昨日の更新で書いたように19日のNY金はその後も狭いレンジでの推移となった。
NY時間に入り材料視されたのは、英国債買いで低下した英長期金利の流れが、米債にも波及し米10年債買われ利回りが低下、そのままNY金の買い手掛かりとなった。 英国債の利回り低下が何ゆえ材料になるのか。 それは、そもそも英国立統計局(ONS)が発表した6月の消費者物価指数(CPI)が、予想以上に鈍化したことがある。
前年比7.9%上昇と、5月の8.7%から予想以上に鈍化し2022年3月以来の低い伸びとなった。市場予想の8.2%も下回った。欧米各国ともにしぶといインフレに悩むが、英国はその最右翼と考えられていたことから、この結果は影響力を持つことになった。
さらに、ここまで毎月発表されたCPIが予想を上回る結果が続いたことで、イングランド銀行(中央銀行)がいったんは縮小していた利上げ幅を6月に0.5%に拡大していた経緯がある。 実際にCPI発表前市場では、イングランド銀行が8月3日の会合で0.5%利上げを実施する確率を約60%としていたが、結果を受け0.25%利上げに利上げ幅の再縮小が予想されている。
先週発表された6月の米CPIとPPI(生産者物価指数)の鈍化が、直近でドル相場の反落につながりNY金を押し上げたが、英国のインフレ鈍化で市場では欧米中銀による今回の利上げサイクルの停止は近いとの見方が広がることになった。
来週25~26日の連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%の利上げは確実視されているが、問題はそれで終わりか、パウエル議長が予想したようにあと2回となるのかにある。2回となると、現状では9月(19~20日)でなく11月の会合ということになりそうだが、そこまでに出てくる指標は多い。それまでに市場が不安定化する(値動きが大きくなる)可能性がある。
結局、早ければ来週のFOMC後の記者会見にて、パウエル議長がより明確な方針を示すとの見方がある。でないと、次は1カ月後のジャクソンホール会合ということになる。 足元の市場で広がっているのは、来週0.25%利上げし政策金利は5.25~5.50%と2001年以来の高水準に達し終了という見方だ。
利上げサイクル終了に関しては一度は梯子を外された格好のNY金だが、それは市場参加者の一部が前のめりに年内の利上げまで織り込んだことによる。この織り込みは株式市場の方が先行したのだが、期待インフレ率の上昇を嫌うFRB内部から見て、現実はどうなろうとFRBがその(利下げ)可能性まで容認するとは思えなかった。
足元の状況は、紆余曲折を経て再び利上げサイクルの終了を迎えようとしている。しかし、この間に環境は変化し、米国経済のソフトランディングを見込む楽観論も勢いを増している。