風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

真央ちゃん現役続行

2015-05-25 23:30:28 | スポーツ・芸能好き
 週末のニュース解説番組を見ていて、あらためて、真央ちゃんは人気があるなあ・・・と感心させられました。現役続行を表明したのはちょうど一週間前のことで、翌19日、在京の4つのスポーツ紙は一面トップで報じたそうです。「9月復帰へ『突き進む』真央」(スポーツ報知)、「真央4%の挑戦」(日刊スポーツ)、「『100%復帰。もう大丈夫』真央」(スポニチ)、「『試合が恋しくなった』真央復帰します」(東京中日スポーツ)・・・。3月に佐藤コーチに相談し、既に5月から練習を再開しているそうです。遅ればせながらの真央ちゃん賛歌です。
 人気の秘密の第一は、彼女の愛くるしさにあることに異論を唱える人はいないでしょう。不思議なことに「国民的アイドル」とか「隣の真央ちゃん」などと、“軽いノリ”の形容をされることはありませが、誰もが心の中でそう思っていて、それでいて、おいそれと口にできない、ある種の神々しさ!?を感じさせて、人柄そのままの、けれんみのない満面の笑顔を見ていると、ひとしきり幸せな気分に浸ることが出来ます。
 そんな愛くるしい真央ちゃんが、キム・ヨナのように勝ちに行く(まるでそれは売れてナンボのサムスンの携帯のように)でなく、飽くまで高度な技術に挑み続ける(いわば損を覚悟のソニーやシャープのように技術好きの心を揺さぶる)健気さが、日本人の心を打ちます。そのギャップが驚きを通り越して感動を呼び、世界中から愛される所以でしょう。一年前、ソチ・オリンピックで6位に沈んだ失意から3月の世界選手権では一転見事な復活・優勝を遂げたとき、韓国では「浅田選手が優勝できたのはソチ・オリンピック銀メダリストのキム・ヨナが引退して参加しなかったから」だとか「日本での開催のため不正に加点された可能性もある」などと報じられて、日本だけでなくあの中国でも「韓国人には吐き気がする」「みんな韓国人が大嫌い」などと韓国批判でヒートアップしたことを思い出します。今回も韓国では「実力が全然ダメな割りに扱いは大きい」とか「復帰しても実力不足で後悔するだろう」などと心無い書き込みがあったのに対して、海外のネットユーザーは概ね復帰を歓迎しているようです。
 もう一つオマケで、真央ちゃん人気を支えることとして、お年頃なのに浮いた噂!?の一つもないことを挙げることが出来るでしょう。世話しなくて大丈夫かね・・・なんて思わせるところが、オジサン&オバサン心を揺さぶります。
 今回の決断に至った経緯について、真央ちゃんはこう語りました。「休養発表してから1年間、休養してきた。自然と試合が恋しくなり、試合でいい演技ができたときの達成感を感じたいと思ったのも一つの理由。それだけではないが、今は試合に出場できる状態にもっていくために練習している」。実は私も、3月の横浜マラソン以来、ぷっつり走るのを止めて、走りたくてうずうずするほど気持ちが自然に昂ぶるのを待っている状態で、まあ真央ちゃんと比べるなどオコガマシイのですが、その気持ちはよ~く分かるのでした。世界で活躍するスケーターとして、世界女王エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)は18歳でトリプル・アクセルを成功させており、1990年9月25日生まれの真央ちゃんはもうすぐ25歳、一年のブランクもあって、道のりは険しいですが、もうひと花咲かせて欲しいと、心から思います。
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帰国子女の悩み・3(続)

2015-05-20 02:18:37 | 日々の生活
 なんとなく言い足りないので、昨日のブログを補足します。
 かつて同じ時期にマレーシアに駐在していた知人のお子さんは、共に通ったインターナショナル・スクールになかなか馴染めず、片や夏休みに日本に一時帰国したときに体験入学した日本の学校が気に入ったと言っては、このままでいいのかと悩んでいたものでした。このように、海外生活に当たって、日本人学校を選ぶか現地校を選ぶかは、子供の向き・不向き、すわなち性格次第だろうと思います。現地校でもやって行ける性格とは、多少言葉が出来なくても平気な図太さや、なにくそっと頑張れるしぶとさ、変化をストレスと感じることなく前向きに受け止めることが出来る、良い意味での鈍感さ、そして何より異なる環境に順応できる柔軟さや好奇心、といったあたりでしょうか。同様に、帰国後の進路にどのように備えるのかについても、子供の性格次第だろうと思います。振り返れば、私自身、受験勉強が嫌でしょうがなく、高校二年間はクラブ活動に逃げ込み、さすがに高三になって、受験を批判するには受験に負けてはいけないと、割り切って自らを鼓舞し机に向かったものでしたから、海外の教育を経験してしまった私の子供が日本の受験制度を毛嫌いしたからと言って何の不思議もありません。ここでは、好きな事には熱中するけれども、拘束されたり押し付けられたりするのを極度に嫌うわがままや気まま、気紛れでしょうか。必ずしも勤勉ではないというわけではありません。
 数ヶ月前、オーストラリアの研究チームが、「ビッグファイブ」と呼ばれる5つの特性(外向性、情緒不安定性、協調性、勤勉性、経験への開放性)を測定した値と、大学生の成績やテストの点数を比較した結果、成績に最大の影響を及ぼす要因は、「経験への開放性」と「勤勉性」であることが判明したと発表しました(Learning and Individual Differences誌に掲載)。従来の研究でも、「経験への開放性」(=知的好奇心や、新しい情報を得ることにどれほどワクワクするかを示す因子)は、クリエイティブな面での成果を予測する最大の因子であり、また「勤勉性」は、ビッグファイブの中で唯一、常に成功を予測できる因子であることが分かっていたそうですが、今回の研究は、あらためて従来の研究結果を裏付けるもの、ということでした。端的には、学校の成績を予測する場合、従来のテストで測る「知能」よりも、「性格」の方が優れた判断材料になる、あるいは相関が高く相性が良い、ということです。具体的には、単に知能が高いだけの学生よりも、明るくて、いろいろなことに興味をもち、勤勉な学生の方が、成績が良いということであり、学生がどれだけ努力できるか、またその努力をどこに集中させるかが重要になってくる、というわけです。そして研究者の一人は、「人気の脳トレ・アプリで知能を向上できるという証拠ははほとんどない」一方で、「性格は変わるものだし、生徒の勤勉性と開放性を訓練し、彼らの学習能力を向上させている教育者たちもいる」とまで指摘しているそうです。
 「勤勉性」はともかく、「経験への開放性」(ちょっと直訳調ですが)などというのはよく分かる気がしますし、「知能」よりも「性格」という分析には思わず膝を打ちたくなります。親は子供の「性格」をしっかり見極めることが大事であり、「性格」は変わると言っても余り無理しないことだろうと思います。
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帰国子女の悩み・3

2015-05-19 01:06:40 | 日々の生活
 時事放談続きで疲れてしまいましたので、気分を変えて、久しぶりに子供の教育を巡るボヤキです。パート3としたのは、マレーシア&オーストラリアから帰国した当初の2009年9月に学校探しを巡って一度、その半年後の2010年2月に帰国子女入試で気を揉んだ二度目のボヤキに続くもの、という意味です。あれから5年経って、なお、いろいろ思うところがあります。
 帰国子女にもいろいろあって・・・とは以前にも触れました。海外にいても日本人学校に通わせて(つまり外国語教育を受けなくて)も、帰国後、帰国子女として受け入れられる現実があります。そのため、一口に帰国子女と言っても問題は様々で、子供のどの年代をどのような形で海外で過ごすかによって問題の性質は変わってきます。とりわけ帰国後の中・高・大学受験が切実であることは分かり切っていますので、はじめから日本人学校に通わせて、折角の海外経験を諦める・・・なんてご家庭は多いですし、逆に現地校でしっかり現地の勉強をさせて、そのまま海外の教育制度に乗っかるとか、現地校でも日本の勉強を怠らない二刀流を通して、帰国子女入試“制度”を利用して、すんなり日本の社会に復帰する・・・といった理想的なご家庭も多いことでしょう。
 しかし帰国子女は、決して得なばかりでも、また綺麗ごとばかりでもありません。英語の発音がいくら良くても、Brush-upしないと、子供っぽい語彙のままではビジネスで使えない・・・なんてことにもなりかねません。とりわけ最近は帰国子女が増えているにも関わらず、相変わらず受入れ体制が不十分で、帰国子女なりに苦労することが多いものです。
 一般に、子供が例えば園児や小学校低学年で十分に小さければ、現地に適応するのは早いですし、その分、忘れるのも早く、帰国してもすぐに日本の生活に慣れて、問題になりようがなく、良い思い出だったね、と哀しく笑って済ませることになりがちです。上の子がアメリカで生まれて5年間過ごしたときがそうでした。他方、年齢がずっと上がって中学生前後にまでなると、現地に適応するのは容易なことではなく(マレーシアで身近にいたご家族がそうだったのですが)、限られた選択肢の中でやって行かなければならない難しさがあり、さらに年齢が上がると、もはや子供(と母親)は日本に残す(つまりお父ちゃんは単身赴任)というように、予め帰国子女問題の芽が出ないよう摘んでおくケースが多くなります。こうして、これらの中間的な領域で、中途半端になりがちなところが悩ましいことと言えます。
 我が家の場合、上の子は小5~中3夏まで、下の子は小学生の間ずっと、といった微妙なお年頃を、インターナショナル・スクールや現地校で外国語教育を受けて育ちました。こうした柔軟で現地への適応が早いものの、その後の人生に影響を与える大事な時期を海外で過ごす場合は、今、思うともっと慎重に考え対処すべきだったと思います。しかし当時の私は迷うことなくインターや現地校の外国語教育を選び、しかも子供たちが現地にうまく適応してくれたために、日本語の勉強は殆どさせず、自由放任し、却って現地に過剰適応してしまいました。その場合、現地への適応の裏返しで、日本の社会への不適応、いわば感覚のズレを抱えることになります。「お箸を一膳頂けますか」などと、現代の日本人が忘れてしまったような正しい日本語を使いこなす、一種の反動のような帰国子女もいますが、一般には、多かれ少なかれ現地への適応の度合いに応じて、帰国後の日本の社会に馴染めなくて、それがちょっとした文化的なズレ程度であればご愛嬌ですが、根本的に異質な感覚を育ててしまって、問題を深刻にする場合も少なくありません。勿論、子供の性格にもよるのですが、例えば現地で自由裁量を与えられた教師の創意工夫ある授業を当たり前と思ってしまうと、日本の詰め込み式の授業には全く馴染めず、コツコツ積み重ねていくことが苦手で、諦めが早い・・・(必ずしも海外暮らしのせいではないかも知れませんが・・・笑)。そんなわけで、高校は帰国子女枠ですんなり入れたとしても、その後三年以上も日本で暮らせば、もはや大学入試で帰国子女と認定されるケースは少なく、辛うじて認められる限られた枠(例えば上智大学など)に殺到する“狭き門”になるため、日本の勉強をよほど頑張らない限り、困難は避けられません。
 実のところ、上の子のように、小学校高学年から中学二年半くらいまで抜けていると、とりわけ国語や社会だけでなく理科などの教科でも、いかにもあやふやな土台の上に堅牢な建物を積み重ねるのは容易なことではありませんでした。何しろ本人に自覚がないものですから、周囲(私)が気遣うほかありません。我が身を振り返っても、日本の教育制度でうまくやって行くためには、少なくとも中1から高3までの6年間のしっかりした積み重ねは必須です。その点、下の子は、中学1年から日本の学校に戻したので、小学校6年間が丸々抜けて苦労していますが、何とかついて行けているように思います。5歳の差で、問題の質は変わって来ます。
 いずれにしても、子供たちにはとんだ苦労をさせてしまいました。現地に行って、すぐに慣れたとは言え、慣れるまでは大変そうでしたし、帰国したらしたで、なかなか慣れずに戸惑っていて大変そうでした。もっとも、人生は悪い事ばかりではなく、かと言って良い事ばかりでもなく、プラス・マイナス相殺されて、結局、気の持ちよう・・・ということなのでしょう。受験という制度的なところでは、どちらかと言うと性格的に馴染めず、うまく行かなかったとしても、表面的なことに囚われるのではなく、大事なことは素の人間性そのものであり、その点では私自らの選択を信じていますし、また子供たちのPotentialも信じている親馬鹿者で、その後の人生が幸多いことを祈るばかり・・・の私です。
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移民大国・アメリカ

2015-05-16 11:11:26 | 時事放談
 前回、アメリカがキューバに歩み寄ることになった背景を、主に外政面から触れました。内政面でもいろいろ思惑があるようです。
 産経Webは、「フロリダ州をはじめ米国内には、キューバからの亡命者と難民が押し寄せ続けてきた経緯」があり、これは「キューバにおける人権侵害がもたらしたものにほかならず、オバマ大統領には、関係改善を図る中で人権尊重など『体制の変革』を少しでも促す狙いもありそうだ」と書きます。キューバとの関係改善を目指すのであれば、当然のことながら、社会主義国・キューバの体制に多かれ少なかれ変革がもたらされるであろうことは予想されるところです。この文脈では、どちらかと言うと外政面寄りの話と言えますが、アメリカで持ち上がっている移民問題に関連し、オバマ大統領は、今後、増え続けるキューバとはじめとするプエルトリカンを率先してアメリカに移民として受け入れることにより、アメリカ内の「宥和」を測ることを目指しているのではないかとする見方もあります(川上高司氏による)。しかも民主党は、各州でヒスパニック系住民の圧倒的支持を得ていて、移民が増えればそれだけ民主党が有利になることを見込んだ政策であるとも見られているようです(同氏)。共和党が、オバマ政権(民主党)のキューバとの国交正常化交渉に警戒し反対を表明するのは、このあたりも関係しているのかも知れません。
 実際のところ、アメリカの国力の源泉は、増え続ける人口そのもの、しかも、増えているのは主にヒスパニック系で、常に低所得層が流入するという、かつて西欧諸国が中南米やアジア・アフリカで植民地を搾取した構造をアメリカ社会に内在させていること、そして、そんな低所得層がそのままに留まるのではなく、より上位を目指す自由な社会のダイナミズムにあると思っています。
 しかし現実には、そう単純に割り切れるものではなく、全人口に占める白人の比重は低下するばかりであり、10年ほど前のデータでは、白人1.96億人(全体の7割)レベルでしたが、出生率が低く、2050年になっても2.1億人、比率は50%まで下がると予想されています。当然、宗教的に見てもWASPの国ではなくなり、ヒスパニック系が増えれば、ローマカトリック教会(現在28%)が増え、プロテスタント諸派(現在55%)の地位が相対的に下がることもまた容易に想像されます。
 ヨーロッパでも移民問題はホットで、国民国家のありようが揺れています。2050年以降、白人が過半数を割り込むアメリカは、内政的に、とりわけ多文化主義的な社会がどのように変容していくのか、他方、外政的にはどんなカタチをとっていくことになるのか、日本としても他人事ではありません。
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カリブの宝石

2015-05-11 01:39:44 | 時事放談
 前回・前々回と安倍首相の訪米について書きましたが、実は、同時期、岸田外相のキューバ訪問の方が気になりました。日本は国交があるので不思議でも何でもないのですが、長年対立してきたアメリカとキューバが国交正常化に向けて動き始めているときだけに、どんな話が飛び出すか注目されました。一つは、既に2008年に引退していた国家評議会の前議長フィデル・カストロ氏との会談で、核兵器の恐ろしさに関する認識で一致したとのこと。これが主題だったとすると(重要なこととは言え)なんだかなあとも思いますが、健康問題を抱える前議長が親しい左派指導者以外の外国政府要人と会談するのは異例なのだそうで、日本への潜在的な期待は高そうです。もう一つは、現議長で弟のラウル・カストロ氏との会談で、経済関係など二国間関係を強化したいとの表明があったとのこと。このあたりがキューバの本音なのでしょう。
 Newsweek日本版5/5&12号は、そんなキューバの特集を組みました。目を引いたのは、キューバの街で半世紀以上も走り続けるアメ車、今の私たちにとってはクラシック・カーと言うべき、なんともレトロな写真の数々です。フィデル・カストロ氏による革命が成功する以前、事実上アメリカの保護国扱いだったキューバには、アメリカ人とアメリカ製の車が溢れており、革命を機に断交してからは、ソ連製の車が入って来たものの、経済制裁でアメリカ製部品が入手できない中、圧倒的多数の人たちが自分たちで部品をやりくりしてアメ車のクラシック・カーを走らせて来たのは、キューバ人のアメリカ文化への愛情ゆえだと言います。ブログ・タイトルに言う「カリブの宝石」は、Newsweek誌に従えば、このクラシック・カーのことで、いくらスクラップ寸前のボロ車でも、通常の中古価格の数倍の値がつくのではないかと早くも一部で期待されています。
 そんなキューバも、冷戦終結後は、後ろ盾だったロシアの経済支援まで喪失し、国内経済は疲弊しているようです。フィデルの後を継いだラウル・カストロ氏は、不動産売買を解禁するなどの改革を断行しましたが、経済は低迷し、昨年には、海外からの投資を呼び込むため、約20年ぶりに「外国投資法」を改正し、税制面で欧州企業などを優遇しているそうですが、どうしても「近くて遠い米国」(駐ハバナ外交筋)の直接投資なしには経済が立ちゆかない状況にあると言います(産経Webより)。また、反米「同盟」の一角を占めてきたベネズエラでは、フィデル・カストロ氏の盟友だったチャベス大統領亡き後、政権基盤が不安定で経済危機に陥り、対米関係改善に意欲を見せていると言われ、反米4ヶ国であるキューバ、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアの結束が崩れて、キューバだけでなくボリビアも関係の多角化をめざし米国との距離を縮め始めているとの観測です(こちらも産経Web)。
 かれこれ一ヶ月くらい前になりますが、アメリカとキューバの直接の首脳会談が、実に59年振りに、1961年の断交後、初めて行われました。オバマ大統領は声明で、「50年にわたる政策を継続しても、(これまでと)異なる成果は期待できない」と述べ、「孤立」政策が機能しておらず、積極的な「関与」政策への転換が不可欠との認識を示しました。オバマ大統領の、それこそ歴史的な政策転換には、彼自身の政権末期で外交上の得点を挙げ歴史に名を残したい野心はともかくとして、米国の「裏庭」である中南米地域との関係を改善・強化することで、地域を浸食するロシアや中国を牽制しクサビを打ち込む狙いもあるようです。
 先ずロシアについては、ウクライナ問題で欧米との関係が悪化し、対米戦略の観点から再びキューバに接近するのではないかとの懸念があるようです。
 次に中国は、ニカラグアで、一民間企業を通してではありますが、昨年12月から、ニカラグアを横断して太平洋と大西洋を連結する巨大運河の建設に取り掛かっていると報じられて来ました。これに関しては、土地収用で充分な補償が得られないかも知れないとか、環境破壊への懸念がある(さらには運河建設で創出される雇用5万人のうち1万2500人を中国人労働者が占めることへの懸念がある)といったことから、地元で抗議活動が拡大しているといった意味での、(中国が関わる場合には相も変わらぬ)報道です。パナマ運河でも拡張工事が進めらる中、わざわざ総工費約500億ドル(約6兆円)をかけて、パナマ運河の3.5倍にも達する全長278キロの巨大運河をニカラグアに建設する必要性については、海運関係者の間でも懐疑的な見方が多く、近隣では、中国政府が将来、運河を防衛するため軍事基地を建設するのではないかと噂されています。それもあって、アメリカは、「裏庭」である中米地域で、中国が存在感を強めることが面白かろうはずはなく、警戒しているようです。
 再びNewsweek誌に戻ると、月収40~50ドルにしかならない医者を辞めて、月200ドル稼げるタクシーの運転手に転職した案内人が登場しますが、社会主義国キューバでは、医者よりタクシーの運転手の方が稼ぐのも驚きなら、野球選手の月収もその程度だというのも(社会主義の性格上、当然のことではあるものの)驚かされます(1961年にプロスポーツ制度が廃止され、その後、亡命希望を口にしただけで「イデオロギー上の反逆行為」とみなされるそうです)。他方、現実にメキシコやドミニカ共和国に亡命した上でアメリカに渡りMLBで活躍するキューバ出身者は現在19人、その多くが数千~1万倍近い高額報酬を得ています。例えばドジャースのプイグ外野手は、麻薬密輸組織の手を借りる命がけの冒険の結果、5回目の挑戦でメキシコ亡命に成功、ドジャースと総額4200万ドルの7年契約を獲得したとあります。それは極端にしても、日本とは国交がありますので、合法的に出稼ぎができて、国家公務員という身分上、20%はキューバの国庫に召し上げられるそうですが、それでも数億円(キューバにいるときの数百倍から1千倍)を稼ぐことも夢ではありません。「キューバの赤ん坊はバットと球を持って母親から生まれてくる」、そんな冗談が真顔で語られる野球王国・キューバには、磨けば光る宝石の原石がいっぱい・・・アメリカと国交回復し、自由な行き来が出来るようになれば、キューバ人野球選手本人だけでなく、20%を徴収できるキューバ政府にとっても有り難い話であり、これこそ「カリブの宝石」と言えるのではないでしょうか。
 とまあ言ったところで、実は個人的には、Newsweek誌の写真を眺めながら、ヘミングウェイが住んでいた頃の面影を色濃く残す、パステル調の古ぼけた街並みこそ「カリブの宝石」だと思うのですが、早晩、開発の波に洗われてしまうのでしょうか。オバマ大統領が言うように、今では意味のない経済制裁を解除されて豊かになるのは良いことですが、世界の発展から奇跡的に取り残された一種の「楽園」がこの地球上から失われるようで、我が儘以外の何物でもないことは百も承知で、今となってはなんだか惜しい気持ちになります。
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日米蜜月?(下)

2015-05-08 01:46:51 | 時事放談
 安倍首相が米議会上下両院合同会議で行った演説は、よく練られて上出来でした。読売新聞は「45分間演説に十数回の総立ち拍手」とタイトルした記事を書き、産経Webに至っては「米国民の心とらえた“絆”スピーチ、満場の拍手35回」などと褒めそやしました。
 あらためて真面目に読み返すと、挿入されたいくつかのエピソードは、なかなか効果的だったと思います。安倍首相の個人的経験として、カリフォルニアで過ごした学生時代やNY勤務時代にアメリカ的価値と出会ったことは、月並みですがアメリカ人の自尊心をくすぐったことでしょう。第二次大戦メモリアルを訪れたときの話では、「第二次大戦中に戦死した米国人へ弔意を示すことで、日米関係の新たな時代を宣言した」と、英紙ガーディアンがしっかり報じましたし、会場に、米・海兵隊大尉として中隊を率い硫黄島に上陸したローレンス・スノーデン海兵隊中将と、迎え撃った栗林忠道大将・硫黄島守備隊司令官のお孫さんの新藤義孝国会議員のお二人を招き、「昨日の敵は今日の友」と言わんばかりに和解を演出したのもドラマティックでした。かつて20年以上前、GATTの農業分野交渉の頃に農業の開放に反対の立場をとったことを告白し、謙虚に反省して今は改革派であることをアピールしたのも心憎い演出ですし、「国際協調主義にもとづく、積極的平和主義」と新しく掲げる旗印の下、世界の平和と安定のためにこれまで以上に責任を果たしていく決意を表明するにあたって、日本はカネだけではない、1990年代以降、日本の自衛隊が、ペルシャ湾で機雷の掃海に当たったり、インド洋でテロリストや武器の流れを断つ洋上作戦を支援したりして来たことに加え、カンボジア、ゴラン高原、イラク、ハイチ、南スーダンといった国や地域で人道支援や平和維持活動に従事してきたことをさりげなく宣伝したのも良かったでしょう。
 そして何よりも印象的だったのは、日本人としては歯が浮くような・・・とでも言うべきなのでしょう、TPPや日米ガイドライン改訂の意義を説くことも然り、太平洋からインド洋にかけての広い海を、自由で法の支配が貫徹する平和の海にしなければならないと訴えたことも然り、さらに、戦後世界の平和と安全はアメリカのリーダーシップなくしてありえなかったと褒めつつ、祖父・岸信介氏の演説を引用しながら、米国と組み、西側世界の一員となる選択をしたことを心から歓迎し、日本が、米国や志を共にする民主主義諸国とともに最後には冷戦に勝利したことを、また、この道が日本を成長させ繁栄させたことを振り返り、自由、民主主義、法の支配といったアメリカ的価値を、繰り返し、そう、繰り返し、褒め称えたことでした。女性の立場にも、繰り返し、配慮を見せました。こうして、安倍首相自身は決して歴史修正主義でも極右でもない、多くのアメリカ人と同じ価値観を共有する真っ当な人間であることを印象づけることには、それなりに成功したと思います。
 高校生の頃、ラジオから流れてきたキャロル・キングの曲に心揺さぶられた話に続けて、東日本大震災で展開された米軍のトモダチ作戦に感謝したのは、日米協力の言わば至高の姿として、また弱い者に援助の手を差し伸べる英雄譚としても、適切でしたし、米国が世界に与える最良の資産は、昔も今も将来も、「希望」である、日米同盟は「希望」の同盟と呼ぶべきである、などと、アメリカ人の誇りを呼び覚まして締めるあたりは、益々歯が浮く話ではありますが、秀逸と言うべきでしょう。
 さて、一部で注目された先の大戦への反省については、「戦後の日本は、先の大戦に対する“痛切な反省”を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではありません。Post war, we started out on our path bearing in mind feelings of “deep remorse” over the war. Our actions brought suffering to the peoples in Asian countries. We must not avert our eyes from that. I will uphold the views expressed by the previous prime ministers in this regard.」と、ドイツのヴァイツゼッカー大統領演説を意識しながら、さらっと流しました。読売新聞が伝えるところでは、先のアジア・アフリカ会議(バンドン会議)首脳会議での演説では、日本語で「深い反省」と述べ、”deep remorse”と英訳されていたところ、今回は同じ”deep remorse”と発言し、日本語訳では「痛切な反省」と微妙に変えて来ました。この「痛切な反省」は、まさに戦後50年の村山首相談話で使われたのと同じ表現であり、アジア・アフリカ会議(バンドン会議)の後の反応を見たのか、ちょっとは配慮した形跡が窺えます。
 この安倍演説に対して、野党は言うに事欠いて、安全保障関連法案を夏までに成立させるなどと、国会をさしおいて外国(米国)で明言したことを非難しましたが、枝葉末節も甚だしい。安倍首相の一世一代の大芝居を、安倍首相とスピーチライターの苦労の跡を、ちょっとは褒めてあげる度量を見せればいいのにと思います。まあ、ちょっとアメリカを持ち上げ過ぎなのが鼻をつくのは事実ですが、中・韓の反発は想定通り(と言うより、何を言ったところで文句をつけたことでしょう)、むしろ、日米の蜜月を見せつけられた韓国では、与野党ともに「韓国外交の敗北」などと政府の責任を追及し、さんざん悪態をついてきた朴槿恵大統領は、4日に開催した大統領府の首席秘書官会議で、韓国外交について「歴史問題に埋没せず、それはそれとして指摘していく」とした上で、「外交問題は別の観点に基づく明確な目標と方向を持って進めている」と強調せざるを得ない事態に追い込まれました。中・韓に対して、ちょっとは外交得点を稼いだのは確か・・・と言えるでしょう。前回ブログでのオバマ大統領といい、今回ブログでの安倍首相といい、お互いにこの機会を活かすことが出来たとすれば、めでたし、めでたし・・・なのですが。
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日米蜜月?(上)

2015-05-06 22:58:42 | 時事放談
 安倍首相のこの度の訪米を不思議な気持ちで振り返ります。
 昨年のこの時期、オバマ大統領は、国賓として来日しながら、元赤坂の迎賓館ではなく都内の老舗ホテルに宿泊し、皇居訪問の際には宮内庁が差し回す御料車ではなく自前で用意した大統領専用車を使用し、国会演説も行なわず、記者会見では“Prime Minister Abe”と呼んだ、いわば“よそよそしさ”と比べると、今回は、気味が悪いほどの歓待ぶりでした。昨年は、プラグマティックなアメリカにあっても更にビジネスライクな(そのせいか政界にはお友達がいないと言われるほどの)オバマ大統領の本領発揮といったところ・・・と書きましたが、その彼にして、この一年で一体何が変わったのでしょうか。
 一年前、オバマ大統領のアジア歴訪は、アメリカの同盟国と中国という、二つの異なる聴衆を意識し、双方に向かって語りかける微妙なものだったと伝えるNY Times電子版の分析を紹介しました。しかし、オバマ大統領が如何に気兼ねしようと、中国は、韓国を利用して日本の誤った歴史認識を非難し、安倍政権を戦後秩序に挑戦するものと咎めながら、自らやっていることはベトナムとの衝突であったり、また南シナ海の環礁埋め立てであったりして、九段線(または牛の舌)内での「不沈空母」構築を止める気配はなく、戦後秩序に挑戦し力で現状変更しようとしているのは中国自身であること、こうしてアメリカを遠ざけ、日本を孤立化させることで、中国がアジアの覇権確立を狙っていることもまた、いよいよ明らかになって来ました。かたや韓国は、アメリカの安全保障の傘にいながら、経済的のみならず政治的にも中国の磁場に引き寄せられ、米・中の間の二股外交が明らかになりつつあり、日・韓関係の障害になっているのは日本の誤った歴史認識だと一方的に非難しますが、日・米・韓同盟の障害になっているのは実は韓国の方ではないかという疑念がアメリカにも芽生えつつあります。ロシアとの間は、クリミア併合を機に冷え込んだままです。そして同盟国であるイギリスやカナダやオーストラリアのほか欧米諸国は、アメリカの再三の牽制にも関わらず、中国が主導するAIIB参加になだれ込み、アメリカを裏切らなかった主要国は日本だけの有様でした。その日本は、安倍首相が歴史修正主義者ではないかと警戒したものの、中・韓(及び中・韓が騒ぐことで東アジアの緊張が高まることを嫌がる欧米諸国)の反発を受けて表面上の対決姿勢は弱める大人の対応を見せつつ、内実は戦後の消極的平和主義から積極的平和主義に転じ、限定的ながら集団的自衛権を容認して、安保法制の整備を着々と進めるなど、財政上の制約により米軍の前方展開能力を削減せざるを得ないオバマ政権にとって、東アジアにおいて利害を共有する(日本にとっても自らの国益に従って防衛政策を進められるチャンスだと思います)かけがえのない同盟パートナーとなりつつあります。アメリカ国内に目を転じると、上下両院で野党が過半数を占めレームダック化していると揶揄される政権第二期で、なんとかLegacyを残そうと、仇敵イランやキューバとの関係改善という荒業に触手を伸ばしていますが、いずれにおいても内外に反対が根強く、うまく行く見通しが立たない上、こうした数十年の地域の安定を揺るがす禁じ手によって国際情勢(とりわけ中東の同盟諸国との間)は不安定化するばかりです。そして誰もいなくなった・・・ではありませんが、そんなオバマ大統領にとって、一年の時を経て、安倍首相の、ひいては日・米同盟の存在感が格段に高まっているのは、不思議でもなんでもなさそうです。
 そこで注目を集めたのが安倍首相の演説です。中・韓だけでなく、そもそも中・韓をけしかけたようなものでもある日本の一部左傾メディア、そして中国から買収でもされているのではないかと疑いたくなるようなアメリカのリベラル系政治家やメディアから、盛んに牽制されていましたが(例えば有名なマイク・ホンダ議員など25人の下院議員は、安倍首相が訪米中、慰安婦問題に関する河野官房長官談話、過去の「植民地支配」や「侵略」を謝罪した村山首相談話を尊重するよう首相に促し、歴史問題に言及することに期待を示す書簡を、駐米大使に送付していました)、安倍首相本人の思いとオバマ大統領の期待に応えることが出来たでしょうか。
 たかが「侵略」や「従軍慰安婦」といった言葉の使用が、「たかが」と言っては怒られそうなほど衆目を集め話題になるのも、一歩引いて眺めて見れば誠に奇異に映りますが、これも東アジアの特殊な事情を反映します(特殊な・・・と言うのは、先ほども触れたように、一部左傾メディアに共振するように、ただの国内問題に過ぎない歴史認識問題をまんまと外交カードにしてしまう中・韓を結果としてのさばらせてしまった戦後日本の歪んだ言論空間と、儒教文化が根強い東アジアの特殊な国際環境を言います、為念)。しかしそこはアメリカ議会上下両院合同会議であり、「侵略」や「従軍慰安婦」を謝罪する場ではありません(だからこそ記者会見のトップバッターにいきなり「従軍慰安婦」で謝罪を要請されたのは、どこかの国に金をつかまされたのか!?と疑ってしまいます、笑)。しかし、安倍首相は終始冷静でした。
 朝日新聞Digitalが伝えるところによると、「政府は演説の実現に向け年明けからオバマ政権への打診を始め、米議会関係者にも接触」し、「3月上旬に首相のスピーチライターを務める谷口智彦・内閣官房参与が訪米して文面の調整に入り、帰国直後から演説内容の検討が始ま」り、「今回の演説草稿には首相が何度も自ら手を入れ」、「日本との関係強化の好機とみたオバマ政権も演説実現に動き、ベイナー下院議長(共和党)が3月末、正式発表に踏み切った」ということです。準備は、環境の変化も幸いして、周到に進められました。
 演説の前日、ワシントン・ポスト紙は、安倍首相の訪米を受けた社説を掲載し、「第二次大戦中の日本の行為を明確に謝罪するかどうか首相が疑問を持たれている」と指摘、「29日の米議会での演説や、今夏発表する戦後70年の首相談話で深い反省の意を再確認することが重要」だとした上で、「現在の日本はドイツのように注意深く世界での役割を拡大しようとしており」、「韓国などが強い関心を寄せる首相の歴史認識よりも日本の戦後70年の歩みに目を向け、日本が世界で積極的な役割を果たそうとすること」を、「他のアジアの民主主義国も歓迎するべきだ」と論評したそうです。またウォールストリート・ジャーナル紙は、13日付のコラムで、「日本にとって謝罪表明は難しい技だ」と題し、「安倍首相が70年談話で日本の戦時行動を全面的に謝罪して、中韓両国との関係改善や東アジアでの和解を図るべきだという声が米国でもあがっているが、事態はそんなに簡単ではない」と論じているそうです。「日本がすでに当時の宮沢喜一首相や村山富市首相らが数え切れないほど謝罪を述べてきたことを強調し、それでも中韓両国との『関係改善』や『和解』をもたらさなかった」と指摘、特に「中国は共産党政権が反日感情を政権保持の支えにし、『謝罪しない日本』を軍拡の正当化の理由に使っているから、日本の謝罪は決して受け入れない」とまで論じているそうです(いずれも産経Web)。歓迎ムードに溢れた、と言うより現実的で冷静な論評で、中国系資本家から買収話が出て既に中身は乗っ取られているかのようにリベラル(と言うより露骨に反日)なNY Times紙とは差があります(自由なアメリカですから、いろいろあって良いわけですが、多民族ゆえの冷静さあるいは距離感が取り柄と思っていたところ、一部民族の盛んなロビー活動に見られるように、多民族ゆえの脆さとも裏腹です)。
 長くなりましたので、続きは次回。
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