民主党の小沢党首が辞任を表明した。
福田首相の連立要請、それに先立つテロ特別措置法の譲歩(小沢さんの主張する、「国連決議で認められた活動には参加し、現在の給油活動からは撤退する」というものへと歩み寄る)に、賛同し、かつ民主党内で否決されたためだ。
今回は、この狸親父顔の小沢さんは腑に落ちる行動をしてくれた、と感じた。それは、最近、テロ特措法・・・というより、憲法九条を抱えた日本が、どのように国際貢献していくかという方向性において、小沢さんの案は筋が通っている、と思えたからだ。
◆日本の海外自衛隊活動の現状
問題になっているアフガニスタンでの治安維持(的)活動は、2種類ある。
(1)ISAF(国連治安維持部隊)
:ボン和平合意に基づき、国連による紛争解決後に組織された「部隊」。日本は未参加。小沢さんはこれへの参加を提案している。
(2)OEF(不朽の自由作戦)を進める米軍主導部隊
:安保理の決議(1368)を楯に、アフガニスタンを攻撃した米軍が、カブール陥落後も駐留し、オサマビン・ラディン氏の捜索、アルカイダの残党を殲滅させることが目的。日本がこの部隊への給油活動をしている。
日本は今まで、(2)=日米同盟を重視、「人の死なない、安上がりな」国際貢献、を選択してきた。これは「国連中心主義」に反するじゃないか?・・・2001年の戦争勃発直後は、そうでもなかった。アメリカの攻撃は、国連が「集団的自衛権の発動をしても仕方がない、むしろテロとの戦いには国連もあらゆる必要な手段をとらなければと思います」と決議した後に始まったものだからだ。
しかし、カブール陥落、和平へのステップのときに、このアメリカの攻撃的活動は、国連が認めたものではなくなった。日本の、米軍活動への支援(日米同盟重視)が、国連中心主義と「ねじれ」たのはこのときである。
これを踏まえ、小沢さんは、「戦争終結後は、国連活動であるISAFに参加しましょう」と言っているのである。すなわちこれは、(1)=国連中心主義、「人の死ぬ可能性のある本格的な」国際貢献、の選択である。
◆日米同盟のコスト
私が、小沢さんの意見に賛同する理由がいくつかある。
1)筋が通っている。憲法九条という解釈範囲の広い問題を、持続的に納得させることができる解釈にするためには、論理性が必要。
2)アメリカの活動より、国連の活動のほうが(まだ)国際貢献として有用だと信用できる。
3)米国傘下からの脱却。自衛機能として他の道を模索すべき。
である。特に、(3)、「同盟関係」でなく「傘下にある」状態から脱却しなくてはまずい。なぜか?この軍事同盟のコストが、非常に大きかったのではないか、と最近思うからだ。もちろん直接的には、国内における米軍駐屯地の提供等がある。しかし、これが経済制度変革にも及ぼされているのだと考えると、それどころでなく、日本の会社で働くすべての労働者に関する不利益になってくる。
『拒否できない日本』/関岡英之
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『誰のための会社にするか』/ロナルド・ドーア
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(最近周りで話題だった本である。前者は、日本の「規制改革」:商法改正による持ち株会社、社外取締役制、委員会設置会社、時価会計導入、司法制度改革による裁判員制度、ロースクール設置、弁護士数増加政策などなどが、いかにアメリカの利益計画の下、アメリカの圧力によってなされてきたかが書かれている。後者は、特に金融自由化や、会社法改正などによる「株式会社の可視化」がもたらした労働環境の悪化、株主利益の増大のしくみなどを書いている。)
◆なぜドイツになれなかったのか
話がそれた。軍事同盟→アメリカによる経済政策への圧力、は飛躍的だし、直接的には貿易黒字などによるものでもあるだろう。とにかく、小沢さんの国際貢献方針は、少なくとも現在より理にかなってると思う。
この国際貢献の話と、上記二つの本、国際舞台における印象において、日本とドイツは非常に対照的である。
日本:敗戦国、安保理の常任理事国ではない、後発的先進工業国、アメリカの軍事的傘下、対米貿易黒字、アメリカ文化(株式会社など)の受け入れ、最小限の国際貢献
ドイツ:敗戦国、安保理の常任理事国ではない、後発的先進工業国、EUの成立に主導的役割、労働者保護、社会福祉制度の充実、環境立国としての地位確立、独自の判断で、ISAFと対テロ作戦の両方に兵員を派遣
戦後、いくつかの共通点に対し、ドイツはEUという、歴史と価値観を共有できる国々と対米拮抗力を持った。
対して日本は、アメリカという一国に依存し、軍事的政治的金銭的コストを最小限にしてきた。他のアジアの国々と「拮抗力」を培う選択肢はなかったのだろうか?
最近の私には、日本という国が、国際的役割としても、国内経済や(株主、消費者ではなく)労働者の労働環境政策においても、二流の国に見える。