先週ここで紹介したラジオNikkei「マーケット・トレンド」。
このところの金価格の下げについてと、どこまで下げそうなのかという点に焦点を絞った内容を考えていた。ただし、これから話題として盛り上がりそうということで番外編の話題として「11月30日に金をめぐるスイスでの国民投票」というものを加えておりました。
いつも番組開始前に20分ほどする打ち合わせに際し、日本ではあまり知られていないのでこの話題も取りあげようとキャスターの大橋さんと制作担当のラジオNikkeiMさんが、スルドク反応!当日の市況などを省いて時間を作り、放送時間の半分をこのスイスで行こうとなりました。
以下のURLで聞いていただけます。
http://www.radionikkei.jp/podcasting/trend/2014/11/player-20141107.html
「米雇用統計の発表、目先材料出尽くしでファンドの買戻し」
週末11月7日のNY市場の金価格は大幅反発となった。NYコメックスの通常取引ベースで前日比で27.20ドル高は、上昇幅で今年6月19日以来のもの。価格は1169.80ドルで終了し、その後の時間外の電子取引では1170ドル台半ばまで買い進められた。
この日の注目材料は10月の米雇用統計。(非農業部門)雇用者数は前月比21万4000人となりこれで前月比20万人超の増加は9ヵ月連続となった。トムソン・ロイターによると9ヵ月連続は1994年以来最長とされる。ただ市場予想は23万1000人の増加となっており、それは下回ることになった。ちなみに9月の数字は当初の24万8000人増から25万6000人増に上方修正された。
一方、失業率は市場予想5.9%変わらずに対し5.8%と0.1ポイントの下落。失業期間が長期化することで仕事探しを諦めたり、正規雇用ではなくパートタイマーになった人々を失業者と見なして計算する広義の失業率(U6失業率)は11.5%となった。こちらも前月の11.8%から低下。2009年以来の低水準とはいうものの、こちらはまだ高いといえる。労働市場が昔と違い、IT化やグローバル化で変わっており、雇用形態も多様化していることがありそうだ。
海外メディアは7日の金価格の上昇は、この雇用統計とりわけ雇用者数の増加が予想より少なかったことが、FRBによる早期利上げ観測の後退につながりドルが弱含む中で金価格を押し上げたとしている。ウクライナ情勢が再び緊迫する可能性が出ていることを挙げるところもある。
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確かにそうだろうが、前日比27ドルもの上昇をもたらすほどに雇用統計の結果が悪くはなかったのも事実。実態は、売られ過ぎた金市場の自律反発がやっと起きたということのように思われる。10月中旬以来イベント続きで直近では10月のFOMCから日銀のサプライズ緩和に米中間選挙で、一連の注目材料の最後が先週末の雇用統計だった。
それもこのところの週間ベースの新規失業保険申請件数の減少や直前に発表された民間雇用者数のデータ(ADP民間雇用)が良く、7日の雇用統計も強気の数字が予想されていた。そして予想は若干下回ったものの強気の結果となった。
内部要因からは、いわゆる目先の材料は出尽くし状態となり、ここはいったん利益確定というファンドのショート・カバー(売り建ての買戻し)が一斉に起きることになった。ここまでの下げでわかるように買い方が一掃されており、売りものより益出しの買戻しが優勢の中で、ファンドの買戻しプログラムが価格水準が上がるにしたがい、ジワジワとヒット(発動)され、終わってみれば27ドル高ということで終了。内部要因主導型で週末の取引を終えたもの。客観的に足元でも米国の労働市場の改善は続いている。(亀井幸一郎 2014年11月10日記)