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カントがいう「自然の隠微な計画」はけっして美しいものではありません。それは人間の善意によってよりも、むしろ悪意や攻撃性を通して実現されるからです。その意味で、われわれはどんな悲惨な状態にあっても、絶望する必要はないということになります。しかし、たとえ窮極的に「自然の狡知」が働くとしても、われわれはこのまま座視してよいわけではない。人間にとって致命的なカタストロフがおこる前に、われわれはカント自身がそうしたように、実現可能なところから始めるほかないのです。
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人間はいま、緊急に解決せねばならない課題に直面しています。それは次の三つに集約できます。
1 戦争
2 環境破壊
3 経済的格差
これらは切り離せない問題です。ここに、人間と自然との関係、人間と人間の関係が集約されているからです。そして、これらは国家と資本の問題に帰着します。国家と資本を統御しないならば、われわれはこのまま、破局への道をたどるほかありません。
(ken) 私は、こんな時代にあって「世界共和国」を真面目に説く柄谷行人さんを心から尊敬しています。ギリギリの思想的葛藤を経た上での結論は重いですし、「実現可能なところから始める」覚悟にも共感を覚えました。さらに、①戦争②環境破壊③経済的格差という緊急に解決すべき課題についても、まったく同感です。三つを切り離さずに、一体のものとして「国家と資本を統御」していくことは、現実的には不可能なのかも知れませんが、破局への道を避けるためには不可欠であるといえます。常識にとらわれていたら、絶対に解けない問題でも「不可能が証明」されたわけではないので、柄谷氏が説く道筋をあきらめてはいけないと思いました。(つづく)