週明け7月17日のNY金は5営業日ぶりの反落となった。先週は、消費者物価指数(CPI)および生産者物価指数(PPI)で物価圧力の鈍化が示され、利上げ局面の終わりが近づいているとの期待が台頭。米長期金利が低下し、利子の付かない資産である金の投資妙味が強まる中、相場は約1カ月ぶりの高値水準である1960ドル台に上昇していた。
上げ幅が拡大していたこともあり、先週末は利益確定や、ファンドのポジション(持ち高)調整の売りで、週末14日の取引は0.60ドルの小幅高1964.40ドルで終了していた。週間では31.90ドル(1.65%)の上昇だった。
一方、週明け17日は、インフレ鈍化による米利上げ長期化観測の後退を背景とした買いが一巡し、上げ一服感が広がった。
米長期金利の低下とともに先週は週初の103ポイント超から99ポイント台に急落状態となっていたドル指数(DXY)も売り一巡感が台頭し、金市場は売りが先行しやすい地合いとなった。17日のNYコメックスの通常取引は前週末比8.00ドル安の1956.40ドルで終了した。
週明けのドル指数は、方向感に欠く中、先週末に付けた1年3カ月ぶり安値(99.578)は上回っている。
週明け注目されたのは、中国国家統計局が17日に発表した4~6月期の実質GDP(国内総生産)だった。結果は市場予想(6.9%の伸び)を下回る、前年同期比6.3%の伸びだった。不動産市場の低迷などが足かせとなっていると受け止められた。世界景気への影響が懸念され、米国債にも買いが入り、NYの早朝に10年債利回りは一時3.759%まで低下した。
ただしNY時間に入りNY連銀が発表した7月の製造業景況指数はプラス1.1と市場予想(0.0前後)を上回り影響は相殺ということに。数値がゼロを下回るとニューヨーク州の製造業が縮小していることを示す。個別指数では新規受注が小幅に改善した。一方、価格指数の低下が目立ち、インフレ鎮静化の基調を示したと受け止められた。 好悪両面の手掛かり材料に、終盤は市場全般模様眺めの中、好決算期待から株式市場はプラス圏を維持して終了した。
18日に発表される6月の米小売売上高が注目されているものの、FRBの金融政策の行方を左右する公算は小さいとみられる。
FRB関連では、来週の連邦公開市場委員会(FOMC)を前に今週からFRB高官が発言を控えるブラックアウト期間に入っている。
先週は連日多くの発言が見られたが、中でも13日ニューヨーク大学で開催の会合で講演したウォラーFRB理事の発言は市場への影響という点で目を引いた。 同理事は今年中に0.25%の利上げをあと2回行うことを支持するとした上で、来週のFOMCで利上げしない理由はないとした。インフレ率の鈍化は好ましいことだが見通しを変えるには不十分だとし、「一指標がトレンドを作ることはない」と言明した。
「インフレ率は2021年夏に一時的に鈍化し、その後かなり悪化した。インフレ減速を確信するには改善が持続するのを確認する必要がある」としている。この発言は、金市場のセンチメントに冷や水を浴びせる形になった。
タカ派で知られてきたセントルイス連銀のブラード総裁が、先週突然辞任を発表したが、もう一人のタカ派最右翼ウォラー理事は元気に引き締め論を張っている。それでも、FOMCに際しての投票ではパウエル議長の主張に賛成票を投じるいわばバランサーという感じだ。