0.25%利上げがフルに織り込まれた来週25~26日開催の連邦公開市場委員会(FOMCを前に、その後の会合での利上げ打ち止めのタイミングを巡る見方の振れが、今週はNY金の日々の値動きに影響を与えている。ただし、それは目先の動きに過ぎず、大勢的なものではないことに注意すべきと思う。 楽観悲観の市場環境の循環の中で、同じように強気を語り、はたまた弱気を語る市場関係者を見かけるが、振り回されない方がいいだろう。
20日のNY金はNY時間外のアジアからロンドンの時間帯は、買い先行の1980~90ドルのレンジに。一方、NY時間に入って以降は一転売り優勢の1970~80ドルの同じ10ドル幅でも後半は下値探りのレンジというふうに色分けされることになった。売りが先行したNY終盤に付けた1967.70ドルがこの日の安値となった。通常取引は前日比9.90ドル安の1970.90ドルで終了した。
NY時間に流れが変わったのは、早朝に発表された週次の新規失業保険申請件数が市場予想より申請者が少なく、労働市場の堅調さが示されたことによる。
米労働省が発表した15日までの1週間の新規失業保険申請件数は前週から9000件減の22万8000件と、5月中旬以来約2カ月ぶりの低水準となった。市場予想は24万2000件への増加だった。ちょうど前週が8月4日発表の7月の米雇用統計の集計期間に重なるとみられ、雇用統計の内容が強含むことが意識されたということらしい。
たしかに米雇用が底堅さを保っていることが賃金上昇の持続として表れ、インフレ沈静化に時間がかかっている大きな背景のひとつになっている。 この結果ひとつで前日は7月の利上げをもって連邦準備理事会(FRB)による利上げサイクルは終了との見立てが高まったが、この日は逆に悪化するとみられた申請件数が逆に減少したことで、9月以降の3会合でさらに1回の利上げという見方が強まり、米長期金利が上昇し、ドルも強含みドル指数(DXY)が上昇、NY金は弱含みという構図。
しかし、ファンドのロボットトレード(プログラム売買)が作ったもので、目先の動きに過ぎない。
20日は恐慌研究で知られるバーナンキ元FRB議長がフィデリティ・インベストメントのオンラインセミナーに登場。家賃の上昇幅の縮小と、自動車価格が下落するとの見通しを背景に、インフレ率は向こう6カ月で3~3.5%へと「より持続的に」低下するとの見方を示した。さらに「7月に行われる利上げが、最後となることはあり得る」とした。
先週発表された6月の米消費者物価指数(CPI)総合指数は、前年比3%の上昇となったのはよく知られている。そのうち2.6%分は住居費であることは知られていない。いま家賃が下がり始めているが、早晩、CPIが持続的に下がるとするバーナンキ議長の指摘は当たっていそうだ。上昇時に投機筋(ファンド)がフル参戦していないNY金だけに、しこり感は薄く2000ドルは節目ともいえない状況にある。