前回ブログの補足として(と言うには随分時間が経ったが)、AUKUSをはじめとする同盟のあり方について、徒然なるままに・・・。
かつての帝国・日本には「ABCD包囲網」が敷かれたというのを学生時代の歴史の授業で学んだが、今、中国を取り巻くのは「3・4・5包囲網」などと呼ぶ人がいる(ある日経記者による)。3:AUKUS、4:QUAD、5:Five Eyesというわけだ。これに「2」を加えた方がより正確かも知れない。「2」は日本や特定アジア諸国と米国との間の「ハブ&スポークス」の二国間同盟である。
そもそも同盟、あるいは地域的・国際的な組織・機構は、参加する国の数が多いほど、それぞれの利害が対立して連携が難しくなるものだ。国連安保理はその最たるもので、バイデン氏の言う「民主主義国」(米・英・仏)と「専制主義国」(中・露)とに分かれ、北朝鮮制裁などの主要な争点で全会一致の決議が出せないなど、機能しないと言われて久しい。また、G7は欧米先進国のサロンだが、新興国の台頭に伴って、もはや世界を代表するだけの存在感がないと言われるが、だからと言ってG20では専制主義(権威主義)国を含む新興国にまで広がり、纏まるものも纏まらないことが懸念されている。帯に短し襷に長し、で悩ましいところだ。
ヨーロッパにおいて、英国がEUを離脱したのは、大陸ヨーロッパとは一体感が乏しく、利害が必ずしも一致せず、何だかんだ言って多国間の集まりでは合意形成に時間がかかるEUを見限った側面があると思われる。その結果、「グローバル・ブリテン」が叫ばれ、今後、英国はAUKUSをはじめ旧・大英帝国圏諸国に近づいていくのだろう。因みに、同じアングロ・サクソン諸国では、ノルウェーはEUに加盟していないし、スウェーデンやデンマークはEUに加盟してもユーロを導入していないという意味では、一定の同質性があるようだ。他方、ドイツは、日本と同じような敗戦のトラウマがあって、ドイツ国民がEU軍創設に概ね賛同するのは、「自国だけの軍隊を抱える居心地の悪さをいまだに拭えずにいるのと、EUは平和を追求する存在という漠とした印象を持っていることが大きい」という分析がある。2~3年前、あるシンポジウムでドイツ人の若手研究者が、ドイツの安全保障における最大の関心を聞かれて、(ロシアでも中国でもなく)環境問題だと言い放ったのは衝撃的だったが、“第二次”冷戦の戦略正面がもはやヨーロッパではなく、東アジアに移ったことの証左であろうか。一口にヨーロッパと言っても、各国の立ち位置はいろいろである。
それでもヨーロッパ(中でもEU)には同じキリスト教文化圏としての一体感があり、さらには地理的な近接性からお互いに相争って来た歴史に対する反省を共有することが出来る。例えばアフガニスタン問題を見れば分かるように、ドイツをはじめヨーロッパの関心は高いようで、私たち日本人にはなかなか想像できないが、地政学的に「接続性」のもつ意味合いは大きく、ヨーロッパにとって中東の安定は重大関心事であり続けるようだ。これに対し、宗教的・文化的環境がそれぞれに異なるASEAN諸国は、宗教的にも文化的に一体感に乏しく、端っからEUのような一体化を諦め、内政不干渉の緩やかな統合を目指して来た(ミャンマーを巡っては、その限界が露呈しつつあるが)。そして米国が、欧州方面ではNATOという軍事同盟で纏まることが出来る一方、アジア方面では「ハブ&スポーク」という個別の二国間の軍事同盟や連携を構築してきたのは、このような背景のせいだろうと思われる。
今、AUKUSとして純度の高い軍事同盟を結成するのは、米・英・豪というアングロサクソン系で本家と分家と言えるほど血が濃く、海洋国家としての価値観が近く、歴史的に(それこそ100年以上も)共に戦って来た国同士だからこそ可能なのであり、軍事面で積極的になれない日本や伝統的に非同盟のインドを含むQUADでは代替できそうにない。
こうして、それぞれに目的や狙いが微妙に異なりながらも、重層的な同盟関係や連携を構築し、束になって中国を包囲するのが、インド太平洋(西太平洋)のあり方なのだろう。
かつての帝国・日本には「ABCD包囲網」が敷かれたというのを学生時代の歴史の授業で学んだが、今、中国を取り巻くのは「3・4・5包囲網」などと呼ぶ人がいる(ある日経記者による)。3:AUKUS、4:QUAD、5:Five Eyesというわけだ。これに「2」を加えた方がより正確かも知れない。「2」は日本や特定アジア諸国と米国との間の「ハブ&スポークス」の二国間同盟である。
そもそも同盟、あるいは地域的・国際的な組織・機構は、参加する国の数が多いほど、それぞれの利害が対立して連携が難しくなるものだ。国連安保理はその最たるもので、バイデン氏の言う「民主主義国」(米・英・仏)と「専制主義国」(中・露)とに分かれ、北朝鮮制裁などの主要な争点で全会一致の決議が出せないなど、機能しないと言われて久しい。また、G7は欧米先進国のサロンだが、新興国の台頭に伴って、もはや世界を代表するだけの存在感がないと言われるが、だからと言ってG20では専制主義(権威主義)国を含む新興国にまで広がり、纏まるものも纏まらないことが懸念されている。帯に短し襷に長し、で悩ましいところだ。
ヨーロッパにおいて、英国がEUを離脱したのは、大陸ヨーロッパとは一体感が乏しく、利害が必ずしも一致せず、何だかんだ言って多国間の集まりでは合意形成に時間がかかるEUを見限った側面があると思われる。その結果、「グローバル・ブリテン」が叫ばれ、今後、英国はAUKUSをはじめ旧・大英帝国圏諸国に近づいていくのだろう。因みに、同じアングロ・サクソン諸国では、ノルウェーはEUに加盟していないし、スウェーデンやデンマークはEUに加盟してもユーロを導入していないという意味では、一定の同質性があるようだ。他方、ドイツは、日本と同じような敗戦のトラウマがあって、ドイツ国民がEU軍創設に概ね賛同するのは、「自国だけの軍隊を抱える居心地の悪さをいまだに拭えずにいるのと、EUは平和を追求する存在という漠とした印象を持っていることが大きい」という分析がある。2~3年前、あるシンポジウムでドイツ人の若手研究者が、ドイツの安全保障における最大の関心を聞かれて、(ロシアでも中国でもなく)環境問題だと言い放ったのは衝撃的だったが、“第二次”冷戦の戦略正面がもはやヨーロッパではなく、東アジアに移ったことの証左であろうか。一口にヨーロッパと言っても、各国の立ち位置はいろいろである。
それでもヨーロッパ(中でもEU)には同じキリスト教文化圏としての一体感があり、さらには地理的な近接性からお互いに相争って来た歴史に対する反省を共有することが出来る。例えばアフガニスタン問題を見れば分かるように、ドイツをはじめヨーロッパの関心は高いようで、私たち日本人にはなかなか想像できないが、地政学的に「接続性」のもつ意味合いは大きく、ヨーロッパにとって中東の安定は重大関心事であり続けるようだ。これに対し、宗教的・文化的環境がそれぞれに異なるASEAN諸国は、宗教的にも文化的に一体感に乏しく、端っからEUのような一体化を諦め、内政不干渉の緩やかな統合を目指して来た(ミャンマーを巡っては、その限界が露呈しつつあるが)。そして米国が、欧州方面ではNATOという軍事同盟で纏まることが出来る一方、アジア方面では「ハブ&スポーク」という個別の二国間の軍事同盟や連携を構築してきたのは、このような背景のせいだろうと思われる。
今、AUKUSとして純度の高い軍事同盟を結成するのは、米・英・豪というアングロサクソン系で本家と分家と言えるほど血が濃く、海洋国家としての価値観が近く、歴史的に(それこそ100年以上も)共に戦って来た国同士だからこそ可能なのであり、軍事面で積極的になれない日本や伝統的に非同盟のインドを含むQUADでは代替できそうにない。
こうして、それぞれに目的や狙いが微妙に異なりながらも、重層的な同盟関係や連携を構築し、束になって中国を包囲するのが、インド太平洋(西太平洋)のあり方なのだろう。