5年振り、GPデビューシーズンでのファイナル制覇も真央ちゃん以来13年振り、という快挙である。
 「世の中には難なく壁を越えられる人がいる。とてつもなく大きな壁で、一流と言われる人でも、もがき苦しむところを、あっさりとこなしてしまう。そんなことをしみじみ感じさせてくれた」のが大谷翔平選手だと、つい先日ブログに書いたばかりだったが、彼女もそんな凄さ、と言うより彼女の場合は軽やかさを感じさせる。海外で知られるようになったのは、ほんの2年前の中学2年のときで、ジュニアGPシリーズ第5戦のフリーで、トリプルアクセルに史上7人目の成功、トリプルジャンプ8回に女子史上初の成功で、優勝したそうだ。そして昨年12月のジュニアGPファイナル・フリーでは、ISU公式大会で史上初となる「トリプル・アクセル~トリプル・トウループ」を成功させたという。
 確かに彼女の強さはジャンプの技術のようで、真央ちゃんに憧れて習得した大技は、伊藤みどりさんによると「紀平さんは軽やか。難しいのに簡単に跳んでいるように見える。いまどきの回転軸の作り方で、効率のいい跳び方をマスターしている」ということだ。ジャンプばかりでなく、その他の要素でも、フリーではスピン、ステップともにレベル4を獲得しているし、見たところ身長154センチとは思えないくらい手足がすらっとしていて見映えが良く、大人っぽい繊細な演技ができる。パトリック・チャンは「今回の女子の中で、リカ(梨花)のスケーティングの巧さは抜き出ていた。彼女のスケーティングは緩急をきちんとつけている。強弱が滑りで表現できる質の高いスケートだった」と絶賛したらしいし、荒川静香や真央ちゃんのコーチも務めたタチアナ・タラソワも目を見張り、「とても美しいプログラム、とても美しい技の連続」と感嘆したのに続き、実況が「彼女は鼻で呼吸している、全然疲れていない感じがする」と語ったことにも同調したらしい。それほど、彼女は幼少時から運動神経が抜群で、体力にも自信があるようだ。
 しかし今回彼女が見せた強さの中で光るのは、ミスをリカバリーできる冷静さだろう(というのは後で知ったのだが)。フリーの冒頭、得点源となるはずだった「トリプル・アクセル~トリプル・トウループ」は回転が足りずに着氷時に手をついて、ダウングレードの「単独トリプル・アクセル」になって大きく得点を落としてしまうと、その後の演技構成を変更し、直後の「トリプル・アクセル」に「ダブル・トウループ」をつけて2連続ジャンプにした上、「トリプル・ルッツ~ダブル・トウループ」は「トリプル・ルッツ~トリプル・トウループ」に難度を上げて、冒頭で失った点を可能な限り取り戻したのだそうだ。
 しかも、ジャンプでふんわり軽やかに舞うように、取材でもふんわりとした関西弁を喋る普通の女の子っぽいというから、是非、その声を聞いてみたいものだ・・・大阪出身の私は大阪弁を喋る女の子には弱い(笑)。素朴で素直な性格はメディアやファンの受けも良いらしいから、真央ちゃん二世の(と言わず真央ちゃんを超える)人気と活躍を期待したい(まだ成長期で体形が変わるだろうから調整が大変だろうけど)。
 上の写真は、先週、通りがかった日比谷シティ隣のデコレーション。早いもので今年もあと三週間を切った。
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文在寅の八方美人

2018-12-09 14:06:06 | 時事放談
 元・徴用工や元・挺身隊を巡る訴訟で、韓国の最高裁が10月30日に新日鉄住金に、11月29日に三菱重工に、それぞれ賠償を命じる確定判決を言い渡して、日韓関係はもはや風前の灯のような心許ない状況に陥ってしまった。
 神戸大学の木村幹教授によると、徴用工問題は、慰安婦問題と違って、必ずしも左派的な組織(慰安婦問題で言うところの挺対協のような)の動きというわけではなく、むしろ当事者の力が大きいらしい。しかも元・徴用工は、元・慰安婦と違って、自ら進んで日本統治に協力した者として親日派に分類されがちで、時に補償を受ける権利をも否定された歴史があるため、韓国政府が右派にせよ左派にせよ、その不誠実な姿勢に対して根強い不満を抱いているという。そのため、韓国政府は、徴用工問題で日本に挑戦しようとする状態にはなく、むしろ元・徴用工の反発をなんとか抑え込み、落としどころをどこに見出すべきか苦慮しているのではないかと、専門家らしい冷静な分析をされていた。
 この徴用工問題に関して、文在寅大統領は反日というわけではなく、単に関心が低いだけだと解説する専門家もいる。まあ、そうかも知れない。そうすると問題は、文在寅大統領の八方美人的な姿勢にあるように思われる。あの微笑を(と言うより、ニヤついた顔を、私自身はどうしても好きになれないのだが)思い出せば分かるように、誰にも良い顔を見せようとして、余り上手く行っているようには思えない。国内にあっては国民生活第一を公約に掲げ、雇用拡大や賃上げや格差解消など(バラマキだの大衆迎合だのと非難されつつ)約束したのはいいが、実際の最低賃金引上げは中小企業や個人経営者を圧迫するため中途半端に終わり、雇用や投資は一向に改善しないから国民の失望を招いて政権支持率は下がるばかりだ。北朝鮮に対しては、そんな国内のテイタラクから目を逸らせようと(あるいは北朝鮮を経済活性化の起爆剤にしようと)、朝鮮戦争の終戦宣言と南北融和と経済協力を呼びかけるなどして前のめりで、欧米主要国にも北朝鮮・制裁緩和の口添えをして、依然、非核化の兆しは見えないものだから、欧州諸国からは相手にされず、米国からは(北朝鮮のスポークスマン、日本流に言うと使いっ走りかと)却って不信感を招く始末だ。逆に、米国からは、非核化こそ朝鮮半島の経済的繁栄と永続的平和の実現に向けた唯一の道であることを北朝鮮に確実に理解させるべく、北朝鮮制裁を厳格に履行していくことが重要であるとクギを刺されてしまった。そして日本には未来志向を唱えながら、徴用工問題や慰安婦不問題で過去に拘わり続け、日本国政府だけでなく日本国民からも不信感を招いている。
 更に徴用工問題は、北朝鮮問題と連動している疑いもあるから、ややこしくなる。最近、北朝鮮は、慰安婦20万人、強制連行数十万人などと言いがかりを始めた。1965年の日韓基本条約の日朝版成立を睨み、日朝間の問題を大きくしようとしているやに見える。韓国の政界にスパイが入り込み策動しているのではないかと、日韓の外交筋は警戒しているらしいし、結果として、北朝鮮を最重視する民族派の文在寅大統領にとってプライオリティが低い日本に、様々な問題のシワ寄せが来る算段となる。
 安全保障関連のあるシンポジウムで、仮に米国経済が好調を持続し、金利が上がり続けると、いずれ韓国などの新興国から資金が引き揚げられ、韓国は深刻な金融危機に陥り、それでも日本国政府は心情的(国民感情的)には助けたくないだろうが、日本が助けなければ韓国は中国に近づくことになりかねず、安全保障上、厄介なことになる・・・といった議論があった。
 かつて吉田茂・元首相は「一国の政治形態は、その民族の性格およびその歴史の産物である」と喝破されていた。ブログで韓国を取り上げると、決まって結論は、韓国は困った国である、というところに落ち着いてしまうのは、何も今に始まった話ではなく、福沢諭吉さん(あるいは陸奥宗光さん)以来の課題なのだ。何しろ日本は地理的に見ると朝鮮半島という「渡り廊下」の先にある「奥座敷」であって、大陸情勢に無関心ではいられず、とりわけ「渡り廊下」がグラついていては困るのだ。
 上の写真は最近の東京タワー。お色直し中のよう。スカイツリーと違って、武骨でレトロな佇まいは、いつ見ても飽きない。
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トランプのマッチポンプ

2018-12-04 22:27:41 | 時事放談
 それにしてもトランプ大統領は、相変わらず品がないこと嘆かわしいが、なかなかしぶとい。中間選挙でも、想定通りで、必ずしも負けたとは言えなかった。今の米・中の確執もそうだ。
 関税引き上げによる「貿易戦争」は表面上の話で、その実態は「技術冷戦」と言われ、実際にその点では多くの国や企業が、よくぞ言ってくれたと、陰で拍手喝采しているのではないだろうか。なにしろ誰もが、14億の中国市場を失いたくないばかりに、強く言えなかったのである。8月13日のアメリカの国防権限法に見られるように、こと対中圧力に関しては与党も野党もなく挙国一致だとは、以前、ブログにも書いたが、10月4日のペンス副大統領によるハドソン研究所での演説は、まさにアメリカ各界がもつ対中幻滅、対中不満をぶちまけたオンパレードだった。多くの人がさまざまなところに思い当たり、共感したことだろう。アメリカの13の植民地が今から242年前の1776年に独立を宣言したとき、イギリス国王の悪行をさんざんあげつらっていたのに似て、思わず苦笑してしまった。勿論、当時のイギリスと今の中国では立場が全く違うのだけれども。
 そして、ここでもトランプ大統領のポジション取りは優れていると思う。中国を非難するのはペンス副大統領に任せて、自分は、いや習近平国家主席とは個人的にウマが合うんだとかなんとかウマイこと言っておだてて、90日の猶予(25%への関税引き上げの延期で、中国・全人代の直前に期限が来るという絶妙のタイミング)を与えるという、一見、中国に妥協したかのように見せかけて、まんまと不公正慣行是正の宿題を与えた。そして、交渉の責任者には、穏健派とされるクドロー国家経済会議委員長でもなければムニューシン財務長官でもなく、対中強硬派で鳴らすライトハイザー米通商代表部代表を据えた。これじゃあ如何にもマッチポンプなのだが、中国の実態がそうなのだから、どうしようもない。北朝鮮の金正恩委員長に対するのと同じで、ボールは相手側にある。
 習近平国家主席の表情が冴えないのは、トランプ大統領の術中にすっかり嵌ってしまって抜き差しならない状況にあることを示しているように思える・・・のは私の気のせいだろうか。
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