結局FOMC明けのNY金は6営業日ぶりの反落で前日比27.50ドル、1.4%安の1939.60ドルで終了。1日の下げ率としては8月1日以来の大きさとなる。
昨日書いたように20日のNY金は、FOMCの結果とパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見を受け、時間外取引の時間帯にそれまでの上げ幅をすべて失っていた。21日の通常取引をその下げを含んでいることから、目立った下げとなった。水準としては、単にFOMC前に戻ったことになる。
20日のFOMC後に公表した参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では、23年内に0.25%の追加利上げを示唆し、24年に予想される利下げ幅は0.50%と6月時点の予想(1.00%)から縮小した。別の表現をするならば今回政策金利は据え置かれたものの5.25~5.50%なので、24年を通し5.00%超の政策金利の維持をFRBは意図していることになる。 さらにパウエル議長は記者会見で、必要に応じて追加利上げの用意があることやインフレ目標達成に確信を持てるまで政策金利を高い水準で維持するとの考えを示した。
市場の受け止め方としてはかなりタカ派的というもので、20日は米国債利回りを償還年限を問わず押し上げた。特に長期債の上昇はこのところ続いてきた2007年以来の高水準をさらに更新し、この日は株式市場も目立った下げに見舞われた。
債券利回りの上昇は価格の下落を意味するが、金市場のみならず市場横断的に、FRBが示した方向性を受けシナリオの修正を迫られている。
そんなところに21日は、朝方発表の週間の米新規失業保険申請件数が20万1000件と、市場予想(22万5000件、ダウ・ジョーンズ調べ)に反して減少し、今年1月以来の低水準となった。労働市場の逼迫が続いており、年内の追加利上げの可能性を意識させた。
反応したのはやはり債券市場で、指標となる10年債利回りは一時4.498%と07年11月以来の高水準を連日にわたり更新した。 政策の方向性を示すことで知られる2年債利回りも一時5.204%と06年7月以来の水準まで上昇したが、終盤は押し目買いに水準を落とし5.148%と前日より低下して終了した。
債券市場自体も20年以降の景気下支えのためのFRBによる国債の大量買い付け(量的緩和策)により、以前より値動きが大きくなっている。
ここに来ての米債利回りの上昇は、債券市場のカリスマ投資家をしても読み切れなかったもので、早々に今年の敗北宣言のようなコメントを出したりしている。 さすがにこの環境の中で金市場の中からもNY金は1900ドル方向との弱気見通しが増えており、確かにそう言いたいのもわかる。しかし、実際に価格展開がどうなっているのかと言えば、下値を支える買いが継続している。
もっともドル建て金価格は米債利回りと逆相関性が強いと言っても、金利は多くある変動要因のひとつであって、環境が変化する中でその影響力も変化する。そもそも米債利回りの上昇といっても、いい利回り上昇もあれば悪い利回り上昇もあるわけで、そうした内容も見る必要があり絶対水準だけが判断材料ではない。かつてこの水準の時にはNY金は1600ドルだったとか、700ドルだったとか解説する向きもいるが、大した意味はなく、その時々の市場のメインテーマは何かを考える必要がある。
いまは非常に堅調な米経済ではあるものの、先行きと言えば非常に不透明でソフトランディング見通しが主流になってはいるものの、みな確信をもって唱えているわけではない。したがってゴールドを手放さないし、押し目は買う。