10月15日のNY金は反発した。前日はコロンブスの日の祭日で休場となっていた債券市場が取引を再開。連休前には4.1%台と約2カ月半ぶりの高水準まで上昇していた米10年債利回りだが、売られ過ぎとの見方から買いが入り利回りは低下。米長期金利の上昇に伴い水準を切り上げていたドルも買い一巡から一服状態に。
金市場はNY時間に入り買い優勢の流れが続いた。NYコメックスの通常取引は、前日比13.30ドル高の2678.90ドルで終了した。
前日から2日間の日程でフロリダ州マイアミで開かれていたロンドン貴金属市場協会(LBMA)の年次コンファレンスのパネルにセッションに登壇した複数の新興国中銀関係者が、金保有の拡大意向を示す異例の発言をしたことも、プラス要因となったとみられる。
一方、懸案の中東情勢を巡り、過度の緊張が緩和するニュースが伝わり、15日は原油相場が大きく下落した。
ただし、中東情勢が一定の買い要因となって来た金市場への目立った影響は見られなかった。
米紙ワシントン・ポストは14日、イスラエルのネタニヤフ首相が米バイデン政権に対し、イランへの攻撃について石油や核の関連施設ではなく軍事施設を標的にする考えを伝えたと報じた。石油や核関連の施設の攻撃により、事態が一段と悪化することを警戒していた市場では過度の緊張が緩和した。ただし、ネタニヤフ首相は今後は独自の判断を下すとしている。
米国産原油WTIは15日、前日比3.25ドル、4.4%の大幅安となる1バレル(約159リットル)=70.58ドルで取引を終了。先週はイスラエル、イラン間の緊張を映し一時78.46ドルと2カ月ぶりの水準まで上昇していた。原油を巡っては、中国の景気回復の見通しが立たないこともあり需要の低迷予想が根強く、上値を抑える要因となっている。
それは世界の中銀にとってインフレを抑えるという点で、好都合となっている。
LBMA年次コンファレンスでの新興国中銀関係者の発言だが、具体的にはメキシコとモンゴル、チェコの中銀で外貨準備を担当する当局者がパネルデスカッションに登壇した。
流動的な中東やウクライナ情勢、米国の選挙を含む政治的分断、高騰が続き不均衡に見える株式市場など多くの不確実性を考えると、各国の準備資産に占める金の割合が今後数年間で増加する公算が大きいという認識を共有していることが判明した。
そこに個別の事情を加味し判断を下している実態が示された。
これらは、今年の6月に国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が発表した、2024年版のゴールドに関する中央銀行調査報告(2024 Central Bank Gold Reserves Survey)にて指摘されていたものでもある。
ただし、中央銀行の担当者が直接公の場で発言するのは異例と言える。
以前、ここまで一連のゴールドの歴史的上昇の基盤が中銀による買いで、その上にFRBによる利下げや、米政治的分断によるリスクさらに中東情勢など地政学リスクが乗って循環的に上昇と書いたが、なおその最中と言える。