風来庵風流記

縁側で、ひなたぼっこでもしながら、あれこれ心に映るよしなしごとを、そこはかとなく書き綴ります。

追悼:志村けんさん

2020-03-31 00:43:22 | スポーツ・芸能好き
 新型コロナウイルスに感染したと聞いて、まさかとは思っていたが、昨日(29日)、肺炎のために亡くなったと聞いて、心にぽっかり穴が開いたような感じがなかなか抜けない。享年70。まだ若い。
 急展開だった。3月17日に倦怠感を覚えて自宅で療養、19日に発熱や呼吸困難の症状が現れたため、20日に主治医の診断を受けた結果、重度の肺炎と診断され、港区の病院に搬送され緊急入院、21日に人工呼吸器に切り替えた段階から意識はなく、23日に新型コロナウイルス検査で陽性と判明、人工心肺装置を装着して治療をしていたという。何より私たちにとっては、新型コロナウイルス感染が公表された24日から僅か一週間で帰らぬ人となった。
 デビューとも言える「8時だヨ!全員集合」は、まだテレビゲームもない時代に、視聴率50%のオバケ番組で、私のような昭和の子供にとって、われらがアイドル、これがなければ週末にならない、忘れられない番組だ。同時に、子供に見せたくないワースト番組としてPTAから睨まれて、社会現象にもなった。昨今のお笑いは、ひな壇に並んだ芸人が喋くるバラエティ番組が中心だが、昔は舞台に大掛かりな仕掛けがあって、作り込まれたコントで笑いを取る「芸」が見ものだった。
 周囲からは「もともとは極度の照れ屋」と評されるらしい。北野武さんからは「天才」と絶賛され、「コント職人」とも称された志村さんは、飽くまでコントにこだわり、お笑い以外の仕事はほとんど断っていたそうで、これまで映画に出演したのは、高倉健さんに直接頼まれて断れなかった「鉄道員(ぽっぽや)」だけだそうだ。ところが、この4月からNHKの朝ドラ『エール』への出演や、12月公開予定の映画『キネマの神様』で初の主演が決まり、さらに7月には地元・東村山を聖火ランナーとして走ることまで決まって、ずいぶん意気込んでいたという。オリンピック延期も知らないまま・・・なんだか切ない。
 芸能界40周年の節目にその半生を語った「週刊文春」2012年10月11日号掲載のロングインタビューが再録されていた。おちゃらけた仕草に潜む、そのひたむきさが何ともいとおしい。以下、抜粋。

(前略) 藤山寛美さんも好きだし、三木のり平さんや、由利徹さんですかね。なぜかというと、みなさんやっぱり芸があるんです。最近そういう方は少ないけれども、東八郎さんなんかは、「バカ殿」の爺をやってもらうと、踊りもできる、立ち回りもパッパッと型になる、決まるっていうのかなあ。所作が全部できるんですよ。今は喜劇人というのがないんですね。芸人と喜劇人は俺の中では違うんです。寄席に出ている人は、漫才師とか、芸人さんですよね。喜劇人は舞台中心で寄席には出ませんから。(中略) 夢? うーん、もう62歳(当時)だからね。たいそうな夢とかじゃなくて、今の体をずーっと続けていくことかなあ。たとえば今年で7回目になる舞台「志村魂」とかね。お笑いは説明がいらないからね、だから、理屈とか、これがこう面白いとか、解説者みたいなのはあんまり好きじゃないんですよ。僕の考えだと、お笑いはだいたい動きが7で、言葉が3の配分なんです。だからお笑いは世界中の人に通じると思うんですよね。お笑いって、よくわかんないけど元気とパワーをもらえるよね。笑ってるとさ、また頑張ろうって思えるじゃない。マックボンボン時代から数えるともう40年か、あっという間だね。こんなにお笑いを長くやるとは思ってなかったけど、僕にはこれが一生の仕事ですからね。死ぬまでずっと続けますよ。(了)

 米・英・中の主要紙も速報し、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報(電子版)は「日本の喜劇王」と呼んだ。なるほど、そういう形容もあったか・・・一つの時代が終わったような喪失感に囚われるのは、決して大袈裟ではないように思う。日本中の子供たちを笑いで包んでくれた感謝の気持ちとともに、心よりご冥福をお祈りし、合掌。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍⑪長い自粛生活

2020-03-28 16:39:52 | 時事放談
 東京オリンピックの延期が24日に発表されるのを待っていたかのように、翌25日に東京都・小池知事は今週末の「不要不急の外出自粛」を要請した。ここ数日の感染者数はもう一段階レベルが上がったような感じで、「感染経路を追えない感染者」の増加が不安視されている。海外からの帰国者が国内で発症するケースも増えており、専門家は「1月の中国に次ぐ感染拡大の『第2波』」と警戒を強めているらしい。
 その翌26日に、私は休暇をとって成田空港にいた。まさにその帰国者として、アメリカに短期留学中の子供が予定を早めて帰国することになり、26日午前0時のデッドラインに間に合わなかったので、公共交通機関を使わず14日間は自宅などで待機すべしとの指示を守るべく、車で迎えに行ったのだった(もっともこのデッドラインは形式的な基準であって、一日の差で行動を変えるものでもないのだが)。検疫に時間がかかると思っていたが、子供はアメリカの方が厳しいのではないかと呟いた。
 私が休んでいる間に、会社では原則「在宅勤務」の指示が出た(それまでは半分程度の出勤率を目処としていた)。急なこと故、翌27日は残務処理のため出社したが、オフィスは閑散としていた。ところが駅も通勤電車内も、それなりに混んでいた。世の中にはテレワーク環境が整っていない企業が多いだろうし(経済的な理由ばかりでなく、日本人のメンタリティは変化に対応できないだろう)、テレワークに馴染まない職種もある。その意味ではテレワーク環境が整っている企業・人は率先してテレワークを実施し、首都圏の混雑緩和に協力するよう要請されているのだろうと想像する。
 そんな日本の対応の緩さは相変わらず話題だ。昨日の共同通信によると、「米紙ニューヨーク・タイムズ電子版は26日、新型コロナウイルスの日本での感染状況について『厳しい外出制限をしていないのに、イタリアやニューヨークのようなひどい状況を回避している』と指摘、世界中の疫学者は理由が分からず『当惑している』と伝えた」という。しかし続けて、「日本が医療崩壊を避けるため、意図的に検査を制限しているとの見方を紹介」「米コロンビア大の専門家は、日本のやり方は『ばくち』であり『事態が水面下で悪化し、手遅れになるまで気付かない恐れがある』と警鐘を鳴らした」というが、心外である(笑)。日本人の衛生観念(だけでなく実践も)や、良い意味での同調圧力と規律ある行動を知らないのだろう。しかし、安心していられない状況であるのも事実だ。今朝のTVニュースには、「自粛なら」「やめろと言われない限り」街に繰り出す若者の映像が流れていた。
 当初、中国で感染が広がっている内は、データに信ぴょう性がなかったが(苦笑)、世界中に広がるにつれ、以前、ハーバード大学の講師がニューズウィーク誌に「(語弊を恐れずに言うと)隔離されたクルーズ船は、ウイルスの性質を研究するには絶好の実験室」だと言ったダイヤモンド・プリンセス号をはじめとして貴重なデータが蓄積され、分からないなりにも、だんだん中身が濃い論説が見られるようになった。ここ数日、私が気付いた範囲でも、以下のものがなかなか興味深かった。

●国立国際医療研究センター国際感染症センター・忽那賢志医師へのインタビュー
 (前編)「都内で感染者急増 新型コロナ患者を診る医師が、いま一番恐れていること」https://bunshun.jp/articles/-/36802
 (後編)「PCR検査の対象は「日韓で大きく異ならない」新型コロナ患者を診る医師が報道を危惧する理由」 https://bunshun.jp/articles/-/36805

●大阪大学大学院医学系研究科/生命機能研究科・吉森保教授
 「新型コロナ感染爆発の危機、日本人はいま「薄氷」の上に立っている」 https://gendai.ismedia.jp/articles/-/71393

●「ある医師がエンジニアに寄せた“コロナにまつわる現場の本音”」 https://eetimes.jp/ee/articles/2003/25/news053.html

 先ほどの共同通信(と言うよりニューヨーク・タイムズ紙)に反論するものとして、忽那医師は、PCR検査が少ないと言われることに対して、次のように答えて明快である(但しインタビューは一週間前)。

(引用)
 日本では症状のある人や接触者を中心に検査をしていますが、ライブハウスなどのクラスターが発生したところでは、無症状の接触者も検査しているので、(韓国と比べて)大きく検査対象が異なっているわけではないと思います。
 韓国では、教会で、若い人の間に感染が拡大しました。症状が出た人の他に、教会にいた濃厚接触者の検査をまずは徹底的に行ったので、無症状の人も必然的に多く検査することになりました。韓国も、患者が大量に出たので、多く検査をしたというのが実情だと思います。テレビで専門家を称する人が主張するように、誰にでもPCR検査をやっていたわけではありません。
 韓国は致死率が低く、イタリアは高いですが、これも韓国独自の対策の成果というよりは、韓国の陽性者は若年者が多く、イタリアの陽性者に高齢者が多いことを反映していると思います。韓国では医療崩壊は起こっていませんが、重症者が少ないからではないでしょうか。
 (検査数が少なすぎるのでは、との更なる問いに)少なくとも東京都では、必要な症例には検査がされている状態と考えます。なぜなら、医師が「この人は感染しているのでは」と疑って検査をした症例での陽性率(=実施した検査の中で、陽性の結果が出た確率)が東京都の場合、5%程度だからです。つまり、医師が感染を疑った患者さんのうち、実際に陽性の患者さんは20人に1人なので、検査数が少ないことで感染者を大量に見逃している、ということはないはずなのです。
 例えば、「検査をした2人に1人と陽性が出る」という状態ですと、市中に広く蔓延し、見逃されている例があると考えられますが、今はそのような状態ではありません。
 検査数が十分かどうかは、地域によっても異なります。クラスターが発生している兵庫、大阪、愛知などでは、もう少し検査をした方がいいかもしれません。(注:25日には、東京都内の病院でも10人以上のクラスター感染が確認された)
 ドライブスルー検査をするのであれば、どんな人に検査をするのか、症状や接触歴があるなど、対象をはっきりと絞る必要があるでしょう。
(引用おわり)

 また、吉森教授は、これまでに得られた知見、すなわち(1)(インフルエンザ感染者が他の人にうつす率は、どの人でもほぼ同じなのに対し)SARS-CoV-2(新型コロナ)は、ほとんどの感染者が他人にはうつさないのに一部の人が大量の二次感染(クラスター感染)を起こす、(2)理由は不明だが、日本ではなぜか他人に感染させる率が低い(検査数が少ないためそう見えるわけでは無い)、(3)北大の西浦教授が発見したクラスター感染を引き起こす3条件(政府専門家会議が繰り返し述べているもので、「換気の悪い密閉空間」+「多くの人が密集」+「手を伸ばしたら届く範囲での会話や発声」)については学術的な理由付けは今後の研究を待たねばならないがこの3条件が全て揃うとクラスター感染の危険性が高い、といった事実を挙げた上で、次のように述べておられる(長くなるが、味わい深いので引用する)。

(引用)
 専門家会議が力を入れているクラスター対策とは、クラスター感染の発生阻止と、その早期発見早期制圧である。大阪のライブハウスで発生したクラスターは、早期に発見され制圧(=感染者を把握し、検査などを行うこと)できた。全国で散発したクラスターもいずれも現時点では制圧できている。
 クラスター感染発生阻止には、まず第一に個人個人の手洗いや手指や物の消毒が重要だ。集団の中に感染者がいたとしても、周囲の人がウイルスを体内に入れなければ、当然ながら感染は拡大しない。そしてなおかつ上記3条件の重なりを避けることが重要である。
 SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの違いには、前者は不顕性感染(感染しても症状が出ないこと)が多いということもある。まだ明確な値は不明だが、60%と推測する人もいる。貴重なデータを提供することになったダイヤモンド・プリンセス号ではPCR検査陽性者のうち51%が検査の時点で無症状であった。
 さらにインフルエンザに比べると感染から発症までの潜伏期が長く、平均7日と言われている。つまりその時点で無症状だが感染している人が、クラスター感染を起こす可能性があるし、クラスター感染が検知されないこともありうる。
 このような状況下ではクラスターの早期発見と制圧が常にうまくいくとは限らない。個人の意識の高さのほうが重要なのだ。逆に言えば、皆が手を洗い消毒し、密室・密集・密接の3条件が重ならないように心がければ日本を救うことができる。特に高齢者や肺の病気などの基礎疾患を持つ人は重症化のリスクが高いので、それらの人への感染防止を強く意識すれば、愛する人々を失わなくて済む。
 クラスター感染の阻止に失敗しメガクラスターが発生するなどしてR0(基本再生産数: ひとりの感染者がある時点において他の人を何人感染させるかの平均値)が上昇すると、ごく短い期間(1〜2週間)で感染爆発が起こり、欧米のような都市封鎖、外出禁止、商店・会社の操業停止が我が国でも現実のものとなる。我々は紙一重の状況にいる。
 私はこれまで過度にCOVID-19を恐れる必要はなく過剰な自粛は社会の閉塞と経済的破綻の原因となるので、感染による直接被害と自粛などによる間接被害の総和を最小化することを目指そうと言ってきた。それは現状では可能である。手洗い・消毒と3条件の回避。それほどストレスなく実行可能である。
 今は、逆に感染防止に対する個人の意識が後退することを恐れる。人間は私を含め最初は過剰に反応するが、時間が経つと慣れが生じ不安も感じなくなる。感染者数もびっくりするほど増えてないし、もういいのじゃないかと。イベントに人が集まる例が見られるのもそのような空気の反映かも知れない(もっとも、中止されるイベントなどについては、政治的な補償も検討されるべきかもしれない。これは政治に期待したい)。
 しかし今まだ我々は薄氷の上に立っている。イタリアやアメリカに在住する人々の生々しいレポートに触れると、我が国における安穏とした日々は奇跡のようだ。
 ウイルスと闘ってくれるアベンジャーズやジェダイはいないが、私たちひとりひとりが、日本を悲惨な状況に陥らせない守護者なのだということを思わずにいられない。過度にヒロイックになる必要はないが、私たちひとりひとりの行動が社会を守るのである。そのことは強調しすぎることはない。
(引用おわり)

 確かに「慣れ」というより自粛行動に「飽き」が来ている(苦笑)。心したいところだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍との戦い・続

2020-03-25 23:24:16 | 時事放談
 前回ブログで、北朝鮮が21日の朝、またしても短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を日本海に向けて発射したが、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いで、それどころではない、と書いたら、トランプ大統領が金正恩委員長に親書を送ったというニュースが流れた。さすが予測困難な(と言い訳するつもりはないが)トランプ大統領の本領発揮だ。しかし、この際、必要なのは、暴発しかねない極東の片隅に住まう駄々っ子を掌の上で転がしてあやすことではなく(それも大事なことだが今は優先順位が下がるだろう)、またトランプ大統領お得意の一国主義的(America First)かつ二国間主義的な交渉スタイルを続けることでもなく、対コロナウイルス戦争と言う以上、同盟諸国や米中貿易戦争中の中国とも協力し、国際協調の範を示すことではないのか!?との思いで、前回ブログに書いたものだが、見事に裏切られてしまった(苦笑)。非常時においても、トランプ大統領はトランプ大統領らしく、自らも独裁者然と振舞うだけあって世界の独裁者と余程ケミストリーが合うようだし、中国共産党との間で、感染源はどっちだの泥仕合を繰り広げている。その他諸国は協調するというより、それぞれの事情に応じて外出禁止や国境封鎖など感染を食い止めるための孤独な戦いを続けている。
 こうした努力にもかかわらず欧米諸国が感染封じ込めにもたついている間に、一足先に国内の流行は概ね制御されたと公言する中国は、攻守ところを変えて、イタリアやイランへの支援提供を申し出ており、詰まるところ自由・民主主義諸国との間の体制間競争において自らの体制優位を誇示しようとしている。
 それだけに、自由・民主主義国陣営にあって、日用品スーパーのみならず、満員電車からレストランや各種娯楽施設まで概ね普通に営業させながら、一定レベルに「持ちこたえている」日本モデルは異例で、これ以上、中国に好き勝手言わせないための最後の砦として注目され始めた。闇雲に都市封鎖や行動制限など広く網を掛けるのではなく、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が打ち出したのは、(1)換気の悪い密閉空間、(2)多くの人の密集する場所、(3)近距離での会話、の三条件が重なる場所を避けるという大胆な絞り込みにより、クラスター感染拡大を抑止して医療崩壊を回避する狙いだ。確かに満員電車内は人が密集するけれども、ほとんどの人はマスクをして無言でスマホと睨めっこし、駅に停車する度に扉が開いて外気が流れ込み、あるいはエアコンによる意識的な換気が行われるというように、三条件に合致しない。
 そうは言っても、今日41人の感染が判明した東京都はオーバーシュートの懸念がさらに高まっていると強い危機感を表明し、今週末の不要不急の外出自粛要請への協力を求めた。東京オリパラの延期が決まったのも誠に残念なことだが、せめて緩い対策ながらも「持ちこたえる」日本人の矜持を世界に示したいものだと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍との戦い

2020-03-21 23:32:42 | 時事放談
 今朝の日経・朝刊は、国内および諸外国の新型コロナウイルス情勢と、五輪の聖火到着を伝えて、複雑な思いになった。
 先ず「一斉休校 延長せず」との大見出しである。国内では地域ごとに感染状況がまだら模様で、状況に応じて再開の可否を判断する指針が週明けに示されるという。昨日の対策本部の発表を伝えるもので、安倍さんはその前日の専門家会合が示した分析から「爆発的な感染拡大には進んでおらず、引き続きもちこたえているものの、都心部を中心に感染者が少しずつ増えている」と引用し、さらに「オーバーシュート」なる耳慣れない言葉をも引用しながら、気が緩むのを戒めた。アメリカなどの車社会と違って、公共交通機関に人々が密集する日本で感染が爆発的に広まらないのは奇跡的ですらあるように思う。そんな中、上野公園は、宴席禁止の注意書きがあるにもかかわらず花見客で賑わったらしい。私も今月に入ってから夜の外食を自粛して来たので、浮かれたい・・・とまでは言わないまでも、息抜きしたい気持ちはよく分かる。しかし油断は禁物と思う。一体、この閉塞状況はいつまで続くのか・・・諸外国、とりわけ欧米の状況を見れば、ちょっと絶望的になる。
 日本の小康状態とは対照的に、「死者、世界で1万人」「イタリア、中国を上回る」とある(いずれも日経)。中国の数字は信用出来ないので比較には意味がないにしても、現に世界ではオーバーシュートが発生している。イタリアの場合、高齢者が多い人口構成と、医療体制の最近の後退が理由に挙げられているが、彼我の差には戸惑うばかりだ。フランス政府も外出制限の取り締まり強化を宣言し、マクロン大統領は「危機はまだ始まったばかりだ」と警告して、「家にいろ」キャンペーンを展開している。イタリアやフランスのように全国規模ではないイギリス・ロンドンでは、外出制限に続いて全面封鎖が始まるのではないかとの臆測が流れているらしいし、不要不急な人との接触の自粛が求められているドイツでは、大勢の若者が屋外で「コロナ・パーティー」を開く事態が続出しているのが問題になった。アメリカは「全世界への渡航中止」「政府勧告、経済打撃一段と」(日経)とあって、先が見えない。
 そこに並んで「聖火 日本到着」(日経)との皮肉な記事である。一昨日のG7テレビ会議で安倍首相が開催の意向を表明したのに対し「G7の支持を得た」と説明され、安倍さんが言うように「完全な形で実現する」のが望ましいには違いないが、麻生さんが数日前の参院財政金融委員会で語ったように「40年ごとに問題が起きた」ことが再来しかねない絶望的な情勢だ(1940年冬の札幌五輪と夏の東京五輪は戦争のため日本は開催権を返上し、1980年のモスクワ五輪は日本を含む西側諸国が参加を見送った)。平和の祭典は、他方でナショナリズムをちょっと高揚させてガス抜きする代理戦争でもある。これまで4年毎の開催に例外なく、中止をも回数にカウントして来た五輪だけに、延期という選択肢はないという声もあり、気を揉む展開になりそうだ。
 そんなときでも、と言うより、こんなときだからこそ、北朝鮮は今朝、またしても短距離弾道ミサイルとみられる飛翔体2発を日本海に向けて発射した。そもそも情報がない国で今、何が起こっているのか、感染が広がっているのか、国境を閉鎖して経済的に困窮しているのか、いずれにしてもなんとか注目を集めたい気持ちは分かるが、トランプ大統領は新型コロナウイルスとの戦いを戦争になぞらえて、それどころではない。こうして戦争になぞらえられる事態だからこそ、なかなか記事にならないものの、対照的にこれまでのところ対策に成功しているのがイスラエルや台湾で、地域柄、準戦時体制にあることから、即応準備が出来ていたと評価する向きがある。そうかも知れない。そうだとすれば、戦後、憲法9条を神棚に飾って拝むことで戦争に巻き込まれずに済んだと信じる人が多い日本が、生ぬるい対応となるのは止むを得ないのかも知れない。それでも「もちこたえている」のは、なんだかんだ言って医療体制がしっかりしていて(検査体制は弱いようだが重篤者をケアできている)、国民が清潔で規律ある行動をとれるからだろう。現場が「もちこたえている」状況は、震災や台風災害でも冷静に対応して世界の称賛を浴びる一方、現場に頼るばかりでリーダーシップが弱いのは先の戦争から何も変わっていない、これが日本という国かと思うと、冒頭に続き、これまたなんだか複雑な思いにとらわれるのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍⑧中国ウイルス

2020-03-18 23:20:05 | 時事放談
 新型コロナウイルスの呼称を巡って米中が揉めている。たかが子供の喧嘩と言うなかれ。なにしろ中国の「威信」がかかっているのだ(笑)。ツキュディデスは戦争の要因として「富、名誉、恐怖」の三つを挙げたように(当時はキリスト教が普及する前の時代で、宗教戦争なんて想定外、この三つが人間の原初的な欲求ということになる)、国家の「名誉」「威信」は、人類史上、立派な戦争の原因なのだ。トランプ大統領は、「中国ウイルス」と呼んだことに中国が反発しているのに対し、「ウイルスは中国から来たのだから全く正しい呼称だと思う」と正当化したらしい。この単純明快さこそトランプ大統領らしく(笑)、200%支持するので、今日のブログのタイトルは「中国ウイルス」とした。
 直接的には6日前に中国外務省の副報道局長が、「米軍が感染症を湖北省武漢市に持ち込んだのかもしれない」とツイートしたことに始まる。今更こんな言いがかりもないもので、アメリカ国務省は直ちに駐米中国大使を呼んで抗議した。16日にはポンペオ国務長官が楊潔篪中国共産党政治局員と電話で協議し、「今は偽情報やくだらない噂を流布するときではなく、あらゆる国が共通の脅威に連携して立ち向かうときだ」と強調したのは、全く以て正論だ。楊氏は「米国の何人かの政治屋は中国をおとしめて汚名をかぶせた」「米国のたくらみは思い通りにならず、中国の利益を損なういかなる行為も必ずや反撃に遭う」と述べたと言うが、言いがかりにもほどがある。中国にとって最も恐れるべきはアメリカでもロシアでもなく、中国人民の反発なものだから、対外関係は国内向けメッセージとして容易に利用される。このあたりは、毎度のことながら、戦略的と褒めそやされる中国にしてはお粗末だと思う(だから私は中国のことはそれほど戦略的とは思わない)。
 米中間の非難の応酬をもっと遡ると、ウォルター・ラッセル・ミード教授が2月3日付ウォールストリート・ジャーナル紙(WSJ)に「中国は『アジアの病人』」(China Is the Real Sick Man of Asia)と題するコラムを寄稿したことに始まる。2月18日に米国務省は、中国の5つの報道機関を中国共産党の「宣伝機関」と認定し、米国内で活動する場合に雇用や資産状況について米政府に報告を義務付ける措置を明らかにしたため、翌19日、中国は報復措置として、WSJの記者3人の記者証を無効にし、国外退去を命じた。さらに上記いきさつを経て、今日、中国は、NY Times、WSJ、ワシントン・ポストを対象に、中国駐在記者の記者証を前倒しで返還するよう求めると発表した。
 前置きはこれくらいにして・・・ウォルター・ラッセル・ミード教授は懲りずにWSJに「コロナ禍を利用する中国の深謀」(China’s Coronavirus Opportunity)と題するコラムを寄稿された。これほどの混乱を世界中に撒き散らし、なお開き直る中国は、世界中からどう見られているか、他人事ながら気になるところだが、ミード教授に言わせれば、確かに一見すると、今回のパンデミックは、投資および貿易面で中国に依存し過ぎることのリスクを浮き彫りにしているが、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏が警告するように、「中国政府がグローバルな政策課題に重点を置き、西側諸国が国内の関心事のみを重視すれば、バランスが中国に有利な方向に再度傾く可能性がある」と言う。医療インフラが整備されていない開発途上国こそ困難に直面するため、援助の供与と中国型統治モデルが優れているとするプロパガンダは賛同を得やすく、中国政府はパンデミックという厄災を世界的なチャンスの場に変えることに成功するかも知れない、というわけだ。
 安倍さんは、ついぞ「指示」「命令」を発出せず、飽くまで「要請」にとどめて、国のトップとして無責任のそしりを免れないかも知れないが、日本人はそれを素直に受け入れ、生得の、とも言うべき神道的な清らかさを遺憾なく発揮し、粛々とマスクと手洗いを励行して、大幅な行動制限がないにも関わらず、感染者数と言うより重篤者数さらには死亡者数を抑えることに、これまでのところは成功している。この緩さ加減は、欧米民主主義国が試行錯誤する非常事態宣言や強権発動とは比べるべくもなく、そのせいで日本からの渡航者に対して入国制限を課す国や地域は昨日午前6時の時点で75にも及んでいる。それでもなお国内には非常事態宣言は危険だの人権侵害しかねないなどと反発する人が多い。もとより私権の制限を安易に認めるべきではないことは言うまでもないが、今や欧米式の自由民主主義的な統治モデルと、中国式の権威主義敵な統治モデルとの、体制間競争が熾烈を極める時である。非常事態宣言に拒絶反応を示すなら、中国の強権発動と監視社会ぶりに対して、もっとモノ申してもよさそうなものだが・・・などとイヤミを言いたくもなる(笑) 自由民主主義国の強権発動のありようもあるはずで、単に中国をのさばらせたくないだけなのだが。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍の春

2020-03-14 16:17:39 | 時事放談
 今日は朝から冷たい雨が降り、先ほど来、雪に変わったが(東京の気温は昼頃でも2℃程度)、靖国神社の標本木で5~6輪以上の花が咲く状態が確認されたようで、平年より12日、昨年より7日も早い、統計開始以来最速の開花宣言が出た。このまま新型コロナウイルスの活動が沈静化してくれればよいのだが。
 先日、YouTubeで国会のある委員会の審議の模様を見るとはなしに見た。旧・民主党として、こういうときこそアラ探しをして足を引っ張るのではなく、東日本大震災を政権与党として経験したのだから、その教訓を活かして危機管理をリードするくらいの器量を見せて欲しいところだが、蓮舫さんの五月雨式の質問は、ケチをつけたい気持ちがありありの悪意に満ちていて、どう贔屓目に見ても建設的とは思えなかった。まあ政治家の質疑はそんなものだとタカを括っていたが、かかる情勢だから、あらためて失望してしまった。第二次・安倍政権になってからというもの、安倍さん本人が戦後レジームの克服を口にして改憲への意欲を見せ、岸という血筋からの類推もあり、これまでになく保守色が強いように受け止められて(打ち出す政策は野党のお株を奪うようなリベラルなものも多いのだが 笑)、与・野党の間の、さらにはマスコミを含めた体制・反体制の間の対立は、これまで以上に激しくなった。朝日新聞からは、アベの葬式はウチで出すなどと豪語する声が漏れ聞こえてきたものだった(苦笑)。そうこうする内に、ニワトリとタマゴの関係だと言わざるを得ないが、安倍さんの対応は見る見る悪くなり、折からのネットの普及で、外野席の観客も見たいものしか見ないような人が多くなったこととも相俟って、溝は深まるばかりである。こうした分断があることは、新型コロナウイルス対応のような非常時において良いはずがない。日本人はおしなべて粛々と新型コロナウイルスへの対応を続け、例年になくインフルエンザの流行も抑えられているほどだが、安倍政権が打ち出す対策に対しては、なにかとケチがつく。中には「ためにするケチ」で疑問に思うことがある。
 この春には十年に一度と言われる中国の国家主席の国賓としての来日が予定され、その延期なり中止なりがなかなか決まらなかったため、中国に忖度しているのではないかと批判を浴びた。地域を限定するのではなく中国全土からの入国制限という強硬措置(と言っても要請だが)が後れたのは事実だろう。その証拠に、国賓来日の延期と中国全土の入国制限はほぼ同時に発表された。これは忖度と言うよりも、誘った側から断れない外交儀礼に忠実過ぎたためではないかと思うのは、前回ブログで触れた通りだが、中国にしても安倍さんにしても、新型コロナウイルスの影響は大きくないと見誤ったのではないかとも思う。証拠や証言もない、私の憶測でしかないが、いずれにしても、この一件で、安倍政権の対応にはマイナス・イメージが付きまとい、疑心暗鬼が、後々、尾を引いている。
 一つは、指定感染症の問題だ。日本において政治行政が感染症に積極的に対応するためには、先ずその感染症が「法律上に位置づけられる感染症」すなわち「指定感染症」に指定される必要がある。これは厚労省の管轄で、厚生科学審議会の専門家が判断することになっていたのだが、WHOによる非常事態宣言がなかなか出なかったため(ようやく1/30に発出)、「指定感染症」指定も時期尚早として見送られていた。そこで安倍政権は、この専門家会議の議論をすっ飛ばし、形式的に専門家の間で書面を回覧する持ち回り決議という方法で手続きを進め、1/28に政治判断(閣議決定)により指定感染症に指定したのだそうだ(このあたりの話は橋下徹氏による)。まあ、閣議決定の乱発を懸念する声があるのは事実だし、専門家の意見を聞かないといった批判も聞かれるのは、分からなくはないが、専門家会議が機能しないケースもあったようなのである。
 二つ目は、2/27に要請された小中高一斉休校で、安倍さんは「子どもたちの健康・安全第一」と発言したが、子供の重症化リスクは高くないので、明らかにオカシイ。だったら同じように高齢者に手厚い対策をと、蓮舫さんは反応したが、ああ言えばこう言うで、これも聞くに堪えない。本来は学級閉鎖からの類推で、濃厚接触しがちな子供たちを介して高齢者に感染が広がるのを予防するのが趣旨だと考えるのが常識だと思うが、反安倍の勢い余って、そんな常識は揉み消されたかのようだ。実際のところ、休校を決めたキッカケは、ある地域で教職員の多くが通うスポーツジムで感染者が出たことから、学校がクラスターとなって軽症にとどまりがちの子供から高齢者に感染が広がるのを避けたかった、というのが真相のようである(このあたりの話は岸博幸氏による)。それならそうと説明すればいいのに、官僚が作った答弁だったのか、正確に伝えられなかったばかりに、安倍さんの突然の休校要請に対して、マスコミや俄か評論家をはじめ多くの人が反発した。
 三つ目は、医療崩壊で、孫さんの一件で、最近ようやく普通に会話に出てくるようになったが、習近平国家主席来日や東京オリパラに配慮して、感染者数を低く見せているのではないかと、さんざん批判された。PCR検査は必ずしも精度が高いわけではなく、特効薬もワクチンもないし、院内感染も懸念されるので、重症化しない限りは自宅療養して、限りある医療のリソースを重篤者に専念させるのがベスト、というコンセンサスがようやく出来つつあるように思う。
 こうして危機管理においては、コミュニケーション(クライシス・コミュニケーション)が如何に重要か、そしてその前提には受け手と出し手の信頼関係が如何に重要かを実感する。安倍政権の対応は、後手後手でお世辞にも褒められたものではないが、素性が今もなおよく分からない新型コロナウイルスを相手にする以上、多少の後手は仕方ないようにも思う。それよりもむしろ、常日頃から、体制・反体制の分断が広がり、両者の間の信頼感が失われていたことが、実に不幸だと思う。そして非常時には、官僚にも勿論、働いてもらわなければならないが、官僚が用意する答弁に頼るのではなく、クライシス・コミュニケーションなど、その筋の専門家をうまく使うことがポイントではないかとも思う(国内向けだけではなく、海外向けも)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍疲れ

2020-03-12 00:02:16 | 時事放談
 東日本大震災から早くも9年になるとは感慨深い。復興はまだ道半ばで、復興五輪のどこが復興だという地元の方のお気持ちには配慮しなければならないし、安倍さんには五輪誘致のために利用した側面はあっただろうが、公平を期するなら、他方で何としてでも復興を、との思いで十字架を背負う意図もあったであろう側面にも目を向けるべきだと思う。
 それはともかく、あのとき、「共感疲労」なる症状が話題になった。被災に遭われた方々だけでなく、被災地に入る医療関係者やボランティアなどの間で、相手の境遇に心を寄せて考え過ぎるあまり、自分のエネルギーがすり減ってしまう状態である。そして今は、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、デマを含む情報の洪水に日本中が振り回されているようなところがあって、「コロナ疲れ」あるいは「コロナ鬱」という、気分の落ち込みや意欲の減退を訴える声があがっているらしい。専門家は「抑うつが高まると、不眠、過眠や食欲不振、過食などの身体症状が伴ったり、酷くなるとイライラして落ち着かなくなったり、自分を責める気持ちが高まることもある」という。今は誰もが当事者であり、行動を自粛しながら多かれ少なかれ先が見えない不安を抱えている。そんな中、大規模イベント自粛をもう10日程度継続するよう要請があったのは、予想されていたこととはいえ、小出しにされたようで、良い気分ではない。
 不安になってばかりいても仕方ないので、第三者的に観察してみる。こうした特殊な状況下では、反応や対処の仕方にここぞとばかりにそれぞれの個性が如実に表れるものだ。
 先ずは中国である。
 新しい感染症の命名は、WHOが2015年に発表したガイドラインによれば、差別や偏見を避けるため特定の地名などを結びつけないことと定められており、今回もそうなった。ところが、対応が迅速で的確だと世界的に評価が高い台湾では、今もなお「武漢肺炎」という言葉が使われている。中国にとっては、反中感情が煽られるようで面白くなかろうが、漢字文化圏にとっては分かり易いし、台湾の気分にも合うことだろう。数日前にはアメリカでも、新型コロナウイルスの流行への対応に関し中国政府が収めた成功について尋ねられたポンペオ米国務長官は、「あなたが中国共産党に賛辞を送るのは嬉しいが、こうした事態を惹き起こしたのは、武漢コロナウイルスだということを忘れてはいけない」と述べて、中国の神経を逆撫でした(笑)。
 他方、こうした命名の由来もあり、また韓国やイタリアやイランや日本をはじめ、遅れて感染拡大にあたふたする国々もあって、中国はあらぬことか自信を持ち始めているばかりではなく、新型コロナウイルスは中国で発生したとは言えないとまで主張し始めているのは、プロパガンダの中国の本領発揮である。3月1日付の環球時報は、新型コロナウイルスの発生地が不確実なのに(中国に)汚名を着せるべきなのかと疑義を呈する記事を掲載したらしいし、その前日には、発源地が中国ではなく(インフルエンザ患者が増えている)米国である可能性すら提起したらしく、厚かましいにもほどがある。
 そんな中国であるから、中国人留学生の目に、日本は緊張感がなさ過ぎると映るようで、日本の緩さを怖がる人もいるらしいし、中国のメディアでは「日本の“仏系”防疫」などと揶揄されているらしい。5年前に雑誌『non・no』が究極の草食系男子として「仏男子」なるワードを使ったことに因むものだという。こうして今回ほど、一党独裁の強権発動によって初動の遅れを挽回するべくなりふり構わず感染拡大を抑え込みにかかった全体主義国・中国に対し、非常事態に対処する法令がないこともあって私権の制限には慎重で、経済動向や東京オリパラに配慮しつつ、後手後手になりながらも国民の行動自粛を「指示」できずに飽くまで任意の「要請」とし、国民はその空気を察して粛々と政府「要請」に従った民主主義国・日本の動きが対照的に見えたことはなかった。
 そんな日本でも、4月に予定されていた習近平国家主席の国賓での訪日が延期と決まるや、重石がとれたように中国発の入国者に対する日本入国制限措置を発表したのは、遅きに失し、やはり中国に忖度していたんじゃないかと思わせたが、正確には忖度ではなく、誘った日本から断るわけにはいかない外交儀礼に忠実だっただけなのだろう。もっともこの非常事態に際してノーマルなマインド・セットでいたことは責められるべきだと思う。
 次は韓国である。
 日本が韓国からの入国制限を強化したことを「不当な措置」と決めつけ、「非友好的なだけでなく非科学的で、速やかな撤回を強く求める」と、韓国外相が在韓日本国大使を呼んで直接抗議し、相互主義の美名のもとに相応の措置をとって報復した。毎度の日韓問題の政治問題化である。既に100ヶ国以上から似たような仕打ちを受けていた腹いせを日本にぶつけたもので、見るに見かねたWHOから、政治的な争いをするのではなく人命救助に集中するべきだと注意される始末だ。
 次にアメリカ。
 カリフォルニア沖で乗員・乗客に新型コロナウイルスの感染症状が出ていることが明らかになったクルーズ船「グランド・プリンセス」(あの「ダイヤモンド・プリンセス」の姉妹船)への対応を巡って、当初、国土安全保障省の高官は、上院委員会の公聴会で、全ての乗員を隔離収容する施設がないことを明らかにした。「ダイヤモンド・プリンセス」のケースでは船内の感染拡大を防げず、お粗末だと散々こき下ろしたのはアメリカのメディアだったが、言わんこっちゃない。
 最後に日本。
 専門家会議のミッションがいまひとつはっきりしない。医学の専門家の立場から、方針策定や対外情報発信すべきと思うが、そうなっていない。それで厚労相や安倍さんが説明に立つと、対応が遅いことには後手後手だと批判され、遅まきながら小中高一斉休校を要請したことには実効性があるのかとか専門家の助言があったのかなどと疑義を呈され、実り多いものではない。本来、経済・社会情勢をも勘案し、総合的に政治判断するものだと思うが、日頃、信頼を失ってきた安倍さんには何かと世間の風当たりが強い。このご時世に安倍政権支持・不支持の分断が一段と激しくなっているように見えるのは、ちょっと嘆かわしい。PCR検査が制限されてきたことについても、国賓の迎え入れや東京オリパラと絡めて、不当に感染者数を抑えているのではないかと邪推されてきた。そんな世間に充満した不満を察したのか孫正義さんがPCR検査を100万人に提供したいという内容を呟くと、医療態勢が整っていないことなどを理由に医療現場に混乱を招くなどと波紋を広げているそうだから、状況は徐々に理解されつつあるようだ。どうやら感染しても8割方は軽症であり、検査したところで正確性に欠け、治療しようにも今のところ特効薬もワクチンもなく、従って重症化しない限りは検査に殺到せずに先ずは自宅療養するのが現実解であり、医療のリソースは重症者に振り向ける、のが良いようだ。
 実際に落ち着くには至っていないが、専門家会議が「一定程度、持ちこたえている」と言うように、昨年までのインフルなどと比べれば、かなり抑制されているように見える。まだ緊張を緩めるわけには行かないが、くれぐれも「コロナ疲れ」することがないように・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

名古屋ウィメンズマラソン

2020-03-09 00:02:30 | スポーツ・芸能好き
 今日はびわ湖毎日マラソンの結果を気にしており、名古屋ウィメンズマラソンはノーマークだった。結果を見て、思わずYouTubeを見た。一山麻緒選手が、冷たい雨をものともせず、日本歴代4位の2時間20分29秒で優勝した。1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生選手が出した記録を1分以上、上回り、東京オリンピック・マラソン女子代表の最後の一枠を射止めた。
 彼女は、昨年の東京が初マラソンで、言わばルーキーと言えるが、オリンピック代表を狙っていたのだろう、この一年で実に貪欲にフルマラソン四度目の挑戦だったそうである。私も20年ほど前、アメリカ駐在中のある一年間に四度、フルマラソンを走ったことがある。サンフランシスコ(7月)、サクラメント(12月)、ナパバレー(3月)、サンディエゴ(5月)、さらに10月のレイク・タホで即席の駅伝チームを作り、直前に高齢のおじさんが痛風でリタイアしたいと言い出して、私が二区間20キロ走る羽目になったのはオマケである。これだけ間を置かずに走り続けたので、自身初めてのサブ4を三度出したが、さすがにレースに慣れてしまって、回を重ねる毎に集中力を切らしていった。エリート・ランナーであればなおのこと、体力も集中力も維持するのは並大抵ではないだろうと思う。
 彼女の何が素晴らしいかと言って、走る姿が見とれるほど、なのだ。クセのある走りが悪いわけではないが、Qちゃんは「ゴム毬のように、はずむよう」だと形容し、野口みずきさんは「フォームがすごくいい。腰高で、お尻の位置がすごく高い・・・まるでアフリカ勢のような走り。ストライド型で筋力の強さを感じるし、体幹も強い」と言ったように、痩せた身体にしては足腰がしっかりしており、158センチの身長よりもずっと大きく見えるような、安定した堂々とした走りなのだ。そしてペースメーカーが外れる30キロの手前から抜け出し、自分のペースを貫いたのは、先週の(後れても盛り返した)大迫傑選手を彷彿とさせた。
 なお、野口みずきさんは「厚底シューズにも合う走りだと思う」とも語っている。厚底シューズは、反発力があるため、体重が軽い女子ランナーは必要以上に弾んで、履きこなすには臀部などの筋力が必要で、どちらかというと不向きだと言われる。今回も、上位10人中、彼女だけだった。
 いやはや、最近やや沈滞気味の女子マラソンに、期待の新星が誕生した。本番のオリンピックが楽しみだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

コロナ禍⑤マスクがない

2020-03-02 23:44:36 | 時事放談
 陽水の「傘がない」に引っ掛けたのだが、新型コロナウイルス流行のご時世に、私にはマスクがなく(正確には虎の子の数枚を、万が一のために残して携帯している)、毎朝・毎晩、満員電車に揺られながら、感染してたまるかという精神論で頑張っている(笑)。マスクが入手できないのだからどうしようもないのだが、つい最近、WHOが公開した、マスク使用についての一般向けアドバイスによれば、マスクを装着すべきケースとして、
●健康であれば、感染の疑いのある人の世話をする場合のみ必要
●咳やくしゃみをするなら必要
●マスクが有効なのは、アルコールベースの手指消毒剤または石けんと水で頻繁に手洗いすることと組み合わせた場合のみ
●マスクをするなら、その正しい使い方と廃棄方法を知る必要がある
とあって、精神論にもなんとか裏付けが伴うこととなった(笑)。まあ、気休めであって、マスクは有るに越したことはないと思うが、無くてもそれほど悲観することもないかも知れない(https://www.who.int/emergencies/diseases/novel-coronavirus-2019/advice-for-public/when-and-how-to-use-masks)。新型コロナウイルスから身を守る効果的な方法として、WHOのQ&Aによれば、「頻繁に手指を洗い」「咳やくしゃみをしている人から最低でも1メートル距離を置き」「目や鼻や口に触れない」こととある。言い古されたことではあるけれども・・・。そして何より良い睡眠と良い栄養で免疫力を高めておくことが重要だろう。
 ここ数日で、ずいぶんと動きがあった。安倍首相から、大規模イベントの中止に続いて、小中高の臨時休校を全国一律に求められ、ちょっとしたパニック状態だ。既にトイレットペーパーやティッシュペーパーの買占めが問題になっていたが、自宅待機の子供のためであろう食パンや菓子パンの類いも品切れになっているらしい。デマと分かっていても念のため、あるいは先回りしたい気持ちも分からないではないのだが・・・。
 そもそも、政府は何を言っても何をやっても批判的に受け止められているかのようだ。水際での食い止めは失敗したと言われるが、中国の隠蔽のせいで既に相当数の(100万ともいわれる)中国人が訪日していたので、土台、水際での食い止めなど手遅れだったのではないか。ダイヤモンドプリンセス号の隔離も失敗だったと言われるが、他に引き受け手がない中、3700人もの大量の受け入れは困難だったため、大航海時代よろしく船内隔離せざるを得なかったのであって、出来ないものは出来ないと見捨てていたらもっと非難されていただろう(外気と入れ替えられればよかったのだろうが、内部循環だったらしい)。東京オリパラ実現に配慮して、感染者数を低く見せるために検査をサボっているのではないかと邪推されているが、医療崩壊を懸念する声があるのは事実だし、仮に日本だけ無事だったとしても他国で蔓延していれば開催は難しいのではないだろうか。休校要請は唐突だと言われるが、昨今の状況から、何も備えていなかったとすれば、そちらの方こそ危機意識が足りないことにはならないだろうか。専門家の意見や科学的根拠が重要というのはもっともだが、私たちは新型コロナウイルスについてどこまで分かっているのだろう。そして、この期に及んでなお与野党の非難の応酬や犬猿の仲は見っともなくはないか・・・
 それもこれも、先が見えないのが不安になるからだろう。韓国やイランでは特定の地域に患者が集中して見つかっているのに対し、日本では全国各地に感染経路が見えてこない患者が点在する形になっており、この状態が進めば、感染が点から面になる恐れがあると警告する専門家がいる。北海道で感染者が増えているのは、北国故の密閉された環境が問題だと想像されるが、首都圏や大阪などで感染者が少ないのは、検査態勢が整備されていないせいで、症状が出ない不顕性感染者や軽症の患者が潜在している(従い感染拡大に歯止めがかからなくなる)可能性があり、先ずは「この1~2週間の瀬戸際」への対応が重要なのだろう。
 この新型コロナウイルスのためにすっかり霞んでしまったゴーン逃亡事件の時にも感じたのは、危機管理における日本語と英語による効果的なコミュニケーションのあり方だ。とりわけ今は、誰もが手探りの状況で、デマや不安を掻き立てる言説も多いだけに、もう少し何とかならないものかと切に思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京マラソン

2020-03-01 23:40:42 | スポーツ・芸能好き
 今日の東京マラソンは、3万8千人の一般参加が中止され、僅か200人のエリート・ランナーだけが走る異例のレースとなった。恨めしくテレビ観戦していた人も多かったことだろう。普段なら沿道に100万人が詰めかけるところ、感染を避けるために観戦を控えるように(!)声掛けをして、なお7万2千人が「集まってしまった」らしい。それほど注目される中、日本記録保持者の大迫傑選手が自らの日本記録を更新し、日本人トップでフィニッシュした。
 彼がMGCで2位と5秒差の3位に沈み、五輪代表内定を逃したことこそが予想外だった。それだけに、かれこれ半年、ゴールしたときの鬼の形相と言い、インタビューで思わず涙したところと言い、彼の苦悩が忍ばれる。彼ほどのランナーでも期待通りにきっちり結果を出すのは並大抵ではなかっただろう。本当によう頑張ったと思う。
 MGCが終わったとき、瀬古さんは、日本記録保持者で三枠目の可能性が高く、東京五輪までの日程を考えれば東京マラソンにも来週の琵琶湖マラソンにも参加しないで「待つ」のが得策だと言われていた。ところが、状況は必ずしも安穏としていられるものではなかった。今日も、海外勢を含めて上位30人中28人がナイキの新旧厚底シューズを使用していたそうだ。さすがに瀬古さんは「シューズが進化するのは当たり前・・・(略)・・・シューズで(タイムが)良くなったといわれるとかわいそう。選手が努力した結果だ」と言われたものの、大迫に続く日本人選手を見ても、2時間6分台が2人、7分台が7人と、実に10人が2時間7分台以下であり、日本男子歴代20傑の中に新たに8人がランクインするほどの高速レースとなったのは、シューズの格段の進化なしにはあり得なかっただろう。大迫が敢えて代表の座を掴みに行った所以でもあろうかと思う。
 ところでトリビアとして・・・大迫選手のために5年前にアスリート・フード・マイスターの資格を取得した奥様からのレース直前の差し入れは「普通のカステラ」らしい。栄養補給に優れ、体内にゆっくりと糖が吸収されるため、スタミナの持続効果を持つのだという。昨年の東京マラソンで、奮発して「高級カステラ」にしたところ、初めて途中棄権となったのは、奥様によると「高級カステラには風味や食感を出すためにバターがふんだんに使われることが多く、胃にもたれやすかった」とのこと。もしそれが本当なら一流選手が如何に微妙なところで勝負しているかが分かるが、庶民には有難いエピソードだ(笑)。
 プロ野球オープン戦は無観客で行われているし、大相撲春場所も無観客と決まった。ファンあっての興行であり、ファンの歓喜と一体となってこその盛り上がりである。オリンピック本番で彼の勇姿を見るためにも、外出することが緊張を強いるような状況を脱して、かつての日常に早く戻りたいものだと思う。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする