G20は共同声明で「通貨安競争回避」をうたったものの、人民元を巡る米中のつばぜり合いに加え(結果的にドル安環境を醸成する)追加緩和に向かう米国に対する新興国群の反発という対立軸など、協調体制は宣言するものの各国の思惑が入り乱れむしろ協調の難しさを示すことになった。
結局、11月のソウルでのG20サミットに持ち越しという感じ。宣言に盛り込んだ文言にしても、各国各様の思惑の中で都合のいいように解釈するので、そんなこと認められたっけ?という解釈の相違が見られそうだ。
実際に「準備通貨を持つ国々を含む先進国は、為替相場の過度な動きや無秩序な動きを監視する」の最後の表現を捉えて、介入の道は閉ざされていないとの内容を語ったとされる我らが財務相の解釈がそれだろう。午後になってのドル円の急な動きは、その辺りを試すような展開であっさりと戻りの安値を更新(すなわち95年5月以来の円高)。80円60銭台に入って来た。
そんなときに都内帝国ホテルで日経が開いている「世界経営者会議」での東芝の佐々木社長のスピーチの内容が報じられていた。ドル円70円時代を見据え昨年10月に社内に「プロジェクト70」という対策室を立ち上げという。1ドル=70円を想定したストテステストを実施することから始めたらしいが、その段階で1ドル=70円などなるわけないとの意見が大勢を占めていたそうな。しかし、「ドルの強さ、円の強さを考えるとあり得る」との判断をしたという。スバラシイではないか。70円台はついに指呼の間。
為替相場を考える際に当方はいつも昔、高校時代に数学で習った「ベクトル」の考え方を自己流に判断材料に使っている。ベクトルとは力の方向(矢印)と強さ(量)を表すが、例えば大きな(換言すれば「目立つ」)円安ベクトルも、様々な(目立たない)ドル安ベクトルを合わせると、それは(時間の経過とともに)ドル安という方向を示すようになる。結局小さなドル安要因を合わせると、大きな円安(ドル高)要因を押しのけるというわけだ。足元の相場はそうではないが、かつては国内では理解不能とされた円高時代もそれでかなり説明がついたりした。今は言うまでもなくFRBの追加緩和というドル安ベクトルが目立っている。
・・・・・とあれこれ書いているうちにオイオイオイ80円50銭を割れて来た。
ゴールドマン・サックスが追加緩和の規模を最大2兆ドル規模とする見通しを公表したとやらで、金も買い戻されている。しかし、今のFRBのバランスシートは今月初めで2兆3000億ドル程度。倍増ということになる。当方も、ちまちまと様子見の対応策での失敗を日銀の例から学んだFRBの施策は大きなものになるということも考えて来たが、2兆ドルねぇ。。。。「やるリスク」よりも「やらないリスク」を重視し、「やる」ということ。しかし、やってどうなるかは、やってからでないとワカラナイという禅問答のようなオハナシ。
「海図のない航海」ゆえにゴールドを携えてとの考え方が中銀にも広がっている。