本日も時間の関係で午前のレポートを転載ということに。
「NY金ファンドの売りは一巡か、米経済に自信を示したパウエル議長」
11月14日のNY市場の金価格は5営業日続落した。10月末にかけて米大統領選を巡る不透明感から逃避資金を集め2800ドル超の史上最高値を更新していたNY金だが、その後トランプ候補圧勝を受け、政治分断や政治的空白発生のリスクが急低下したことで、一転売りが膨らんだ。終値ベースで投開票日の11月5日から13日までで4営業日続落で163.20ドル、6%も水準を切り下げた。14日はさらに前日比13.60ドル安の2572.90ドルで取引を終了した。
政治分断を手掛かりにヘッジ目的で先物市場と金ETFを介して買い進んだ欧米勢だが、サプライズとも言える展開に一斉に手じまい売りを出している状況は、コメックスの出来高からも把握することができる。11月5日以前の6営業日の1日当たりの平均が18万6480枚(1枚=100オンス)、5日以降13日までの同平均が28万5797枚と、重量換算で約10万枚(約311トン)増加している。1日遅れで公表されるデータだが14日も出来高が膨らんでおり、相応の売りが出たとみられる。さすがに買い付いていた目先筋の整理売りは一巡したとみられる。
14日の取引は、NY午前までドル高、米長期金利上昇の中でNY時間外のアジアからロンドン午前にかけて売り先行の流れが続いた。NY早朝には2550ドルの心理的節目を割れ一時2541.50ドルと2カ月ぶりの安値を付けた。さすがに押し目買いが入り、NY時間は下げ幅を縮小しながら相場は進行。終盤は2580ドル手前でもみ合いとなり、そのまま終了した。2600ドル手前には戻りを待つ売りが控えているとみられ、それを消化できずにプラス圏に浮上できずに終了した。1日の値動きのパターンとしては、目先の底打ちを示唆している。
この日もドルは主要通貨に対し強含みNY金の売り手掛かりとなった。ドルは対ユーロで一時1.0499ドルと23年11月以来の安値をつけ、その結果ドル指数(DXY)は一時107.064まで上昇。こちらも23年11月1日以来の高水準となり106.673で終了した。市場はトランプ次期大統領のブレーンが事前に「政権移行チーム」を発足させており、主要人事を手早く決めていることから、選挙公約はすべて実行されるとの前提で動いているとみられる。バイデン現政権側の協力姿勢からも政策の先行きはともかく、政治の流れの不確実性は後退している。
もともと注目されていたのは、この日の午後に予定されていたパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容だった。議長は最近の米経済が「目覚ましく良好」に推移しているとし、それゆえ余裕をもって政策を実行する時間があるとした。その上で「経済は利下げを急ぐ必要があるというシグナルを送っていない」とした。実際に、この日発表された10月の生産者物価指数(PPI)は前月から伸びが加速し、また週次の新規失業保険申請者件数が減少し、5月以来の低水準となったりと、米経済は底堅く推移している。それでも12月の利下げは実行されるとの見方はなお強い。
しかし、年明け25年1月の連邦公開市場委員会(FOMC)では利下げ見送りとの見方が台頭している。利下げサイクルの後退は、NY金にとって買い手掛かりの後退を意味する。
ここまでの上昇スピードが異例のものだったが、通常ペースに戻ることを示唆している。