「魔女とキリスト教」

2008-10-18 19:12:01 | 

を読む。上山安敏著。講談社学術文庫。

 前に読んだ「概説西洋法制史」からのリンク。内容は、多岐に及んでいる、としか言いようがないが・・・・・。

 特に印象に残ったのは、ルターの宗教改革が魔女狩りに拍車をかけた、というくだり。「ローマ教皇の支配の下で、キリスト教は本来の姿からかけ離れたものになってしまった。使徒の時代に戻るべきだ」、というのが宗教改革の眼目。つまり宗教改革とは、それまでなかった新しい教えを説いたのではなく、「リカバリー」だったのだ。そして、プロテスタントとカトリックは、自分たちの方がより神に対して忠実であることを示すために、競って魔女狩りに精を出すことになる。「神を信じる者は、神の敵である悪魔の存在も信じる」。

 私は、ときには「思考停止」も必要だ、と改めて思った。思考を突きつめた結果が「リカバリー」であり、16~17世紀の魔女狩りではなかったか。国家主権の概念を唱えたジャン・ボダンも、魔女狩りの推進者だったという。

 宗教改革派の中には、さらに遡って古代ユダヤの国王と予言者による神政を復活させようとした人もいたという。現代のアメリカとイスラエルの同盟関係の起源は、このあたりにあるのではないか。

 この本にはまた、数多くの魅惑的な人物が登場する。ビンゲンのヒルデガルト、ピコ・デラ・ミランドラ、パラケルススとアグリッパ、ギヨーム・ポステル、バルタザール・ベッカー、アレスター・クローリー・・・・・。リンクは無限に広がりそうだ。

 イマジネーションを刺激する名著だ。私が読んだのは第8刷だが、ぜひ千刷、万刷と、増刷を重ねてもらいたい。
 
コメント
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