原油安の個人消費などへのプラス面を見てきた株式市場も、需要不足これすなわち世界経済の低迷を示唆するものとの捉え方が急浮上。そこにサウジの長期戦略(と見られる)も重なり、11日のNY株式市場では、エクソンモービルなどエネルギー関連銘柄の下げがインデックス(株価指数)を引き下げた。
10日の市場で注目されたのは原油価格の下落だった。NYのWTI原油は、前日比2.88ドル(4安の1バレル=60.94ドルで取引を終了。2009年7月以来の安値を更新した。米エネルギー情報局が公表した12月5日までの週間ベースの原油在庫が、市場予想では270万バレルの減少のところ逆に150万バレル増加の3億8080万バレルとなったことが、下げに拍車を掛けることになった。10日はOPECが2015年の原油需要が減少する見通しを発表。にもかかわらず原油生産は日量で910万バレルと1983年以来となる高水準が続いている。
底が見えない原油安を個人消費などにはプラスと歓迎する見方がある。一方で、供給増による需給バランスの崩れに加え、そもそもエネルギー需要の不足を意味しており、それは世界景気全体の落ち込みを示唆するものと捉えることのできること。金もコモディティ(商品)の範疇に入るものであり、底なしの様相を深める原油が示すデフレ傾向の中で、買われにくいとの分析もある。
ただし、この日のNY株の大幅な下げは、原油の大幅安で収益悪化への警戒感が浮上しているエクソンモービルなど石油関連株が売られ相場を押し下げた側面がある。ここまでブームとなっていたシェール・オイルやガスへの投資が、採算割れに陥ることから派生して回収が難しくなるとの分析もある。確かに石油産業への投資は拡大していたし、原油価格の低迷が長引くことで案件によっては不良債権化という可能性も出てくる。ルーブル安と原油価格の急落に苦しむロシアの状況は、地政学的リスクにもつながる要素でもある。
10日の市場で金価格が、ドル安、NY株安の中でレンジ相場となり方向性が出なかったのは、こうした金の見通しについて拮抗する市場環境でのこと。それよりも金市場は来週に控えるFOMCに関心を向けているということか。本日は、米11月の小売売上高に注目。