先週末12日のNY金は、6営業日ぶりの反発で前日比32.40ドル高の2051.60ドルで取引を終了。前日の取引でいったんは買い手掛かりとなったものの、終盤には予想を上回ったCPIに打ち消された形の中東情勢の緊迫化いわゆる地政学リスクの高まりだが、前日の時間外取引さらに12日アジア時間に再び買い材料として意識され金価格を押し上げた。約1週間ぶりに終値ベースで2050ドル台に復帰。
足元のインフレのしつこさが示されたことで前日には売り手掛かりとされた米消費者物価指数(CPI)だったが、この日発表された同じ12月の生産者物価指数(PPI)は予想を下回り、引き続きインフレの沈静化傾向を示したことから、この日は買い手掛かりとされた。
前月比0.1%下落と、市場予想(0.1%上昇)に反し下落した。11月分は前回発表の横ばいから0.1%下落に改定されたことで、前月比での下落は3カ月連続となった。生産者レベルでのインフレ圧力緩和が改めて示され、市場に広がる3月利下げの観測を一転サポートする内容となった。 (食品とエネルギーを除く)コアPPIは3カ月続けて前月比横ばいとなり、前年同月比では1.8%上昇と、2020年12月以来の小幅な伸びにとどまった。
米連邦準備理事会(FRB)は個人消費支出価格指数(PCEデフレーター)のコア指数をインフレ指標として重視しているが、PPIの項目にはいくつか重なるものがあるため、今回の結果が低めに出たことに注目する向きは多い。
12日はNY時間外のアジアの取引スタートは、前日NY時間外で切り上げた水準を維持した状態で始まった。間もなく2040ドル台に乗せたものの、そのまま上値追いとは行かず横ばいのままでアジアの午後まで推移。買い先行に転じたのはロンドンの時間帯で水準を切り上げ、NYの早朝には2050ドルを突破。通常取引に入って以降、件(くだん)のPPIの結果もあって一時2067.30ドルまで付けた。しばらく2060ドル台で滞留したものの、終盤は売りに押され2050ドル割れに。終盤に再度買い戻され2050ドル超で終了となった。
米英軍がイエメンのフーシ派軍事拠点に対する空爆に踏み切ったことで、中東情勢がさらに緊張しゴールドへの逃避需要を高めるとの見方が手掛かりとなった。確かに欧米が徐々に中東紛争に巻き込まれる流れになりつつあるのは否めない。12日にも米軍は新たに単独でフーシ派のレーダー施設を攻撃したと発表した。
今週は本日15日がマーチンルーサーキング牧師記念日の祭日でNYコメックスは休場となる。
週を通しFRB高官の講演など発言機会が予定されており要注目。なかでも16日に予定されているウォラーFRB理事の講演に注目したい。昨年11月28日の講演にてインフレが一貫して低下するなら、金利の「非常に高い」水準への据え置きを主張する「理由はない」とし述べ、その後のNY過去最高値更新へのきっかけを作ったことは記憶に新しい。もともとFRB高官の中でも最右翼のタカ派で知られてきた人物のこの発言は流れを変えるに十分だった。
それから約1カ月半経過し、どのような発言内容となるのか。
経済指標では17日(水)に12月の米小売売上高の発表がある。年末商戦の盛り上がりの程度を見ることになる。増加予想だが、その程度がどうなるか。さらに中東情勢は引き続き注目項目となる。
さらに米国議会にて今週中に2024会計年度の予算が成立するのか否かも注目点となる。米下院では共和党保守強硬派の議員が、超党派の合意をまとめようとしているジョンソン下院議長(共和党)解任に向けた動きも伝えられており、目が離せない。米国政治の分断も地政学リスクの大きな要素といえる。