NY金は、先週10月5日に至る9営業日下げ続けることになった。
記録をたどってみると過去20年間で10営業日続落は1回あるだけで(2015年7月9日~22日)、9営業日続落は2008年(8月29日~9月11日)と2017年(2月28日~3月10日)に発生し、今回が4回目。直近は今年の8月7日から17日に至る期間で起きている。いずれも弱気センチメントの中でダラダラと下げる展開で、途中で目立った下げを挟まない分、自律反発的な動きも出ない。
今年の2回は、いずれも米長期金利の上昇が節目を超えて加速したことが、ファンドのアルゴリズムの売りを引き出し、下げを長引かせた。具体的には10年債利回りが終値ベースで昨年10月24日に付けていた2007年来の高水準4.248%に接近し上回ったのが8月だった。
9月下旬からの動きは、9月20日に声明文とメンバーによる金利見通しを発表した米連邦公開市場委員会(FRB)が、年内さらに1回の利上げを示唆するタカ派的内容となったこと。10年債利回り上昇が加速し16年ぶりの高水準の更新を続け、(一時4.887%)5%を視野に入れたことだった。
NY金の売り手掛かりとされる金利急騰は言うまでもなく同時に米国景気にも悪材料となるもので、市場で受け入れが進んだ米経済ソフトランディング観測自体を危うくするものでもある。米経済にしても世界経済にしても、楽観的見通しを持つには不透明要因は多く、したがって先週書いたように、金市場にこれまで滞留してきた資金が、大規模で抜け出している現象は足元では見られない。短期筋の資金の出入りによりもたらされたのが、9月下旬以降ここまでの下げの拡大と言える。
一方で、こうしたテクニカル指標など意に介さない市場参加者が金市場で増えているのが、この数年の特徴でもある。
それは昨年来さらに買いを活発化させた新興国中央銀行であり、アジアを中心に世界的に広がった個人の草の根的な現物買いと言える。ただここまでのところ価格形成の主導権を握っていたのは、紛れもなく目先筋のファンドだった。
こうした流れにも変化の兆しがあるのを先週末発表されたCFTC(米商品先物委員会)のデータが示している。マネイジド・マネーと表記される短期筋のファンドのポジションが、10月3日時点で重量換算で9トンの売り越しとなった。9月19日時点の207トンの買い越しからネットで216トンの売りを出したことを意味し、この間のNY金の下げの背景を表す。売り越し(ネット・ショート)に転じるのは昨年11月8日以来のこと。
報じられているように足元で中東情勢が一気に流動化する中で、安全資産としてのゴールドが注目され、週明け9日のNY金は1870ドル台まで水準を切り上げた。思わぬ地政学リスクの浮上に、ファンドによるショートカバー(売り建ての買戻し)が上昇のドライバーになっているとみられる。
8月以降のNY金の下げも、転機を迎えているといえる。