亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金2000ドル台回復、景気楽観論の背景にインフレ鈍化見通し

2023年08月01日 20時06分16秒 | 金市場

週明け7月31日のNY金は続伸で通常取引は前日比9.30ドル高の2009.20ドルで取引を終了した。

昨日書いたように中心になる取引が先週末に8月物から12月物に切り替わったことで、理論的に約4カ月分の金利相当分のプレミアムが乗り、価格水準が押し上げられている。米連邦準備理事会(FRB)による急激な利上げ策により米短期金利は3カ月物でも5%を超えており、限月交代(中心になる取引の交代)に際しての価格差が大きくなっている。この日一時2010,90ドルまで買われ、5月15日以来、約2カ月半ぶりの高値となった。

 

先週の連邦公開市場委員会(FOMC)ではパウエルFRB議長が、経済のソフトランディングの可能性が高まっていると発言をするなど、景気見通しを上方修正したことから、市場は楽観論に傾いている。一方で、FRBは今後の政策方針はデータ次第としていることから、市場は引き締め効果がデータに現れるのを注視している。

この点で今週は4日の7月米雇用統計はじめ重要指標が目白押しのお馴染み月初のイベント週となる。

本日も6月の雇用動態調査(JOLTS)や7月のISM(米供給管理協会)製造業景況指数が発表される。JOLTSは1カ月遅れのデータではあるが求人件数の動向から労働市場を測る重要指標となる。ISM製造業は、引き続き後退を表す50ポイント割れが予想されている。

 

31日はFRBが四半期に1度発表している銀行貸出担当者調査(SLOOS)の第2・四半期分が発表された。銀行に企業や家計への融資姿勢や需要の変化を尋ね公表しているもの。 4~6月期は企業向け融資基準は20年春の新型コロナウイルスの感染拡大初期以来、3年ぶりの厳しさになった。

不良債権の増加が懸念されている商業用不動産向けは、コロナ禍初期並みの基準の高さになっている。消費者向けではクレジットカードへの与信が一段と厳しくなった。

一方で企業および消費者からの融資需要も後退している。利上げにより借り入れコストが上昇していることがある。今後も融資基準の厳格化が示唆されている。

 

FOMCを通過しFRB高官の発言も復活している。

31日は今年の会合で投票権を持つシカゴ連銀のグールズビー総裁がネットメディアのインタビューに答えた。次回9月のFOMCで利上げの一時停止を支持するかどうかは決めていないとした。景気後退を招くことなくインフレ率を金融当局の目標まで引き下げる「黄金の道筋」をたどることは現時点で確実に可能だとの見通しを示し、「われわれはかなり良い線を進んでいるように見える」とした。この辺りは先週のパウエル議長の発言内容とも重なる。

インフレの鈍化を見込んでいることが、楽観見通しの基盤になっているようにみられるが、それは利上げサイクルの終了が近づいていることを同時に意味する。

NY金が限月交代という要因はあれ、2000ドル台を回復したのはそのあたりを織り込んでのものと思われる。

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