亀井幸一郎の「金がわかれば世界が見える」

マクロな要因が影響を及ぼす金(ゴールド)と金融の世界を毎日ウォッチする男が日常から市場動向まで思うところを書き綴ります。

NY金テクニカル改善、ショートカバーの上昇  

2022年05月23日 20時22分33秒 | 金市場

先週末5月20日のNY金は小幅に続伸となった。前日に切り上げた1840ドル前後の水準を維持して終了となった。通常取引は1842.10ドルで終え、週足では33.90ドル(1.87%)高。4週間ぶりの反発ということに。

連日年初来安値の更新を続けてきた米国株式市場だが、20日も午後2時ころまで下値追いの展開で下げ幅が拡大した。やっと前日にリスク回避型の買いを呼び込む形で上昇した金は、(NY時間外から先物が売られる)不安定な株式市場を受けロンドンの早朝に1847.80ドルまで買われたものの、節目の1850ドルに接近すると売りに押し戻された。結局、前日(1841.20ドル)の終値を挟んだ上下動となり、NYの午前に一時1830.60ドルまで売り込まれたものの、戻りも早く1840ドル台に復帰。通常取引終了後の時間外では買いが先行し終値を上回る1845.10ドルで週末の時間外取引を終了した。

ポイントは、200日移動平均線が1837ドル近辺に位置しているが、このラインは上回って引けたこと。20日は、前日に大きく値下がりしたドル指数(DXY)が終盤にかけて反発したことも金の上値を抑えたと見られる。そろそろ2カ月にわたり走り続けてきたドルも曲がり角で一服状態といったところ。いつまでもFRBの強硬策=長期金利格差だけで買い上げられるものでもないし、金利差以外の材料もある。景気見通し他・・・。

 

先週末米CFTCが発表したNY金先物のポジションは、7週連続でショートが増加していた。重量換算で増加分は100トン程度だが、週明け本日の相場は、ECBの利上げ観測からのユーロ高を映したドルインデックス(DXY)の下落に引き出されるように、ショートカバーが押し上げているのだろう。それだけに、カバーが一巡すれば燃料切れということも。フォロアー探しの展開。中国やインドの実需は引っ込んでいるが、宝飾含め欧米の現物の引き合いはかなり強いようだ。これはNY金先物だけを見ているだけでは、わからない話。

一方、米長期金利(指標となる10年債利回り)は、前日同様に一時2.774%と3週間ぶりの低水準まで下落、終盤は2.8%台に戻す荒れた展開が続いた。週明けも2.8%台前半で推移中。5月17日に米連邦準備理事会(FRB)パウエル議長が、インフレが明らかに低下している証拠を確認するまで、FRBは金融政策引き締めを続けると表明。その際に、今後の引き締め策により経済成長の鈍化や失業率の上昇といった「痛み」をもたらす可能性があると述べたことが市場に影を落としている。先行きの景気減速に対する警戒感は高まっている。

 

折しも先週は、米小売ウォルマートやターゲットの決算や見通しが振るわず、インフレの企業業績に対する懸念が一気に高まると、米主要株式指数は軒並み下値を切り下げることになった。報じられているようにダウ30種平均は週間では934ドル(2.9%)安と8週連続の下落で、世界恐慌の最中の1932年以来90年ぶりの連続下落記録に並ぶことになった。仮に今週も下げれば9週連続となり過去最長記録となる。ハイテク株中心のナスダック総合と多くの機関投資家が運用の指標にするS&P500種はそれぞれ7週連続の下落となった。

1日で過去最大の下げというような派手な下落ではないものの、継続することで歴史的な下落局面の様相を呈しており、信用取引(マージン)の評価損が膨らみ、追加担保(追加の証拠金)の差し入れを迫られている投資家が増えているとみられる。4月末までのデータでは、これまで反発で切り返してきた成功体験によるとみられるが、ポジションを維持している投資家が多いことが判明している。底打ち期待が強い株式市場だが、総投げで下げ足を早めないと、足元のようにダラダラ下げが続き、単に水準だけ切り下がるだけで整理不十分という中途半端な展開に。なんともあく抜けしない歴史的下げ相場。。

 

今週は25日に5月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨が公開される。極端なタカ派化と表現されるようになったFRBの政策方針について、5月会合で見送られた0.75%の利上げの可能性について、どのような発言がなされていたのか。その後のFRB関係者の発言内容からは、0.75は排除されている印象だが、予断を許さずということになりそうだ。

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