亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

ドイツと米国個人の金現物買い増加

2021年10月28日 21時15分02秒 | 金市場

27日は米長期金利が目立った材料のない中で下落した。一時前日比0.1%(10bp、ベーシスポイント)低い1.51%を付け1.549%で終了。1日で10ベーシス動くと債券市場では比較的大きな値動きということになる。先週は1.7%まで達していたことから、下げ幅は大きい。 FOMC(連邦公開市場委員会)を来週に控え、債券市場の焦点はテーパリング(量的緩和の縮小)から利上げ開始時期に注目が移行する中、この日は利上げ前倒し観測から(利上げに反応しやすい)2年債利回りが1年7カ月ぶりの水準に上昇した。長短金利差の縮小、いわゆるフラット化は経験則からは景気減速のシグナルでもあり、株式市場では景気循環株を中心に利益確定売りが広がった。

長期金利の低下は、目立ったものではないがドル指数も押し下げ、金の買い要因になった。一時1801.00ドルまで買われたものの、最後は維持できずに終了ということに。終値は1798.80ドル。

10年債利回りの低下については、米中間の緊張の高まりを反映したとの見方があった。米連邦通信委員会(FCC)は26日、中国の国有通信大手、中国電信(チャイナテレコム)の米国事業免許を取り消す方針を発表。ここは中国で事業を展開する企業などに米中間をつなぐ電話やIT(情報技術)サービスを提供しているようだが、中国政府のスパイ活動に利用されるなど安全保障上の懸念が大きいと判断したというもの。26日はブリンケン米国務長官が声明を発表し、台湾の国連機関への参加を支持するよう各国に呼びかけたことも、地政学リスクの高まりを印象付けた。

米中関係の悪化懸念から国債への資金シフトが見られ、利回り低下につながったというもの。こうした話は金市場の材料でもあるが、金の方はより具体性を帯びた場合に反応しやすい。地政学要因はいずれ金市場の材料になると思うが、先の話だろう。

もうひとつ、27日はカナダ中央銀行が量的緩和策(QE)の終了を発表した。政策金利は据え置いた。主要国の中で最も早くテーパリング(量的緩和縮小)を開始していた。今後は低金利を維持するとしながらも、サプライチェーンの混乱(供給障害)がインフレを押し上げることから、 想定より利上げ時期が早まる可能性をマクレム総裁は示唆。カナダは原油価格の動向で景気が左右されやすく、他国に比べインフレ過熱感も強いと考えられ、この決定は他の中銀にそのまま当てはめるには無理がありそうだ。

本日日本時間の午後、国際的な金の広報調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC、本部ロンドン)が21年7~9月期の需給統計を発表した。

前年同期で増減を比較するが、20年7~9月期は金価格が初めて2000ドルを突破し、その背景に金ETFへの大量の資金流入があったことで知られる期間でもある。盛り上がった四半期ゆえに、前年同期比では見劣りするのは止む無しといったところだ。

21年Q3(7~9月期)の金需要は831トンで前年同期比で7%の減少となった。ジュエリー需要や地金・金貨、工業用需要、さらに中央銀行の買いも前年同期を上回ったが、金ETFが20年Q3の274トンから21年は27トンの減少(売り越し)となったことが、全体の需要を引き下げた。

ジュエリーは、443トンで33%増、地金・金貨は18%増の262トン、工業需要は9%増の84トン。工業用需要は早くもパンデミック前の水準に戻っている。中央銀行の買いについては、Q1(133トン)、Q2(190トン)に比べ69トンと見劣りするが、年初来では393トンとかなりの規模になる。年間ベースでは450トン程度にはなると見込まれている。ちなみに前年同期は10トンの売り越しだった。

地金・金貨では中国64トン(+12%)、インド42トン(+27%)についで、ドイツが33トン(+14%)、米国が28トン(+31%)と、この2国が目立った。興味深いのは先に触れたように金ETFが27トンの減少となったが、主に米国での売り越しだった。一方、米国では地金・金貨の現物需要が増加している。インフレ懸念の高まりなどで、個人は金現物を買っていると思われる。目先の価格動向で出入りするファンドなど機関投資家と、個人のスタンスの違いがデータに表れていると思う。

本日は、ECB理事会と米7~9月期GDP速報値の発表。GDPに注目。。

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