先週末15日金曜日は、米9月の小売売上高発表を前に、、1カ月前の9月16日の8月分の発表に際し、減少予想に対し増加のサプライズとなり長期金利が急騰、ドルインデックスも急伸で、NY金は2%以上38.10ドル安になったことを書いた。今回も似たような流れが再現された。
米商務省が発表した9月の小売売上高は、報じられたように前月比0.7%増加と堅調な結果だった。市場予想は0.2%減少となっていたので予想外の増加ということになった。前回8月分の再現という感じ。新車価格が供給不足で販売価格が上がり自動車販売店の売上高が増えたのが数字を膨らませた。自動車販売店の売上高は0.5%増と、前月の3.3%減からプラスに転じた。サプライチェーン問題が価格上昇につながっている、まさに足元のインフレの高まりの背景そのままの結果ではある。
自動車、ガソリン、建設資材、外食を除いた「コア小売売上高」は、9月は0.8%の増加となった。コア小売売上高は、国内総生産(GDP)の個人消費の項目に関連している数値でもある。 このマイナス予想がプラスという予想外の増加で、長期金利が上昇(前日1.516%⇒1.575%)。10年債利回りと逆相関性の強い金は売られることになった。また米国株式市場も幅広く上昇、ETF認可をはやしてビット・コインまで上昇するリスクオン・センチメントの復活の中で、このところ安全資産としても買いが入っていた金は売られやすかった。
1日の下げ幅が29.60ドル安と拡大したのは、週央にインフレヘッジで買われ一時1800ドルを越えたものの、維持できず反落となったことがある。というのも1800ドル近くに100日および200日の移動平均線が位置していることから、この水準を維持できるか否かがテクニカル面で注目されていた。結果的に維持できなかったことで、見切り売りも出て下げ幅が拡大した。15日に書いたが、ここからは「どの辺りで均衡点を見つけるかがポイント」ということに。
ところで予想外の増加となった小売売上高だが、7~9月期でみると前期比0.7%の減少となる。9月中旬にかけてのデルタ株感染拡大の影響で消費が鈍化したが、旅客・娯楽などサービス分野が大きく落ち込んだことが背景となっている。言うまでもなく個人消費は米国経済(国内総生産)の約7割を占めることから、7~9月の個人消費の鈍化観測は強まっており、7~9月期米国内総生産(GDP)は減速する見通しが大勢を占めている。
これも15日取り上げたが、アトランタ連銀の「GDP・NOW」は小売の発表を受け1.3%から1.2%に引き下げられた。 この流れからすると、景気主導の長期金利の上昇も限定的と思われ、金の下値は限られると思われる。