「レイシズム」という言葉を最近あまり聴くことも
使うこともないが、もっと流行していた時代も
あるのかもしれない。この本は2000年7月の出版。
アメリカで、先住民、黒人の居住比率の多い地域に核廃棄施設や
重化学工業が立地している現状を書いている。
朝日新聞記者と、アメリカで人権活動をしているという
2人の著書です。副題は「アメリカ「がん回廊」を行く」。
舞台は、南部のテキサス、ルイジアナ、ニューメキシコ
らへんが多い。
例えば―
ニューメキシコのインディアン保留地で、
放射性廃棄物の処理施設の受け入れ(多額の補助金付き)
をめぐって部族が真っ二つに割れたり、ゴミ処分場が
「貧富にかかわらず黒人コミュニティーに偏在している」
といって運動が起こったり。
印象に残ったのは、この運動の発端となった研究。
全米の地域社会の人種構成を郵便番号ごとに分析し、
有害廃棄物処理施設や投棄場所の分布を比較したという。
このほかのレポートでは、「汚染者に対する罰金も、
白人地域は黒人地域より5倍近い格差がある」。
・・・本題から外れるが、地方分権が進んだアメリカでは、
制度の違う自治体×人種の違い(×性別、所得の違い×…)
と、さぞ経済学者が分析したくなりそうな環境だなあ、と
思ってしまった。
上に上げた州などをまたぐインディアン保留地では、
粗末な作業着でウランの採掘を先住民たちが長年
携わっていた。
(何のとりえもない荒れた土地を与えたら、後年になって
地下にウランがあることがわかった、のだそうだ)
1970年代後半に選定された
超ウラン廃棄物(ウランより原子番号の大きい
放射性物質を含む廃棄物)を地下貯蔵する
「廃棄物隔離パイロット処理施設」もニューメキシコへ。
各施設から廃棄物を集め、運搬するルートも、
ヒスパニックやインディアンの多い地区となっているという。
いやでも青森の下北半島を思い出してしまいそうだが、
アメリカで、なぜこのような政治決定になってしまうのか
という分析は紹介されていない。
ほかにも、イチゴ農場で農薬被害に苦しむ黒人労働者の
話などがある。
特別編としてインディアンがゴールドラッシュの影でいかに
虐殺されてきたかを記したレポートもある。
(これが本当にひどい。インディアンは人ではないから
罪ではないのか。政府が金を出して「志願兵」に金を
出していた。焼き討ち、だまし討ち、作業労働者への
連行。何十万というインディアンが死んだという)
こういう「迷惑施設」の立地場所は、国や自治体の姿勢を
表す。下水処理場のように臭いが出なかったとしても、
高度な工場でもアクシデントはあり、日本のコンビナートでさえ
年に数回は硫酸が流れ出たり水素に火がついたりする。
人種、という要因に付いて考えたことはなかったが、
自治体の決定がどうなされるのか、興味を深めた。
見識はついたが、さてはたしてどうすればよいのか、
環境NGOの力が強いといわれるアメリカで、どのような「成果」が
あったのか、もうひとつぐっとひきつける事実が欲しかった気も
する。
…ちなみにこの記者、wikipediaにはいろいろ書いてありますね。
とだけ言っておきます。
使うこともないが、もっと流行していた時代も
あるのかもしれない。この本は2000年7月の出版。
アメリカで、先住民、黒人の居住比率の多い地域に核廃棄施設や
重化学工業が立地している現状を書いている。
朝日新聞記者と、アメリカで人権活動をしているという
2人の著書です。副題は「アメリカ「がん回廊」を行く」。
舞台は、南部のテキサス、ルイジアナ、ニューメキシコ
らへんが多い。
例えば―
ニューメキシコのインディアン保留地で、
放射性廃棄物の処理施設の受け入れ(多額の補助金付き)
をめぐって部族が真っ二つに割れたり、ゴミ処分場が
「貧富にかかわらず黒人コミュニティーに偏在している」
といって運動が起こったり。
印象に残ったのは、この運動の発端となった研究。
全米の地域社会の人種構成を郵便番号ごとに分析し、
有害廃棄物処理施設や投棄場所の分布を比較したという。
このほかのレポートでは、「汚染者に対する罰金も、
白人地域は黒人地域より5倍近い格差がある」。
・・・本題から外れるが、地方分権が進んだアメリカでは、
制度の違う自治体×人種の違い(×性別、所得の違い×…)
と、さぞ経済学者が分析したくなりそうな環境だなあ、と
思ってしまった。
上に上げた州などをまたぐインディアン保留地では、
粗末な作業着でウランの採掘を先住民たちが長年
携わっていた。
(何のとりえもない荒れた土地を与えたら、後年になって
地下にウランがあることがわかった、のだそうだ)
1970年代後半に選定された
超ウラン廃棄物(ウランより原子番号の大きい
放射性物質を含む廃棄物)を地下貯蔵する
「廃棄物隔離パイロット処理施設」もニューメキシコへ。
各施設から廃棄物を集め、運搬するルートも、
ヒスパニックやインディアンの多い地区となっているという。
いやでも青森の下北半島を思い出してしまいそうだが、
アメリカで、なぜこのような政治決定になってしまうのか
という分析は紹介されていない。
ほかにも、イチゴ農場で農薬被害に苦しむ黒人労働者の
話などがある。
特別編としてインディアンがゴールドラッシュの影でいかに
虐殺されてきたかを記したレポートもある。
(これが本当にひどい。インディアンは人ではないから
罪ではないのか。政府が金を出して「志願兵」に金を
出していた。焼き討ち、だまし討ち、作業労働者への
連行。何十万というインディアンが死んだという)
こういう「迷惑施設」の立地場所は、国や自治体の姿勢を
表す。下水処理場のように臭いが出なかったとしても、
高度な工場でもアクシデントはあり、日本のコンビナートでさえ
年に数回は硫酸が流れ出たり水素に火がついたりする。
人種、という要因に付いて考えたことはなかったが、
自治体の決定がどうなされるのか、興味を深めた。
見識はついたが、さてはたしてどうすればよいのか、
環境NGOの力が強いといわれるアメリカで、どのような「成果」が
あったのか、もうひとつぐっとひきつける事実が欲しかった気も
する。
…ちなみにこの記者、wikipediaにはいろいろ書いてありますね。
とだけ言っておきます。