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亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

今夜の米株は5月5日の暴落再現か? 

2022年06月16日 20時48分12秒 | 金融市場の話題

報じられているように米連邦準備理事会(FRB)は、1994年以来の規模の通常の3倍となる75ベーシスポイント(bp、0.75%)の利上げを決め、インフレ抑制に積極的に取り組む姿勢をみせた。

言うまでもなく今回事前に50bpの利上げ見通しが広く市場に織り込まれていた。政策会合開催直前に発表されたインフレ指標(米5月CPI)の上振れや、消費者の中長期的なインフレ見通しの上昇(ミシガン)という、政策判断を変えるに十分なデータの登場に慌てたFRBだったが、変則的ながら市場へのアナウンスメント(14日に取り上げたWSJリーク記事)が功を奏し、75bpの大幅引き上げへの移行にも関わらず、市場の混乱は見られなかった。

声明文発表後、FOMCメンバーによる経済予測から導いた政策金利やインフレ率、失業率、成長率の中央値(いわゆるドットチャート)が発表され、パウエルFRB議長の記者会見が開かれた。声明文発表直後こそ、株式はじめ市場横断的な価格の振れが見られ金市場も上下に価格が振れたもののマイナス圏に入ることはなかった。それも議長の記者会見が始まると市場は落ち着きを取り戻し、株式市場も米債市場も上昇に転じ、米債利回り低下の中でドル指数(DXY)は下落ということに。時間外の金市場は買いが先行する流れに転じ、一時1845.40ドルの高値を付けた後に、切り上げた水準をほぼ維持して時間外取引は1836.10ドルで終了となった。

 

市場を落ち着かせたパウエル議長の記者会見だが、ポイントとなったのは、今後の引き上げ見通しについての発言だった。

「本日の75bpの利上げは明らかに異例の大きさで、この規模の利上げが頻繁に行われるとは考えていない」とした。つまり75bpの利上げは稀で一般的ではないとのメッセージと市場は受け取った。ではなぜ(直前に)利上げ幅が拡大したのか問われ、「前週末発表の消費者物価指数(CPI)とインフレ予測のデータを踏まえ、(75bpの利上げが)適切と考えた。(7月の次回FOMCまで)6週間待つことは不適切で、迅速に対応しなければならなかった」とした。

その上で、「次回会合で50bpもしくは75bpの利上げを行う可能性が高いだろう」とした。「そのペースは入ってくるデータと経済の見通しに左右されるだろう」とした。市場では利上げ幅100bpとの見方もあったが、75bpは今後も可能性はあるものの、異例との見方が市場を落ち着かせた。

 

事態を俯瞰するならば、約27年ぶり大幅利上げで景気への影響が大きいにもかかわらず、目線が上がった市場にとって、想定したタカ派水準よりは緩めとの判断が持続性は別として株価の反発をもたらし、市場センチメントを鎮めることになった。反発と言ってもダウ30種でたかだか303ドルだが、前日までに5営業日で2816ドルも下げていたので、株式市場には安心感が広まったということか。

 

それにしても、75bpの利上げに絡んだ株価の反応という点で、前回5月のFOMCが思い起こされる。

やはり記者会見でパウエル議長が、今回は75bpの利上げなど話し合いのテーブルにも上らなかったと発言したことで、株式市場はこれを好感。FOMCの当日4日にダウう30種は932ドルも急騰して取引を終えた。ところが50bPの倍速の利上げにQT(資産縮小)まで決めたFOMCはタカ派傾斜に変わりなく、翌5日のダウは1日で1063ドルの暴落となったのだった。日本は連休中ゆえ覚えている人は少ないかもしれないが、

75bpが材料になった点で今回は「似ている!」。

本日の米株は時間外の先物から売られているが、それは当然だろう。75bpの利上げでこの先時間を置かず2.5%を超える水準まで引き上げ意向であるから、株には逆風以外の何物でもない。米株の下値はさらに深くなりそうだ。

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