昨日20日のNY金は、反発ということになった。NY時間外アジア時間の日銀サプライズで対円でのドルの急落が他の主要通貨にも広がり、一時はドル全面安状態になったことで起きた金市場での買い優勢の流れは、そのままNY時間にも引き継がれた。
ドル指数(DXY)は取引開始時の104ポイント台後半から1ポイントほど下落し、ファンドの金買いを促すことになった。その後の時間帯には、俄かに表れた新たな流れへの警戒から逃避買いが金市場に集まり、水準を切り上げることになった。NY時間の中盤には一時1832.40ドルまで買われたものの、上値はそこまで。前週13日の直近高値(1836.90ドル)を超えることはなかった。
しかし、さすがにホリデーシーズン、かまびすしかったFRB関係者の発言もなりを潜め、トレーダーもみな休暇を楽しんでいたはずが、びっくり仰天ということだったろう。 日銀による長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)と呼ばれる、長期金利の上昇を0.25%以下に抑える政策は、これまで海外勢を中心に10年国債の売り攻勢を受けてきた。維持できずに早晩、ギブアップするだろうということだった。
利回りが0.25%を超えて上昇するのを抑えるために、日銀は市場から無制限に国債の買取りを続けてきた。その結果、9月末時点で日本銀行による国債保有割合が、発行済み国債の半分以上(50.3%)になる異例の事態となっていた。
日銀のYCC政策だが、このところのインフレの加速や欧米を中心に他の中央銀行の積極的な利上げ策の結果、償還年数が異なる日本国債の利回りも傾向的に上昇。ただその中で操作対象となっている10年債の利回りが、他の年限の国債との比較で不自然に低く抑えられる状況に至っていた。利回りが上昇しないように抑えているので、当たり前ではあるが。 ただし、10年債利回りはその国の基準金利で、住宅ローンはじめ各種金利の基盤になるもの。この“ゆがみ”つまり不自然な状態が続けられないほど、日本の金利水準も上昇が目立ち始め、放置できないと判断したようだ。
もっとも、そもそも“ゆがみ”をもたらしているのは、日本銀行自体であり、経済実勢に応じて動く長期金利を縛ること自体に無理がある。本来ならば、やめればいいのだが、いきなりやめると影響もさらに大きくなる。 それでゆるりと許容範囲を拡大ということだったが、市場の反応はここまで派手な値動きをしていた市場ほど大きくなった。
それが為替市場だった。報じられたようにドル円相場は、発表前の137円台から133円割れに、さらにNY市場では一時130.59円まで低下。20日の終値は131.70円となった。前日のNYの終値(136.91円)からは1日で5.21円、3.8%の下落(円高)は24年ぶりとされる。
問題はここで生まれた流れがトレンドを形成するか否かということだが、米国の利上げサイクルが終盤に入っていると捉えているので、ドル円に関しても流れはドル安に反転していると思う。もちろん相場には揺り戻しがあるので、足元はドルがどこまで戻ることができるのかということだが、戻りが限定的となると、改めて売り直されるということだろう。
印象としては、ドルは下値を探る動きに転じていると思われる。週末のFRBが注視するPCEコアデフレーターがどうなるか。