亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

長期金利上昇にもかかわらず金続伸の背景  

2021年10月21日 20時16分02秒 | 金市場

前日は米長期金利の上昇で、いわゆる「行って来い」状態となったNY金。20日はNY時間外のアジアの時間帯から長期金利が上昇し、一時1.673%と5月14日以来5カ月ぶりの水準に達する中でも、金市場では買い優勢の流れが続くことになった。静かに水準を切り上げながら進行した相場はNY時間午前の中頃まで続き、その時点で1789.60ドルまで買われ、これがこの日の高値ということに。流れが止まったところで売りが膨らみ10ドルほどストンと水準を切り下げたが、それをこなすと再び戻りに転じ、切り上げた水準を維持して1784.90ドルで終了した。その後の時間帯にFRBが地区連銀経済報告(ベージュブック)を発表したが、時間外の金市場への影響はほとんど見られなかった。

長期金利が5カ月ぶりの水準に上昇したにもかかわらず買われた金の背景にあるのは、インフレ見通しの高まりだ。連日伝えられる原油価格の高騰が、いよいよ市場関係者のみならず一般生活者の関心事になるほど、インフレへの関心が高まっていること。これまでインフレ懸念の高まりは、米連邦準備理事会(FRB)をして引き締め策(利上げ)への転換を急がせるとの見方から、金の売り要因となってきた。ただし、長期金利の上昇(名目金利)も、インフレ高進を加味した実質金利で見た場合、割引いて見る必要がある。インフレ期待が高まるほどにその傾向も強まる。つまり、金の売り要因としての長期金利上昇の材料性は後退する。

さらに、ここにきて米国経済に減速の兆しが高まっていることがある。昨日最後に取り上げたが、12行ある地区連銀のひとつアトランタ連銀が、米商務省のGDP計測モデルに沿って主要データの公表ごとにGDP予想値を発表しているものに「GDP・Now」がある。

7~9月期GDP成長率予想は10月19日に0.5%まで下がっていることを取り上げた。15日時点の1.2%から引き下げられたものだが、昨日はこの15日が5日になっていたのでここで修正。更新時のペースト(貼り付け)の際に“1”が欠落したもの。繰り返しになるが、8月下旬まで6%成長が予想されていたが、0.5%まで落ちてきた。GDP・Nowの次の更新は10月27日になっているが、商務省による7~9月期速報値の発表は翌日10月28日になっている。

仮に1%割れが現実のものとなると減速より目線が上がっているだけに失速の印象が強まるのは否めない。このような環境の中でインフレ抑制を目的とした引き締め方向への政策転換は、FRBとしても取りにくいだろう。20日も複数のFRB関係者の講演など発言が伝えられたが、テーパリングに着手し来年中頃までには終了という点で一致するものの、利上げについては足元のインフレ懸念高まりはあるものの、先の話というスタンス。先ごろ副議長の任期を終えて理事職に就いているクォールズ理事は、インフレ率はFRBの目標を超え上昇しているものの、来年には鈍化する公算が高いとした。

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