10月16日のNY金は続伸した。主要な米経済指標の発表のない手掛かり不足の中で米国外を含めインフレ鈍化を示すデータや米長期金利の低下が買い要因となった。
また投票日が接近する大統領選挙を巡る不透明感を受け、金融市場全体でポートフォリオの調整が進んでおり、その流れの中で金市場にも資金が向かっているとみられる。
通常取引は前日比12.40ドル高の2691.30ドルで終了。9月26日に付けた終値ベースでの過去最高値(2694.90ドル)に近い水準での終了だが、特段の手掛かり材料がない中でのこと。株式市場の取引開始間もない時間帯に一時2702.50ドルまで付け、これがこの日の高値となった。2700ドル台乗せはやはり9月26日以来のこと。
16日は欧州時間に発表された9月の英消費者物価指数(CPI)が前年同月比1.7%上昇と市場予想以上に低下し、イングランド銀行(中央銀行)の物価目標の2%を下回った。英国の追加利下げ観測から英国債利回りが大幅に低下、英ポンドは対ドルで下落。またNY時間に入り発表された9月の米輸入物価指数も市場予想を下回った。2カ月連続の下落で、前月比の下落率は0.4%と市場予想(0.3%)以上だった。前月比では2023年12月以来、最大の下落率でインフレ見通しが緩やかになることが示され、連邦準備理事会(FRB)の利下げ継続観測を裏付けた。世界的なインフレ鈍化の流れが意識され、米国債の買いを誘い10年債利回りは一時節目の4%割れした。
一方で本日予定されている欧州中央銀行(ECB)理事会では、0.25%の利下げが有力視されており、ドルは英ポンドやユーロに対して約2カ月ぶりの高値圏で推移し、対円でもドルは買われた。この結果ドル指数(DXY)は一時103.608と8月2日以来2カ月半ぶりの高値を付けた。このドル高の中にもかかわらずNY金は続伸ということに。
ドル円相場は1ドル=149.64円と前日比小幅に円安で終了したが、そのまま国内価格の押し上げ要因となり、大阪取引所の夜間取引で金先物価格(JPX金)は一時1万2937円まで付け史上最高値を更新。NY金が9月26日に2700ドル近辺で取引されていた際のドル円相場は144円台後半の水準だった。つまり5円ほど円安に振れていることが、国内価格の押し上げ要因となり連日の最高値更新につながっている。NY金が2700ドル水準の場合、ドル建て金に変動がない場合、ドル円1円の変動は国内価格87円の変動をもたらす。つまり400円余りの円安プレミアムが乗っている。 本日17日の国内店頭小売価格(10%税込み)も1万4198円と3営業日連続で最高値更新となっている。
その後、NY時間外のNY金は2700ドルをやや下回る水準を横ばいで推移している。ドル円の水準は変わっていないことから、JPX金は、このブログを執筆時点の17日19時20分時点までの高値は1万2962円と最高値を更新している。
本日は9月の米小売売上高が発表される。予想を超える個人消費の堅調さが米国経済を支えてきたが、どうなるか。前月比では0.3%増が予想されている。
ちなみに、NY連銀の9月の消費者調査では、今後3カ月間で債務の返済が困難になると回答した割合はコロナ禍当初の20年4月以来の高さになっている。消費の2極分化が進んでいる。
先日ハリケーンの影響について書いたが、思わぬ下振れもありえそうだ。