前日に米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(ネット版)が報じた、追加緩和の規模についての見通し記事。市場が織り込んでいるほどの規模にはならないという内容のものだった。それを受けて株式市場も金市場もそしてその他市場も昨日は目下がりが目立った。緩和策を既に織り込み、さらに5000億ドル程度の買い越し規模を織り込んできただけに当然か。なんせゴールドマン・サックスなどは2兆ドルという予想を出していたわけだから。足元のFRBのバランスシートの規模は2兆3000億ドル程度なので、2兆ドルはそれこそサプライズとなる。
サプライズといえば2009年3月に決定し、即座に実行に移された総額1兆7500億ドルはまさにサプライズといえた。「shock and awe(衝撃と畏怖)型」と呼ばれているが、今回はそのようなものではなく、まずは1000億ドル程度を決めて実行し、効果の度合いを測りながら進め、時に見直しもありという手法を取りたいのだと分析している。ゴルフにたとえ、新しいパターを使う場合はまずは軽く打って感触を確かめ、その後にもっともうまい使い方を探っていくとしている。
果たしてどうなるか。もともと当方は、バーナンキFRBは小出しにして効果が見られない場合、ならばさらに追加でという方法は取らないのではないかと思っている。それこそかつての日銀のtoo little to lateと呼ばれた形になるからだ。日銀と同じ轍を踏むなというわけだ。したがって、2兆ドルなどということはなくとも、相応に大きめの規模になるのではないかと思っている。それを受けて為替市場でドル安が進んでもそれは市場の評価であって、しょうがないでしょと。雇用と物価上昇の改善という点で、本音はやはりドル安が好ましい。FRBは世界の中央銀行ではなく米国の中央銀行組織であり、国益を優先するは当然のこと。
考えてみれば、ウォール・ストリート・ジャーナルの見込み記事の情報源は定かではないが、効果的な政策実行を意図するなら、リークという形で小規模と見せて実はサプライズということも。あるいは、予想を違える結果に市場が混乱するのを避けるためのアナウンスメントか。
そういえばピムコのビル・グロスが同社レポートで米国も既に「流動性の罠」に落ちているとしていた。インフレを警戒している。