風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

今年のイチロー

2014-09-30 00:41:14 | スポーツ・芸能好き
 イチローは、今季最終戦となるレッドソックス戦で今季二度目の「1番・ライト」で先発し、3打数1安打2打点と活躍し、今季の安打数を102まで伸ばしました。こうしてメジャー移籍から14年連続、日米通算では21年連続のシーズン100安打を達成し、日本の王さんの記録に並びました。さらに、メジャー通算3000本安打に対して残り156本まで迫っており、年々出場機会が減る中で、ファンとしては是非とも達成して欲しいと思いますが、本人は至って冷静で、「間違いなく、そこにたどり着きたいですが、記録のためにプレーするわけではありませんし、僕が野球を続ける理由はそこではありません」と、相変わらず素っ気ない。「あと何年現役でプレーできる自信はあるのか?」との問いに対しても、「難しい質問ですね。そんなこと考えていませんから。すごくコンディションがいいので、考えもしませんね」と、これまた相変わらず飄々と語って、イチローらしい。
 それでは第三者の目に、イチローの今季、そして来季はどう映っているのか。
 来季の去就が未定の選手として、MLB公式サイトの特集にイチローも登場しているそうです。開幕前の時点では、カルロス・ベルトラン、ジャコビー・エルズベリーらを補強した影響で5番手の外野手という位置付けだっただけに、「イチローは開幕時に明確な役割なしでスタートしたが、ヤンキースで143試合に出場し、打率は2割8分4厘を記録。堅実な守備と巧みな走塁を披露した。彼のオールスターの日々は終わりを告げたかもしれないが、彼はいまだにメジャーリーグにおいても生産性の高い選手であり続ける」と、走攻守に渡る高いパフォーマンスを披露し、自分の力で出場機会を勝ち取った今季の活躍を評価し、来季も現役としてプレーし得ると論じていますが、「ニューヨークでの彼の時間は終焉を迎えたように思える」と、契約満了となるヤンキース残留には否定的な見解を示しているそうです。
 確かに、かつて年間200安打以上、打率3割超えが当たり前だった頃からすれば、衰えが目立ちますが、今季、メジャーの試合に出場した40歳以上の選手7人、うち野手5人(ジアンビ、イバニエス、アブレイユ、ジータ―と、いずれ劣らぬ名選手ばかり)の中で、イチローの記録は頭抜けています。
 今年4月、ESPNは、イチローと、今季限りで引退するジーターとの、どちらが選手として優れているかを検証する記事を掲載、HP上でアンケートも実施し、軍配は僅差でイチローに上がりました。また、ESPNは、田中マー君が活躍したことを受けて、「史上最高のルーキー」と題する特集記事を掲載し、メジャー史上に残るルーキーたちの中から、イチローの名前を真っ先に挙げました。また、毎年メジャー球団の全監督アンケートを取り、走攻守様々な部門の選手ランキングを発表している野球専門誌「ベースボール・アメリカ」は、2000年以降の各部門のトップ1に輝いた票数を集計し、「2000年以降の最も驚嘆すべき最高の能力賞トップ10」として発表した中で、イチローを最高選手に選出しました。イチローと同時代に生まれ合わせた幸せを思いますが、過去の物語ではなく、もう少し現役で活躍するイチローを見ていたいと切に思います。確実にそのときが近づいているにせよ・・・
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今年の巨人

2014-09-27 19:58:07 | スポーツ・芸能好き
 昨日、巨人が、球団創設80周年の節目のシーズンに、7試合を残してリーグ優勝を決めました。物心ついた頃にはONがいて、惰性で巨人ファンを続けていますので、嬉しいには違いないのですが、腑に落ちない・・・と言うのは変ですが、振り返ると、主力選手が不振で投打がかみ合わず、シーズン中に二度もコーチの配置転換が行なわれるなど、危機的なチーム状況に陥りながら、接戦や延長戦をなんとかものにし、なんとなく勝ちを続けたシーズンでした。このあたりを数字で追ってみます。
 なにしろ規定打数に達した3割バッターがおらず、昨晩の時点で、リーグ打率13位の長野は0.297、坂本は17位の0.278、村田は25位の0.252、阿部は27位の0.246という体たらくで、チーム打率はリーグ最下位の0.256でした。防御率こそリーグトップ2.36の菅野を擁し、チームでも辛うじてトップの3.62を誇りますが、上位5チームで大差があるわけではありません。シーズンを通して活躍したのは一時離脱した菅野くらいで、杉内はぴりっとせず、内海や澤村は9月になってようやく復帰し、救援陣も守護神と呼べるような選手がおらず不安定で、救援陣の防御率は4.08と、昨年の2.57を大きく下回りました。
 このあたりをリーグ5位の中日と比べると、今年の巨人の数字には表れない「勝負強さ」の不思議を思わざるを得ません。打率は巨人0.256に対して中日0.257、防御率は巨人3.62に対して中日3.72、それで巨人79勝57敗に対して中日64勝73敗と、15.5ゲームもの差がついてしまいました。ひとつには、同じ打率でも、巨人の本塁打137に対して中日84、巨人の盗塁98(成功率はリーグトップの79%)に対して中日74と、得点力に差がありましたし、巨人はチャンスで連打し得点を稼ぐシーンもよくあったように思います。また、平均打率は変わらなくても、調子が良い選手をとっかえひっかえ使いまわしながら、なんとか勝ちを拾って行く采配の違い、あるいはそのベースとなる選手層の厚さの違いがあったことをも思わせます。実際、今年は不動の4番がおらず、阿部(52試合)、村田(44試合)、セペダ(18試合)、アンダーソン(14試合)、長野(6試合)、高橋由(2試合)、ロペス(1試合)と7人もの選手が入れ替わり務めましたし、先発オーダーは137試合で106通りに達して「猫の目打線」と評した人もいました。山崎武司氏は、原監督が「打線が”線”としてつながるように常々考えていた」と評価し、「選手の立場を考えると、厳しい采配だったと思う」とも語っています。
 去年のような絶対的な強さがなく、今年の戦いぶりには「巨人らしさがない」という人もいるのですが、中日一筋16年、今年、一転して巨人に転入した井端弘和選手が、巨人というチームに所属した印象を次のように語っていて、私が子供心に好ましく思った40年来の巨人らしさが期せずして感じられるのが、なんとも不思議ですが嬉しくもありました。

(引用)
 巨人を倒すために野球をやってきた僕が、中に入って改めて感じたのは「巨人は大事な試合で必ず勝つ」ということです。意外にも、一喜一憂せず打ってもロッカーに帰れば冷静になる。負けてもすぐに「明日また頑張ろう」と切り替わる。「1年間同じ気持ちで戦える、大人のチームだな」と感じました。
 ことしは特に接戦に強かった印象があります。交流戦では金子(オリックス)や則本(楽天)に苦しめられたけど、耐えて、しのいで、ワンチャンスをものにした。あのころから「接戦に持ち込めば勝てるんじゃないか」というのがチームに浸透したように思います。今ではむしろ、接戦を楽しんでいるイメージすらあります。
(引用おわり)

 日本シリーズ最終戦で敗れた昨年の無念を晴らし、今年は、交流戦とペナントレースに続き、クライマックスシリーズと日本シリーズにも勝って完全優勝を遂げて欲しいと、小学生の野球少年の心のままの私は念じております。
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ポスト・モダニズムの迷妄

2014-09-21 00:04:41 | 時事放談
 最近、「国家」の存在をクローズアップさせる事案が続いてます。
 ロシアが、まさに「あっ」という間に、クリミアを一方的に併合してしまう事態が起こりました。意外なことに思われるかも知れませんが、ロシアは、これまで冷戦後の世界で、グルジア紛争にせよコソボ紛争にせよ「現状維持」派で、むしろアメリカをはじめとする西側諸国の方こそ「現状変更」の約束違反をしてきたのでした。今回、ロシアは、ウクライナがロシアの影響下を離れて西側に組み込まれる事態を許さないことを示すために、初めて実力行使による「現状変更」の挙に出たというのが真相で、このあたり、シカゴ大学のミアシャイマー教授は、NATOやEUや西側諸国がウクライナに対してどちらかを選ばせようとした(結果としてNATO拡大を図ろうとした)動きの方を批判しています。
 混乱する中東に突如として現れたイスラム国も、その一つでしょう。今、述べたウクライナの内戦や、イスラエルとハマスの戦闘も、すっかり霞んでしまいました。それどころではないといったところで、東ウクライナでは、欧米諸国が非難してきたロシアの仲裁により停戦合意が成立したほどです。スンニ派以外の異教徒を排撃するこのイスラム国に対して、アメリカはイラクに続きシリアでの空爆も決め、イギリスもフランスも軍事介することにし、ドイツも軍事介入しないものの、イスラム国の攻撃対象になっているクルド族に武器を供与することを決めました。この地では、民主化など夢のまた夢という事態が明らかになって、なお、シリアのアサド政権を叩く事態は止まなかったのですが、シリア政府軍が戦っている相手は実はイスラム国であり、そのイスラム国に既にシリア国土の三分の一を掌握されているとは、何たる皮肉でしょう。
 そして、300年の時を経て、スコットランドの独立是非を問う住民投票が実施されました。自らの運命を自らが決めるというのは、確かに甘い蜜のような夢でしたが、経済的には自立し得ないという現実問題の前に、萎んでしまいました。
 冷戦後の世界は、フランシス・フクシマ氏が「歴史のおわり」で見たように、イデオロギー闘争こそ終焉しましたが、その先にあったのは平和で退屈な世界ではなく、ハンチントン氏が「文明の衝突」で予想した世界に近く、ナショナリズムが勃興する19世紀的な世界に逆戻りしたような様相です。主権国家を超えるべき時代が到来したと予測する「ポスト近代」の考え方は、幻想であることがはっきりしました。ポスト近代論者は、経済のグローバル化が進展する冷戦後の世界は、国家の発展度や成熟度に基づいて「プレ近代」「近代(国民国家)」「ポスト近代」の三つに分類し、その最も進歩した形態として「ポスト近代」を捉えましたが、「これらが混在し、また衝突するような世界では、『ポスト近代』の原理のみでは対応できないのが冷酷な現実であることが露呈した」(袴田茂樹氏、鈴木美勝氏など)のです。
 田中明彦氏は、同じように三分類しながら、「プレ近代」を「混沌圏」(アフリカや旧ソ連諸国)と呼び、「ポスト近代」を「新中世圏」(欧米や日本などのOECD加盟国)と呼んで、「『近代的』な世界システムがグローバリゼーションの進展によって変質しつつあり、多様な主体が複雑な関係を取り結ぶような世界システムへと変化しつつある」と指摘しました(Wikipedia)。「新中世圏」とは、イデオロギー的には自由主義的・民主制と市場経済が普遍主義的イデオロギーとなり、政治的には国連が権威を象徴しアメリカが権力を代表する「権威と権力の分離」が生じ、「近代以前のヨーロッパ中世に似た世界」を登場させている意ですが、それはともかく、世界の脅威は、戦争を当然の手段とする近代を脱していない「近代圏」の国々や、不安定な「混沌圏」の地域から生まれてくると見ました。
 冷戦時代の二分法が、シンプルで安定していて、懐かしくなるほどです。東アジアには、「近代圏」に分類するのが憚られるような、凡そ欧米的価値観と相容れない大国が、まさに勃興しつつあります。100年どころか300年の歴史の揺り戻し・・・と言うよりも、そもそもこれこそが世界そのものなのだと、冷や水を浴びせられているような感覚です。日本は、江戸という、長らく世界から閉ざされた太平の世の中から、いきなり近代の国家間競争の世界へと引き摺り出され、一見、成功したようでいて、結果として敗戦という大いなる挫折を味わいました。そしてまた、戦後という、国家観が退行した、いわば知的な鎖国状態を続け、アメリカの庇護のもとで(ある意味で幸運な)平和を謳歌しながら経済運営に邁進し、一見、成功したかに見えながら、再び大いなる挫折を味わっている・・・というのが現実ではないでしょうか。それもこれも、日本は、近代以前の世界の混沌の歴史を実感として知らないからではないかと思うのですが、余程、地政学的に賢く立ち回らなければ、日本民族の存続すらも危うい、本当に難しい舵取りを迫られている時代を生きているのだと、最近、つらつら思います。
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全米オープン

2014-09-14 15:28:22 | スポーツ・芸能好き
 錦織圭選手が、昨日、凱旋帰国しました。
 先ごろ行われたテニスの全米オープンで、アジア男子として初めてグランドスラム・ファイナルに進出するという、優勝こそ逃しましたが、快挙を成し遂げました。大会前に右足親指を手術し、1回戦当日まで出場するかどうか決め兼ねていたといいますから、多くを期待しないで虚心に迎えたのが良かったのか、4回戦で世界ランキング6位のミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を深夜の4時間19分の激戦の末に退けたのに続き、準々決勝も同4位のスタニスラス・ワウリンカ(スイス)を炎天下の4時間15分に及ぶ激闘の末に制し、米メディアから「マラソン・マン」と称賛され、準決勝では同1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)にも競り勝ちました。決勝の相手は世界ランキングでは16位と格下のマリン・チリッチ(クロアチア)で、今大会、世界ランク3位のロジャー・フェデラー(スイス)や同7位のトマーシュ・ベルディハ(チェコ)を破って勢いに乗るとは言え、過去の対戦成績は5勝2敗、今季に限れば2勝0敗と負けなしで、もしや・・・と多くの日本人を期待させたものでした。しかし、勝負事はやってみないと分からないものです。そしてグランドスラム決勝戦という晴れの舞台ともなれば、魔物が棲むものです。それまでの粘り強さはウソのように、3-6、3-6、3-6のストレート負け。試合後のインタビューで「フェデラーの方がやりやすかったかもしれない」と率直に答えていたのが印象的でした。
 「相手がチリッチで、得意ではないですけれど何回も勝っている相手でした。なので、より考える部分は増えたと思いますし、勝てるというのが少し見えたのもあまりよくなかったし、集中できなかった理由の一つでもあると思います。ここまで硬くなったのは久しぶりで、試合に入り込めなかったですね。(4回戦の)ラオニッチだったり、(準々決勝の)ワウリンカの時は、2セット目から立て直していつものプレーに持ってくることができましたけれど、今日はほとんど最後まで、なかなか感覚がつかめないまま終わってしまいました」と。
 松岡修造氏は、このあたりを、「今大会を戦ってきた力の20パーセントしか出せなかったのではないか」と話していました。「返球がどんどん真ん中に寄ってしまったのは、緊張感からくるもの」で、「遊び心を持ちながらプレーする錦織にとって力みが一番の敵」だったと。
 それにしても、常にケガの不安に苛まれていた過去と比べると、7試合をよく戦い抜いたものだと思います。本人も、体力面では大いに自信をもったようですし、同時に、強い相手に2週間も挑み続けたという意味では、精神面でも逞しくなったことを、本人も実感していたようでした。
 業界用語で“ネタ枯れ”(視聴率の取れる、あるいは販売部数の伸びそうな大きなニュースがない)と呼ばれる時期で、デング熱の不安に晒される中で、錦織選手の活躍はとりわけ注目されました。中には、国籍こそ日本人ですが、フロリダのIMGアカデミーがはぐくんだ天才で、人生の半分はアメリカなのに、日本人の活躍と呼ぶのは甚だオカシイと水を差す人もいました。確かにその通りで、冒頭、「アジア男子として初めてグランドスラム・ファイナルに進出」と書きましたが、錦織の今のコーチで、両親ともに台湾系移民でアメリカ生まれのマイケル・チャンは、175cmと小柄ながらも全米を含むグランドスラム決勝に4回も進出し、17歳のときには全仏オープンに優勝していますので、「アジア男子初」という国籍によるメディア報道は、実情にはそぐわない。しかし、体格面で劣る日本人には難しいと思われてきたスポーツ領域で、やりようによっては日本人でも活躍し得るという事実を見せつけた快挙には変わりなく、大いに勇気づけられます。
 9月8日付の最新の世界ランキングでは、優勝したチリッチは9位、錦織は再びトップテン入りし自己最高の8位につけました。上位陣のポイントと比べるとまだまだと思わせますが、「ビッグ4」と呼ばれた強豪がグランドスラム決勝に進めなかったのは2005年以来なのだそうで、新旧交代の機運に乗じて、伸び盛りの彼の今後に期待したいと思います。
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横浜マラソンへの道(1)

2014-09-08 23:41:04 | スポーツ・芸能好き
 今日、横浜マラソンの抽選結果発表があり、無事、当選通知が届きました。東京マラソンにも申し込んでいて発表待ちの状況ですが、10倍の競争率を勝ち抜けるとは思えませんので、今シーズンのマラソン生活を綴るブログ・タイトルは「横浜マラソンへの道」としました。
 知人の一人も当選したので、やはりエントリー費1万5千円は高過ぎて(通常4~5千円、東京マラソンですら1万円)、敬遠されたのかと思いきや、別の知人の一人は落選したので、競争率を調べたところ、3.4倍でした。微妙な倍率です(但し一般枠での話)。東京マラソンが既に8回を数え、すっかり定着した上、昨年、WMM(ワールド・マラソン・メジャーズ)、所謂「世界六大マラソン」に選ばれるなど知名度抜群であることとの差は、意外に大きいものです(と言っても、東京マラソンも2007年の第1回大会は3.1倍だったのですが)。募集人数は、東京マラソン3万人に対して、横浜マラソン2万3千人とやや小ぶりで、応募人数で比べると、30万人対10万人弱と、差は歴然です。
 当選したので、あらためて大会公式HPをつらつら眺めていると、フルマラソンとしての記念すべき第1回が来年3月に開催されるわけですが、当初は20キロとして始まり、その後、第12回からハーフ・マラソン大会となった、33年間も続く(それなりに)歴史ある大会であることが分かりました。そこで思うところあって、さらにWikipediaを調べてみると、ハーフの制限時間は117分と他の大会より短く、仮装での走行は禁止されており、市民大会でありながら競技性が高いのが特徴だった・・・とあるのを見て、ぼんやりした記憶が蘇りました。今から13年前に参加したことがあったのです。
 当時、最後にフル・マラソンを(アメリカで)走ってから1年半、通勤がきつい日本に戻ったこともあって、走ることをすっかり止めていたのですが、何を思ったか、直前のほんの一ヶ月、ちょろちょろ練習しただけで、無謀にも参加し、いくつもの関門をぎりぎりで通過する屈辱の走りで、記憶の彼方に置き去りにしてきたのでした。あらためて調べて見ると、2時間2分と、今、振り返ると、ぎりぎり30代の若さがあったればこそ達成できた数字で、50代の今、この記録を出そうとすれば、数ヶ月、みっちり走り込まなければならないレベルです。
 というわけで、期せずして雪辱戦となります。この夏は、7~8月の二ヶ月間に10キロを4回走っただけで(因みに昨年はゼロだったので、大きな進歩ですが)、暑さには勝てず、ずぼらに過ごしてしまいましたが、3度目のシーズンで、基礎体力は格段に向上しています。目標のレースが決まり、ぼちぼち今シーズンを始動します。
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安倍改造内閣

2014-09-06 21:27:11 | 時事放談
 安倍改造内閣の支持率は、日経新聞によると60%(8月下旬比+11%ポイント)、読売新聞によると64%(8月上旬比+13%ポイント)に上昇したそうです。読売新聞は、女性の閣僚への積極登用や主要閣僚、党役員人事で重厚な布陣としたことへの評価が支持率を大きく押し上げたと見ています。
 女性閣僚5人というのは、2001年4月の小泉内閣発足時と並んで過去最多となり、成長戦略の柱に掲げた「女性の活用」を率先した形です。それだけでなく、慰安婦問題が誤報に起因することがはっきりしたところで、中・韓のプロパガンダもあって日本で女性の社会進出が遅れている、ひいては女性蔑視の国との世界の疑念に変わるところがなさそうであることから、安倍さんにとっては、中・韓のプロパガンダに対抗し、世界の見方を変えるための戦略的な意味合いをもつ、象徴的な人事だとも言えます。
 因みに、米WSJ紙は、主要ポストに幾人かの改革論者を起用した首相の決定は前向きだと言いながら、コラムのタイトルは「ささやかな内閣改造」として、今回の変化は、約束した「第三の矢」、つまり構造改革が近く果敢に実施されると示唆するには十分ではないと、批判的だったようです。
 中国では、日本の対中投資が大幅に減るなど、風向きが予想を超えて変わりつつあることを懸念してか、あるいはもはや反日を掲げる必要もないくらい、党内を抑える自信が芽生えたせいか、習近平国家主席は3日の「抗日戦争勝利記念日」の演説で、歴史問題で日本を批判しつつも、両国の関係修復に前向きな言及をしました。そんな中国の外務省報道局長は4日の定例会見で、自民党の幹事長と総務会長に「親中派」とされる谷垣禎一氏と二階俊博氏がそれぞれ就任したことを問われ、「日本の内政問題」と断りつつ、「もし、両氏の就任が安倍政権の対中関係に影響を及ぼすなら、積極的な影響であることを期待する」と述べたそうです。
 総裁経験者・谷垣氏の党幹事長就任という異例の人事の裏には、11月のAPECに向けて雪解けムードを醸成し、中国も注目するような配慮が、安倍さんの視野に入っていたのかも知れません。実は、日刊紙各紙がノーマークの中、首相と菅官房長官が直談判し、「総裁まで務めた方に失礼を承知でお願いしたい」と熱心に口説いたのは、党内を「財政再建派」「経済成長重視派」に分裂させる芽を早期に摘むことが狙いだったと言われます(Web産経)。消費増税の三党合意を結んだのは当時の総裁・谷垣氏だったからだそうですが、同時に、石破氏による「ポスト安倍」への動きを大幅に鈍らせる効果もあって、それやこれやで、谷垣幹事長人事は、「長期政権を築いた佐藤栄作級」との評価もあがっているようですが、どうでしょうか。
 しかし私にとっての最大の関心は、石破氏の地方創生担当相就任でした。正式要請がない段階で安全保障法制担当相への就任を拒否する意向を示し、幹事長続投の希望をあからさまに語るのは、「人事権者である首相に公然と盾突いたに等しい」などと批判されました。結局、地方創生担当相という新しいポストに落ち着き、地方の人口減少対策や地域活性化に向けた法整備に取りかかるそうですが、期待されます。早くも、今秋の福島、沖縄両県知事選や来春の統一地方選を見据えたバラマキ政策を牽制する声が報じられますが、いい加減、政局ではなく政策を真剣に論じて欲しい。かつて田中元首相が日本列島改造論をぶちあげ、経済成長で生まれた余裕資金を公共事業を通して地方に還流し、日本全土で高速道路網が整備されました。多くの無駄もあったのは、良くも悪くも中央主導で行われた結果でしょう。そして、竹下首相のもと、バブル経済のさなかの1988年から翌89年にかけて各市区町村に地域振興に使える資金1億円を交付した「ふるさと創生一億円事業」も敢行されました。そのまま預金して15年間で6千万円の利子を得た自治体があった一方、映画祭を開催したり、音楽イベントを開催する運営会社を設置したり、日本一長いすべり台を作成したり、村営キャバレーを運営したりした例もあり、私ははっきりと無駄だと思っていましたが、結構、活用されている自治体もあるという話を聞きました。所謂ヒモ付きではなく現場の創意を活かした結果だというわけです(その点では竹下氏を評価すべきかも)。石破氏には、各省庁にまたがる関連事業の一元化と効率化に向けた「政策を束ねる指導力」(菅官房長官)が求められるとされますが、そうした中央省庁の無駄を排し意思統一するとともに、日本において中央と地方の関係はどうあるべきか、各地方はそれぞれにどうあるべきか、議論を促し、日本固有の強さである現場力を引出し、創意工夫によって、各地方が生き生きとするような施策を後押しして欲しい、そして、より根本的・中長期的には、橋下さんを凹ました各種勢力を抑えて、再び地方分権に向かう議論を促して欲しい、と思います。
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香港の受難

2014-09-02 00:41:41 | 時事放談
 以前、このブログで、台湾の「ひまわり学生運動」について触れたことがありました。これは、当時、台湾・馬英九政権のサービス貿易協定締結をはじめとする親中政策、ひいては台湾の中国化への反発だとされています(http://blog.goo.ne.jp/mitakawind/d/20140408)。そして今、香港が騒然とし始めています。
 中国(第12期全人代・常務委)が2017年の香港次期行政長官選挙で民主派の候補を事実上排除する決定をしたことを受け、民主派ら数百人が、昨晩、香港中心部で抗議行動を行い、さらに、ニューヨークで起きた「ウォール街を占拠せよ」にならって、金融街「セントラル(中環)」を大群衆で占拠する抗議行動を9月中にも実行に移す構えを見せているそうです。
 折しも同じ「一国二制度」下にあるマカオで、行政長官選が行われ、親中派が多数を占める選挙委員会によって親中派の現職が再選されました。中国としては、こうして親中派を通じてコントロールしたマカオの行政長官の再選劇を、香港でも再現したい考えのようです。
 これに先立ち、エコノミスト誌7/19~25号は、英国は香港の自由を守るために毅然たる態度をとるべきだとして、今回の香港の民主化運動に対する英国の沈黙を批判したそうです。その中で、最近の動きを追っていますが、英国政府は如何にも弱腰です。

・北京が6月に発表した「香港白書」は、香港の自治はあくまで北京が許容する範囲内のものだとし、さらに、香港の裁判官にも「愛国的であること」、つまり、中国の国益を尊重することを要求した。これは、コモン・ローに基づく香港の英国式システムとは矛盾し、司法の独立を脅かす。
・白書を出した翌週には、李克強首相が英国を公式に訪問し、通常は国家元首の特権である女王との会見を許された(英王室のプロトコルに反する、異例の厚遇である)。中国は、2年前、キャメロン首相がダライ・ラマと会って以来、英国を冷遇してきたが、今回、李は240億ドル相当の取引に調印した。これは、過去を水に流そうという中国側からのシグナルだった。
・今月、英外務省が年2回出す香港報告の最新版が出たが、その中に「香港白書」や北京への批判は一切なかった。

 こうした中国への宥和姿勢は、英国に限ったことではなく、ドイツやフランスをはじめとする欧州諸国も似たり寄ったりであり、今や中国は欧州の取り込みに成功しているとまで言われます。以前、このブログで、東南アジア諸国が、親中(カンボジア、ラオス)と中国離れ(フィリピン、ベトナム、最近はミャンマーも)とその中間(シンガポール、マレーシア、タイ)へと分断されているとする分析を引用したことがありました。アメリカが、サイバー攻撃問題や東アジアでの領有権問題で、中国との間の緊張感を高めていることを考えると、欧米も分断されている状況だと言えます。中国は、10年前に、天安門事件後の武器禁輸措置を解除するようEUに働きかけたことがありましたが、米国の反対により挫折したことがありました。中国の軍事的台頭は、日本にとって(かつ同盟国である米国にとっても)現実的な地政学的脅威ですが、欧州は地理的に離れていることから、伝統的に、武器を世界に拡散する困った存在程度にしか見ていません。
 台湾や香港における中国化の進展は、東アジアの安全保障環境に重大な変化をもたらします。台湾同様、香港の動向も注視したいと思います。
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