昨晩、霞ヶ関界隈を歩いていると、主だった四つ辻で四方を見張る警備の人が立っているのが目についた。今日、トランプ大統領が到着するからだろうか。明日は千葉でゴルフだそうだが、時ならぬ猛暑で御出迎えすることになろうとは、まことに気の毒な話だ。
ところで一昨日・昨日と連載された、FNN解説委員の平井文夫さんのコラムは、なかなか微笑ましかった。「安倍外交は日本を取り戻したのか」(前・後編)と題して、前編で内政、後編で外交についてエピソードを中心に解説する。前編の内政では、安倍さんが本当にやりたいこと4つ(憲法改正、拉致問題解決、北方領土返還、皇位継承の安定)は、このままでは何も達成できずに(それらの前提となる経済の強化がままならないし、それ以上にその他のことで足を引っ張られ過ぎ・・・これは野党やメディアが安倍さんの真意を意識してか意識せずでかイジワルしているとしか思えないが 笑)、任期を終えてしまう、いや、最後に4つとも全部やってしまうのではないかと思っていると言い、後編の外交では、安倍政権は支持率が高いにもかかわらず「絶対に嫌い」という人も多く(いくら嫌いでも我らが首相のことを「アベ」などとまるで記号のように!?呼び捨てにするのは如何なものかと思う 苦笑)、好き嫌いが分かれる政権で、安倍さんのことを「嫌い」という人でも外交における安倍さんの存在感は否定できないだろう、というのが結論めいた氏のメッセージだが、そこに至るエピソードこそがメインディッシュと言うべき力作である。後編で各国首脳を紹介する中で、トランプ大統領の公人としての品のなさに対して私人としてのお節介オヤジ振りはなんとなく想像がつくが、安倍さんとのケミストリーはかねて聞かされていたとは言え微笑ましいを通り越して驚きですらある。大統領就任後のトランプさんを、日・中首脳がそれぞれ相次いで詣でたときのこと、習主席がフロリダを発った後、トランプ大統領はすぐに安倍さんに電話して、「習が今帰った。シンゾー、君がいなくて寂しいよ」と言ったというのだ。平井氏は「ほとんど恋人かストーカー、そんな感じである。しかもトランプの片思いである」と解説する(微笑)。また、外交から経済まで全て頓珍漢なトランプ大統領に、毎回、一から説明しなければならいことにウンザリした安倍さんが外務省に、「トランプ大統領にちゃんと事前にレクするように米国側に言ってくれ」と文句を言って、その通りに外務省がホワイトハウスに伝えたところ、「悪いがトランプ大統領は俺らの言うことは聞かない。だからシンゾーさんよろしくお願いします」と回答してきたという(苦笑)。私も政権に近い学者から、二人が良く電話会議するという話を聞いたことがあり、しかも、ほとんどトランプ大統領が聞き役というから、さもありなん(笑)。しかし最近はトランプ大統領が話す時間が長くなっているらしく、もしかしたら自信をもち始めているのではないかとその筋で噂し合っているらしい(笑)が、余談である。それにしても安倍さんはボンボンなのに、トランプといいプーチンといい不良と付き合うのがうまいと、平井氏が安倍さんに伝えたら、「だって不良には麻生さんで慣れてるから」と答えたらしい(爆)。
前置きが長くなった。
前回ブログで触れた米中貿易交渉決裂のあと、堪忍袋の緒が切れたトランプ大統領は関税引上げに続いて、中国の通信機器メーカー「華為技術」をアメリカの通信ネットワークから事実上排除する制裁カードを切った。米国内での華為製品調達を制限するほか、指示を受けた商務省が、華為とそのグループ企業を禁輸リストに掲載すると、グーグル(言わずと知れたスマホOSのAndroid開発)や英国Arm(米国子会社の技術をベースにプロセッサー開発)をはじめ、キー・コンポーネントを供給する米系メーカーが一斉に取引を手控えて、今後の同社のスマホ開発・生産にブレーキがかかるという、三年前の通信機器メーカー「中興通訊(ZTE)」制裁の悪夢が再現し始めた。華為の社長は既に何年も前から内製化に向けた準備をして来たから大丈夫だと大見得を切り、いずれこの時に備えて半年とか1年分の在庫を積み増して来たとも報道されているが、この業界でOSやプロセッサーといったデ・ファクト・スタンダードのキー製品がアップデートされないのは致命的だ。ユーザーが増えるほどアプリ開発が増え、さらにユーザーが集まるという好循環の「ネットワーク効果」のことをまさか知らないわけではないだろうが、立場上、強がらざるを得ないのが気の毒である。
華為はバックドアを仕込んで情報を抜き取っているとの批判に対して、「品位と独立性を維持」してきたし、「(中国政府から)スパイ活動への協力を要請されたことは一度もなく、いかなる状況においてもそのような要請は拒否する」と主張するが、仮にこれまでのところがそうであったとしても、中国では既に国家情報法が施行され、国家の情報活動に協力することが企業にも個人にも義務付けられている以上、今後は企業や個人の意思では抗えず、その主張は虚ろに響く。IoTの時代には全世界津々浦々の情報が吸い上げられ、監視されかねないし、人知れず(中国で始まっているような)信用格付けがなされたり、戦争の代替として重要インフラが攻撃されたりしかねない。
昨日のロイター通信は、華為への締め付けを主導したのはアメリカではなくてオーストラリアだったと報じた。昨年初め、オーストラリアの首都キャンベラで、オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであるハッカーたちが破壊的なデジタル戦争ゲームを遂行したという。「あらゆる種類のサイバー攻撃ツールを使って、対象国の次世代通信規格『5G』通信網の内部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えることができるか」(ロイター)を検証し、攻撃のポテンシャルの大きさに愕然としたという。かねてオーストラリアの資源経済は中国への依存を深めていたが、所謂「ファイブアイズ」の一角を占める同国の切り崩しを狙ったのだろう、2003年に中国の工作員3000人が活動していたのが明らかになったのをはじめ、私がシドニーに駐在していた2008年頃、軍施設近郊の通信設備の入札から中国企業が排除されたことがあったし、2014年にはオーストラリアの大手企業が会社のネットワークから華為製品を介して不正にデータが中国に送られていることに気がつき、以降、政府関係機関や大手企業に華為製品を使わないよう非公式に通達されていたというし、昨年には政界・学界・出版界などで中国の献金・寄付金や人脈を通して中国に不利な言論や研究活動を(円満に!)封じ込める所謂「シャープパワー」による工作活動が広がりを見せつつあるのを警戒したオーストラリア政府は、外国の干渉を排除する法案を通した。アメリカによる華為の通信機器排除に真っ先に呼応したのは、そうした事情があったのだ。
アメリカの貿易赤字は一種の見せ球で、貿易交渉の本丸は中国の構造改革にあり、これをひっくるめて米中の(技術ひいては軍事の)覇権争いと称するならば、悪名高き「中国製造2025」の中核メーカーである華為を制裁するのは、本音丸出しの露骨な禁じ手とも言えるものだ。ところがトランプ大統領ときたら、貿易交渉で合意できれば(華為問題を)何らかの形で取引に含めるかもしれないなどと、譲歩を引き出すための取引材料にするかのような発言をして、商務長官や政府高官は「法執行と貿易交渉は別問題」と否定した。まさかトランプ大統領は貿易赤字にしか興味がないわけではないだろうが、彼のディールにはいつもハラハラさせられる(笑)
ところで一昨日・昨日と連載された、FNN解説委員の平井文夫さんのコラムは、なかなか微笑ましかった。「安倍外交は日本を取り戻したのか」(前・後編)と題して、前編で内政、後編で外交についてエピソードを中心に解説する。前編の内政では、安倍さんが本当にやりたいこと4つ(憲法改正、拉致問題解決、北方領土返還、皇位継承の安定)は、このままでは何も達成できずに(それらの前提となる経済の強化がままならないし、それ以上にその他のことで足を引っ張られ過ぎ・・・これは野党やメディアが安倍さんの真意を意識してか意識せずでかイジワルしているとしか思えないが 笑)、任期を終えてしまう、いや、最後に4つとも全部やってしまうのではないかと思っていると言い、後編の外交では、安倍政権は支持率が高いにもかかわらず「絶対に嫌い」という人も多く(いくら嫌いでも我らが首相のことを「アベ」などとまるで記号のように!?呼び捨てにするのは如何なものかと思う 苦笑)、好き嫌いが分かれる政権で、安倍さんのことを「嫌い」という人でも外交における安倍さんの存在感は否定できないだろう、というのが結論めいた氏のメッセージだが、そこに至るエピソードこそがメインディッシュと言うべき力作である。後編で各国首脳を紹介する中で、トランプ大統領の公人としての品のなさに対して私人としてのお節介オヤジ振りはなんとなく想像がつくが、安倍さんとのケミストリーはかねて聞かされていたとは言え微笑ましいを通り越して驚きですらある。大統領就任後のトランプさんを、日・中首脳がそれぞれ相次いで詣でたときのこと、習主席がフロリダを発った後、トランプ大統領はすぐに安倍さんに電話して、「習が今帰った。シンゾー、君がいなくて寂しいよ」と言ったというのだ。平井氏は「ほとんど恋人かストーカー、そんな感じである。しかもトランプの片思いである」と解説する(微笑)。また、外交から経済まで全て頓珍漢なトランプ大統領に、毎回、一から説明しなければならいことにウンザリした安倍さんが外務省に、「トランプ大統領にちゃんと事前にレクするように米国側に言ってくれ」と文句を言って、その通りに外務省がホワイトハウスに伝えたところ、「悪いがトランプ大統領は俺らの言うことは聞かない。だからシンゾーさんよろしくお願いします」と回答してきたという(苦笑)。私も政権に近い学者から、二人が良く電話会議するという話を聞いたことがあり、しかも、ほとんどトランプ大統領が聞き役というから、さもありなん(笑)。しかし最近はトランプ大統領が話す時間が長くなっているらしく、もしかしたら自信をもち始めているのではないかとその筋で噂し合っているらしい(笑)が、余談である。それにしても安倍さんはボンボンなのに、トランプといいプーチンといい不良と付き合うのがうまいと、平井氏が安倍さんに伝えたら、「だって不良には麻生さんで慣れてるから」と答えたらしい(爆)。
前置きが長くなった。
前回ブログで触れた米中貿易交渉決裂のあと、堪忍袋の緒が切れたトランプ大統領は関税引上げに続いて、中国の通信機器メーカー「華為技術」をアメリカの通信ネットワークから事実上排除する制裁カードを切った。米国内での華為製品調達を制限するほか、指示を受けた商務省が、華為とそのグループ企業を禁輸リストに掲載すると、グーグル(言わずと知れたスマホOSのAndroid開発)や英国Arm(米国子会社の技術をベースにプロセッサー開発)をはじめ、キー・コンポーネントを供給する米系メーカーが一斉に取引を手控えて、今後の同社のスマホ開発・生産にブレーキがかかるという、三年前の通信機器メーカー「中興通訊(ZTE)」制裁の悪夢が再現し始めた。華為の社長は既に何年も前から内製化に向けた準備をして来たから大丈夫だと大見得を切り、いずれこの時に備えて半年とか1年分の在庫を積み増して来たとも報道されているが、この業界でOSやプロセッサーといったデ・ファクト・スタンダードのキー製品がアップデートされないのは致命的だ。ユーザーが増えるほどアプリ開発が増え、さらにユーザーが集まるという好循環の「ネットワーク効果」のことをまさか知らないわけではないだろうが、立場上、強がらざるを得ないのが気の毒である。
華為はバックドアを仕込んで情報を抜き取っているとの批判に対して、「品位と独立性を維持」してきたし、「(中国政府から)スパイ活動への協力を要請されたことは一度もなく、いかなる状況においてもそのような要請は拒否する」と主張するが、仮にこれまでのところがそうであったとしても、中国では既に国家情報法が施行され、国家の情報活動に協力することが企業にも個人にも義務付けられている以上、今後は企業や個人の意思では抗えず、その主張は虚ろに響く。IoTの時代には全世界津々浦々の情報が吸い上げられ、監視されかねないし、人知れず(中国で始まっているような)信用格付けがなされたり、戦争の代替として重要インフラが攻撃されたりしかねない。
昨日のロイター通信は、華為への締め付けを主導したのはアメリカではなくてオーストラリアだったと報じた。昨年初め、オーストラリアの首都キャンベラで、オーストラリア通信電子局(ASD)のエージェントであるハッカーたちが破壊的なデジタル戦争ゲームを遂行したという。「あらゆる種類のサイバー攻撃ツールを使って、対象国の次世代通信規格『5G』通信網の内部機器にアクセスできた場合、どのような損害を与えることができるか」(ロイター)を検証し、攻撃のポテンシャルの大きさに愕然としたという。かねてオーストラリアの資源経済は中国への依存を深めていたが、所謂「ファイブアイズ」の一角を占める同国の切り崩しを狙ったのだろう、2003年に中国の工作員3000人が活動していたのが明らかになったのをはじめ、私がシドニーに駐在していた2008年頃、軍施設近郊の通信設備の入札から中国企業が排除されたことがあったし、2014年にはオーストラリアの大手企業が会社のネットワークから華為製品を介して不正にデータが中国に送られていることに気がつき、以降、政府関係機関や大手企業に華為製品を使わないよう非公式に通達されていたというし、昨年には政界・学界・出版界などで中国の献金・寄付金や人脈を通して中国に不利な言論や研究活動を(円満に!)封じ込める所謂「シャープパワー」による工作活動が広がりを見せつつあるのを警戒したオーストラリア政府は、外国の干渉を排除する法案を通した。アメリカによる華為の通信機器排除に真っ先に呼応したのは、そうした事情があったのだ。
アメリカの貿易赤字は一種の見せ球で、貿易交渉の本丸は中国の構造改革にあり、これをひっくるめて米中の(技術ひいては軍事の)覇権争いと称するならば、悪名高き「中国製造2025」の中核メーカーである華為を制裁するのは、本音丸出しの露骨な禁じ手とも言えるものだ。ところがトランプ大統領ときたら、貿易交渉で合意できれば(華為問題を)何らかの形で取引に含めるかもしれないなどと、譲歩を引き出すための取引材料にするかのような発言をして、商務長官や政府高官は「法執行と貿易交渉は別問題」と否定した。まさかトランプ大統領は貿易赤字にしか興味がないわけではないだろうが、彼のディールにはいつもハラハラさせられる(笑)