さて注目の米連邦公開市場委員会(FOMC)。
結果が判明した9月20日のNY市場の金価格は、結果が判明する前の時点で通常取引は終了。前日比13.40ドル高の1967.10ドルと5営業日続伸で終了となった。水準としては9月1日以来の高値となる。 しかし、その後のFOMCの結果を受けたパウエルFRB議長の記者会見が、総じてタカ派的と受け止められたことから、債券市場で売りが膨らみ米債利回りは償還年数を問わず総じて上昇。 指標となる10年債利回りが直近の高水準を上抜き一時4.418%と16年ぶりの高水準になる中で、NY金は時間外取引で上げ幅をすべて失うことになった。
結局、NY金の時間外取引は前日の水準に近い1951.30ドルで終了した。通常取引終値からは、15.80ドル低下したことになる。
まずFOMCの結果公表前に買いが先行したのは、NY時間外のロンドン時間に米長期金利が低下し、ドルが弱含みに推移していたことがある。20日発表の8月の英消費者物価指数(CPI)の上昇率が前年同月比6.7%と、過去1年半で最も低くなった。市場予想を下回り、イングランド銀行(英中央銀行)が利上げ停止に動きやすくなるとの見方が広がった。英長期金利の低下が米国債に波及し、米長期金利は低下。ドル指数(DXY)を押し下げ、NY市場ではFOMC結果判明直前まで金は1960ドル台後半の高水準を維持していた。
FOMCは予想通り政策金利を現行の5.25~5.50%に据え置くことを決定。声明文では「インフレ率は高止まりしている」と指摘。同時に「最近の指標は、経済活動が堅調なペースで拡大していることを示している」とし、「雇用の伸びはここ数カ月間鈍化したが依然として力強く、失業率は低いままだ」とした。
同時に公開されたメンバーによる四半期経済予測では、23年末の政策金利は6月予想を据え置き5.6%(中央値)と、年内に0.25%の追加利上げを示唆した。これは予想の範囲内のこと。
見通しの分布図からは、FOMC参加者19人のうち12人が年内あと1回の利上げを支持していることが示された。 さらに高水準の金利をより長期にわたって維持する公算が大きいことを示唆した。具体的には、24年末は5.1%と0.50%の利下げを織り込んだが、前回6月の予想(4.6%)からは0.50%切り上げられた。利下げに転じるタイミングが当初より先送りされたことを意味する。
パウエル議長は「経済見通しはFOMCの決定でも計画でもない」と強調したものの、議長自身が「適切であればさらに利上げする用意がある」と発言したこともあり、タカ派的と受け止められた。
こうした発言を受けて、終盤に米国債売りが膨らみほぼ安値引けに近い状態、つまり利回りは戻りを更新して16年ぶりの高水準で終了。並行して金市場は売りが先行する流れが続き、弱気の地合いは本日21日午前のアジア市場でも売り先行の流れが続いている。
なおFOMCの結果を受け対ドルで円安が進み一時148.36円と昨年11月以来およそ10カ月ぶりの安値を再び更新。このタイミングが1970ドル近いNY金の水準と重なったことから、JPX大阪取引所の金先物取引(夜間取引)は一時9233円まで付け最高値を更新した。その後はNY金の低下を映し上げ幅を削っている。