NY金はFOMCを挟んで1810~1860ドルのレンジ内をおおむね1840ドルを挟んだ動きとなっている。1800ドル台半ばの滞留が2カ月近くにわたり続いている。株式市場を中心に不安定な取引(ボラティリティの上昇)が続く中で、視点を変えれば安定した動きといえる。
一方プラチナは、5月末に高止まりするリースレートを手掛かりに、背景に中国の買いがあるとの一部指摘に、一時は100ドルほど水準を切り上げ1000ドルを超えたものの、結局維持できずいわゆる行って来い状態となった。22日のNYの引けは926.90ドルだった。22日は、ナイメックスの銅の先物相場が2021年2月以来16カ月ぶりの安値で終了。ゼロコロナ政策を堅持する中国政府の方針に、銅価格は中国景気の見通しの陰りを映している。中国での物流が引き続き滞っていることから、トヨタなど大手自動車メーカーの減産も伝えられている。
22日注目されたのは午前中に行われた米上院銀行委員会の公聴会でのパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の発言だった。 冒頭発言では改めて積極的な利上げを続ける姿勢を示した。
市場の関心が強い今後の利上げペースについては「(物価などの)データに機敏に反応していく」とした。5月の連邦公開市場委員会(FOMC)以降、折に触れこの「機敏」という単語が使われる頻度が高まっている。先週の6月会合では直前に利上げ幅が、想定された0.5%から0,75%に大きく引き上げられたのも「機敏」な対応ということになる。これまで金融政策の方向性を2会合先まで示唆するという異例の「フォワードガイダンス」の手法は、変更ということになる。
質疑応答では、一度に1.00%(100bp)の利上げの可能性を問われ、「正当化されればいかなる選択肢も排除することはない」とした。大幅利上げが景気後退を呼び込む懸念については、「意図しないが、もちろん、あり得る」とした。軟着陸を目指しているが、「過去数カ月でかなり厳しくなった」としている。5月の中旬以降、急激な利上げの景気への影響を「痛みを伴う」という表現で認め始めたのは、ここにきて利上げ幅の拡大など急な対応を迫られ、これは影響は避けられないという判断に傾いたものと思われる。ただし、現状ではリセッション(景気後退)の確率が上昇しているとは思わないとした。
個人的に注目したのは保有資産について、バランスシートの縮小が十分に進んだ段階でMBS(住宅ローン担保証券)売却を検討するとしたこと。早い段階でMBSの売却を進め、手持ち債券は国債だけにしたいという議論が進んでおり、NY連銀のウィリアムズ総裁も5月中旬にそのような話をしていた。
それが、「縮小が十分に進んだ段階」と後退した。「将来のある時点でMBSを売却する必要がある可能性」ともした。それはそうだろう。国債より償還期限が長いものが大半のMBSは、現在かなりの含み損になっていると見られ、売却すると実現損になりダイレクトに決算に響くからだ。売るに売れないMBSといえる。