風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

今年のプロ野球

2024-09-29 09:53:42 | スポーツ・芸能好き

 残り3試合にしてようやくリーグ制覇へのマジックを1とした巨人が、昨日、4年ぶり39度目優勝を決めた。二軍監督時代は鬼軍曹と言われた阿部慎之助が監督になって、若手へのシフトが必要となる中、のびのびと野球をやらせるために仏の顔に切り替えたなどと言われるが、なかなか波に乗り切れず、さぞ内心の葛藤があったことだろう。広島や阪神と首位攻防を繰り返す中、どうやら優勝が見えて来たのは、9月10日からの二位・広島とのマツダスタジアムでの3連戦に3連勝した時で、分水嶺となった。二年連続Bクラスから見事に復活したことを祝したい。

 今年の巨人は、捕手出身の阿部監督らしく、守りが堅かった。菅野、戸郷、グリフィンの先発投手陣と、船迫、高梨、バルドナード、そして守護神・大勢らの救援陣が、大崩れすることなくシーズンを乗り切った。何より失策の数がリーグで断トツに少なく、結果としてチーム総失点は両リーグを通じて最少である。

 他方、打撃はパッとしなかった。ベテラン坂本にいつものらしさがなく、開幕から固定されなかった3番に、新外国人ヘルナンデスが交流戦から合流した時には光明を見る思いだったが、8月中旬に骨折で離脱してしまった。結果として、主砲・岡本の前後の打力が弱く、岡本一人がマークされ、本塁打、打点ともにヤクルト・村上に次ぐリーグ2位の記録をマークしながら、得点圏打率は長らく低迷し、期待通りの活躍にならなかった印象がある。これは巨人の4番の宿命でもあり、逆に彼が打った時の盛り上がりようは格別で、実際にその試合の勝率は高い。

 そもそも今季は、個別のチーム事情を超えて、セ・パともに投高打低が顕著だった。高校野球では今春から低反発バットが導入され、夏の甲子園でホームランが減少したことが話題になった。プロ野球でも、ホームラン数は昨年より2割程度少なく、今日時点で30本を超えているのはパの山川とセの村上だけ、3割打者はパに一人、セに二人だけである。他方、防御率1点台はパに一人だが、セには5人もいる。

 これに対し広澤克実氏は、投手の球速が年々、上がっており(直近10シーズンで、ストレートの平均球速は141.4kmから146.6kmまで上昇)、打者は速球に対応するため、アオダモよりメイプルやバーチのような軽量バットを使い、飛距離が犠牲になっているのではないかと分析される。選手の声を拾うと、バットの芯に当たると普通に飛ぶのだそうで、軽いバットを選ぶことでスイングスピードは維持できても、遠心力が減少するため数メートル手前に落ちてしまう、という見立てだ。大谷翔平が今季は34.5インチという、昨季より1インチ長いバットに変えてホームランを量産しているのと対照的だ。バットに当たった瞬間に生じる打球の初速を見ても、大谷が180〜190キロを叩き出しているのに対し、日本では村上や岡本でも170キロ台、その他の選手は平均して160キロ台に留まっているらしい。メジャーでも実力が傑出している大谷と比べても仕方ないが、日本の打者がボールの反発係数を充分に活かしきれていないのは明らかだと、広澤氏は言う。

 かつて日本シリーズで、DH制で進化したソフトバンクの投手にセの打者が太刀打ち出来ないことが話題になった。巨人は2019、20年とソフトバンクに2年連続で4タテを食らう屈辱を味わった。その後、セでも投手育成法が進化し、投高打低を招いているのかもしれない。かつて江川卓が一人で9回を投げ切るために緩急をつけ、一発病だとか手抜きだと白い目で見られたような、ある意味で悠長な時代ではもはやなく、投手の分業が進み、中6日で5回を全力投球されれば、大谷翔平のフィジカルを真似るのは難しくても、バッターにも相応の覚悟が問われるのだろう。そのような環境の変化は明らかだ。

 メジャーでは、野球が遅い、退屈といった理由で若者の支持を失ったことから、投球間隔に制限を設けるピッチクロックが導入された。息詰まる投手戦もいいが、良いところで一発が出ないイライラったらありゃしない。投げて、打って、走っての躍動こそがプロ野球の醍醐味である。打者もこのままで留まるはずはなく、何らかの対策を打つことに関しては楽観している。投手と打者がそれぞれに切磋琢磨し、何よりも面白いゲームを魅せてくれることを期待している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

自民党総裁選

2024-09-28 13:15:05 | 時事放談

 昨日の自民党総裁選で、石破茂さんが、五度目の正直で新・総裁に選出された。統一教会との癒着や裏金問題などで、自民党への信頼が大きく揺らぐ中、解散・総選挙を視野に、自民党再生を期する今回のような総裁選で勝利されたのは、石破さんのようなお立場の方にはとても象徴的だったように思う。かつて「自民党をぶっ壊す」と叫んだ小泉純一郎さんに通じるものがあるからだ。もっとも、党内では人気がないと噂される石破さんに支持が集まったことには選挙目当ての自民党議員のあざとさを感じないではないが、そんな政治力学とは言え、私のような庶民には言わば自浄作用が働いたようにも見え、こうしたバランス感覚もまた自民党の強さの表れのように思う。総裁選は党員・党友の間での話だが、石破さんの政治家としての信念は、国民一般の中にも信じる人が多いわけで、期待したいと思う。

 それにしても、異例の選挙選だった。表向き派閥解消されていたとはいえ信じる人はいないのに、その重しが外れて九人も立候補に名乗りをあげる乱戦となり、派閥解消を象徴するものとなった。今回は無理でも次かその次に繋がるようにという、将来の総裁候補に名乗りをあげる意味合いがあったのだろう。案の定、時の経過とともに、本命・石破さん、対抗・小泉進次郎さん、大穴・高市早苗さんという三つ巴に絞られ、候補者が九人も出れば議員票が割れるので過半数獲得は難しく、党員・党友の支持を集める石破さんが一回目の投票ではトップ通過するにしても、二位通過の候補が決選投票で勝つと見られていた。ところが蓋を開けたら、終盤での追い上げを報道されていた高市氏が小泉氏を抑えて二位通過するどころか、議員票でも党員票でもトップという異例の展開である。これで決選投票では高市さんが圧勝すると思っていたら、どんでん返しがあった。裏金議員からの推薦が多く、問題に甘いと見られていることと、立民の代表が、共産党から距離を置く野田佳彦さんに決まったことで、右に寄り過ぎる高市さんでは解散・総選挙で中道票を取りこぼすことが懸念されたのだろう。また、岸田首相は周辺に「高市さんだけは応援できない」と話していたとされ、一回目の投票で他候補に流れていた議員票をより多く拾ったのは石破さんで、僅差ながらも逆転勝利した。決選投票前に各5分、計10分の演説の時間が設けられ、石破さんはここで自身について「私は至らぬ者だ」とし「議員生活38年になる。多くの足らざるところがあり、多くの人々の気持ちを傷つけ、いろいろ嫌な思いをした人が多かったかと思う。自らの至らぬ点を心からおわび申し上げる」と率直に頭を下げる場面があり、党内の不人気を多少は払拭する効果があったかもしれない。

 奇しくも二年前のこの日は安倍晋三元首相の国葬が執り行われた日で、高市さんにとっては、岸田首相誕生に繋がった総裁選で高市さんを推薦してくれた安倍さんに向けた弔合戦のようなところがあった。日本初の女性首相に、ゴール直前、鼻の差で届かなかったが、勉強家で、岸田さんと違って自らの声で主張できる高市さんにも期待している。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中東の混沌

2024-09-27 02:44:42 | 時事放談

 イスラエルとハマス、さらにはレバノンのヒズボラとの争いが激化してきた。イエメンのフーシ派も身構えるし、これらの胴元としてイランが控える。イスラエルにとっては3000年来の生存を賭けた戦いであり、理解できなくもないが、ウクライナ戦争とはまた一味違う相の19世紀的(あるいはそれ以前の)戦争はちょっとやり過ぎで、現実の戦争とは種々の事情によりそういうものかもしれないが、戦線拡大が憂慮される。

 ところで、日本で暗躍するロシア人スパイは、今でも決してスイカやパスモは使わないそうだ。香港民主化運動の学生たちも面倒でも切符を買って移動した。交通系電子マネーでは足がつくからだ。中国で電子マネーが普及するのは、紙幣が汚くて偽造が簡単だからという実用的な理由ばかりでなく、電子化すると監視可能だという国家の意志が働いている(と思う)。そしてハマスも、イスラエルの諜報を掻い潜るためにアナログな手法に頼り、イスラエルをまんまと出し抜いた。スマホは使わずに、時代遅れのポケベルやトランシーバーを使った。

 イスラエルはその上を行った(と、断定は出来ないが)。17日のポケベル一斉爆発では12人が死亡、約2300人が負傷し、翌日のトランシーバー爆発では25人が死亡、600人以上が負傷したと報道された。ポケベルは、台湾メーカーとブランド使用契約を結んだハンガリー企業が製造する過程で高性能爆薬が仕込まれたとされる。トランシーバーは、日本メーカー製と見られるが、正規品とは確認されていない。劇画のような安易なストーリーだが、実際に実現するのは容易ではない。イスラエルの諜報力があってのことだろう。

 このような仕掛けは、油断した兵士(booby:まぬけ)が触れると爆発し殺傷するので、booby trapと呼ばれ、自陣営に侵攻する敵勢力に対し、撤退するに当たって、食料品や兵器など兵士にとっての必需品や貴重品など戦利品になりそうなものの残留物に仕掛けるのが通常らしい。だが、国際法(特定通常兵器使用禁止制限条約)違反で明確なテロ行為になる(山崎文明氏による)。但し、イスラエルも、中国やロシアや北朝鮮も、そしてアメリカも批准していない。毎度、安全保障上のフリーハンドを手放したがらない、協調性のない我が儘な国々だ。

 中東で、イスラエルを巡る角逐はヨーロッパが埋め込んだようなところがあるが、伝統的なイスラム教の宗派を巡る争いもあり、アラブとペルシャという人種を巡る争いもあり、さらにアラブの春が挫折したように、部族社会で国民国家としてなかなか纏まることも出来ず、地域情勢は不安定である。歴史的に西と東と北と南の文明が交差する十字路と呼ばれ、繁栄と混乱を繰り返してきた。

 ヨーロッパはいい。同じ宗教を信じ、陸の国境線を接して人が行き来し、王室や貴族は入り混じった。山や川や半島で分断され、巨大な権力が台頭するのが阻まれてきた(それだけにローマのような帝国を志向するカール大帝やナポレオンのような情念も生んだ)が、歴史的経験を共有し、ほぼ自由・民主主義的で資本主義を奉じる同質的な基盤がある。互いに憎しみ合うことがあっても、それは宗教的・人種的な近親憎悪のようなところがあって、米ソという超大国の冷戦構造下で埋没しないで外部の脅威に対して結束することが出来た。国際連合は、ウェストファリア体制を起源とするヨーロッパの秩序観に立つ世界組織であって、そこでは間違いなく数は力なのである。

 海洋アジアは、その中間的な存在で、EUと対比されるASEANにその性格がよく表れている。EUは、イギリスがいっ時の気の迷いで離脱するほどの超国家的組織であり、加盟国は主権の一部を放棄(譲渡)しているが、ASEANはあくまでも国際組織であって、それぞれの国家は独立し、協力することはあっても互いに干渉することはない。人の流れはあるが、宗教的にも人種的にも分断され、植民地支配を受けた歴史も異なっている。

 石破さんのアジア版NATO構想は、自民党の中で総スカンを喰らっているらしいが、気持ちはよく分かる。しかし残念ながら14億人を擁する中国が巨大過ぎて、束になっても太刀打ちできず、それをよく知る中国は個別交渉・逐次撃破を好み、この地を言わば分断して統治している。

 人の経験はせいぜい50年で、その時々の特殊事情の影響を受ける。私たちは、冷戦という核の恐怖に晒されただけに、その終焉に伴う解放感は一種のユーフォリアを産み、グローバリゼーションが当たり前だという幻想を信じてしまった。地理的・歴史的に育まれた国家行動はそれほど変わることはないということか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

秋の気配

2024-09-25 05:52:54 | 日々の生活

 つい先週まで、帰宅してエアコンをつけて部屋を冷やしてから眠りについていたのがウソのように、一気に秋になった。9月後半なのだから、遅過ぎたと言うべきかもしれない。近年、春と秋が短くなり、この一年を振り返っても、寒い冬が明けると暖かいのを通り越して暑くなり、昨日の今日で、窓を開け放ってタオル一枚で大の字になって寝ていた次の日には窓を閉めて毛布を引っ張り出して包まって寝る始末だ。

 だから実態は秋の気配と言うより本格的な秋の訪れなのだが、夏の祭りのような熱気が冷める微妙な季節に忘れられない楽曲がある。オフコースの『秋の気配』だ。1977年8月5日のリリースで、その時はこのバンドのことをまだよく知らなかった。2年後に『さよなら』が大ヒットし、切ないメロディと伸びのある歌声に惹かれた。大学時代に腰掛け程度に在籍した軽音サークルに、オフコースのコピーバンドがいて、ボーカルは小田和正さんばりに高音の伸びがあって誰をも驚かせたが、私はそれよりもおとなし目の女の子がドラムスをダイナミックに叩く姿に惹かれて、オフコースを聴くようになった。それでもその頃はまだ『秋の気配』に辿り着いていない。

 その後、就職で東京に出て、高校の同窓会があるというので帰省して久しぶりに再会したある女の子が、好きな曲だと言って『秋の気配』を挙げて、歌詞に出てくる「港が見下ろせる小高い公園」をわざわざ訪れたことがあると笑った。なんだ、近くまで来ていたんだ、水くさい。私も行ったことがある港の見える丘公園からは、名前の通りに、貨物船がゆっくりと行き交う、なんでもない港が見えるのだが、彼女は違う風景を見ていたのだろうか。地味な曲だが、ハーモニーとアコースティック・ギターの音色の美しさを極限まで引き出し、移ろいゆく恋心を切なく唄うこの曲に、何故、今まで気がつかなかったのだろう。そのときの彼女の照れ笑いと結びついて、リリースから随分と時を経て、忘れられない曲になった。

 音の記憶は、今もなお鮮明に胸をざわつかせるのだから、不思議だ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中国の心掛けの悪さ

2024-09-23 07:18:31 | 時事放談

 大谷選手の快挙に浮かれているが、忘れてはならないことがある。深圳にある日本人学校近くで、同校に通う男の子(10歳)が男(44歳)に腹部を刺された事件だ。男の子は病院で手術を受けていたが、19日未明に亡くなった。お母さん(中国人)も一緒だったのに、子供を狙うとは卑劣であり、痛ましい。

 事件があった9月18日は満州事変の戦端が開かれた柳条湖事件が起こった日で、反日感情が高まりやすいが、今回の事件との関連は不明のようだ。当局は容疑者の男の身柄を確保し、取り調べを行っているが、動機など詳細な情報は日本側に伝えていない。中国外務省は「これは個別事案で、このような案件はいかなる国でも発生する。中国はこのような不幸な事件が起きたことについて遺憾と心の痛みを表明する」と述べた。遺憾と言いながら「いかなる国でも発生する」とは余計だ。詮索され、あるいは関連づけられるのを鬱陶しがっている様子がよく分かる。つまりは、前科者の偶発的な事件としてお茶を濁そうという魂胆だ。中国共産党の統治に不都合な情報の開示など期待できない。

 この事件について、一部の中国メディアは報じたが、国営や大手メディアはだんまりを決め込んでいる。その記事の最後には「理性的な愛国心とは、歴史と現実の尊重に基づき、客観的かつ冷静な態度で自国を愛し、支持する表現だ。日中関係における個別の事件については、冷静さを保ち、合法的なルートを通じて懸念を表明し、政府の外交努力を支援し、文化交流と市民友好を促進し、両国関係の平和的発展に貢献するべきだ」との一文が添えられているらしい。これ以上の混乱を望まない当局の意志を感じるばかりで、この程度の扱いかと思うとなんだかやり切れない。

 6月にも蘇州で、日本人学校のスクールバスを待っていた日本人の母子が刃物で切り付けられ、かばった中国人女性が亡くなるという痛ましい事件が起きた。ここでも中国外務省は「偶発的な事件」との見解を示しながら、動機や背景など詳細は警察が捜査中として、主管部門に問い合わせるよう促すだけだった。最近の中国の景気低迷は治安の悪化に繋がっているようで、無差別に刃物で切り付ける事件が相次ぐという。それにしても、こうも情報開示が不透明では、現地で生活する駐在員家族はさぞ不安だろう。

 そもそも中国という国は心掛けがよろしくない。中国共産党は抗日戦争(これは単なる二国間の戦争であるばかりではなく、民族革命戦争として中国革命の過程に位置づけられる)を勝利に導いたことに存在意義を置くが、二重の誤りがある。先ず、日本と前線で戦ったのは国民党であって共産党ではない(共産党は背後に隠れて戦力を温存し、後の国共内戦に勝利することになる)。次に、それでもついぞ中国は大日本帝国に勝てず、日本がアメリカに破れて自滅しただけだった。然るに、抗日戦争勝利のプロパガンダにより、憲法上も、歴史教育(=ヘイト教育)上も、抗日抜きには語れず、日中関係を政治問題化している。そのような情報統制下で育った若者たちは、実際に日本を訪れて生の日本人や日本の社会に触れて修正しない限り、「小日本」「日本鬼子」のような差別用語を引き摺り、「愛国無罪」を受け入れ続けることになる。日本人学校を「スパイ養成機関」「現代の租界」などと非難する声も放置されているそうだ。

 こうして、靖国神社のように日本人が神聖だと思う神社仏閣の石柱に「厠所」「軍国主義」などと落書きしSNSに投稿して恥じない中国人が出てくるし、この落書き事件を伝えたNHKのラジオ国際放送で原稿にない「尖閣諸島は中国の領土である」などと不適切な発言をする中国籍スタッフが出てきたりもする。

 昨今の日中関係で懸案とされて、喉に小骨(とは言い切れないほどの骨もある)が刺さったようにぎくしゃくするのは、福島原発の処理水を汚染水と呼んだり、日本の水産物を輸入禁止にしたり、理由を明かすことなく駐在員を拘束したり、査証(ビザ)免除措置を停止したままだったり、尖閣海域に侵入を繰り返したり、挙句は領空侵犯したりと、全て中国共産党側が仕掛けているものだ。これも一種のサラミスライス戦術であって、先に一歩踏み出しておきながら、一歩退くことで和解か譲歩を演出して有り難がられる仕儀にもなりかねない。

 それもこれも、関係性の中で、日本が自重してきたからだろう。靖国参拝問題や従軍慰安婦問題を焚き付けたのは日本のリベラルを自称する左派メディアで、今、それ自体を批判するつもりはないが、そこで図に乗る中国や韓国への対応は弱腰だった。ここまで言ってもやっても日本は遺憾と称するだけで実害はないと、足下を見られているに違いない。かつて米中和解に漕ぎつけて中国を懐柔したニクソン元大統領は後に、フランケンシュタインをつくってしまったのではないかと自省した。日本も、是々非々の対応をせずに不幸な関係を構造化し、中国をのさばらせてしまったことを反省すべきかもしれない。煮ても焼いても食えない相手と付き合うには、故・安倍元総理のような忍耐と多少の人の悪さが必要だろう。日本人には(とりわけ良い顔をしたがるリベラル・メディアには)耐えられないかもしれないが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

Ohtani-sanの「50-50」

2024-09-21 02:31:21 | スポーツ・芸能好き

 米時間19日(日本時間20日)のマーリンズ戦で、大谷翔平選手が自身初の3打席連続HR を含む6打数6安打10打点4得点2盗塁の大暴れで、待望の「50-50(50本塁打&50盗塁)」を達成し、記録を「51-51」まで伸ばした。場所は、昨年のWBCで侍ジャパンが準決勝と決勝を戦い、大谷選手が胴上げ投手となったローンデポ・パークだった。地元ドジャー・スタジアムではなかったが、これも何かの因縁だろうか。

 それにしても、記録を狙う緊張のキの字のカケラも見せなかった。このあたりはイチローにも似て、数字は結果として後からついて来るものでしかなく、あくまで自分が納得する野球が出来るか、勝利に貢献出来るか、が重要のようだ。私のような素人からすれば、それだけで偉大なる境地だ。残り10試合のどこかで畳み掛けるかも知れないと、心の片隅で思わないではなかったが、まさかこんなに早いタイミングで、さっさと方をつけてしまうとは思いも寄らなかった。いつも良い意味で裏切られてしまう、凄い選手だ。

 実力通りの記録づくめで、1試合で5安打以上、複数本塁打&複数盗塁を記録した初めての選手だそうだ。1シーズンで少なくとも1本塁打&1盗塁した試合数を13として、伝説のリッキー・ヘンダーソンが持つ史上最多記録に並んだそうだ。ナショナル・リーグのHR王も間違いなさそうだ。かつては9月に入れば勝負してもらえない場面が多かったものだが、今回は打つことに専念しているから伸び伸びと走って盗塁も多くて、相手投手にしてみれば、勝負を避けたところでスコアリング・ポジションに置くことになるから痛し痒しで、勝負せざるを得ないのかも知れない。これほどHRの機会が多い中で、これほど盗塁が多いというのは、あらためて驚きである。

 私が敬愛する江川卓氏によると、投手目線で打球の角度を見れば、これはセンターフライだと分かるらしいが、それが大谷選手の場合はホームランになるのだそうで、それだけスイング・スピードが速いのだろうと解説される。MLBでは余り内角を攻めなくて、大谷選手のホームランも真ん中やや外寄りが多いらしく、江川氏が得意とするインハイにどう対応するのか、投げてみたいと語っておられた。そう思わせる打者のようだ。

 これでドジャースは今季のポストシーズン進出を決めた。大谷選手はこの日がMLBで865試合目、これはポストシーズンに出場したことがない現役選手、また負傷者リスト(IL)に入っている選手の中で、最多なのだそうだ。大谷選手としては記録よりこちらの方がよほど嬉しかったようだ。世間では個人の記録に湧くが、一人、大谷選手だけが冷静にポストシーズンを見据えているのかもしれない。勝つということ。これこそ野球少年の原点ではないか。大谷選手が記録以上に愛される所以だろうと思う。気が早いが、一人の偉大な野球少年のワールドシリーズでの躍動を今から楽しみにしている。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

トレードマークはweird

2024-09-12 01:10:30 | 時事放談

 米大統領選の討論会があったが、上智大の前嶋和弘教授は、二人の話は「終始全くかみ合わず」、今回の討論会は「大統領選の行方を変えることはなく」、今後の展望については「大接戦になるだろう」と総括された。

 昼のNHKニュースは、ハリス氏から歩み寄って握手し、トランプ氏は討論会中、ハリス氏の顔を見ることがなかったと伝えた。CNNは「トランプ氏のチームと共和党員が司会者を非難し始めている」と伝えた。「司会者はトランプ氏の発言について事実確認をしている一方でハリス氏についてはしておらず、ハリス氏にはより柔らかい質問をしていると主張している」のだそうで、これは「トランプ氏の支持者らが、トランプ氏がこの討論会で『勝利』したと考えていないことの表れ」だと指摘した。確かにいつもの根拠のないハチャメチャな自信満々さが感じられない。

 先週には、トランプ氏とバンス副大統領候補は、民主党候補側から「weird(変な人)」呼ばわりされて、予想以上に感情的に苛立っているとの観測記事もあった。

 そもそも相手にレッテルを貼って喜んでいたのはトランプの方だった。

  • Crooked Hillary(邪悪なヒラリー)
  • Low energy Jeb(低エネルギー・ジェブ)
  • Lying Ted(嘘つきテッド)
  • Sleepy Joe(寝ぼけジョー)
  • Crazy Kamala(クレイジー・カマラ)
  • Laughing Kamala(爆笑カマラ)

 まるで小学生である(微笑)。不動産ビジネスあがりで、価値よりディールを好み、「アプレンティス」なるリアリティ番組で、型破りで独善的で過激で詰めが甘く論理に飛躍があり予測不可能な言動で名を売って、大阪弁で言うところの「いきり」そのものである。「いきってる」というのは「粋がる」「調子にのる」「格好つける」というほどの意味で、ヤンキーのお兄ちゃんが使う以外には主にそのような小学生に与えられる称号で、だいたい周囲から浮いている(微笑)。

 これまで言論空間ではトランプ氏に関してもっともらしく複雑な人格分析が競われて来た。複雑な形容詞なら、本人は褒め言葉と受け止めるかもしれない(そこが「いきり」の本領)が、それに比べて、「weird」は素朴な庶民感覚そのままに、小難しい論理や子供じみた感情は抜きに、何の誤解もなくストレートで、それだけに威力があるのかも知れない。まあ、本人は攻撃好きだが逆に攻撃されることに慣れていないだけかも知れない。

 国取り合戦で言えば、ブルー・ステイト(民主党優位)とレッド・ステイト(共和党優位)を除くスウィング・ステイト(接戦)7州が帰趨を握ると言われる。同様に政策論争で言えば、それぞれの岩盤支持層の間にある無党派層の取込みが焦点だと言われる。ハリス氏個人は、移民政策では急進左派サンダース氏より左寄りの寛容な姿勢を示し、気候変動対策案「グリーン・ディール」の起案者の一人だったが、バイデン政権が推進して来たような、より穏健な政策を主張するのだろう。民主党内では、必ずしもハリス氏を支持していなかったが、トランプ氏に大統領の座を渡すくらいなら、一致団結した方がよい、というような流れが出来たが、この感覚を無党派層にまで広げられるかどうかが鍵になるのだろう。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

経済安全保障の罠

2024-09-07 09:26:00 | 時事放談

 日本製鉄によるUSスチール買収が難航しており、ワシントン・ポストなどはバイデン大統領が中止命令を出す方向で最終調整に入ったと伝えたらしい。悪手だ。

 かつて「鉄は国家なり」と言われたもので、これは日本製鉄の前身・官営八幡製鉄所の火入れ式(1901年)で伊藤博文が述べたものとされる。鉄は、18世紀後半の産業革命以来、船や大砲を造り、海洋国家イギリスの繁栄を支えた。19世紀後半には鉄道を造り、帝国主義全盛の時代の国力の源泉として、大陸国家ドイツの躍進を支えた。昨今、中国による一帯一路がそうだとまでは言わないが、鉄道網は軍の迅速な動員を容易ならしめ、イギリス人で地政学の祖とされるハルフォード・マッキンダーをして、ドイツの台頭を警戒させ、その抑止を唱えさせたほどだった。伊藤博文の50年前に、鉄血宰相の異名を持つビスマルクが議会演説で「国家は血なり、鉄なり」と発言した故事を、伊藤博文も知っていたのだろう。

 そんな鉄だから、アメリカでもUSスチールは名門企業の一つに数えられ、20世紀のアメリカの台頭を支えた。それだけに、昨年末、日本製鉄がUSスチール買収を発表したときには、否応なく時代の流れを感じないわけには行かなかったし、むしろ中国の台頭のもとで遅きに失したと言うべきかもしれない。最近と言わず日経新聞を飾るバズワードは(些か加熱気味ではあるが)AIや半導体であり、国力の源泉も、次の産業革命を牽引するのも、鉄ではなくてデータである。

 アメリカにはそんな郷愁もあり、日鉄によるUSスチール買収は一筋縄では行かないのではないかと、むしろこれが成功すれば快挙だと思っていた。経済合理性からは買収を是とするが、非とする理由は経済安全保障だと言う。これまで大統領令によって取引差止めの判断が下されたのは、実質的に全て中国がらみだったのに、よりによって今回は同盟国・日本が相手である。

 巷間、言われる通り、民主・共和の支持率が拮抗する大統領選を前に政治問題化されてしまったのだろう。労働組合が反対の声を上げると、ポピュリストのトランプ大統領候補も反対の声を上げて、労働者に寄り添う姿勢を見せた。USスチール本社があるのはスウィング・ステート7州の内の一つ、ラストベルトのペンシルベニアである。労組を基盤にする民主党のバイデン大統領も反対しないわけには行かない。

 昨日の日経によれば、選挙期間中より後に交渉した方が有利になるから、中止命令が出る前にCFIUS(対米外国投資委員会)の審査を取り下げる選択肢があるのではないかという識者の声を伝えた。他方で、申請を取り下げた場合、買収の破談に伴う違約金(5億6500万ドル)を日鉄が支払わなければならないという(敵対的ではない交渉事だから何とかなるだろうと思うが)。ジレンマである。が、同盟国相手の経済安全保障問題の先例は将来に禍根を残す。これでは安全保障概念が曖昧だと批判される中国に寄ってしまって、中国から、ほら見たことかと嗤われてしまうではないか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする