今週は、米ワシントンで国際通貨基金(IMF)の秋季総会が開かれ、各国の財務相と中央銀行総裁が集まっている。
ちょうどそのタイミングに合わせ今回ロシアを議長国とするブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成するBRICSの首脳会議をロシア中部カザンで開いている(22~24日)。エチオピアやアラブ首長国連邦(UAE)に加えエジプト、イランも加盟している。今回の参加国は36カ国となっている。
ロシアは、国際市場で農産物の価格決定力を高めることを狙い「BRICS穀物取引所」の創設を提案し、欧米の制裁の影響を受けない国際決済プラットフォームを構築するよう呼びかけるとみられている。
米中対立などすでにあった世界政治の分断は、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに加速したが、主要7カ国(G7)に対抗する形でBRICSサイドも加盟国を増やすなど対抗勢力としての存在感を増している。昨年は一部でBRICSがゴールドを裏付けとした新通貨を立ち上げると煽る向きもいたが、もとよりそう簡単にいくわけもなく単なるノイズで終わった。
そうした中で22日、イエレン米財務長官は孤立主義を批判し、米政府のリーダーシップは世界経済を支え、米国民に利益をもたらすとの考えを示した。関税を経済政策の有力な手段として主張し、広範な保護主義的措置を講じると公約するトランプ前大統領を暗に批判したものだが、G7内の結束をも乱し、米国の求心力低下への懸念がある。
国際政治は流動化し、金(ゴールド)に対し、米ドルは連日価値を落としている。将来の世界的な戦争を想定したポートフォリオを組む大口投資家が増えているとの指摘もある。
さて、現実の相場の方だが、昨日は上値を抜いたことでモメンタム買いを呼び込み新値街道をさらに進むことになった。いわゆる回転が利いている。繰り返し書くように、特定の事件事故などに反応し急伸するいわばイベント型の上昇ではないだけに、現物を中心に売り物も出にくく、需給が締まった市場環境の中で静かに下値を切り上げている。結局、NY金は6営業日続伸、さらに4営業日連続となる史上最高値更新となり、本日も同様の展開となっている。
異なるのは円安が進んでいること。しかもピッチの早い円安は、円建て価格の強力なドライバーになる。 NYではトランプ当選を織り込んだ動きが進んでいるが、果たしてどうなるか。