先週末7月28日のNY市場の金価格は反発となった。この日発表された経済指標が、インフレ圧力の高まりを示さなかったことから、米連邦準備理事会(FRB)の利上げが継続するとして前日に高まった過度な警戒が和らいだ。
前日に4%を超え、この日もNY時間外に4.041%まで上昇していた米長期金利が、終盤に向け低下し3.954%で終了。前日は1950ドル割れまで売り込まれていた金市場では、買戻しの動きがみられ反発となった。米2年債、7年債、10年債、30年債の利回りは、いずれも前日に2週間ぶりの高水準を付けていたが、この日は全般に水準を切り下げた。
またドルが対ユーロなどで下落したことも、ドルの代替投資先とされる金の買い手掛かりとされた。NYコメックスの通常取引は、前日比14.70ドル高の1960.40ドルで終了した。
NY金はテクニカル上、1940ドル近辺がサポートゾーンとなり、先週は売り込まれたもののこの水準を維持したことから、米経済の堅調さなどを織り込んだ上で見せた反発を、強気のシグナルと捉えることができるとみる。
なおNYコメックスの金価格は、この日から中心となる取引が8月物から2023年12月物に移行した。
4か月分の金利を勘案する形で8月物に対しプレミアムが上乗せられた取引となるが、この日の12月物の終値は前日比14.70ドル高の1999.90ドルとなった。8月物は先に書いたように1960.40ドルなので39.50ドルもの開きがある。3カ月物TB(短期国債)の利回りが5.410%にもなるので、プレミアムがかさ上げされ2000ドル大台に接近することになった。
米商務省が28日発表した注目の6月の個人消費支出(PCE)価格指数(デフレーター)は、前年同月比で3.0%上昇し、伸び率は2021年3月以来、2年3カ月ぶりの低水準だった。5月は3.8%上昇していた。 一方、FRBが注視していることで知られる変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数(コアPCEデフレーター)は前年同月比で4.1%上昇し、伸び率は21年9月以来の低水準となった。4.2%上昇の市場予想を下回った。5月は4.6%上昇していた。前月比では0.2%上昇と、市場予想(0.2%上昇)と同じだった。5月は0.3%上がっていた。 さらに6月は基調的な物価圧力も緩和していたことが明らかになった。
パウエルFRB議長が賃金インフレの動向をみる際に重視する指標のひとつに、雇用コスト指数(ECI)がある。この日発表された4~6月期分は、前期比1.0%の上昇と1~3月期の1.2%から伸びが鈍化し、市場予想の1.1%上昇も下回った。
この2つの指標の結果から28日の市場ではFRBの利上げサイクルの終了が近づいているとの見方が強まった。