連休明け16日のNY金は反落した。
FRB高官の発言により、早期利下げ観測が後退、米長期金利が上昇。ドルも主要通貨に対し1カ月ぶりの高値まで買われ、金市場では売りが広がった。通常取引は前週末比21.40ドル安の2030.20ドルで終了。
米ブルッキングス研究所のオンラインイベントで講演したウォラーFRB理事は、FRBが2%とするインフレ目標の達成は「射程圏内」にあるとの見方を示す一方で、インフレ率の低下が持続すると明確になるまで利下げを急ぐべきでないとした。
利下げに関し過去の利下げ局面で見られたように、早期にまたは急速に進める理由がないと語った。政策の軌道修正は慎重に判断する必要があるとする。
もともと同理事の講演は注目度が高かった。
というのも同理事は昨年11月28日、「インフレ率が低下方向に向かっていると確信が持てれば、景気回復などとは無関係に、インフレ率が低下したという理由のみで政策金利を引き下げ始めることができる」と発言。タカ派で知られていた同理事だけに、利下げ転換を見込むこの発言の影響力は大きく、その後米長期金利は大きく低下、結局、その週末(12月1日)にNY金は史上最高値を塗り替えることになった。
16日の発言内容は、3月利下げ見通しを前のめりに織り込んだ市場に対するけん制発言と受け止められたが、発言のトーンは前回11月時点でのものと大きな差はなかった印象。
そもそも当時はタカ派理事による利下げ転換見通しという点にサプライズ感が先行し、市場の反応が大きくなった。基調的には、その後のパウエル議長などFRB中枢部の発言に共通するインフレが確実に鈍化傾向を示す中で、この流れが続くなら(ここまでの歴史的利上げもあり)実質金利が上がってしまい、むしろ引き締め策が利きすぎてしまう可能性がある。したがって24年は利下げ余地が生まれているというもの。
ポイントは、利下げする必要に迫られて利下げするのではなく、利下げできるからするというもの。政策転換に余裕がある。つまりそれほど現時点で米国経済の足元は堅いということを表している。
FRBの政策転換を巡っては、週初に英フィナンシャル・タイムズ(FT)が、アトランタ地区連銀のボスティック総裁が利下げを時期尚早に行えばインフレ率が不安定になる可能性があると述べたと報じていた。
いずれにしてもウォラー理事の発言を受け、米長期金利の指標10年債利回りは、終値ベースで前週末の3.944%から4.067%に跳ね上がり、ドル指数も102.404から1カ月ぶりの高水準103.357へ急伸。ドル円相場も一時は147.32円と、昨年12月上旬以来の円安・ドル高水準をつけた。
政策転換期に見られる、いわゆる揺り戻しの動きといえる。その割には下げ幅が大きかったといえる。
必要なければそのまま保持ということでしょう。人によっては売却でそれを原資に何か別のものに乗り出すのも可で、そのカネをどう生かすか、それぞれの考え方次第ということに。
今週は、再来週13日発売の週刊エコノミスト誌に寄稿し本日ゲラチェックを終えたところです。
金価格の展望ということで、「年内に2300~2500ドルへ」「高まる米ドル永続性への疑問」というタイトル。
ニクソンショックから50年余り、管理通貨制度の賞味期限が試されているかのような代替通貨需要の拡大・・が副題です。