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風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

北の挑発は続く

2017-07-31 22:25:30 | 時事放談
 先週金曜夜、北朝鮮が発射したミサイルは、今月4日のものに続き、どうやら大陸間弾道ミサイルと確認されたようだ。今回は到達高度にせよ飛行距離や飛行時間にせよ、若干、伸ばしており、最大射程を確保するためエンジンを増やしたとか、従来からの早朝に替えて夜間に発射したのは、奇襲能力を誇示したものとも、米国側に情報収集をさせないためにタイミングを外したものとも見られている。
 それにしても北朝鮮の挑発は止まらない。それもそのはずで、中国が北朝鮮支援を止めないからだ。中国共産党大会を秋に控える政治的に極めて敏感な時期に、何より安定を重視する習近平国家主席としては、北東アジアの安全保障環境が不安定化する事態を招くことを容認するはずがない。
 他方、金正恩委員長としては、いくらミサイル発射を繰り返しても米国が動かないことに、さぞ苛立ちを募らせていることだろう。世間知らずで引き籠りのドラ息子が危険なTVゲームに興じているような異様さを覚えて寒気がするが、北朝鮮人民の手前、金王朝のプライドにかけても、米国が折れるまで、ミサイル発射を繰り返すのだろう。
 こうして、トランプ大統領は、キープレイヤーとしての中国に圧力をかけてきたにもかかわらず、中国はアテにならないと詰り始めている。かねてより中国が解決できないなら自分たちで解決すると明言しており、戦略的忍耐を続けた前任者との違いをことさらに際立させてきたこと、“Make America Great Again”と選挙公約してきたこと、もともと予測不可能なタチであることから、北朝鮮制裁のために中国企業への二次制裁を強めかねず、さらには北朝鮮への軍事的圧力をも強めかねないことから、北東アジアの安全保障情勢は緊張を孕んで、予断を許さない。
 これに対して日本はどうだろう。
 産経新聞電子版によると、内閣府と自治体合同の住民避難訓練が各地で実施されているらしいが、20日に訓練を予定していた長崎県では、市民団体など計13団体が「政府は県民の不安をあおり、軍事力強化を実現しようとしている」として、県や国などに中止を申し入れたらしい。「(ミサイル発射の)目的は米国を交渉のテーブルに着かせることだ。『武力攻撃』の想定は現実性がない」と外交努力での問題解決を訴えているというが、まあ(私を含めて平和ボケした)日本人の常識では「武力攻撃」の想定に現実味がないのはその通りだが、常識が通じる相手だとは思えない。この期に及んで、北朝鮮を非難するのではなく、自国政府を非難するとは、前回ブログに書いた「魔女狩り」と言い、現実を見るのではなくイデオロギーに縛られて「政府=悪」と決めつけるサヨクの方々に典型的な思考パターンとは言え、如何なものかと呆れてしまう。
 以上のように、表に出ている情報から察するに、意地の張り合いで極めて危険な状況にあるように思う。裏の外交努力が実を結ぶことを望むばかりだが、なかなか兆しは見えてこない・・・
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現代の魔女狩り

2017-07-29 21:06:14 | 時事放談
 蓮舫女史が民進党の党代表を辞任する。「どうすれば遠心力を求心力に変えられるか熟考した。私自身をもう一度見つめ直さなければいけないと思った」「多様な議員の声を一つにまとめ、統率する力が不足していた。いったん退き、より強い民進党を新執行部で率いてもらうのが最善策だ。安倍政権の受け皿となる民進党をつくり直すことが国民のためになる」と殊勝に語っているが、安倍首相も同じ見立てで、逆に蓮舫女史が党代表を続けることを(その限りにおいては民進党が浮上しそうにないことから)望んでいたようだ。もっともこれは内閣支持率が落ち込む以前の総理とその周辺の思惑だった。その意味では、民進党は都議選で惨敗して追い詰められたとは言え、蓮舫女史には所謂「安倍一強」に対して一矢報いたとの思いが強いかも知れない。「安倍政権を追い詰める動きに水を差してはいけないし、空白を作ってはいけない」「安倍政権を苦しい立場に追い込んでも、私たちが広く認識してもらわなければ政治不信が広がるだけで、国民にとって不幸だ」と語ったあたりに本音がよく表れているように思う。
 しかしそこにあるのは政治家として何を実現するかという政策ではなく、如何に敵対勢力の足を引っ張るかという政局でしかない。
 なお、国籍問題は今回の辞任の判断に入っておらず、全く別次元の問題だと彼女自身は語っているが、反省が全く見えないのが気になる。「戸籍公開はプライバシー問題だけでなく、在日韓国・朝鮮人や被差別出身者が経験してきた差別の歴史からいって、絶対に受け入れてはならない重要な人権問題」(民進党の有田芳生参院議員)とか「戸籍の記載が差別などを引き起こすことがある。開示請求はおかしい」(社民党の福島瑞穂副党首)などといった援護射撃の意見が仰々しく出ているが、一般人と公人の違いを無視し、かつ多国籍を前提としないドメスティックな発想によるものばかりで、何より国籍に関する蓮舫女史の説明が二転三転して信用されなくなったことに問題があることは閑却している。二重国籍は珍しくない移民国家オーストラリアでは議員の二重国籍は憲法で禁じられており、最近も、二重国籍と知らずに過去9年間、議員活動をしていたとして、野党・緑の党の議員が辞職しているくらいだから、日本の法制度は後れていると言うべきだ。二重国籍が孕むいかがわしさについては、自衛隊の最高指揮官である総理大臣を目指さない議員はいないだろうに、トランプ大統領が(経済的に)利益相反と言われていたのとは次元が違う深刻な(安全保障上の)利益相反の事態があり得ることをちょっと想像してみればいい。
 前置きが長くなったが、タイトルに言う「魔女狩り」のターゲットにされていると思うのは、もとより蓮舫女史のことではなく、安倍首相のことだ。朝鮮半島危機のこの五ヶ月もの間、もり・かけ蕎麦騒動に明け暮れ、「改憲が具体的に政治日程に載りそうになると、「倒閣」と「改憲潰し」の動きが本格化した」(八木秀次麗澤大学教授)と見えるのは、とても尋常とは思えない。さすがの安倍首相も、都議選の惨敗を受けて、周囲に「護憲勢力の力を改めて思い知ったよ」と漏らしているらしい。
 メディア報道、と言っても、私は日刊紙として紙媒体の日経新聞と電子版の産経(単に無料で過去検索までできるから、なのだが)しか知らないが、10日に開かれた衆参両院の閉会中審査では、「加計学園誘致を進めた当事者の加戸守行・前愛媛県知事が行った(歪められた行政が正された、などの)証言について、翌11日付の朝日新聞と毎日新聞の朝刊は、一般記事中で一行も取り上げなかった」(産経電子版)という。「安倍政権の対応を批判する前文部科学事務次官の主張と真っ向から食い違うため、都合が悪いと棄てたのだろう」(同)と解説するが、残念ながらその通りなのだろう。25日の参院予算委員会では、自民党の青山繁晴氏が10日の閉会中審査について、朝日新聞や毎日新聞などが加戸氏の発言を殆ど報じなかった経緯を踏まえて「加戸さんがいなかったが如く扱われた。メディアや社会の様子をどう考えるか」と加戸氏に質したのに対し、加戸氏は「メディア批判をして勝った官僚、政治家は誰一人いない。詮無いことだ」とした上で「報道しない自由があるのも有力な手段、印象操作も有力な手段。マスコミ自体が謙虚に受け止めて頂くしかない」と淡々と話したという(同)。
 これに関連して、そもそも森喜朗・元首相は私の中では甚だ存在感が薄いのだが、最近、産経新聞が行ったインタビューでは、案外、真相を衝いていたように思う(以下、産経電子版から)。

(引用)
 安倍晋三首相への逆風が厳しいね。僕が首相だったときもそうだったけどマスコミの印象操作は相変わらずひどいな。最初から結論を決めて「安倍が悪い、安倍が悪い」と連日やられたら、そりゃ支持率も下がるよ。(中略) 石破茂さんは、こういう政局になると後ろから弓を引くような発言ばかりして愚かだなと思うけど、安倍首相はこれを逆手に取って「大変な状況なのでぜひ入閣してほしい」と国民に見えるように頭を下げたらいいんだよ。それでも「受けない」と言うならば大っぴらに批判すればいい。「あの人は国のことより自分のことが優先なんですね」とね。ただ、自民党も人材が枯渇してるな。こういうときにしっかり踏ん張れる実力派が本当に少ない。玉石混交どころか石石混交だよ。甘利明さんもまだ禊が終わっていないしな。中堅・若手も育っていない。中選挙区制から小選挙区比例代表並立制になって20年余りたつけど当時危惧されたことが現実になったと思うね。(中略)「加計学園」の獣医学部新設をめぐる風当たりは相変わらず強いな。あの真相を一番知っているのは愛媛県の加戸守行前知事だ。僕は文教族だったから彼が文部官僚だったころからよく知っているんだよ。彼は国会でもいろいろと重要な証言をしてるんだけど、産経新聞を除いてマスコミはほとんど報じないね。どうしてかな? 昭和40年代後半に獣医学部を4年制から6年制に変えることになったんだが、あわせて国立大学の獣医学部を地域ブロックごとに1つにまとめる構想が持ち上がったんだ。これに元総務庁長官の江藤隆美さんたちが「不届き者め!」と猛反発してね。日本獣医師会と結託して威嚇と恫喝を繰り返し、文部省に二度と私立大学の獣医学部を作らせないことをのませたんだな。そうでなかったら半世紀も獣医学部が新設されず、定員も増やさないなんてことがあるわけないだろ。これを知っている国会議員はもうほとんどいない。文科省の文書記録にも残っていないだろうけど、これが真相だよ。(後略)
(引用おわり)

 繰り返すが、加計問題では、「行政が歪められた」と主張する前川・前文部科学事務次官に対し、「(強烈な岩盤に穴が開けられ)歪められた行政が正された」と加戸・前愛媛県知事が真っ向から反論する。どうにも、前事務次官の登場は、既得権益を守りたい文科省の抵抗と反撃の構図にしか見えない。これに対し、国会あるいはそれに準じる場では、安倍首相がそのプロセスに不当に関与したのか否か、結果、そのプロセスを歪めたのか否かを追及するジャーナリスティックなアプローチよりも(そして一部メディアはそれに便乗して真相究明する検察を装いながら、野次馬的に安倍政権への疑念を広めダメージを与えるワイドショーにすら見えてしまう)、むしろ国家戦略特区の趣旨に沿って政治として結果を出したか否かという尺度が評価軸となるべきではないかと思う。何より政治は結果責任だ。お友達であるかどうかの契機は、確かに「怪しい」「疑問は消えない」「悪いことをしているに違いない」との疑念が残るのは理解するが、違法ではないとすれば、そこに拘泥するより、端的に政治の結果、つまり獣医師会という抵抗勢力を排して感染症対策などの日本の将来に向けた大きな議論がなされていたかどうか、そして岩盤に穴を開けたかどうか、が重要と思う。
 日本的リーダーは伝統的な村長(ムラオサ)に代表されるように飽くまでコミュニティ・リーダーであって、コミュニティ内の利害を調整し、村(ムラ)の掟(としての憲法)を守ることこそ重要で、それが時代に合わないからといって変えようとか、隣ムラや近隣ムラとの関係が緊迫するから対外的な(一国の首相であれば外交・安全保障的な)リーダーシップを発揮しようとしても、評価されることはなく、従って強いリーダーシップは要らないし、むしろ敬遠される、ということなのだろうか。それを国民は真に望んでいると、野党や一部メディアは思っているのだろうか。
 実のところ、野党や一部メディアにとって、権力集中は戦前のイメージ(それが事実として正しいかどうかは別にして)を思い出させてよほど気に食わないのか、八木秀次氏が言うように、日本人の時代劇イメージに訴えるかのように「安倍内閣=悪代官」といった印象操作を狙っているとしか思えない。
 しかし、あらためて過去10年を振り返ってみるべきだ。毎年、首相が交替して、挙句に安全保障(所謂「抑止力」)を理解しない首相まで登場して、国力を切り崩した当時からすれば、「安倍一強」と揶揄されるほどの安定政権は隔世の感がある。今や主要国でメルケルに次ぐ長期政権で、トランプ大統領のように超大国のリーダーであるにも係らず国際秩序の理念を語らず自国の国益に傾斜し過ぎる異分子を国際社会に受け入れ、リベラルな(日本的な意味合い、つまりサヨク的な、という意味ではない字義通りの自由・民主主義的な)国際秩序を守るために期待されるだけに、惜しい話である。
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今ごろ、中森明菜

2017-07-24 23:00:47 | スポーツ・芸能好き
 前回に続き、シンガポールからの帰国便の機内で「君の名は。」を観終わって、さて、子守唄代わりに聞いた音楽は、高橋真梨子と中森明菜だった。齢をとるにつれ新しい音楽を進んで吸収しなくなったせいもあるが、自分が若い頃のアイドル(ステーヴ・ジョッブズ的な意味合いで・・・ということは要は「歌姫」というアイコン)からはなかなか逃れられるものではない(笑)。
 高橋真梨子は「Dramatic Best ~ドラマ・映画主題歌集~」(2017年5月)からの抜粋で、かつての歌声はともかく比較的最近の楽曲でも変わらぬ調子で、衰えを知らず歌い続ける息の長い彼女の本領発揮は、ある意味で不気味ですらある。一方、中森明菜は「Akina Nakamori〜歌姫ダブル・ディケイド」(2002年12月)からの抜粋で、全編、タンゴやサルサやボサノバ調など、原曲とは別のアレンジになっていて、なかなか聴きごたえがある。この時、明菜はデビュー満20周年で、37歳、Wikipediaをつらつら見ると、この年末に14年振りに紅白歌合戦に出場し、本アルバムのバージョンの「飾りじゃないのよ涙は」を披露したとある。いや、何故わざわざWikipediaを確認したかというと、私にとっての中森明菜は「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」(1985年)あたりで止まっていて、その後の記憶がどうにも思い出せないからだ。実際、このアルバムでは、若い頃の明るく張りのある伸びやかな歌声はナリをひそめて、ちょっと(どころかかなり)疲れているように思うのが、高橋真梨子とは対照的なのだ。酒で喉を潰したのではないかと思われるような低音で、勝手な言い草だが、なんだかその後の人生の不摂生は隠しようがないような感じだ(と言っても、彼女の私生活のことはもとより知らないし興味もない)。しかし、そう切り捨ててしまうのは惜しくて、囁くような歌声は艶っぽいし、当時と比べるべくもない高音だとは言っても、やはり伸びがあって、ノリが良くてパンチが効いている。
 これに関連して、思い出すことがある。
 かつて大森のオフィス・ビルに勤務したことがあって、なにしろ都内勤務では港区が多かったので、物珍しさも手伝って、近隣を飲み歩く内に、一軒のスナックに行き当たった。大森海岸駅のすぐ傍で、ママさん一人で切り盛りする小ぢんまりした店だった。昼に手造りの昼食バッフェをやっていたところに偶々立ち寄ったのがキッカケで、夜も通うようになったのだが、そのママさんがどうやらタダモノではない。長らく銀座にいたが、最近、引き揚げてきたという。何があったか、年齢のせいなのか、多くは語らない。60歳くらい(あるいはもっと若くて50そこそこだったかも知れない、当時、自分よりも年上だったので、今でも自分の歳より上だと思ってしまう)で、さっぱりした化粧ながら、ぱりっと着物を着こなし、ぴんと背筋を伸ばした居ずまいが凛々しい。そのママさんの声も、酒で喉を潰したのか(などと勝手な言い草だが)低音で、人生の酸いも甘いも噛み分けた静かな語り口に迫力があって、それでいて人好きのするタイプでユーモアがあった(客商売だから当然か)。その当時でも二週間に一度は銀座の美容室に通うと豪語していたが、それも含めて全てが本当なのか妄想なのか分からない。仮に事実だとして(多分、間違いないが)、それを落ちぶれたとは思わない。
 暫く明菜をテレビで見ていないが、願わくは明菜には、大森のママさんが着物をぱりっと着こなしていたように、当時のツッパリが歳とったらこうなるといったような、アバズレっぽい乱れた髪型ながらも、ハイヒールと黒っぽいタイツでスリムな脚線美を露わに、何より赤いルージュが似合う女性であって欲しい・・・というのは私の単なる我が儘な願望だけではなく、きっと彼女の矜持でもあって、痩せても枯れても、それでいてこそ明菜の歌には「人生いろいろ」を経て聴かせるだけの魅力があるのだと思った次第である。
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今ごろ、「君の名は。」

2017-07-22 11:28:51 | たまに文学・歴史・芸術も
 かねがね見たいと思っていた映画「君の名は。」のことは、ほぼ一年が経ち、すっかり忘れかけていたのだが、期せずしてシンガポール行き機内映画の「新作」として登場していることに気が付いた。国内興行ランキングで公開から29週連続でトップ10入りを果たし、興行収入249億円を超える歴史的な大ヒットを記録、第40回日本アカデミー賞ではアニメ作品として初の最優秀脚本賞を受賞・・・といった知名度もさることながら、CMで見せたコマ切れ映像が心に引っ掛かり、それでいて劇場に行きそびれていたものだから、こりゃもうけもの♪と、つい浮かれた気持ちで、しかし昼間の機内で、完全に暗いわけではないから、泣きが入りはしないかと警戒しながら、おそるおそる見始めた。
 人の中身(心)が入れ替わる話だから、今はどちらの方なのか気にしながら、そして最近のアニメらしくテンポよく場面が切り替わるので、ストーリーを追いかけるのに精一杯で、幸か不幸か涙など気にしている暇はない。爽やかな軽めの恋愛モノなので、さほどの感情移入もなく、美しい日本の原風景(飛騨地方の糸守という架空の町だが)や、1200年振りの彗星落下といったエピソード、通勤で使っている中央線や総武線・・・といった舞台装置の数々に気を取られているうちに、映像が実に美しいという強い印象を残して、見終わった。
 よせばいいのに、これで終わらず、帰りの7時間のフライトでも、他に目ぼしい映画がなかったものだから、もう一度、見た。ストーリーは概ね頭に入っているので、安心してそれぞれの場面や言葉のもつ意味あいを楽しむ余裕がある。すると、隅々まで目が行き届き手が込んだ作品なので、ついのめり込んで、不覚にも(否、齢を重ねるごとに涙もろくなるので、不覚でもなんでもなく)ちょっと泣けてしまった。特に二人が初めて会って会話する場面は「黄昏どき」(=「誰そ彼時」「彼は誰時」「逢魔が時」)であるのが、映画のタイトルと通じ合って象徴的で、これを糸守町の方言(?)では「カタワレ時」とも呼ぶという説明が、学校の授業の一つの光景として初めの方に効果的に埋め込まれていて、活きて来る・・・落ちて来た彗星が片割れなのか、二人の存在がそれぞれの片割れなのか・・・。
 その昔、「一粒で二度美味しい」という有名なキャッチフレーズがあったが、ストーリーの大筋を理解している二度目でも細かいところでの発見がある(一度目で発見できないのは情けないが)。一度目、歴史を変えちゃったんだなあ・・・と漠然と引っ掛かっていたが、二度目、それがそもそも作品のモチーフの中核をなす「糸」で、それを取り巻く縦横の細い「糸」が面白おかしくも切ない人間模様を織りなす仕掛けになっていることに気が付く。実際に、象徴としての組み紐に重要な役割が与えられている。キャラクター造形も魅力的で素晴らしい。なにしろ1200年の伝統を守り抜くこと自体が、世界広しと言えども日本以外ではあり得ない事象であり(対抗できるのはバチカンくらいか)、そんな日本の伝統と自然と文化、とりわけ伝統を守ることの神秘が(例えばバチカンの教会の奥の院で行われるのではなく)ごく日常の中に息づき、美しい自然と都会の生活が併存し、登場人物は限りなく優しい、日本のアニメとしてこれ以上のものはないテーマである。ずるいよなあ・・・と思いながらも、日本のアニメの完成度の高さをあらためて思い知らされる、切なく、ほっこりする、温かみのある作品に仕上がっていて、楽しませて頂いた。
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獄中のノーベル平和賞

2017-07-15 23:39:06 | 時事放談
 中国の民主活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が13日、多臓器不全のため亡くなった。享年61。
 6月末に、末期の肝臓がんと診断されて、突如、遼寧省錦州市の監獄から病院への仮出所が認められたことで、世界に衝撃とともに疑惑が走った。不作為の謀殺ではなかったか、と。実は昨年と今年2月の2度にわたって肝臓部CTスキャン検査を受けていたらしいが、その結果については公表されても、本人および家族に伝えられてもいないという。今年6月初めに本人が腹痛を訴え、遼寧省錦州監獄から瀋陽の病院に送られて、やっと肝臓がん末期と診断されたというが、これは遼寧監獄管理当局の公式発表であって、実際には5月23日に肝臓がん末期の診断が下され、監獄の外の病院での治療が認められ、国内の専門医が招集されて既に集中治療が開始されていたともいう。2015年の709事件(7月9日から始まった中国の人権派弁護士ら300人以上の一斉拘束・逮捕)では、拘束された弁護士たちが、明らかに怪しい薬を無理やり投与されたという証言が出ているから、疑惑は深まるばかりだ。やっていることは所詮、北朝鮮と変わらないではないか・・・
 それはともかく、本人と妻の劉霞さんは国外での治療を希望し、実際に米国、ドイツ、フランスなどが劉氏らの受け入れ姿勢を示していたが、中国当局は病状悪化を理由に最後まで移送を拒んだ。NHK海外放送で劉氏の容体を伝えるニュースが流れると、画面が真っ黒になり、音声も聞こえなくなったらしい(いつものことだが)。中国のSNSでは劉氏の名前を検索しても「関係する法律法規と政策」を理由に結果が表示されず、亡くなってからは追悼の書き込みも次々削除されているらしい。中国外務省の報道官は、劉暁波氏の死亡を受け、各国から中国政府の対応に批判が相次いでいることについて、「内政問題であり、外国は不適切な意見を表明する立場にない」との談話を発表し、強い不快感を示した。
 そして今日、劉暁波氏の遺灰は「海葬」で海に撒かれたことが明らかとなった。劉暁波氏の親族は、自宅がある北京の墓に埋葬されることを希望していたが、当局は墓が民主化要求運動の拠点になることを警戒して海葬に同意するよう強いた可能性があると報じられている。他方、当局は劉暁波氏の支持者らを相次いで軟禁状態に置いていることも伝えられ、こうした当局の警戒は初七日の期間続くだろうと言われている。今秋に5年に1度の中国共産党大会を控える習近平指導部は統制を強めており、批判の押さえ込みに躍起のようだ。
 ・・・とまあ、中国当局の対応が異様なのは、今さら言うまでもないことだが、いろいろな関連記事を読む中で、G20で、ドイツ首相のメルケル首相だけが習近平国家主席との会談で劉暁波氏の受け入れ治療を表明したが、地理的に中国に一番近い日本が、何故、積極的に治療受け入れの名乗りを挙げなかったのかと問題提起されていた(福島香織さん)のが引っ掛かった。
 確かにこれまで日本は、人権外交は欧米に譲り、人道的な問題で世界に向けて発言することもなかった。つい最近も、世界で唯一の被爆国でありながら、核兵器廃絶に賛成票を投じられなかったことに歯がゆい思いをされた方も多かっただろう。戦後70年、憲法9条を盾に、戦争で日本人の血を流さなかったことは自慢されてもよいが、それも、今なお冷戦状況が続く不安定な北東アジア地域にあって、アメリカの半ば属国として核の傘に守られているのが安全保障上の現実だからである。中・韓との間で歴史認識を問う問題では、事実かどうかを離れて、情報戦なり世論戦で完敗状態だからである。そのため、今さら(戦時中の侵略性や性差別を措いておいて)中国や韓国に向かって偉そうなことが言えるのか、などと言い返されるに決まっている。下手すりゃ報復措置を受けかねない。島国の外交下手や、その昔、男は黙ってサッポロビールなどといったTVコマーシャルがあったように、潔さをよしとする国民性は、明らかにプロパガンダと分かる中国や韓国の主張に明確に反論をしないまま、ウソが現実であるかのような雰囲気を、少なくとも当事者間では作ってしまった。日本を国連安保理常任理事国入りさせない、ひいてはアジアの盟主は中国だけという、華夷秩序観に今なお支配された中国の策略にまんまと嵌ってしまっている。
 国境なき記者団による「報道の自由ランキング」は、調査方法に問題があって、180ヶ国中72位(前年61位)と低迷しているが(因みに「インターネットの自由度ランキング」なるものもあって、こちらは世界7位らしい)、戦後日本の言論空間を歪めているとすれば、安倍一強の政府の直接的な圧力というより、GHQ施政下の言論統制とそれに続く自民党政権の外交敗戦により、間接的にお隣の大国の侵略(情報戦であり世論戦)を受け続けているせいではないかと疑ってしまう。そして日本の一部メディアは、意識的にせよ無意識的にせよ、お隣の大国の意思に叶う形で動いていても、恬として恥じることはない。
 本題に戻って、劉暁波氏は獄中にある2010年10月、「中国での基本的人権を求める長期にわたる非暴力の闘い」を授賞理由としてノーベル平和賞を受賞した。代読された「私の最後の陳述」というメッセージは、「私に敵はいない。憎しみもない」として、弾圧者をゆるし、自由や民主が中国で実現することを祈るものだったという。1989年の天安門事件に向けて大きな盛り上がりを見せた中国の民主化運動の過程で、軍に武力弾圧されると、運動から離脱したり転向したり海外に亡命したりする活動家が続出する中、劉暁波氏はわざわざ勤務先のアメリカの大学から中国に舞い戻り、その後も「海外に出る機会を自ら放棄し、国内に残って戦い続ける道を選んだ」(石平氏)。彼の勇気ある行動は特筆すべきものだ。彼の死によって中国の民主化は何年遅れただろうか。政府の情報統制によって、劉暁波氏の存在すら知らない若い中国人が多くなっているというのは、残念なことだ。
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アメリカの慰安婦像

2017-07-13 00:51:34 | 時事放談
 アメリカ・ジョージア州ブルックヘブン市の公園に、アメリカ公有地では2例目となる慰安婦像が設置されたのは、先月末のことだった(最初の例は言わずと知れたちょうど4年前、カリフォルニア州グレンデール市のもの)。韓国系住民で埋め尽くされた除幕式では、韓国人歌手によるステージが催されたり、慰安婦像の記念Tシャツまでが販売されたりするなどお祭りムード一色となったらしい(産経新聞電子版)。ところが設置の5日後になって、同市は像を大規模な公園に移設することを決めたという。像が設置された公園周辺の住民らが撤去などを求めて法的措置を検討していると伝えられ、係争化を回避したい市側の下心が透けて見えると解説されている。いずれにしても像があることに変わりなく、凡そアメリカらしくない、フェアとは言えない軽率な行為に対しては、今後も物議を醸しそうだ。
 当初、5月23日に市議会が韓国系団体の要請を受けて早々に像設置を決定し、除幕式の前日(6月29日)まで設置反対派の意見を聞く機会を設けなかった対応に「不誠実」との声が挙がっていたものだが、いざ公聴会が開かれ、意見表明した11名中10名が反日的空気の醸成や地域社会の分断を懸念する意見を表明しても、市議らからは何の反応もなく、反対派には無力感が広がったと報じられて、やれやれと呆れていた。ある州議会議員も「人身売買は世界中で起きている問題だ。韓国系団体の言い分だけを聞いて、特定の国の問題として焦点を絞るべきではない」と懸念を伝えていたと言われるが、どうやら設置ありきで、ことごとく無視されたことになる。
 話をもっと遡らせると(産経電子版によると)、アトランタにあるこの韓国系団体は3年前から像設置の準備を進め、2月9日にはアトランタ中心部の「公民権・人権センター」敷地内への設置計画を発表したが、3月2日に同センターが設置を許可しない方針を決定したため、韓国系団体は「日本政府が妨害した」と反発し、別の場所をアトランタで探しているといわれていた。ジョージア州内の多くの都市から断られたが、ブルックヘブン市に全面サポートしてくれる市議を見つけたらしい。4人の市議の内の1人が韓国系だったという。
 韓国系団体というのは、在米韓国人のロビー団体、ワシントン挺身隊問題対策委員会と思われる。慰安婦問題と言えば「韓国と在外韓国人が活動しているように見えるが、裏で手綱を引いてきたのは中国」(Wikipedia)と言われる。その総本山は、カリフォルニア州クパティーノに本部があり、抗日・反日ロビー活動を主眼とする中国系アメリカ人による団体で、史実としては疑わしいアイリス・チャンの著書「ザ・レイプ・オブ・南京」を宣伝販売したことでも知られる世界抗日戦争史実維護連合会(略して抗日連合会)だ。日本の慰安婦に関わる戦争犯罪や調査を促し、実際に「クリントン、ブッシュ両政権下の8年をかけて調査を実施したが『女性の組織的な性奴隷化』の主張を裏づける米側の政府・軍の文書は1点も発見されなかった」(同)という。
 そして慰安婦訴訟は「2006年2月21日にアメリカ合衆国最高裁判所が却下の最終司法判断を下したことで、米国の司法当局および裁判所が日本軍慰安婦案件については米国で裁くことは出来なくなり、また米国で訴訟を起こすこともできなく」(同)なり、「これらの集団訴訟に際してアメリカ合衆国政府・国務省・司法省は一貫して『サンフランシスコ平和条約で解決済み』との日本政府と同じ立場を明言した」(同)。ただし立法府(議会)はこの限りではないため、その後も下院などで非難決議が出されていく。
 抗日連合会のミッションの2番目と4番目に次のような文言がある。
That unspeakable crimes against humanity were committed on a grand scale during this historical period(語るのもおぞましいあの日本の人道に対する罪は大規模なものであった)
That a nation which forgets the past is condemned to repeat its mistakes in the future(過去を忘却する民族がその過ちを今後繰り返すたびに、そのつど非難されねばならない)
 実に恐ろしいくらいの執念深さで、中西輝政氏(京大名誉教授)によると、「抗日連合会の対日戦略の基本方針はアジアでの中国の覇権を確保するために日本の力を何があっても阻止する」というもので、「日本国内でも憲法9条改正の阻止、従軍慰安婦問題・南京大虐殺・靖国神社問題などで戦争責任を繰り返し日本に叩きつけ」、「米国をはじめとする世界各国での反日プロパガンダによって日米分断させ、日本の孤立化と弱体化をめざす団体」ということだ。北岡伸一氏(政策研究大学院大学教授)も「21世紀の人権感覚を過去の歴史に適用するのは、いかにも乱暴」と述べておられるが、それこそ歴史に対しては謙虚であるべきものだと思うが、中国人はそもそも歴史に対する捉え方が全く違うから議論にならない。
 因みに、ブルックヘブン市の慰安婦像を、そもそも慰安婦問題をこじらせた元凶の朝日新聞はどのツラさげて追いかけているのか検索してみると、7月1日付で1本だけ、淡々と報じていた。
 外務省にしても政府にしても、大人げないとか、いずれ真実は明らかになるはず、などと淡白な日本人の美徳そのままに、国際社会でしつこく(あの中国の報道官の如く)反論・・・しないでいると、ウソでも大きな声ほど独り歩きを始め、抜き差しならないところまで行ってしまう。それは不利な状況に置かれている竹島問題でも同様だ。5月に、島根県の中学校56校の「地理教師」宛に、韓国の中学生3人から、「正しい歴史を教えて欲しい」などといった手紙が寄せられ、島根県は、内閣官房と外務・文科両省に報告し、県教委は市町村教委に対し、返信や回答の必要はないとして適切に対応するよう通知したらしいが、子供相手だからこそ余計に、丁寧に反論し、歴史的事実に基づき検証しようと呼びかけてもいいくらいだった。どうも日本人は国際社会が弱肉強食の殺伐とした世界だと、いつまで経っても認識したくないものらしい。いや、私も、韓国人や中国人が悪いと言っているのではなく、悪いのは韓国や中国といった国家のありようであって、韓国人や中国人には、反論を恐れずnicelyに我々日本人の自己主張をしっかり伝えるべきだと言っているだけのことである。
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貧者の闘い

2017-07-09 22:53:40 | 時事放談
 G20では、経済・貿易問題や金融政策さらに地球温暖化対策に費やされて、北朝鮮への対応は遠景に追いやられた感じだった。致し方ない面もある。なにしろ20ヶ国は先進国から新興国まで、また政体は自由・民主主義を奉じる西欧の国から権威主義の強い中国やロシアまで、さまざまであり、世界的な広がりがあって地政学的な思惑には国によって温度差がある。
 北朝鮮を巡っては相変わらず緊迫した情勢が続いており、5日朝、米韓両軍は韓国東海岸で「斬首作戦」の一環のミサイル発射合同訓練を実施したし、8日には、グアムの米空軍基地から飛来したB1爆撃機2機が韓国上空に展開し、弾道ミサイル発射台を標的とした爆撃訓練を行ったことが報じられた。米・戦略爆撃機の朝鮮半島上空での爆撃訓練が公表されるのは今回が初めてで、B1爆撃機はグアムから2時間以内に朝鮮半島に到達することが可能だと好意的に書かれているが、核兵器を搭載できるB52やB2ではなく、ロシアとの新STARTで核兵器搭載能力を取り外されたB1を派遣したのは、北朝鮮を過度に刺激しないよう配慮した可能性があるとの見方もある。
 そんな中、先週の日経・朝刊に連載されていた「習近平の支配」というコラムは、それほど目新しいというわけでもなかったが、普段の中国関連記事と違って、核心に迫っていて面白かった。同じく先週の産経・電子版には「抜け穴だらけの対北制裁」というコラムが連載されて、こちらも現状を整理して再認識するという意味で興味深かった。ちょっと長くなるがポイントを抜き出してみる。

<国連>
・国連安保理事は5日、緊急会合を開き、北朝鮮への対応策を協議。安保理はこれまでも制裁決議を積み重ねてきたが、北朝鮮の暴走は止めることができなかった。膨大な商取引を続ける中国や定期便の開通などを通じて影響力拡大を狙うロシアなどが北朝鮮の経済を支えているほか、北朝鮮が国交を結ぶ約160カ国のうち、さまざまな形で北朝鮮に資金を流入させている国が多く、制裁を骨抜きにしている実態がある。
・元安保理北朝鮮制裁委パネル委員の古川勝久氏は「北朝鮮は世界で孤立していない。核・ミサイル開発に関する人、モノ、カネの流れを断つのが目的の既存の制裁を各国がしっかりやっていれば、今のようになっていないからだ」と話す。
・安保理は、北朝鮮が初めて核実験を行った2006年10月以降、核実験や弾道ミサイル発射に対し、計7本の制裁決議を採択。中でも過去5回の核実験に対する5本の制裁決議では、新たな禁輸措置を盛り込むなどし、北朝鮮財政の締め付けを狙ってきたが、その効果はほとんどなかった。
<中国>
・丹東は中朝国境最大の都市で、中朝貿易の物流の7割以上を担う。対岸の北朝鮮・新義州と丹東を結ぶ「中朝友誼橋」を通過するトラックは今でも1日200台を超える日が多い。中国当局の説明によれば、国連安保理決議で禁止されていない物資のみが取引されているはずだ。ただ、そうした物資の中にも大量破壊兵器などに転用可能なものはある。また禁輸品でも「民生目的」ならば許可されるケースもある。
・中国は2月、北朝鮮の主要な外貨獲得源である石炭の輸入をストップしたが、鉄鉱石は「民生目的」として輸入を継続。1~4月の累計では前年同期比約2・4倍に増えている。
・米国のシンクタンク「C4ADS」の報告書によると、2013~16年に北朝鮮と取引をした中国企業は5233社にも上る。いくつかの企業は軍事目的にも転用可能な物資を北朝鮮に輸出したとしている。C4ADSによると、「丹東東源実業有限公司」もその一つ。弾道ミサイルの誘導システムに転用できるナビゲーション装置や、トラックなどを北朝鮮に輸出したとされる。報告書に記載された同社の住所を訪ねると、別の電気関連企業が営業していた。鴨緑江沿いの高層ビルに移ったとされるが、実態は不明。こうした中国企業にも北朝鮮は支えられている。
<ロシア>
・5月に万景峰を就航させた露「インベスト・ストロイ・トレスト」社のバラノフ社長は産経新聞の電話インタビューで「目的はビジネスだ。小麦と米が軍事物資のわけがない」と語り、船は商業目的だと強調した。同氏は「日本の北朝鮮嫌いは驚くほどだ」とも述べ、北への圧力を強める日本にいらだちをあらわにした。
・北朝鮮情勢に詳しい露極東連邦大のルキン准教授は、万景峰の就航は「北朝鮮の孤立に反対するロシアのシグナル」が込められていると指摘する。ロシアは北朝鮮への大量の燃料輸出の実態も報じられているが、同氏は制裁に抵触しない内容であれば「十分にあり得る話だ」と語った。
・プーチン大統領は6月2日、「力の支配を押しつける限り、北朝鮮のような問題が起きる」と述べ、朝鮮半島の緊張は軍事的圧力を強める米国に原因があるとの考えを示した
<韓国>
・文大統領は、公約に掲げた「朝鮮半島非核化平和構想」で、南北が経済統合されれば、「8千万人の市場が形成され、経済の潜在成長率を1%引き上げられる」と強調。「毎年約5万件の雇用が創出され、若者の雇用問題も解決できる」とし、「世界経済地図を変える『朝鮮半島の奇跡』を生み出す」と訴える。
・そのモデルが金、盧両政権の太陽政策だ。金政権時代の1998年から10年間続いた金剛山観光事業で、事業の権利費だけで韓国の財閥から約4億8千万ドル(約540億円)が北政権に渡ったとされる。盧政権時代の2004年から操業が始まった開城工業団地事業では、北朝鮮労働者への賃金名目に16年の事業中断までに約5億6千万ドルが支払われた。中断当時の統一相が「この70%が朝鮮労働党の外貨獲得機関である39号室などに上納され、核・ミサイル開発などに使われた」との懸念を示した。
<東南アジア>
・東南アジアでは、「コリアン」と自称する北朝鮮人が韓国人と混同され、企業や社会に浸透している。
・シンガポールでは2014年、キューバから武器を積み込んだ北朝鮮の船がパナマで拿捕された事件に関与したとして、シンガポールの運送会社や経営者が起訴(後に罰金刑)された。ただ摘発は氷山の一角で、国境管理の甘さなどを突いた密輸の抜け道は多く、各地にある北朝鮮系レストランなどが、秘密会合の場にもなっていると指摘される
<中東>
・エジプトの首都カイロには、北朝鮮の技術者が協力して造られた第4次中東戦争(1973年)の記念館がある。当時の戦いの様子を描いた巨大なキャンバスが観客席を取り囲み、90人分ある観客席の台座が360度、ゆっくりと回る。約20分かけて1周する間に、日本語を含む複数の言葉で解説のナレーションが流れ、観客は座ったままで戦争のあらましが分かるようになっている
・イランの在外反体制組織が6月、同国が北朝鮮の支援を受けて弾道ミサイル開発を続けているとの報告書を発表。地下施設やトンネルは北朝鮮を手本にしており、イラン指導部の親衛隊的性格を持つ革命防衛隊は北朝鮮の専門家のための居住施設も建設したという。
・北朝鮮が中東、アフリカのイスラム武装勢力に対し、武器を輸出しているとの噂も絶えない。最近では昨年8月、エジプト政府が拿捕した北朝鮮国籍の船長らの船から、北朝鮮製の携行式ロケット弾約3万発と大量の鉄鉱石が押収された。

 かなり長くなってしまったが、あらためて眺めてみると、日本は律儀に北朝鮮向け全面禁輸と言って頑張っているが、世の中はずぶずぶであることが分かる。核搭載弾道ミサイルも間近と言われて、アメリカとその基地が存在する日・韓以外に、さほど気に留める国はないということか。カンボジアのアンコールワットには、北朝鮮が協力して造った記念館があり、10年間の権利を持っているというから、その観光収入もまたちまちまと北朝鮮の懐に入っているのだろう。
 それにしても2013~16年に北朝鮮と取引をした中国企業が5千社を超えるとは驚いた。先月末、北朝鮮によるマネーロンダリング(資金洗浄)に関与したとして中国・丹東銀行などが、米金融機関との一切の取引を禁止する所謂“二次制裁”対象となったことが初めて発表されたが、僅か2社と2個人だった。既に金正男氏暗殺で(貧者の兵器と言われる)化学兵器と(軍傘下で要人暗殺、破壊工作、世論操作、情報収集、果ては密輸などの外貨獲得まで行っていると言われる)朝鮮人民軍偵察総局の存在感を知らしめていたが、戦闘機や爆撃機は1機あたり100~150億円もして(韓国に対抗するつもりなら)100~200の単位でもつ必要があるのに対し、ミサイルの場合は1機せいぜい1~数億円と安上がりで、貧者にも戦いようがあるのである。そしてそれを止める術は今のところない。
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北朝鮮の暴挙

2017-07-07 03:03:57 | 時事放談
 北朝鮮の発表によると、4日午前9時(日本時間9時半)、「火星14」型の弾道ミサイルが日本海に向けて発射され、高度2802キロに達し、933キロの距離を飛行したという。北朝鮮の国営メディアは同日午後3時(日本時間同3時半)、「特別重大報道」を発表し、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験に成功したと伝えた。さらに、この発射実験で、弾頭を大気圏に再突入させる技術を最終確認したとも報じた。再突入時の高温や振動から弾頭を守る技術は難度が高いが、新たに開発した炭素複合材料を採用し、弾頭部は数千度の高温や激しい振動を受ける再突入後も25~45度の内部温度を安定的に維持し、核弾頭起爆装置も正常に作動したと主張している。
 当初、日・米・韓政府はともに北朝鮮の報道を信用せず、中距離弾道ミサイルと判断していたが、その後の分析により、ICBMと認めた。米ジョンズ・ホプキンズ大学の北朝鮮分析サイト「38ノース」によると、北朝鮮は「ロフテッド軌道」を使っているが、通常角度でより効果的に発射していれば、地球の自転も加わって射程が約6700~8千キロに達し、ハワイやアラスカが射程に入る可能性があるとの見方を示した。他方、米本土のNYやLAなどの大都市を正確に狙う能力を獲得するには、さらに1~2年以上かかると推定している。実際、北朝鮮が米国に核を打ち込む能力を備えるまで、2つの技術的ハードルが残っていると言われる。一つは、北朝鮮が核弾頭をICBM先端に搭載可能なほどに小型化したという兆候は示されていないこと、もう一つは、今回の発射が示すように、北朝鮮のミサイルにはまだ米国中央部に到達するほどの飛距離が出ていないこと、だ。また、宇宙空間で使えるだけの高品質な炭素繊維は、今のところ日本の東レしか開発・製造できていないはずで、北朝鮮が入手しているとはとても思えない。しかし、北朝鮮によるミサイル開発が予想以上に早く進展していることは事実のようだ。
 こうした緊迫した状況の下、日本の対応は、悲しいほど貧弱で、他人(=米国)頼みだ。海上保安庁はそもそもミサイルを捕捉するレーダーなどの装備がなく、どこに落下するかといった情報は、内閣官房に頼るしかなく、船舶に注意を呼びかける航行警報を午前9時50分に出したが、その時点ではミサイルの落下海域は不明で、警報内容を「日本周辺海域に着水する可能性がある」から「日本海に着水する可能性」と更新したのは15分後の午前10時5分だったという。ちょうどミサイルが落下するタイミングだ。一方の国土交通省航空局が航空会社に注意を呼び掛ける航空情報(ノータム)を出したのは午前9時52分だった。海・空ともに、偶々今回もことなきを得たが、米国防総省のデービス報道部長に言わせれば、ミサイルが「多数の民間旅客機が利用する空域を通過して宇宙空間を飛行し、商船や漁船が航行する日本の排他的経済水域(EEZ)に落ちた」のは、関係機関などへの事前通告や実験空海域の封鎖が行われておらず、航空機や船舶の航行の安全を脅かす「危険な行為」ということになる。果たして日本で、しかも野党あたりから、このような発言は聞かれるだろうか。相変わらず「もり・かけ」蕎麦問題で安倍政権の足元を掬おうと、腕まくりしているのではないだろうか。もしそうだとすればやはり安保オンチも甚だしいと言わざるを得ない。安保は与野党を問わず日本国の問題であって、協調して対応して貰わなければ困る類いの話のはずである。
 さらに、70年代の欧州と似た状況に置かれる可能性があることも指摘されている。米国本土を射程に収めるICBMが実戦配備されれば、米政府が自国への核攻撃で国民の命を犠牲にしてまで同盟国を守るのか疑心暗鬼に陥る「デカップリング(離間)」問題が浮上する。政府内には「北朝鮮の弾道ミサイルの射程が伸びれば伸びるほど、米国による『核の傘』の信用性が脅かされる」(防衛相経験者)との危機感があるという。こうした点についても、果たして野党あたりから、日本政府の対応について追及はあるだろうか。万が一、何かあったときに、与党・自民党を責めればいいといった安易な考えというか、端的に甘えに支配されていないだろうか。
 米国では国家安全保障に関する幹部と軍事当局がホワイトハウスに集合し、会議は終日に及んで、独立記念日(7/4)祝賀会の欠席を余儀なくされたらしい。金正恩朝鮮労働党委員長は、米国の独立記念日にICBMが発射されて、米国は「非常に不快だったろう」とした上で、「今後も大小の贈り物をしばしば送ってやろう」などと述べ、ミサイル発射を続ける意思を示したというが、とんでもない話だ。さすがのトランプ大統領も、「この男(金正恩)の人生はほかにやることがないくらい、ヒマなものなのか? 韓国と……日本が現況をこれ以上そう長く我慢できるとは思えないが。おそらく中国が北朝鮮に強い圧力をかけ、このバカ騒ぎに永遠の終止符を打つことになるのだろう」とツイートしたという。金正恩委員長の常識では測り知れない、世間知らずの肥大化した利己心と、習近平国家主席の期待に応える気がない不作為には、トランプ大統領もさぞ頭を抱えていることだろう。
 フォーリン・アフェアーズ誌に掲載された論文に、ミャンマーやイラン制裁で威力を発揮した二次制裁やドル取引禁止を北朝鮮にも適用することを示唆するものがあったが、ミャンマーやイランのときには、中国のように隣接してその体制に利害を主張する大国はなかった。今回の難しさはまさにそこにある。トランプ大統領としては、陰で北朝鮮を支える中国こそ、石油輸出の停止などさらなる有効な措置を講じる余地があるキー・プレイヤーとして頼らざるを得なかったわけだが、恐らく中国の立場上、相当の条件が引き出せない限り、トランプ大統領の意に沿うことはないだろう。とりわけ秋に向けて、中国共産党指導部が入れ替わる党大会を控え、習近平国家主席としては外交問題で失点は許されない。トランプ大統領は、4月の米中首脳会談で、習近平国家主席に対し、北朝鮮への圧力を強化し100日以内に成果を出すよう求めたとされており、その期限となる今月上旬、20カ国・地域(G20)首脳会合が開催されるドイツで、米中首脳会談が行われる。どんなやりとりが行われるのか、注目したい。
 それにしても東アジアの安全保障環境で、これほどの無力感を味わうことになろうとは、戦後70年は何だったのかと、嘆かざるを得ない(が、くどいようだが、野党の政治家は何も思わないのだろうか)。
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東京都議選

2017-07-04 00:09:28 | 時事放談
 自民党劣勢と、誰もが思っていただろうが、ここまで惨敗するとは、正直なところ思ってもみなかった。一ヶ月くらい前まで自民党と都民ファーストは拮抗していたはずなので、最終局面で、“魔の2回生”の一人で“ピンクモンスター”と綽名される豊田真由子議員の「この、ハゲ~っ!」「ち~が~う~だ~ろ~!」暴言や、稲田朋美防衛相の「防衛省、自衛隊、防衛大臣としてもお願いしたい」失言が影響したことは間違いない。「もり・かけ」問題で執拗に責められたことがボディー・ブローのように効いて、安倍政権の足を引っ張ったという点では、野党(及びメディア)の作戦勝ちと言えるが、それにしては既存野党にさしたる成果が見られず、肝心の油揚げはトンビの小池知事にさらわれたという点では、さぞ徒労感に見舞われていることと思う(国政と都政は違うとは言え)。納税者としては、民進党をはじめとする既存野党の対応は、国会審議を政局化し過ぎで、税金を返してもらいたいとの思いが強い。
 百歩譲って、安倍首相ご本人も「政権が発足して既に5年近くが経過(し、中略)安倍政権に緩みがあるのではないかという厳しい批判があった」と釈明されている通り、「緩み」と言うより「驕り」は確かにあって、実際に安倍首相の答弁は逆切れがちょっと見苦しく、「安倍一強」憎しで「お灸をすえる」という都民のマインドセットは分からないではないし、産経新聞政治部次長が勘繰ったように「憲法改正封じ」がまたぞろ始まったというのも、最近のメディアの過剰とも言える反応から察するに、分からないでもない。
 しかし、現象面では、小池さんが「古い都議会を新しくしよう」と訴えるのは、12年前の小泉さんの「自民党をぶっ壊す」に似ているし、知事が率いる政党が議会第一党となったという意味で大阪府知事時代の橋下さんが立ち上げた大阪維新の会の当時に似ているが、当時は「郵政民営化」なり「大阪都構想」といったそれなりの目標があったことと比べれば、今回は「非」なるところが気になる。小池さんを揶揄するつもりは毛頭ないが、最近の民意は移ろいやすく、とりわけSNSの時代になって、自分の好む情報しか見ない、求めない、といった極めて利己的な状況が加速して、アメリカや欧州同様、日本でも社会の分断が先鋭化しているように見える昨今にあっては、大勝した小池さんとて、老婆心ながら今後に留意が必要と私なんぞに言われずとも、ご自身がよく理解されていることと思う。
 とにかく小心者の私としては、政局よりも政策を進めて貰いたいと思わずにはいられなくて、築地の決着が腑に落ちないのはともかくとして、せめて三年後に迫った祭典に向けては、「交通標識の準備もままならない」と警察関係者が嘆く状況を解消して、とっとと準備万端、整えることを願うばかりであるが・・・さて。
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イデオロギッシュな韓国

2017-07-01 17:56:29 | 時事放談
 前回に引き続き・・・韓国および韓国人は、これほど地理的に近い存在でありながら余りに異質なところがあり、ただ異質なだけではなく理不尽で付き合い切れないと思わせるものがあるので、日本人としては戸惑ってしまう。
 今朝の産経(電子版)によると、6月初めに韓国・国会の丁世均議長が来日し、大島理森衆院議長らと会談した際、無茶振りがあったようだ。弾道ミサイル発射実験を繰り返すなど北朝鮮情勢が影響し、訪韓する日本人観光客が減っていることを「よくない」と指摘し、2018年平昌冬季五輪への日本人観光客訪問を求め、「平昌五輪に日本人観光客がたくさん来るように努力してほしい。もし少なかったら、東京五輪には1人の韓国人も行かせない」と言い放ったという(複数の同席者の証言)。これって、前回ブログで触れた中国の仕打ちを、腹癒せのように日本にも及ぼしたようなもので、思わず笑みがこぼれてしまった。中国の華夷秩序の中で、韓国は自らその長男を自任し、日本のことを次男坊と見下す優越感があるという話を聞いたことがあるが、まさにその感覚が無意識のうちに剥きだしなったものだろう。さらに丁議長は、韓国の経済状態がよくないことを指摘し、「日本は景気がいいのだから、査証(ビザ)を簡素化して、韓国の若者を日本企業で引き受けてほしい」と要求したというが、開いた口が塞がらないと言うより、そこまで追い詰められているのかと、却って韓国の窮状が偲ばれる。
 次は文在寅大統領その人である。訪米前に行われたワシントン・ポストやロイター通信とのインタビューで、これまで隠忍自重してきた韓国左翼の本音の反日・親北・離米が滲み出て、本領を発揮し始めたようだ。「前政権が日本と交わした慰安婦問題合意は韓国国民に受け入れられていない。とくに犠牲者の元慰安婦たちが反対だ。問題解決のカギは日本が法的責任をとり、政府が公式の謝罪をすることだ」などと、元慰安婦の多くは既にお金を受け取ったらしいのに、合意以前の従来からの主張を繰り返す。「日本が戦争の罪を認めることを拒み、日韓間の島の不当な領有権を主張し、軍事費を増加することに懸念を抱く。日本がこうした諸点を改めれば、韓国その他のアジア諸国との関係は発展する」などと、何でも日本のせいにする厚かましさや上から目線は、華夷秩序観の深層心理が端無くも露わになったものであろう。アジア諸国などと言って笠に着て難詰するが、その実、非難するのは韓国と中国だけなのは周知の通りだ。韓国では夫婦喧嘩があったときに、自らの正当性を公道に出て世間に大声で訴えるらしいが、そんな恥も外聞もなく、大統領になっても外交の道を外すことにはお構いなしに、当事者の日本に対してではなく第三者に向かって訴えるのだから、相変わらず血は濃いものだと感心してしまう。
 それにしても、この異常なまでの執拗さはどうしたことだろうと、毎度のことながら不思議に思う。功成り名遂げて、つまり民主化し経済成長を通してそれなりに豊かになると、俄かに自信が芽生え、自意識が過剰に、ナショナリズムがねちっこく、発揚しているのだろうか。華夷秩序観というイデオロギーに囚われた彼らは、歴史的現実を直視することが出来ず、歴史をファンタジーへと昇華し、民族の誇りを取り戻すことに躍起になっているように見える。「事実」ではなくとも、彼らが何としても「信じたいこと」だから、その主張は執拗だ。イデオロギーに囚われた彼らには、相手の民族の誇りを傷つけることも目に入らない。厄介な隣人である。厄介だからと言って遠ざけると、ますます図に乗ってしまう、面倒な隣人でもある。面倒で、分かる人には分かるさと高を括っていても、正すべきはいちいちタイムリーに反論しておかなければ、いつしか(従軍慰安婦20万人とか南京大虐殺30万人といった)ウソも本当を装って世間に流布してしまう。
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