19日のNY金は再び1800ドル方向を試したものの、NYの昼前に長期金利の上昇が始まり1.6%を超えて水準を切り上げると、上げ幅を削ることになった。押し目買いにアジア時間午前から買い優勢の流れとなると、意外にもそのままアジアの午後さらにロンドンの時間帯と続き、この段階で1780ドルを越え1783.10ドルまで上値を見ることに。その後はNYの早朝に向け売り優勢となり押し戻されて1780ドル割れに。ところがNYの通常取引に入って以降は再び買いを集めロンドン時間の高値を越えて1786.00ドルまで上値を伸ばした。その後に米長期金利が上昇し、一時1.644%と5月20日以来5カ月ぶりの水準まで上昇すると、急速に上げ幅を削ることになった。前日比で20ドルほど上げていた価格は、押し戻されて結局4.80ドル高の1770.50ドルとレンジの上方で終了。いわゆる行って来い。。状態ということに。
7~9月期の決算発表が始まっている米国株式市場だが、ここまでのところ予想以上に好決算を発表する企業が多く、リスクオン・センチメントの復活が見られ、つられるように長期金利の先高観も強まっている。長期金利の上昇は、そうした中で起きたものだが、インフレ懸念の高まりを映したものでもある。この環境下で金が1700ドル台後半の水準を保っているのは、こちらもやはりインフレがサポート要因になっている。長期金利の上昇だが、インフレ高進が実質金利の上昇を抑えることから、売り圧力としての材料性を以前より弱めている。
そのインフレ見通しに関連して、この日の夕刻にスタンフォード大学経済政策研究所で講演した米連邦準備理事会(FRB)のウォラー理事の発言が注目された。
「インフレ加速は一過性のものになる」としながらも、リスクが変化しており、急速な物価上昇が続くかもしれないという「大きな懸念」を抱いているとした。「一過性かどうかを見極める上で今後数カ月が重要」としたうえで、年内高止まりすれば、「2022年にはテーパリング(資産買入れの縮小)だけではなく、より積極的な政策対応が正当化されるかもしれない」と発言。「インフレ期待が不安定化した場合、雇用を脇に置いてインフレ期待を再び落ち着かせる必要がある」とした。
テーパリングの決定、11月半ばから着手が11月のFOMCにて見込まれ、市場でも織り込み済みだが、インフレ動向の見極めをどうするかも焦点となる。 ウォラー理事は、テーパリングについて米国経済は準備ができているとし、11月に開始し、来年半ばまでに終了すべきだとの考えを表明。また、高インフレが想定以上に長引く可能性がある一方、労働市場は改善しており、1970年代のようなスタグフレーション(景気低迷下でのインフレの高進)に陥る可能性は低いと強調している。
本日はそのFOMCに際しての基礎資料となるベージュブック(地区連銀経済報告)が公開される。 なお、ここで折に触れ取り上げるアトランタ連銀のGDP予想値「GDP・Now」だが、7~9月期成長率予想は10月19日に0.5%と5日時点の1.2%から引き下げられた。13項目にわたる指標の発表ごとに予想値がはじき出される。8月下旬まで6%成長が予想されていた。この辺りも金市場のサポート要因になっているともいえる。