さて発表された6月の米消費者物価指数(CPI)だが、報じられたように前年同月比5.4%上昇と、前月の5.0%から加速し、2008年8月以来、約13年ぶりの大幅な伸びとなった。市場予想は前月並みの5.0%となっていた。直近の上昇の勢いを見る上で注目される前月比も0.9%上昇と、前月の0.6%を上回り、08年6月以来の大幅な伸びとなった。政策判断で重要視される(値動きの大きい)食品・エネルギーを除くコア指数(コアCPI)は、前年比4.5%上昇し、前月より加速し1991年11月以来の高い伸びを記録。前月比では0.9%の上昇となった。
昨日はここに、市場予想を下回る「予想値をやや下回る程度か」と書いたが、あにはからんや上振れとなった。その背景は、前月と同じ中古車・トラックだった。なんと上昇がさらに加速していた。前月比でなんと10.5%上昇となったが、これが1953年1月の統計開始以来の大幅な伸びというのだから驚き。私も含め生まれていない人が多かろう。これほどの上昇は、やはりイレギュラーといえるが、何があっても不思議はない世界に突入しているので、これも現実ということで受け入れねばならない。
世界的な半導体不足で自動車生産が抑制される中、規制解除に従い人の動きが活発化。需要の急拡大に対応を迫られたレンタカー業界が、一斉に中古車の調達に乗り出し価格上昇につながっている。
以前書いたことがあるが(・・・別のところに書いた??)、昨年レンタカー業界は新型コロナ禍のロックダウンの中で経営苦しくなり、コストカットから保有する自動車の多くを手放したところが多かったとされる。それが需要の急拡大で、手当てをしようとしたところ、新車は生産減少で価格も上昇し中古車の買い付けに回っているとされる。前月比で統計開始以来の上昇となると前年比ではどうかというと、45.2%ものの上昇となる。結局、6月のCPI上昇分の3分の1以上を中古車・トラック価格が占めている。
ところがこの中古車だが、6月時点で卸売りオークション価格が低下に転じており、これほどの上昇になるとは思われていなかった。つまり、早晩、沈静化に向かうとみられている。
前年同月比5.4%上昇という数字だけを見るとインフレ加速につき、市場の警戒感は上昇というふうに思われるが、発表当初こそ金価格も上下に振れたものの、反応は一時的なものだった。他の市場も同じで反応が限られたのは、特定の品目の上昇が全体を引き上げるという特殊要因が目立ち、足元の状況がピークとの見方が広がっていることがあると思う。
この日、CPIの結果を受け米CNBCのインタビューを受けたサンフランシスコ連銀のデイリー総裁は、インフレ高進が予想されるものの「本当に一時的だと考えている」と話したと伝わったこともあったろう。利上げに関する話し合いは時期尚早とする一方で、テーパリングに関する議論を始める上で適切な時期に来ているともしている。
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