物部の森

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日記風に書いてます。

【書籍】キュレーションの時代

2011年05月06日 | Weblog
 『キュレーションの時代』(佐々木俊尚著、ちくま新書)を読む。

 「キュレーター」というのは、日本では博物館や美術館の「学芸員」の意味。世界中にあるさまざまな芸術作品の情報を収集し、それらを借りてくるなどして集め、それらに一貫した何らかの意味を与えて、企画展として成り立たせるための仕事。そこから情報社会論の世界では、無数の情報の海の中から、自分の価値観や世界観に基づいて情報を拾い上げ、そこに新たな意味を与え、多くの人と共有することを「キュレーション」という。
 ネットの発達で、テレビ、新聞、出版、広告など、大手メディアが亡び、今後の情報の常識は決定的に変わる。人と人のつながりを介して情報をやりとりする時代が来る。そこでは誰もが、必要かつ重要な情報を選んで意味づけ(キュレーション)し、みんなと共有する「一億総キュレーション」の時代が到来してくる。そして、その中でツイッター、フェイスブック、フォースクエアといったソーシャルメディアが大きな役割を果たす。
 前半はエグベルト・ジスモンチの日本公演や、映画、アート市場など、豊富な例をあげながら、日本の消費市場やマーケティングの変化について述べている。主題である「キュレーション」という言葉が出てくるのは、本書では後半になってからである。そうして最後は、人々が互いに多様な情報発信を行い、文化がアンビエント化し国境を越えてつながっていくという、グローバル文化論へと発展していく。
 中身は非常に幅広く示唆に富んでいる。情報社会論におけるキーワードやキーコンセプトについても丁寧に解説されている。事例一つ一つを取っても、どれも興味深く、さらに突っ込んで知りたいと思わせるものが多い。本書が多くの書籍紹介や書評で高く評価されているのが一読してよく分かる(というかもう三回読んだ)。大傑作である。
コメント
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