所謂「爆買い」を裏側から、つまり中国側から眺めてみる。
中国では豊かになるにつれて海外旅行も空前のブームになっているそうで、中国紙・経済参考報によると、海外旅行者数は日本の総人口並みの1億2000万人に達し、消費額は1940億ドル(約23兆円)に及ぶそうだ。日本人の海外旅行者数がここ10年、年1700万~1800万人で頭打ちで、海外旅行費用の平均24万円を掛け合わせると消費額は約4兆円になることからすると、日・中の総人口比と経済的な豊かさを比較しても、感覚的に中国人の海外旅行好きなのが察せられる。一方、日本を訪問した中国人は、2011~13年は1%台半ばで推移していたが、昨年は4%を越えたらしい(日本の統計でも昨年499万人の中国人が訪日)が、感覚的にはまだ少ないように思う。
中国では海外旅行での消費もブームで、一人当たりの消費金額もうなぎ上りらしい。2011年までは1000ドル前後で推移していたが、その後急上昇し、昨年は1600ドル(19万円強)を越える勢いなのだそうだ。一方、日本の統計で、中国人が日本で使った消費金額1兆4174億円を499万人で割ると約28万円となり、単純比較になってしまうが、中国人旅行者が日本で積極的に購買行動していることが分かる。
先の経済参考報は、空前の海外旅行と消費ブームの背景として、以下の要因をあげている。
(1)中国製品への信頼性が低く、これが逆に海外での消費を刺激している
(2)中国では売買時のマージン(差額利益)が高いが、海外では割安と感じている
(3)中国では製品の品ぞろえが不十分
そのため、日用品から高級品まで、幅広い分野で海外市場への需要が急拡大しているという。それにしても、中国は、中国人の海外旅行での消費金額が、中国を訪れる外国人の中国内消費金額を上回る、世界的にみても稀有な国らしい。後発の経済発展で俄かに大金を手にした成金がカネにあかせて海外で買い漁る・・・といったイメージか。
かつてソフトブレーンを創業し、42歳で経営から引退して生活の拠点を北京に移した宋文洲さんによると、確かに中国の海外旅行ブームは2010年あたりから始まり、「日中関係の緊張が和らぐにつれて、もともと日本にも行ってみたかった人たちが、それまでたまっていたストレスを発散するかのように、2014年から日本に行き始めた結果、日本で『爆買い』が起こった」と解説する。
ジャーナリストで中国ウォッチャーの中島恵さんも、「爆買い」は、「円安・元高や中国人の生活水準の向上など、複数の要因がタイミングよく重なったことによって2年ほど前から起きた自然発生的な現象」で、「こうした要因にともなって、廉価で高品質な日本製品を欲しがる中間層が増えたこと、従来は厳しかった中国人に対するビザ発給が緩和されたこと、中国でのSNSの発達なども『爆買い』を加熱させる要因」だと説明する。そして、中国経済が多少悪くなろうが、「そもそも『爆買い』に来ているのは中間層かそれよりもう少し上の層で、余剰の資金で来日しているのであって、株安がすぐに懐具合を直撃するような人々とは直接関係がない」し、もはや「単純な買い物だけに終わらず、その形態や中身を少しずつ変えながら、『爆買い』はまだ続く」と分析している。
中島恵さんによると、中国人の訪日モチベーション・アップに貢献しているのは中国のネット上にあふれる日本情報ということだ。人口13億7000万人の中国で、実に7億5000万人がスマホを利用していると言われ、スマホは中国人の日常生活と切っても切り離せない存在になっているという。特に微信ウェイシン(WeChatとも呼ばれる中国版LINE)という中国独自SNS上に、知人や企業などから発信されるさまざまな日本情報があり、SNSの存在なくして、中国人は日本に来られないと言っても過言ではないらしい。
日本の薬や化粧品を研究する台湾人の専門家も、中国や台湾からの旅行客はネット上の口コミを決め手に買い物をしていると言う。「旅の前に、買った人の評価をネット上で読んで参考にして買い物リストを作り、日本に来てからも日本人がその商品を本当に買っているかどうか注目している」ということだ。
そんな「爆買い」の4割は「代理購入」と言われ、友人や親戚の頼みに応じるばかりでなく、ネット販売に出品する業者の依頼を受けて大量に買い付けを行うこともあり、そうなれば一種の「密輸」である。いずれにしても、日本の商品の「安全」「安心」で「健康的」な品質へのニーズが高いことのあらわれであるとともに、経済参考報が挙げた消費ブームの要因の中にもやんわりと指摘されているように、中国の流通構造への不信や反発のあらわれでもある。一説によれば、「代理購入」による高級ブランド品の持ち込み金額は、中国国内のブランド品の売上の半分近くにまで膨らんでいるようであり、流通改革のきっかけにもなり得るかも知れない。またSNSを通して、日本のトイレはキレイ、日本のタクシーは礼儀正しく対応が丁寧、といった日本の文化までもが情報として拡散し、中国内でも「良いレストランかどうかは『トイレ』をみれば分かる」などと口コミサイトで囁かれて、トイレの美化に努めるレストランが出て来たり、日本的なサービスを取り入れるタクシー業者も出て来たりしているらしいのである。いやはや、中国共産党の統治の行方はいざ知らず、中国人のもつパワーが横溢して、中国社会は確実に変わりつつあるのを感じざるを得ないのである。
中国では豊かになるにつれて海外旅行も空前のブームになっているそうで、中国紙・経済参考報によると、海外旅行者数は日本の総人口並みの1億2000万人に達し、消費額は1940億ドル(約23兆円)に及ぶそうだ。日本人の海外旅行者数がここ10年、年1700万~1800万人で頭打ちで、海外旅行費用の平均24万円を掛け合わせると消費額は約4兆円になることからすると、日・中の総人口比と経済的な豊かさを比較しても、感覚的に中国人の海外旅行好きなのが察せられる。一方、日本を訪問した中国人は、2011~13年は1%台半ばで推移していたが、昨年は4%を越えたらしい(日本の統計でも昨年499万人の中国人が訪日)が、感覚的にはまだ少ないように思う。
中国では海外旅行での消費もブームで、一人当たりの消費金額もうなぎ上りらしい。2011年までは1000ドル前後で推移していたが、その後急上昇し、昨年は1600ドル(19万円強)を越える勢いなのだそうだ。一方、日本の統計で、中国人が日本で使った消費金額1兆4174億円を499万人で割ると約28万円となり、単純比較になってしまうが、中国人旅行者が日本で積極的に購買行動していることが分かる。
先の経済参考報は、空前の海外旅行と消費ブームの背景として、以下の要因をあげている。
(1)中国製品への信頼性が低く、これが逆に海外での消費を刺激している
(2)中国では売買時のマージン(差額利益)が高いが、海外では割安と感じている
(3)中国では製品の品ぞろえが不十分
そのため、日用品から高級品まで、幅広い分野で海外市場への需要が急拡大しているという。それにしても、中国は、中国人の海外旅行での消費金額が、中国を訪れる外国人の中国内消費金額を上回る、世界的にみても稀有な国らしい。後発の経済発展で俄かに大金を手にした成金がカネにあかせて海外で買い漁る・・・といったイメージか。
かつてソフトブレーンを創業し、42歳で経営から引退して生活の拠点を北京に移した宋文洲さんによると、確かに中国の海外旅行ブームは2010年あたりから始まり、「日中関係の緊張が和らぐにつれて、もともと日本にも行ってみたかった人たちが、それまでたまっていたストレスを発散するかのように、2014年から日本に行き始めた結果、日本で『爆買い』が起こった」と解説する。
ジャーナリストで中国ウォッチャーの中島恵さんも、「爆買い」は、「円安・元高や中国人の生活水準の向上など、複数の要因がタイミングよく重なったことによって2年ほど前から起きた自然発生的な現象」で、「こうした要因にともなって、廉価で高品質な日本製品を欲しがる中間層が増えたこと、従来は厳しかった中国人に対するビザ発給が緩和されたこと、中国でのSNSの発達なども『爆買い』を加熱させる要因」だと説明する。そして、中国経済が多少悪くなろうが、「そもそも『爆買い』に来ているのは中間層かそれよりもう少し上の層で、余剰の資金で来日しているのであって、株安がすぐに懐具合を直撃するような人々とは直接関係がない」し、もはや「単純な買い物だけに終わらず、その形態や中身を少しずつ変えながら、『爆買い』はまだ続く」と分析している。
中島恵さんによると、中国人の訪日モチベーション・アップに貢献しているのは中国のネット上にあふれる日本情報ということだ。人口13億7000万人の中国で、実に7億5000万人がスマホを利用していると言われ、スマホは中国人の日常生活と切っても切り離せない存在になっているという。特に微信ウェイシン(WeChatとも呼ばれる中国版LINE)という中国独自SNS上に、知人や企業などから発信されるさまざまな日本情報があり、SNSの存在なくして、中国人は日本に来られないと言っても過言ではないらしい。
日本の薬や化粧品を研究する台湾人の専門家も、中国や台湾からの旅行客はネット上の口コミを決め手に買い物をしていると言う。「旅の前に、買った人の評価をネット上で読んで参考にして買い物リストを作り、日本に来てからも日本人がその商品を本当に買っているかどうか注目している」ということだ。
そんな「爆買い」の4割は「代理購入」と言われ、友人や親戚の頼みに応じるばかりでなく、ネット販売に出品する業者の依頼を受けて大量に買い付けを行うこともあり、そうなれば一種の「密輸」である。いずれにしても、日本の商品の「安全」「安心」で「健康的」な品質へのニーズが高いことのあらわれであるとともに、経済参考報が挙げた消費ブームの要因の中にもやんわりと指摘されているように、中国の流通構造への不信や反発のあらわれでもある。一説によれば、「代理購入」による高級ブランド品の持ち込み金額は、中国国内のブランド品の売上の半分近くにまで膨らんでいるようであり、流通改革のきっかけにもなり得るかも知れない。またSNSを通して、日本のトイレはキレイ、日本のタクシーは礼儀正しく対応が丁寧、といった日本の文化までもが情報として拡散し、中国内でも「良いレストランかどうかは『トイレ』をみれば分かる」などと口コミサイトで囁かれて、トイレの美化に努めるレストランが出て来たり、日本的なサービスを取り入れるタクシー業者も出て来たりしているらしいのである。いやはや、中国共産党の統治の行方はいざ知らず、中国人のもつパワーが横溢して、中国社会は確実に変わりつつあるのを感じざるを得ないのである。